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NSC発行「Safety + Health」2000年11月号, Vol.162 No. 5


時の人



手洗いが一番

 公衆便所の至るところにある、従業員への手洗い励行標示は、不要だと考えたことはあるだろうか。もう一度、考えてみよう。アメリカ微生物学会の調査によれば、調査対象の95%以上が、公衆便所利用後に手を洗うと回答しているが、実際荷手を洗っているのは、67%にすぎない。
 アトランタ、シカゴ、ニューオーリンズ、ニューヨーク、サンフランシスコの公衆便所に配された観察者は、7,836名の利用者が、洗面台へ向かうか、出口へ向かうか、観察。全国の1,021名の成人を対象とした電話による調査と併せて、人々の言うこととすることを比較した。
 男性は、女性よりも手を洗わない傾向がある。男性は58%が手を洗うのに対し、女性は75%が手を洗う。この性差は、アトランタで最も大きく、女性の84%が手を洗うのに対し、男性はわずかに36%が手を洗った。手洗いの人数も、都市により差があり、ニューヨーカーが最も不衛生、シカゴ市民は、最も清潔だった。
 手洗い励行の年数にもかかわらず、人々は、いくつかの都市では、4年前よりも手洗いをしなくなっていた。
 調査を笑うことは簡単だが、アメリカ微生物学会および疾病対策予防センターは、これを深刻に受けとめている。
 「手洗いは些細なことだが、これを怠ると、悲惨な、生命を脅かす結果をもたらしうる」と、微生物学会のゲイル・カセル氏は語った。
 多くの職場では、手洗いは、生死を分かつ問題になっている。疾病対策予防センターによれば、毎年200万人が、病院で治療中に感染しているという。約8万8千人は、死亡している。
 他の調査によれば、保健衛生専門職は、患者への接触と処置の間に必要とされている回数の30%しか、手を洗っていない。
 食肉、卵、鳥肉を扱う労働者が手洗いを怠ることにより、毎年、7千9百万人が食中毒を起こし、5千人が死亡している。
 保育士は、自分たちのみならず、子供たちにも手を洗わせねばならない。手洗いを確実にしていれば、保育園に通園する子供たち7百万人が、下痢、呼吸器官および胃腸関連の病気にかかるのを減らすことができよう。
 「手洗いは、伝染病のはやるのを防ぐ、簡単で最も効果のある方法です」と、疾病対策予防センターのジュリー・ガーバーディング院内感染プログラム部長は言った。
 公衆便所の手洗い標示を笑うかわりに、手を合わせ、拍手すべきではないだろうか。 エリザベス・アンバル

表:大都市ほど、清潔な手が多い
都市 公衆便所利用後、手を洗う人の割合
シカゴ 83%
サンフランシスコ 80%
ニューオーリンズ 64%
アトランタ 64%
ニューヨーク 49%
出所:アメリカ微生物学会、2000年9月