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NSC発行「Safety + Health」2001年2月号

ニュース


ブッシュ、労働長官にチャオ氏指名

リンダ・チャベズ氏が労働長官の座を辞退した2日後、W・ブッシュ次期大統領は、代わりにエレイン・チャオ氏を任命した。チャオ氏は、ミッチ・マコネル上院議員(共和党、ケンタッキー州)の妻で、運輸副長官、平和部隊(訳者注:発展途上国へ派遣される産業、農業等の援助者たち)の部長、ユナイティッド・ウェイ(訳者注、慈善団体)の会長を務めたこともある。任命当時、チャオ氏は、保守的なシンクタンク、ヘリテッジ・ファンデーションの特別研究員であった。

 任命を受け、チャオ氏は、労働者という「アメリカの貴重な資源を保護、育成、開発する」よう努めると語った。同氏は、もともとは運輸長官に任命されると考えられていたが、民主党員を1名入閣させるとのブッシュ氏の約束で、ノーマン・ミネタ氏がこのポストに納まった。

 チャベズ氏の任命は、不法移民との関わりや、アファーマティブ・アクションをめぐる同氏の立場をマスコミで酷評され、失敗に終わった。労働長官として名が公表された途端、公民権団体、労働組合、その他のリベラルな団体が争う構えを見せた。

 チャベズ氏は、「全国民の技能および生産性の向上をめざして新たな機会を見いだし、安全な労働条件を推進し、国家の労働法規を治めます。私は、労働省の法規を強力に施行し、連邦政府契約業者間の平等待遇を保証します」と誓約した。にもかかわらず、労働組合は、同氏の任命を「アメリカの働く男女に対する侮辱」だと言った。

 現時点では、チャオ氏の任命に関し、労働界の立場は不明である。

 ブッシュ内閣は、言うまでもなくアメリカそのもので、ヒスパニック系アメリカ人1名、アフリカ系アメリカ人2名、アジア系アメリカ人2名、アラブ系アメリカ人1名が選出されており、女性も4名、加わっている。

 ブッシュ政権については、このほか、p.32の記事およびp.28のパトリック・R・タイソン氏のコラムを参照されたい。



新閣僚(案)


現時点で、各省長官に任命されたのは、以下のとおり。上院の承認を得ねばならない。
労働長官

EPA(環境保護局)長官  

商務長官

教育長官

財務長官

運輸長官

エネルギー長官

司法長官

農務長官

住宅・都市開発長官

内務長官

防衛長官

国務長官

復員軍人長官
エレイン・チャオ

クリスティン・タッド・ホイットマン

ダン・エバンズ

ロッド・ペイジ

ポール・オニール

ノーマン・ミネタ

スペンサー・アブラハム

ジョン・アッシュクロフト

アン・ベネマン

メル・マーティネス

ゲイル・ノートン

ドナルド・ラムズフェルド

コリン・パウエル

アンソニー・プリンシピ




規則作成に真夜中12時の鐘


 2000年の大統領選挙も終わり、ジョージ・W/・ブッシュ次期大統領が、はやくも新閣僚を任命、就任式企画担当者は、舞踏会の準備で大忙し。クリントン政権下の省庁では、馬車がかぼちゃに戻るまでに、最終規則を公表しようと大急ぎ、との調査結果がある。

 ジョージ・メイソン大学マーケイタス・センターのジェイ・コクラン調査アナリストは、政権交替について調査。行政府が交替する際、大統領選後の11月から1月にかけ、規則作成は、29%も増えると判明した。

 コクラン氏によると、クリントン政権は、どの政権よりも多くの規則を土壇場で公表しているが、これは、とくに例外というわけでもない。調査を開始した1948年以来、共和党政権であれ民主党政権であれ、ほとんどの政権は、任期末に規則作成活動を増やしている。

 「行政府の目標達成のため(あるいは、個人の好みを思いのままに満たすため)、期限までに規則を世に出そうと、レースが始まる」と、コクラン氏は、「シンデレラの制約。大統領選後の四半期に規則が急増するのはなぜか」と題した調査報告書に書いている。

 黒肺病を患う炭鉱労働者の給付の受け取り方の変更から、連邦政府の契約業者の新要件まで、連邦省庁は、任期切れまでに急いで、フェデラル・レジスターに推定2万9千ページを追加した。

 EPA(環境保護庁)は、紙の量では先頭をきる。当局は、何百万エーカーもの森林の商業伐採の禁止から、大気質基準および殺虫剤水準の変更にいたる88もの規則を、クリントン政権末期の90日間で公表しようとしている。

