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NSC発行「Safety + Health」2000年10月号

OSHAの最新情報


1999年の労働災害による関連死亡者数、減少

 先日の労働統計局の発表によれば、1999年の死亡労働災害は、雇用増にもかかわらず、1998年の修正総数、6,055名をわずかに下回る6,023名となった。

 1999年の職場での死亡者数は、1994〜1998年の5年間の平均値6,280名を4%下回る。殺人、感電事故による死亡者数が減少する一方、ハイウエイでの衝突事故、飛来・落下、作動中の機械へ巻き込まれるなどで死亡する例が大幅に増えている。

 ハイウエイでの衝突事故は、死亡総数の4分の1を占め、死亡労働災害の主要因となっており、昨年の1,442名から1,491名へと増加した。労働統計局が1992年、死亡労働災害調査を始めて以来、最高値の記録である。墜落・転落による死亡者数は、微増(706名から717名)、一方、職場での殺人は、10%減(714名から645名)となり、労働災害による死亡原因としては、墜落・転落は、第2位へと浮上した。

 アレクシス ハーマン労働長官は、統計は「我々が、とくに小売業での殺人を減少させたように、今度は、建設業での死亡労働災害の防止により一層取り組まねばならないことを示している」と述べ、OSHA(労働安全衛生庁)の小売業、タクシー業界に対する暴力防止指導について言及した。長官は、建設業における死亡労働災害は、全体の20%にのぼり、産業別で最も高いと述べた。

 建設業の死亡者数は、1998年の1,174名から1999年には1,190名へと微増。運輸、公共事業の死亡者数は、911名から1,006名へと増加した。農林漁業では、840名から807名へと減少、サービス業では、763名から732名へ減少、製造業では、698名から719名へと増加している。



下院法案、OSHAに制約を課す

 新たに2つの議会法案が、OSHA(労働安全衛生庁)の規制に照準を定めた。新しいOSHA規則の費用効果について、会計検査院(Congressional General Accounting Office : GAO)の審査を義務づけ、また、使用者ばかりでなく労働者にも安全責任を負わせようというのである。

 下院は、OSHA、環境保護庁(EPA)など諸官庁の規則の費用効果について、議会に対しGAOに報告させる法案を承認した。規制の実態法は、3ヵ年のパイロット・プロジェクトを実施、この枠で、新設の国会規則審査室(Congressional Office of Regulatory Analysis, or CORA)は、経済、環境、公衆衛生、安全に重大な影響を及ぼす規則または規則案について、データ、手法、概算を分析する。国会規制審査室は、国会委員会の委員長または野党代表の要請を受け、職務を遂行する。

 上院は、すでに同様の法案を満場一致で承認しており、これから両院の法案の差異を埋めねばならない。

 法案は、省庁の規則案が、国会の意図を誤解していると思われる場合には、国会にそれらの規則案を審査する初の権限を与える、と、何年も前から同法案の成立を推進してきた、プラスチック産業団体のルイス フリーマン政治担当副会長は語った。GAO規則審査室が既にあれば、OSHAのエルゴノミクス案を緩和させたろうし、EPAの大気汚染規則を変更させたろうと、フリーマン副会長は言った。しかし、食品商業労働連盟(United Food and Commercial Workers : UFCW)ジャキー ノウエル安全衛生部長は、法案について「別の見方をすれば、我々にも政府法案を阻止できるということだろうか」と語った。

 これとは別に、下院のビリー トージン(共和党、ルイジアナ州)、ラルフ ホール(民主党、テキサス州)両議員は、職場の安全と責任の所在法(Workplace Safety and Accountability Act)と名づけた法案を提出した。これは、もし、使用者が、労働者に対、安全訓練と保護具を与えていながら、労働者が安全手順を守らなかったと証明できれば、使用者は、OSHAの召喚、刑罰から免除されるというものである。使用者は長らく、OSHAは、安全衛生違反を使用者の責任に帰し、労働者に対しては不問に付していると、苦情を述べていた。

 「労働安全衛生法は、明快である。安全な職場を保障するのは、使用者の責任である」と食品商業労働連盟(UFCW)のノウエル部長は言った。労働者が、手順をはしょれば、「それは上司が助長しているのだ」と同氏は言った。しかし、LPAのティム バートル一般弁護士補は、法案が通過するかわからないとしながらも、労働者の安全責任について「意識を高めるのはよいと思う」と述べた。



FAA,OCHAに対し、航空機乗務員の機内安全を譲渡

 OSHA(労働安全衛生庁)と、連邦航空局(Federal Aviation Administration : FAA)は、航空機乗務員の機内安全衛生についてはOSHAの管理下に置くとした覚書に署名した。

 これで、航空機乗務員連盟(Association of Flight Attendants : AEA)にとっては大勝利となった。同連盟は、長年、FAAが機内での組合員の安全規制を怠ってきたと訴え、最近になって、OSHAに安全規制権限を委ねるよう、キャンペーンを実施してきた。航空機乗務員連盟は、FAAは、航空機乗務員安全プログラムに十分な予算を配分してこなかったと述べ、航空会社11社、31,024名を対象とした調査で、1998年には、10%が休業を伴う、または治療を要する負傷を負ったと、調査結果を引用した。これは、全国平均の3倍に達する。

