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NSC発行「Safety + Health」2000年12月号

時の人



水銀問題、ニコール・ガス社を悩まし、他のガス会社にも波及


 シカゴ郊外の一家は、7月、自宅の地下室に銀色の液体を見つけ、地元で天然ガスを供給しているニコール・ガス社を呼び、パンドラの箱を開けた。

 その物質は、ニコール・ガス社の下請が、旧式の水銀入りレギュレーターを撤去する時にこぼした水銀と判明。動揺した近所からさらに数本の電話があり、イリノイ州のジム・ライアン法務長官は、調査チームを編成し、EPA((環境保護庁)が調査した結果、ニコール・ガス社は、シカゴ地区の約25万世帯を再点検するという、気の遠くなるような作業に直面している。

 2年前、ニコール社は、ペンシルバニアを拠点とする請負会社、ヘンケル・マコイ社を雇い、1961年以前のガス・メーターとレギュレーターを、各家庭の地下室から除去し、新しいレギュレーターを屋外に設置することにした。機器の移動中、何軒かの家庭で、下請会社やニコール社の従業員が少量の水銀をこぼした。水銀は、高水準だと、とくに成長過程にある子供の神経系に悪影響を及ぼす。

 現在、ニコール社は、およそ20万戸の再点検を済ませた。点検を正しく行うよう、ニコール社は、家庭訪問する全職員を再訓練した。EPAも、無作為抽出による検査を行っている。

 ニコール社のスポークスマン、クレーグ・ホワイト氏は、現時点では、点検済みの世帯の1%未満が汚染されていたと述べた。ホワイト氏は、過去数年間に旧式の機器を交換して、水銀がこぼれた可能性が最も高い家庭から、点検を始めたと言っている。10月末までに、ニコール社は、およそ700戸で、水銀を発見した。

 ニコール社は、水銀検査と清掃の支援を得るため、ITグループを採用した。高水準の水銀を見つけた家庭では、作業チームは、水銀の痕跡のあるじゅうたん、寝具やソファーを除去する。水銀分子は、粉じんと結合するため、チームは、換気装置をも清掃する。

 この問題は、ニコール社だけにとどまらない。シカゴを拠点とする他の二社、ピープルズ・エナジーとノース・ショア・ガスもまた、両社あわせた80万世帯で、水銀汚染がないか、調査している。さらに、ミシガン州の会社も、同様に点検する必要がありそうである。

 EPAのスポークマン、ミック・ハンズ氏は、この問題は、5大湖地域の全てのガス会社を巻きこむ可能性があると語っている。EPAは、100社以上のガス会社に対し、契約世帯に水銀痕がないか点検する必要があるとの警告文書を発送している。ハンズ氏は、工業用地も恐らく汚染していると語っている。

 「私の理解する限りでは、水銀レギュレーターは、産業界では一般的であるので、交換する際、または高性能のものと取り替える際には、このような暴露の可能性がある」と、ハンズ氏は語った。