 新規則の大半は、新政権はより産業界に友好的であろうと希望し、その発足を心待ちにしている産業団体を立腹させている。ブッシュ新政権と議会に、これらの政策の方向転換または修正を要求しているが、一度、規則として成立すると、大統領や議会をもってしても変更するのは難しい。

 一例として、EPAのディーゼル燃料汚染物質の規制強化がある。産業団体は、声を大にして抗議しており、この決定を変更するよう、ブッシュ政権に働きかけようと断言している。公益施設からの水銀排出規制、農業廃棄物の地表流出、アルミニウム・ダイカスト、合板および合成木材加工品、湿地帯保護といった新規則は、新年当初から完成しかけていた。

 EPA側は、これらの規制は、科学的調査、公聴会、公開コメント、法律審査、政府再検査という通常のプロセスを得て、何年も前から作成に取りかかったものだと指摘。事実、昨年同期には、もっと多くの新規則を公表したという。他の調査員によれば、EPAは概して、他省庁より多くの規制を公表しており、規則の増加は、通常の増加に比例しているだけだという。

 しかし、大統領選後の規則公表は、順序正しいプロセスの一部をなすだけだとの意見には反対する見方もある。コクラン氏は、クリントン政権は、全速力で舞踏会を去ろうとしていると述べた。

*訳注)黒肺病.....炭粉症とも言い、吸入した黒炭粉じん粒子が肺沈積し、慢性的炎症をおこす.



事実チェック 1999年度のアメリカの非意図的労働災害死亡率(負傷によるもの)

 労働統計局の雇用データに基き、全国安全評議会(NSC)が推計したところによると、もっとも危険な職種は、採鉱・土石採取業、農業である。




出所:死亡者数は、労働統計局の労働災害調査より。ただし、1999年の数字は、NSC推計。死亡率は、労働統計局の雇用データに基く、NSCの推計。死亡者数は、全年齢をカバー。死亡率は、16才以上の人口で試算。ダッシュ記号は、不明を示す。

a) 全産業には産業分類不明の死亡者数も含む。また、殺人、自殺による意図的なものはこの統計には含まれていない。

b) 農業は、林業、漁業、農業関連サービスを含む。

c) 鉱業は、採油、ガス採取を含む。

e) サービス業は、金融業、保険業、不動産業を含む。



裁判所、エルゴノミクス違反による召喚を支持


 OSHA(労働安全衛生庁)は、エルゴノミクス基準をめぐる法廷闘争で、数ヶ月または数年間、没頭することとなろうが、裁判所の新しい判決は、エルゴノミクス違反をめぐる召喚に、労働安全衛生法の一般義務条項を用いる道を少し広くした。待望の判決までに9年間を要したが、OSHAおよび組織労働者の勝利と考えてよいだろう。

1991年、OSHAは、ビバリー・エンタプライジズの運営する800の養護施設のうち、5箇所で、繰り返して行われる患者の持ち上げ、運搬により、労働者が腰痛を被っているとして、同社を召喚した。同社は、腰痛はあまりにも一般的で、因果関係を見極めるのは難しいとして、召喚に異議を唱えていた。また、持ち上げ技術は、労働者により違ってくるため、社の方針として教えることができなかったと語った。

労働安全衛生再審理委員会のスチュアート・ワイスバーグ委員、トマシナ・ロジャース委員長は、OSHAは、特定の持ち上げ方が腰痛の原因となっているといった、数学的な証明をする必要はないのだと主張した。「準看護師らは、1日あたり50〜55回もの持ち上げをしており、これが、許容限度を超えた回数であるということは、十分に定着しており、科学的にも認められるものである」と言い、休業災害の多さをみても、持ち上げは、危険な労働慣行であると述べた。

判事は、危険の存在を認め、会社側も危険を承知してはいるものの、問題の是正は経済的に可能かどうか、審理するよう、本件を行政法審判官に差し戻すこととした。

ワシントンD.C.のケラー&ヘックマン法律事務所のラリー・ホルプリン弁護士は、OSHAがエルゴノミクス基準を通過させていなければ、エルゴノミクス関連の召喚に、一般義務条項をより頻繁に引き合いに出せるが、案件によっては、証明が難しいものもあろう、と述べた。

