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NSC発行「Safety + Health」2000年11月号, Vol.162 No. 5
OSHAの最新情報
労働不安のある企業は、監督対象となりやすい
議会一般会計室(GAO)によれば、組合ストライキやその他の労働不安、死亡事故または災害経験のある事業者は、労働不安のない事業者にくらべ、6.5倍もの確率で、労働安全衛生庁(OSHA)の労働監督を受けやすい。
議会の調査部門である一般会計室は、法律により、OSHAは、労働者の合法的な苦情、死亡事故あるいは災害があれば、労働監督を実施せねばならない点に注目。下院教育労働力委員会の2小委員会の共和党出身委員長が、調査を要請した。
大規模使用者団体、LPAは、組合の組織者は、会社のキャンペーン中、経営者を困らせるために、労働安全衛生法や州や地方の安全法規を「頻繁に」利用すると語った。
「複雑な安全衛生規則は、しばしば技術的な違反を見つけやすくしており、事業者が不安全な職場を放置しているかのごとく、組合に言わしめている」とLPAは述べた。
1994年から1998年の間、議会一般会計室は、ある種の労働不安が存在する職場の労働監督1,900件の約68%は、苦情申し立て、死亡または災害を機に実施されており、一方、総労働監督件数10万件のうち、苦情申し立て等に基く監督件数は27%であると比較している。
一般会計室によれば、労働不安のある職場の約76%は、労働組合が組織されているが、OSHAが監督した全事業所のうち、組合があるのは、24%である。政府当局は、労働不安を招く安全障害などの状況と、安全衛生法違反を導く状況は、関連しているであろうと、述べた。9月30日を末日とする2000会計年度中、OSHAの労働監督件数の23%は、労働者の苦情申し立てにより実施されたものであり、3%は、事故により実施された。
報告書に収録された書簡のなかで、OSHA担当のチャ−ルズ・ジェフレス労働長官補佐は、「苦情処理プロセスが悪用されている」と信じる理由はないと語った。労働者の苦情申し立てに応じ、労働監督を実施して、重大な安全違反が発見されれば、「それは、労働者が、苦情申し立ての権利を乱用しているのではないことを示すものである」と同氏は主張している。
「報告書は、分析が単純であり、OSHAが労働監督を実施しがちな産業---特に製造業や建設業---では、組合の存在がもっとも強力で、ストライキまたは組織的運動が発生するということを反映しているに過ぎない」と、AFL-CIOのマーガレット・セミナリオ労働安全衛生部長は語った。「人々が憤慨したり、組織化を要望する理由は、一つには、自分たちが、安全衛生の悪い状況にあるからです」。
LPAのティム・バートル一般弁護士補は、一般会計室の報告書は、「労働不安の最中には、OSHAの監督官がやってくる可能性が高いことを、統計で証明している」と述べ、LPAの論点を繰り返した。「問題の実態は、しばしば(組合に)申し立てられるほど大きくはないが、会社は、それらの(安全衛生)問題に取り組むよう強いられる。」
エルゴノミクス基準大詰めで、使用者団体は、膨大な費用を警戒
エルゴノミクス基準最終案について、OSHA(労働安全衛生庁)の決定が近づくにつれ、使用者団体と議会共和党同盟は、同案に対し一斉射撃を浴びせ続けている。
OSHAのエルゴノミクス基準に反対する論点のひとつに、大規模使用者団体の調査機関、経済政策基金(EPF)の算出した見積額が挙げられる。職場での累積外傷に適用される同基準案は、向こう10年間、年平均910億ドルの負担を産業界に強いる一方、年間の利得額は、61億ドルに過ぎない。基準案は、初年度だけで1,290億ドルの負担を強い、事業所当りの平均費用は、12,511ドルで、小企業に最も負担を強いると、EFFは述べた。
OSHAは、産業別調査、科学的調査の見直しに基づき、年間費用は46億ドル、利得額は100億ドルと概算していた。
筋骨格障害(MSD)は、報告されたものより多いとするOSHAの主張に対して、EPFの分析では、労働統計報告の4.5倍のMSD率を推定。これは、実際のMSD率は、労働統計報告の2〜7倍だと推定するOSHAの中間値をとっている。EPFの調査は、全ての主要産業を網羅していると、同基金は述べている。