 パトリシア フレンドAEA会長は、OSHA、FAAの覚書について、「正直に申し上げると、アメリカ国民の大半が何十年も享受してきた保護をそろそろ我々にも適用されてよい時期である」とコメントを述べた。

 今年5月、FAAを所管する運輸省監督長官室は、FAAの安全衛生基準および機内乗務員に対するその執行を調査すると語った。FAAは、機内安全規則の作成に必要な、航空安全の専門知識を有すると主張、OSHAも同意した。FAAは、傷病の記録、飲料ワゴンの「プッシュプル」要件、手荷物の大きさや重量、血液由来の病原体その他の問題に対応する新しい基準を作成すると約束した。しかし、現在、両庁は、航空機乗務員に対し、OSHAの基準をどう適用するか、共同で検討することに同意した。OSHAは、機内乗務員の安全衛生基準を修正する前に、その修正案についてFAAと協議すると述べた。



委員会、より安全な化学工程安全規則の作成を勧告


 米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board : CSB)は、化学反応工程の安全性を十分保障する、より厳格な基準を作成するよう、OSHA(労働安全衛生庁)および環境保護庁(EPA)に要請した。

 同委員会は、調査機関であり、ニュージャージー州のパタソンにあるモートン インターナショナル社の爆発事故に関する報告書の一部として、勧告を発表した。この事故では、9名の労働者が死亡、近隣の地域社会に有毒な化学物質が散布された。モートン社は、現在、フィラデルフィア州のローム&ハース社の子会社となっている。化学物質安全性調査委員会は、OSHAとEPAは、化学工程安全の達成に向け、企業をよりよく支援する共同指針を発表すべきだと述べた。指針は、標準的な作業からの逸脱の調査と報告、化学的ふるい分析技術の利用、圧力放散の適切な設計、緊急冷却、安全インターロックシステムを含むこととする。

 同委員会は、また、OSHAとEPAに対し、化学反応工程安全の「危険調査」に同委員会および他の化学安全団体とともに参加するよう要請した。調査は、一連の関連事故を調べ、共通の事故原因を特定し、世界の化学産業に役立つ勧告を提言しようとするものである。

 勧告のなかで、同委員会は、モートン社に対し、化学反応安全情報および作業経験について、社内の適当な部課で共有するプログラムの作成、工程危険管理器具、作業手順および訓練の改良、警報装置、安全手段、焼入れまたは化学的排出システムの設置を提言している。

 OSHAは、ニュージャージー州の爆発事故で、モートン社に対し、5千ドルの罰金を課した。

 一方、OSHAは、ミシシッピー州モスポイント工場での労働者1名の死亡事故で、モートン社を26件の安全衛生違反で召喚、11万8千5百ドルの罰金を要求した。同州ジャクソン市のOSHA地域事務所長によれば、労働者は、新工程の導入の際、予期せぬ硫化水素の発生で、呼吸器具を装着していなかったため、中毒を起こした。

 当局は、窒息の危険へ労働者をさらした、容器に調整弁を備えなかった、呼吸器具、保護めがねを用意しなかった、労働の変更の管理手順を書面で用意しなかった等々の違反で、モートン社を召喚した。

 モートン社は、化学物質安全性調査委員会の勧告に基本的に合意し、その大半をパタソン工場で実行に移したと語った。ローム&ハース社スポークスマンも、ミシシッピー工場の違反については、大半を改めたと語った。



OSHA,コロラド州製鋼業者に48万7千ドルの罰金

 OSHA(労働安全衛生庁)は、コロラド州プエブロにあるロッキーマウンテン・スチール工場を操業しているCF&IスチールL.P.社を、100件以上もの安全衛生違反で、48万7千ドルの罰金を要求した。

 プエブロ工場では、労働者1名が、長さ20フィートの鋼製ロッド140トンを軌条製作所に運搬しようとして死亡した事故を受け、今年2月24日より開始された調査に基き、この度の召喚の運びとなった。運搬車が、突き出ていたマンホールの蓋の縁に引っかかって荷が傾き、華氏800〜90度のロッド3本が運転台へ滑り落ちたのである。

 オレゴンスチールミル社の子会社であるCF&I社は、労働監督を受け、85件の重大な違反、22件の再三の違反で召喚された。OSHA担当のチャールズ ジェフレス労働長官補は、同社に対し、1997年、同様の違反で罰金110万ドルを科したと言及、同社は「労働監督の新顔ではない」にもかかわらず、その経営陣は、「労働者の安全を無視しつづけている」と語った。

 OSHAは、昨年2度、CF&I社を監督しており、11万1千5百ドルの罰金を科した。同社については、1972年来43回の労働監督を実施しており、うち31の監督後、召喚した。(アル カー)