「持ち上げに関して言えば、OSHAにとっては、判例を確立するには、可能性を示す方がはるかに容易だ」と、ホルプリン弁護士。

もうひとつ、労働安全衛生再審理委員会がOSHAに勝訴の判決を下したペパリッチ・ファームの件とも併せ、当局は、エルゴノミクスをめぐる法廷論争で、前例をつくろうとしている。

 「問題があるということは、年月とともに、より多くの医学的擁護を得るようになるだろう」とホルプリン弁護士は述べた。



ノースカロライナ州で、エルゴノミクス州法をめぐる争い



 多くの企業がOSHAのエルゴノミクス基準を提訴している一方、ノースカロライナ州は、エルゴノミクス州法をめぐる争いに巻き込まれている。昨年、同州は、州政府は、「少なくとも」連邦政府のプログラム並に「有効な」基準を採用できるとしたOSHAの指針に従い、エルゴノミクス基準を提案した。

 しかし、ノースカロライナ規則再審理委員会は、州労働省は、エルゴノミクス基準に一銭たりとも支出してはならないとした新しい州法を引いて、エルゴノミクス州法を差し止めた。エルゴ州法は、公表ののち議会を通過したとして、州労働省は、昨年5月、提訴した。本件は、ノースカロライナ州最高裁判所に送られた。一方、ノースカロライナ州労働省は、スポークスマンに言わせれば、当局作成のエルゴ州基準を採用したかったところだが、OSHAのエルゴノミクス連邦基準を丸ごと採用した。

 「我々は、我々のノースカロライナ州エルゴノミクス基準を採用しようと試みた」と、ノースカロライナ州労働省のハリー・E・ペイン長官。「州基準は、州の労使のために、州民により書かれたものだったのだ」。



EPA、五大湖への有毒化学物質の投棄を禁止


 EPAは、産業及び自治体施設に対し、少なくとも20種類の有毒化学物質の五大湖への投棄を禁じた。とくに、汚染物質をきれいな水と混ぜて希釈する「混合ゾーン」への最有毒化学物質の排出を禁じている。

 有毒物質の処分が禁じられたのは、イリノイ、インディアナ、ミシガン、ミネソタ、ニューヨーク、オハイオ、ペンシルバニア、ウィスコンシンの8州である。排出禁止対象には、水銀、ポリ塩化ビフェニール(PCB)、ダイオキシン、クロルデン(chlordane)、DDT、ミレックス(mirex)その他16種の化学物質である。

*注)クロルデン(chlordane)−−−揮発性液体殺虫剤

 EPAの推計では、年間70万ポンドもの有毒化学物質が処分されている。この度の禁止措置では、これらの排出をなくし、水銀については、90%削減する。

 五大湖への排出権を有するおよそ600の施設のうち、約半分は、混合ゾーンへ化学物質を排出しているが、これらは、今後10年間で段階的に廃止される。混合ゾーンへの新規の排出権は、直ちに禁止される。

 「汚染の解決は、希釈ではない」と、EPAのキャロル・ブラウナー長官は言った。「五大湖の混合ゾーン慣行は、段階的に廃止する時期がきた」。

 混合ゾーンへの毒物の排出は、五大湖の生態系のなかに組み込まれ、人類の健康、植物、魚類その他の野生生物を脅かす。EPAは、全国のその他の地域での混合ゾーン規制案にもとりかかっている。

 詳細は、www.epa.gov/ost/GLI/mixingzones/index.html.まで。



電力会社、大気汚染削減で、和解


司法省、EPA、ニューヨーク州は、バージニア電力会社と、同社が、その8つの石炭発電所からの大気汚染をカットし、1,400万ドルの環境プロジェクトを実施し、500万ドルの罰金を支払うことで、合意した。

 連邦政府は、バージニア電力が、大気浄化法の許可を申請せずに、施設のひとつを改築したため、大気中への汚染物質の排気が増えたとして、同社を告発した。ニューヨーク州は、汚染大気が風下のニューヨークへ流れてくると、同社を訴えた。

 同社では、恒久的な排気管理設備をとりつけ、石炭発電所から窒素酸化物、二酸化硫黄の排出を25万トン削減し、排気権取引により、まだ汚染物質を排気できた汚染物質排気許容枠を償還する。この和解で、公共企業としては、単独で最大規模の大気汚染の削減を実現することとなる。



環境違反で、最高額の罰金


 モートン・インターナショナル社は、ミシシッピー州のモスポイントにある同社の施設での環境違反で、2千万ドルの罰金を支払うと合意した。これは、単一の施設としては、民事法違反による最高の罰金額である。