910億ドルとは「ばかげた数字である」、30年間のOSHAの規則作成に対し、使用者団体が算出してきた、過剰な見積もりの典型である、とAFL−CIOのマーガレット・セミナリオ労働安全衛生部長は主張している。
同氏は、多くの見積もりが算出されてはいるが、かかる費用が負担となるという根拠資料は、OSHAの規則作成中に提出されていないと指摘。それどころか、「この種の(エルゴノミクス)対策が実施されれば、労働損失時間や労働者災害補償などの費用が著しく縮小されると、全ての根拠資料が示している、」と、同氏は語った。
OSHAのエルゴノミクス最終規則は、今年末までに完成する予定である。
安全針規制に向け、両党、議会で団結
下院労働力保護小委員会は、保健医療労働者に安全針の供給を義務づけるよう、OSHAに命じる法案を満場一致で承認した。安全針は、通常、労働者が、鋭利な先端や刃に接触するのを減じる、または排する安全管理装置が組み込まれている。
この法案の承認は、不注意な針の取り扱いにより、時に致命的ともなる伝染病に罹病することのないよう、看護師や他の保健医療労働者を保護しようとする、両院の超党的な努力の成果のひとつである。OSHAは、この種の規定を検討していたが、採用に向けた行動を取らずじまいだった。当局は、即座にコメントしなかった。
OSHAは、血液由来の病原体基準が規定する工学的管理のなかに、通常、安全な針を指す「より安全な医療器具」を含めるよう、同基準を変更せねばならない。病院その他の事業者は、注射針の危険を特定する一助として、「鋭利な先端による負傷記録」を保持せねばならない。このような連邦レベルの規制に反対していた米国病院協会は、法制化を支持した。
病院は、安全針を義務づける州法の激増に直面していた。その背後には、サービス労働者国際労働組合(SEIU)が先導したロビー活動があった。現在、16州法が発効し、「我々の戦略が、宝石のように効いている」と、SEIUのビル・ボーウェゲン安全衛生部長は語った。
OSHAの最終自己監査方針に、事業者から珍しく称賛の声
OSHA(労働安全衛生庁)は、作業場の安全衛生を自主的に評価している事業者に対し、監督官が労働監督官中にその内容の提出をルーティーンに求めてきた慣例を廃する。
事業者は、自己監査の結果が、OSHAの法施行の際、自分たちに対して不利に利用されると、苦情を述べていた。しかし、新方針のもとでは、危険が除去されており、事業者が再発防止に着手していれば、自己監査を召喚の理由とはしないと、OSHAは語った。
また、危険を除去しようとする「誠意」ある自己監査については、「故意の」安全違反による召喚とせず、罰金を減額する。
新方針下では、自己監査には、第三者の評価を含めることとし、監査を実施できる人の範囲も拡大した。OSHAは、監督官を新方針に沿って十分に教育すると語り、自己監査結果を労働者あるいは組合に提出する必要はないと述べた。
OSHA、業者に対し、42万3千5百ドルの罰金を科金
OSHA(労働安全衛生庁)は、2000年3月25日、労働者1名が死亡した件で、安全違反のかどでウイスコンシン州ケノウシャにあるL.E.マイヤー社を召喚した。事故は、業者が、イリノイ州、プレーンフィールド地域の送配電塔の保全作業中に発生した。
OSHAは、L.E.マイヤ−社では、1972年来、感電死15名を含む37名の労働者が業務上死亡していることに注目、423,500ドルの罰金を提案した。イリノイ州の現場では、34万5千ボルトの通電を停止中の鉄塔上で、保全作業現場で作業していた6班うち少なくとも3班は、電線の接地不良で、感電の危険に曝されていたと、OSHAは述べた。
OSHAは、電気専門業者に対して、不十分な訓練、送配電塔の接地不良その他の故意による違反6件を含む、7件の召喚を発令した。
L.E.マイヤ−社は、提案の罰金額は「余りにも厳しい」として、OSHAの召喚は、不正確な技術的見地に基づくものであると主張した。同社は、労働安全衛生再審理委員会に控訴する。「痛ましくも失われた生命に対し、深く哀悼する」と、同社のウイリアム・スキビツキ社長は語った。
同氏は、L.E.マイヤー社は、OSHAの安全行政を支持し、当局に協力を惜しまないが、当該事故を「故意」とされることについては、「強く反対する」と述べた。
犠牲者は、「十分安全訓練を受けており、業界基準に基づき、正しい接地手順を熟知していた」と同氏は語った。 アル カー
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