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NSC発行「Safety + Health」2000年12月号

時の人



ベートーベンは、鉛を免れなかった

 職業上の暴露ではないかもしれないが、ルートヴィッヒ・バン・ベートベンの頭髪を調べていた科学者は、鉛への暴露が、この作曲家の仕事に影響を及ぼしたのではないかと推察した。没後150年以上を経て、ベートーベンの頭髪の研究に4年間費やした結果、研究者は、標準値の100倍以上にあたる、60ppmの鉛濃度を発見した。

 研究者は、イリノイ州にあるアルゴン国立研究所の巨大な電子加速器を用いて、解析し、トリノ市の経かたびらの調査で著名なウオルター・マクロン氏も、その頭髪を調査した。

 鉛の暴露レベルは、ベートーベンの腹痛、うつ病、短気、また、56歳での死亡も説明できそうである。プロジェクト責任者で、イリノイ州衛生調査研究所の主席研究員、ウイリアム・ウオルシュ氏は、鉛中毒は、ベートーベンが、30才台前半から悩まされてきた聴覚障害には、おそらく関係はないだろう、と語った。

 研究者は 鉛を含んだ温泉でミネラル水を飲んだことは考えられるが、ベートーベンが、なぜ、高水準の鉛にさらされたのか、わからないとしている。また、ベートーベンの頭蓋骨も調査したいとしているが、誰がその頭蓋骨を所持しているか明かさなかった。