 合意の一部として、ローム&ハース社の子会社であるモートン・インターナショナル社は、1,600万ドル規模の環境改善プロジェクトを実施する。また、ローム&ハース社の米国内の23基の化学施設に対し、環境監査が義務づけられる。

 申し立てによると、EPAは、1996年、ミシシッピー環境水準局へ提出された虚偽のモニタリング報告書を発見。司法省とEPAは、これらの報告書を追求し、大気・水質・有害廃棄物法違反で、同社を告発した。



OSHA、使用者団体パートナーシップ、労働安全を改善


 使用者もしくは使用者団体との安全衛生パートナーシップを構築しようとのOSHAの試みは、数年前に着手されたが、ここ数ヶ月で、徐々に成果がみられるようになった。

 OSHAは、フォード・モーター社から、全米自動車労組(UAW)、伐木搬出協定を結んだアイダホ州の森林所有者にいたるまでの、企業や組織との草分け的連携をはじめ、6組のパートナーシップを公表した。近年、とくにパートナーシップを強調してきたわけではないものの、数年前にはじめた試みが結実しはじめたと、OSHAスポークスマン、ビル・ライト氏は述べた。


パートナーシップの進展

 しかし、OSHAは、現在、およそ80組にのぼるパートナーシップを説明したページを、ウェブサイト(www.osha.gov)に追加した。パートナーは、アウトリーチ(訳者注、現行の限度を超えたサービス)、訓練、技術援助、現場相談を得られ、OSHAは、集中監督の制限、深刻な危険にのみ限定した召喚・罰金の課金、罰金の減額、安全衛生プログラムの専門知識や資料を共有する新しい機会の設置などで、パートナーシップへの参加を奨励している。

 OSHAは、当局、労使間の協調的な自発的合意のもと、連邦レベル、地方レベルで職場の安全衛生を改善する、労働安全衛生に向けての戦略的パートナーシップ・プログラムを1998年11月13日に採択したことで、アル・ゴア前副大統領のハンマー賞を受賞した。同賞は、政府再構築に向けての全国パートナーシップから授けられた。現在、OSHAは、当局の自主的保護プログラムで認定されている700強の事業場のほか、約100社と専門パートナーシップを組んでいる。

 OSHAのパートナーシップの相方は、大半が小企業で、シリカ・鉛暴露、養護施設の深刻な障害、食品加工、伐採搬出、建設など、当局が、戦略5ヵ年計画で的を絞った課題をカバーする。同プログラムは、伝統的な労働監督で施行しうる以上の事業場及び労働者を保護するため、知識・経験を蓄積する。


パートナー第1号

 フォード社、UAWとの新しいパートナーシップは、自動車産業特有の危険を取り上げ、全米の同社25工場における労働監督プロセスの合理化をめざし、指針を作成する。「この連携は、公民協力の新しい先例となる」と、OSHAのチャールズ・ジェフレス長官は、先日、こう発言した。

 パートナーシップを結んだ工場はいずれも、連邦当局の施行下にある州に所在するが、フォード社は、他の州でも、OSHA承認の州政府による労働安全衛生計画で、同種の合意を得たいと考えている。

 一方、アイダホ州ルイストンのパットラッチ社は、OSHAとの伐木搬出パートナーシップを取り結んだ同州初の森林所有者となった。伐木搬出業は、危険性の高い産業で、OSHAは、同社の「優れた」安全衛生管理に着目し、初の伐木搬出パートナー候補として目していたと、シアトルのリチャード・テリルOSHA地域行政官は述べた。OSHAは、他の伐木搬出パートナーシップも検討すると述べた。


ニューヨークのパートナーシップ

 OSHAは、ニューヨーク州の建設業者と2組のパートナーシップを取り結んだ。ひとつは、9千人の建設労働者を擁する建築・建設業者連合(ABC)ニューヨーク州支部との「プラチナ・パートナーシップ」協定と呼ばれるもの。同連合会員が、特定作業場向け労働者訓練も含め、「模範的な作業場安全衛生プログラム」を示してきたことが認められた。

 OSHA戦略計画の目標のひとつは、墜落・転落、感電、危険な建材等にぶつけられる、はさまれる等の事故に的を絞り、建設業における死亡率を15%削減することであると、ニューヨークのパトリシア・クラークOSHA地域行政官は述べた。OSHAによると、建設業者およびハミルトン郡(オハイオ州)とのパートナーシップで、シンシナチ・ベンガルの新ポール・ブラウン・スタジアムの建設中、休業傷害と疾病率は、100人あたり0.95人で、建設業界における全国平均4.0人を大幅に下回った。

