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NSC発行「Safety + Health」2000年12月号
OSHAの最新情報
2000年度の計画的監督ペース、急増
OSHA(労働安全衛生庁)の計画的監督は、2000年度は、1999年度の18%増となった。OSHAの未確定な数字によると、計画的監督(OSHA速報値)は、前年度の15,530件から、本年度(至2000年9月30日)は、18,324件に増加した。労働監督の総件数は、1999年度の34,488件から36,202件となり、わずか5%増である。
OSHA基準違反による召還は、前年度の75,989件から、2000年度は80,494件と、6%増加した。罰金の課金額は、7,360万ドルから8,690万ドルへと、18%増加した。
これは、OSHAの監督総件数ペース、計画的監督率が前年度より減少した1999年度とは、対照的である。OSHAは、この減少は、近年の集中監督プログラム下で、危険度の高い職場に注力したためとしている。当局はまた、現在棚上げされている遵守協力プログラムの法的問題を調整せねばならなかった。
2001年度内に、OSHAは、事業所リストに建設会社を追加しようと計画。これにより、リストは、近年、監督した8万社から13万6千社へと、約70%の増加となる。
とくに計画的監督におけるこの増加は、OSHAが、危険度の高い職場に的を絞っていることを明白に示している、と食品商業労働者連盟のジャッキー・ノーウエル労働安全衛生部長は語った。「最悪の記録をもつ事業所に対し、当局が腰を上げたと思う」と同氏。
しかし、ニュー・オーリンズのホラス・「トッパー」・トンプソン弁護士は、安全衛生問題について使用者側を代表して、OSHAの目標は、「政治的意図」によるところが大きいと主張した。法人組織化運動の拡大を目指す同氏は、労働組合が、職場の「大災害」の発生に対する労働監督指向の反応ともあわせて、職場の安全に関する苦情を申し立て始めたと、主張している。
OSHA、フイリップ社工場、他2社に高額の罰金を要求
OSHAは、先日、製造会社3社に対し、各社のテキサスの施設での安全違反で、あわせて5百万ドル以上もの罰金を要求した。
当局は、テキサス州パサデナ近郊にあるフィリプス・ケミカル社のヒューストン化学工場に対して、50件の規則違反により250万ドルの罰金を提示した。これには、工場の作業員訓練や工程安全管理の不履行、ロックアウト・タグアウト、その他30件の故意の違反が含まれる。フィリップス石油社とシェブロン社の合弁会社、シェブロン・フィリップス・ケミカル社が、2000年7月から同工場を所有している。
調査は、今年の3月、1人が死亡し69人が負傷した化学工場の爆発火災をきっかけに行われた。ブタヂエンが入っているタンク内で急激な化学反応が起こり、12,000ガロンの容器が破裂して、爆発が発生した、とOSHAは断定した。タンクには、圧力計も温度計もなく、ブタヂエンが、きちんと閉めていなかった故障中のバルブを通ってタンクに流れ続けていた。
同工場では、1989年10月にも、労働者23名が死亡し、232名が負傷するで爆発があった、これは、第二次世界大戦以来の化学工場での大惨事のひとつである。また、最近では、今年3月の爆発が起こった工場の同区域で、やはり1年前にもならない1999年6月に、2人が死亡した爆発があった。
OSHAは、現場を46回、監督した。「今必要なことは、工場全域において、労働者の安全衛生を一から再評価し、労働者訓練を大幅に改善し、工場および会社経営者が、安全を最優先すると確約することである」とチャールズ・ジェフレスOSHA担当労働副長官は語った。
シェブロン・フィリプス社は、最近、OSHAが指摘した問題点を解決するため、また、同工場を「世界中で最も安全な化学工場」にすることを目指した、一連の対策を発表した。安全スタッフの再編の一環として、安全「王」を任命した。外部のコンサルタントが、Kレジン(樹脂)工場の化学安全分析を行い、これを全工程に拡大する。
さらに、時間労働者2名が、監督者と労働者の訓練カリキュウラムを重視した、行動主体の安全プログラムの開発と、工程変更の管理手順の見直しに協力する。
OSHAは、テキサス州ベイタウン市で、ジンダル・ユナイテッド・スチール社として事業を行っている、USデンロ・スチール社に対し、182件の違反のかどで、170万ドルの罰金を求めた。このうち126件は、1998年から2000年の中途まで、多くの傷病を故意に記録しなかったことを含め、故意による違反と見なされた。この鋼板メーカーは、また、ブレーキがない、または不良な「ひどい状態」の大型オーバーヘッド・クレーンを数台所有していたかどで、召還された。同社役員にコメントを求めたが、返答は得られなかった。
OSHAは、ミシガン州のファーミングトンヒル市のライフタイム・ドア社に対し、同社のテキサス州ハーン工場におけるロックアウト・タグアウト訓練、機械の防護、その他の要件に背いた、37件の違反で、110万ドルの罰金を要求した。ライフタイム・ドア社は、指の切断事故があった機械を使用させ続けたため、24日後にまた、指の切断事故があった。
