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NSC発行「Safety + Health」2000年10月号
時の人
ファイアストン社のリコールで、自動車安全規則導入か
ブリチストン-ファイアストン社のタイヤ650万本のリコールは、議会沙汰となり、個人からの訴訟も相次ぐなか、安全推進団体、消費者団体は、システムのどこが間違っていたのか、問うている。赤信号は点灯しなかったのか、それとも無視されたのか。
今年8月、ファイアストン社は、デカター第3工場で製造された15インチのATXタイヤおよび15インチの荒地用タイヤのリコールを発表した。タイヤのトレッドが、しばしば、外れてしまうからである。
全米交通安全局(National Transportation Safety Administration : NHTSA)は、62件の死亡事故、100件以上の負傷事故はタイヤに起因するとした、770もの苦情を受理した。当局がATXタイヤの苦情を初めて受理したのは、1990年で、同年、製造会社に対する初の訴訟が起こされた。1998年、州農園保険は、全米交通安全局に対し、21件のタイヤ事故を通報した。5月、同庁は、タイヤの欠陥を調査し始めた。フォード社は、昨年、中東、北アフリカ向けスポーツ車のタイヤを他社製へと切り替えた。
米国運輸省ロドニー スラター長官は、国際的なリコール、消費者からの苦情や係争中の訴訟などを含め、起こりうる諸問題を早めに、全面的に通知する義務を、製造業者に負わせるべきかどうか、検討していると語った。現行では、製造業者は、製品に欠陥があると結論した時点で全米交通安全局に通知するだけでよい。ファイアストン社は、タイヤ不良を、整備や空気入れが不十分だったからであるとしている。
全米交通安全局は、日本、欧州代表とともに、米国や欧州のタイヤ基準を更新すべきか検討中である。当局は、トレッドの分離を再現するテスト・プログラムを設計している。その対照テストは、後にタイヤ基準に追加する。
アルコール血中濃度をめぐり、議会論争
選挙を控え、両党が優位を争うなか、共和党指導部は、歳出予算案に、労働安全衛生、ハイウエイ安全、環境、教育その他に影響を及ぼす条項を付け加えた。
条項のひとつは、2001年度のハイウエイ、航空、鉄道、沿岸警備プログラムへの547億ドルを支出する上院予算案に付加されている。予算案では、州政府に対し、法定酒酔い基準としてアルコール血中濃度を0.08%とするよう義務づけており、これに応じなければ、ハイウエイ信託基金の一部を失うとしている。米国下院運輸予算案では、0.08%濃度を酒酔い運転基準とする条項はないため、両案は、すり合わされねばならない。
下院運輸予算委員会のフランク ウルフ委員長(共和党、バージニア州)は、0,08%条項に賛成だが、他の委員が同意でない。
現在、0.08%基準を有するのは、18州とコロンビア地区で、その他の32州は、それより高い0.10%基準としている。もし下院が0.08%条項を追加すれば、これが、連邦初の法定アルコール血中濃度となる。1998年の全州を対象とした調査によれば、法定濃度を0.08%へ低減することに、国民の70%が賛成している。
レストラン、ビール産業は、新基準に反対である。0.08%基準は、常習の大酒飲みの問題に対処していないと主張。酒酔い運転を繰り返す者、著しく高いアルコール血中濃度で運転する者は、より厳しく取り締まり、刑罰を厳しくすればよいと呼びかけている。
飲酒運転に反対する母の会(Mothers Against Drunk Driving:MADD)は、アルコール血中濃度0.08%のドライバーは、酒を飲んでいない者に比べ、11倍も衝突死亡事故を起こしやすいとして、法律を後押ししている。より厳しい基準で、年間500から700名を救えると見積もっている。
「私自身、0.08%の犠牲者です」とMADDのミリー ウエブ会長は言った。「自分の家庭に起きたことは取り消せないまでも、同じことが他の家庭に起こらないよう、できることはしたい」。
編集者注:NSCは、アルコール血中濃度0.08%に関し、MADDと協力しており、各支部、各課メンバーに対し、酒酔い運転条項を支持して、各々、地区の代議士に接触するよう呼びかけている。
トラック運転新規則は延期
貨物自動車運送産業、安全団体の猛反対を受け、運輸省のロドニー スラター長官は、トラック、バス運転手の新しい労働時間規則にブレーキをかけた。
スラター長官は、規則作成のコメント期間を12月5日まで延長し、9〜10月、首都ワシントンで、労働組合、安全団体、貨物自動車運送産業の代表を招き、一連の円卓会議を開いた。
運輸省の提案は、トラック運転手の労働時間に新しく限度を設け、長距離運転の場合は、24時間中12時間を超えてはならないとするものである。現行規則では、24時間中16時間である。新提案では、また、運転手は、週60時間勤務のあとに、最低でも継続36時間の休養を取るよう、長距離運搬の場合は、運転時間を記録する電子監視装置を使用するよう義務付ける。
同提案は、連邦自動車運送安全庁によれば疲労が原因であるという755名の死亡者数、1万9千名の負傷事故を減らすのを目的としている。当局は、新規則の導入で、年間115名の死亡と3千名の負傷事故を防止できるとしている。
アメリカ貨物自動車運送協会は、新規則は、新たに10万台のトラックと運転手を繰り出させることとなり、全米の配達システムを危険にさらすとして、反対している。また、貨物自動車運送産業は、向こう10年間に191億ドルの負担を強いられるとした、国家経済調査協会の報告書を引用している。
ハイウエイ・自動車安全団体、トラック・自動車の疲労運転に反対する親の会などの安全団体は、新規則は、トラックの連続運転を10時間から12時間に延ばすとして、不満を述べている。
議会も、反対の声を挙げている。547億ドルを計上した上院の運輸歳出予算案には、行政当局の新しい労働時間規制を1年間停止させる文言がある。下院の歳出予算案には、そのような文言はなく、フランク ウルフ議員(共和党、バージニア州)は、「運輸省がデータを収集し、関係者からのコメントを得るより先に、議会が規則作成を阻んではならない」と語った。
この問題は、ハイウエイ、橋梁、空港、鉄道への予算配分と結合することもありうる。現時点では、妥協は見えてこない。
ハイウエイ安全団体のジェラルド ドナルドソン上級調査部長は、上院は、この条項では「負ける」つもりだと語った。「上院がこんなことをするとは、驚いた」と同氏。「議会は、運輸省にこの件で調査する契約すらさせない。これは、規則を作ってはいけないと言っているようなものだ」。
可能な妥協点としては、運輸省に対し、トラック運転手に対する要件をどう変更するか調査させつつ、2001年までは、新しい労働時間規則を禁ずるというところであろう。
11月の大統領選挙で、事態は変わりうる。クリントン政権は、新しい労働時間規則を支持しており、ゴア候補もこの路線を引き継ぐことが見込まれる一方、共和党全国大会では、代議士らは、「新規則で、貨物自動車運送産業は不利になる」とした政綱に票を投じた。
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