 プラチナ・パートナーシップ下の建設業者は、記録すべき傷害と疾病率(死亡を除く)を、建設業平均が年間100人あたり8.8人なのに対し、8.0人未満に抑えるなど、安全基準を満たさねばならない。また、過去3年間に、故意の違反、重大な繰り返し違反による召喚、あるいは、死亡事故もしくは災害事故による重大な召喚があってはならない。建築・建設業者連合は、1年前(2000年2月)に、OSHAとのナショナル・パートナーシップ協定に署名した。

 もうひとつの例は、ニューヨーク州の郊外住宅地整備団、同州労働省安全衛生課、ニューヨークのURS社、AFL-CIOウェストチェスター、パトナム郡建築・建設業協議会とのパートナーシップ協定である。協定が適用されるのは、ウェストチェスター郡の3階建て裁判所庁舎別館の建設と裁判所庁舎の20階建てタワーの復旧である。

 OSHAはまた、連邦労働者2000イニシアチブの一環として、米国土地管理局レイクビュー(オレゴン州)地区およびフレモント・ナショナル・フォレストと共に、長期的な安全衛生の改善に向けた新アプローチを展開する、パートナーシップ協定を発表した。同イニシアチブは、休業件数を年間10%削減し、傷害と疾病率による損失生産量を年間2%縮小し、年間労働者補償費の増加を制限する。 アル・カー著



スーパーファンド所有地の清掃費10億ドルの拠出で合意


 連邦省庁、カリフォルニア州政府とアベンティス・クロップサイエンス社は、カリフォルニア州レディングのアイロン山にあるスーパーファンド(有害産業廃棄物除去基金)所有地の清掃にかかる費用およそ10億ドルを拠出することで合意した。

 アイロン山現場は、世界で最も酸性の鉱業排水源で、国内最大の有毒金属の原点である。初期の改善策前は、この鉱山は、サクラメント川上流に一日あたり1トンもの有毒金属をたれ流していた。

 アベンティス社は、今後30年間の当地の清掃・維持にむけ、ITグループを手配。同社はまた、2030年に、将来の所有地維持費用として、連邦および加州政府に5億1,400万ドルを支払い、自然保全プロジェクトに1,100万ドルを支払う。



ILO、ミャンマーの強制労働に対抗措置


 国際労働機関(ILO)理事会は、ミャンマー(旧ビルマ)政府に対し、強制労働を廃止するよう強く求める、空前の対策を採択した。ジュネーブで開催された同理事会では、11月17日、加盟国政府および労使代表に対し、ミャンマーとの関係を見直し、同国内での強制労働を助長することのないよう、適切な対策を採るよう呼びかけることと票決した。この票決で、6月のILO総会で採択された決議を実施する。

 ILOは、1998年、ミャンマーに調査委員会を派遣、強制労働廃止のためのいくつかの勧告をまとめた。同委員会は、「ミャンマーは、人間の尊厳、安全衛生、人々の基本的ニーズを全く無視した、広く行き渡った系統的なやり方で、強制労働の廃止義務に違反している」と結論づけた。

 調査以来、同国政府は事実無根だと主張するにもかかわらず、ILOは、同国内で労務提供を強要される人々を見いだした。例として、陸軍の荷物運搬や食料栽培、メッセンジャー、歩哨、建設労働、鉄道や運河その他のインフラ開発など。また、軍隊のための性労働の提供もある。ILOによると、これに応じない場合は、逮捕、拷問される。

 ILO史上初のこの措置は、ミャンマーと共同で解決を何度も試みた末の展開である、とILOのスポークスマン、メアリ・コビントン氏は述べた。



欧州、作業関連性筋骨格系障害(MSD)と取組む


 作業関連性筋骨格系障害(MSD)予防にむけての欧州の視点に関する欧州労働安全衛生機構主催討論会では、20カ国以上から専門家200余名が一同に会し、MSDの原因と解決策について討議した。労働安全衛生機構によると、MSDは、はやくも欧州最大の労働安全衛生問題となりつつあり、欧州の労働者4千万人、または、労働力人口の30%が同障害に悩まされている。

 討論会参加者は、この急増中の衛生問題に対処する、2大アプローチに着眼。ひとつは、立法アプローチであり、もうひとつは、状況の改善にむけ、現行法規のもとで開発する非立法対策である。

