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NSC発行「Safety + Health」2000年9月号

時の人


エネルギー省、罹病労働者に補償

 エネルギー省のビル リチャードソン長官は、同省の核兵器工場の労働者3千人余に対する補償案を発表した。これで、核兵器工場の労働者からの労働災害補償要求に反対してきた政府慣例は、覆された。

 労働者は、ベリリウム分子の吸入による肺疾患や放射線によるガンなど、広範囲の疾病に悩まされてきた。核兵器工場労働者の暴露に関するエネルギー省の一連の報告書によれば、監督者が呼吸用保護具の着用を求めなかったため、労働者は、ウラン粉じん、ヒ素その他の毒物を長年にわたり、日常的に吸入していたことが判明した。

 リチャードソン長官の発表は、最近になって、危険な化学物質や放射線への暴露で罹病した労働者に補償するとした、クリントン政権の一連の対策の頂点を極めるものである。

 「政府は、何十年もの間、国の防衛に貢献する労働者が危険にさらされていることを示す、山ほどの証拠に目をつぶってきた」と、アル ゴア副大統領は語った。「彼らの苦しみを取り除くことはできないが、政府は、過ちを認め、彼らの疾病に対する補償手順を設計し、エネルギー省核兵器工場労働者の代弁者となることで、癒すよう、今日より努めたい」。
 労働者の大半は、第2次世界大戦中および冷戦中に核兵器工場で働いた時に罹病した。職場は、ケンタッキー州パドウカやオハイオ州ポーツマスにあるガス拡散工場など、全国の核兵器工場にわたる。

 議会が補償案を可決すれば、政府は、罹病労働者の大半に計10万ドルの給付金、または、損失賃金、医療費および職業再訓練を含む支援パッケージを支給する。補償プログラムの総費用は、最初の3年間で年間1億2千万ドル、その後は年間8千万ドルになると見積もられている。

 全国の核兵器工場における慣行を調査するため、安全、衛生、環境の専門家28名からなるチームが、200件以上もの管理職、労働者面談を実施し、施設計画を点検し、作業状況を視察した。同チームは、放射線学的調査を実施し、何百もの書類にあたり、地下水、地表水、堆積物や土壌のサンプルを分析した。

 チームの報告では、核兵器工場は、現在、労働者や公衆を危険にさらしてはいないと結論づけたものの、過去の慣行には、許容しがたい安全基準があったとしている。最も危険な作業のひとつは、ポーツマスの酸化物転換工場で行われており、これにより、労働者は、1957〜1978年間に、空気中および地表面上の放射性汚染にさらされ続けていた。エリザベス アンバル