同社は、また、これまでの12回の労働監督や数多くの召還、「負傷の頻発や従業員の苦情申し立て」にもかかわらず、安全要件を満たさなかったとの嫌疑をうけている、とOSHAのジェフレス副長官は語った。
ライフタイム・ドア社のジム・ミッチェル副社長は、同社は、独立した、労働安全衛生再評価委員会に提訴する、と語った。
諮問委員会、OSHAにすばやいタワー安全対策を要請
OSHAの建設安全衛生諮問委員会(ACCSH)は、先日、通信塔の建設労働者の間で「急増」中の死傷事故に対し、早急に手を打つよう、OSHAに勧告した。同委員会は、携帯電話、無線電話用の通信塔の建設に適用する基準を、「規制議題の最優先課題」にすえて、死傷者数の増加を抑制するため、「早急に考えうるあらゆる手段を用いる」べきだと要請している。OSHA担当のチャールス・ジェフレス労働副長官は、委員会の場で、問題を認めたが、取り組み方について、いくつか懸念がある、と述べた。
OSHAは、「この問題を引き続き検討」し、全国タワー建設業者協会と共同で取り組む、と語った。OSHAは、1999年1月に発行した遵守指令で、地上25フィート以上の高度で働く労働者は、塔に体をつなぎ、200フィート以上では常に、移動する巻上げ機のロープにつなぐなど、十分な落下防止策を与えなければならない、としている。
国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、通信塔労働者10万人あたりの死亡事故は、49件から468件のあいだと見積もっている。全産業では、10万人あたり5件である。見積もりに大きな幅があるのは、塔作業に関わる労働者数を特定するのが困難であるからである。労働者は、複数の産業、他の職種に分類されているからである。
OSHA、ジイソシアネート対策として呼吸器を許可
OSHAは、臭いに乏しく、暴露自覚のない化学物質のグループに属する、毒性のジイソシアネートに過剰に暴露される労働者を保護するため、使用者は、ろ過式呼吸用保護具(APR)を採用してもよいと述べた。
この声明は、ポリウレタン産業連盟が、労働者の多くは、このオプションを歓迎すると述べたことに対し、発表された。連盟は、「機動性と視界を改善すれば、十分保護することができ、給気式呼吸用保護具よりも着心地がよい」と語った。
これまで、規則では、OSHAは、メチレン・ビスフェ二―ル・イソシアネート(MDI)をはじめとする、一般的なジイソシアネートのような、ガスや蒸気の保護策としては、給気式呼吸用保護具の使用を義務づけていた。ジイソシアネートは、絶縁フォームや特殊な塗料、ニスの製造に用いる化学化合物のなかに含まれており、また、車体の修理や組み立てに、ますます多く使用されている。
新しい方針は、1998年1月に発行された改定呼吸保護基準、1998年9月に発行された遵守指令、および今年7月の解釈書簡に概略が述べられている。OSHAのリチャード・フェアファックス遵守部長は、使用者が、当局の要件を満たす完璧な呼吸器プログラムを作り、ろ過式呼吸用保護具が、暴露から労働者を十分に保護することを示すデータをそろえ、吸収缶やカートリッジを使用期限前に廃却するならば、ろ過式呼吸用保護具を使用してよいと語った。
ある種の呼吸用保護具は、漏えいのリスクが高いという点を注意せねばならない。ジイソシアネートの蒸気は、腐食性で、目をひどく傷め、肌の炎症を起こすか、敏感性を高めるため、さらに個人用保護具を追加する必要がある場合もある。フェアファックス遵守部長は、ジイソシアネートは、さまざまな呼吸器系の疾病をもたらすことがあるため、医学的なモニターも必要だろうと述べた。
「私は、この種の危険な化学物質から身を守るために、ろ過式呼吸用保護具を使用しても、心地よく感じたことはなかった」と、国際化学産業労働者組合のマイケル・スプリンカー安全衛生部長は語った。「ジイソシアネートは、その性質上、認知しづらく、噴霧塗装や製造中に突然、高い濃度で暴露される可能性がある」と、同氏。
同氏は、「ろ過式呼吸用保護具は、職場で使われない傾向がある」ので、適切なろ過式呼吸用保護具基準を守らない使用者に対しては、もっと「厳しく」対応すべきであると語った。
議論の末、前CSB委員長は辞任
米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation
Board : CSB)のポール・L・ヒル・ジュニア前委員長は、他の委員との長い確執の末、先日、辞任した。
同氏と他の委員は、同委員会の予算や政策決定の権限を持つのは誰かを巡って、もめた。同委員会は、化学爆発やその他の事故を調査し、化学施設の安全を改善するよう勧告する。
ヒル前委員長は、1994年にはじめて委員に任命され、2000年1月に委員長のポストを辞めたが、同委員会に引き続き、席を保持していた。それ以来、委員長のポストは、空席であった。
司法省法律相談室は、この6月、1999年8月の化学物質安全性調査委員会の覚書を支持する、と発表した。覚書は、同委員会の実質的な決定は、ヒル氏が主張するような委員長ではなく、委員の多数が下すべきだとしている。 アル・カー
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