 参加者の大半は、現行法規を評価・実施してのち、新たな立法措置を検討すべきだとの見解を示した。

 参加者は、数多くの非立法措置について討議した。討議されたなかには、医学の専門家、エルゴノミクス学者、安全衛生専門家らによるMSDリスクへの学際的なアプローチ、MSDリスクの特定と予防における労働者の関与、職場の訓練教育の改善、開発・改善目標の設定、職場設計の改善などが挙げられた。

 「討論会では、国レベル、欧州レベルで職業性MSD対策に携わる関係者にとって、いくつかの最重要課題を明らかにした」と、欧州機構のハンスホースト・コンコルスキ局長は述べた。

出所:ダブリン調査(1996年)

45%が、苦痛または疲労をもたらす位置での労働を報告

17%は、手足の筋肉痛を訴えた

30%は、腰痛を訴えた


労働災害削減の鍵は、地域社会の関与


 1995年以来、カナダ、オンタリオ州の休業災害は30%減少、クリス・ストックウェル労働大臣は、地域社会の関与が貢献したと述べた。2000年11月7日の安全衛生会議で、ストックウェル大臣は、地域社会団体、個人、政労使が「災害防止を優先課題として協力した」と称えた。

 職場の安全は、職場が享受するのと同様の、多くの利益を地域社会にもたらすとして、ストックウェル大臣は、安全衛生コストの削減、死傷と疾病の減少、医療費の削減、被害の減少、究極的には健全な経済などを挙げた。ゆえに、労働省は、安全衛生に向け、地域社会に根ざしたアプローチを採っており、ゼロ災目標に向け、多種多様な団体と協力関係を築こうとしていると、ダン・ホール予防戦略調整官は述べた。

 このアプローチの要は、より広い地域社会レベルでの安全の改善にむけ、公民協力を推進する安全地域社会基金との協力である。同基金のパット・コーシー会長は、「地域社会で起きている全事象のあらゆる面に影響を及ぼすよう、認識を高める」ことが目標であると述べた。認識が高まれば、より安全な労働者を育むと同氏は言った。



安全衛生の不備は、倒産と関連------韓国


 韓国の労働条件に関する新調査によると、安全衛生記録のよい企業は、近年の景気後退期をよりよく切り抜けられた。これらの企業は、労働環境が粗悪で災害率の高い企業と比べ、倒産件数も少なかった。

 日本の「産業医学ジャーナル」に掲載された本調査は、1996年の安全衛生記録と1997年11月にはじまった経済不況につづく破産申請件数を比較した。急激な外貨不足と外国資本投資の減少に誘発されて、破産率が上がると、失業率も通常の2〜3%から10%以上に増えた。安全衛生記録の入手できる3,980企業について、1999年現在の存続・倒産状況を、韓国労働者保険会社の情報で入手した。

 倒産した755企業はすべて、存続企業に比べ、職場環境、災害率がかなりひどい状況にあった。とくに、騒音による聴力損失、有機溶剤中毒、重金属暴露は、存続企業より、倒産企業の方が高率を記録している。本調査の執筆者は、「安全衛生記録のよい、よい経営陣の運営する企業は、景気後退期でも破産する可能性が低い」と結論づけた。



裁判官、企業の移転を禁止


 米国企業が、国境の南へと操業を移す要因は、さまざまである。技能労働者、低賃金、メキシコ政府の奨励プログラムである。

 しかし、労働者が組合を結成することにしたから国外へ逃避するのは、違法である。ロサンゼルスの宝飾品製造業者がまさしくそうしようとしたが、連邦裁判所は、昨年11月、これを禁じ、労働の権利団体が画期的な判決だと評した。

 米国地方裁判所のカーロス・モレノ判事は、昨年11月、クワダーテック社に対し、ティファナへの工場移転を禁止するとの命令を下した。同社は、最低賃金で120名の移民労働者を雇用しているが、労働者が、2000年7月、アメリカ労働者連絡会への参加を票決した翌日、移転の予定を発表した。

 組合活動は、負傷した労働者に対し、医師が着席した状態での就業を勧告したにもかかわらず、管理者がいすの提供を拒否したことから、活発化した。また、昨秋、全国労働関係委員会に申し立てた労働者らは、極度に高温な条件下で、早いスピードで働かされたと述べている。

 クワダーテック社のヴラジーミル・リール社長は、昨年12月、法廷で、米国工場を引き続き操業させること、解雇した労働者数名を再雇用すること、また、新組合と誠意をもって交渉することを約束した。

 コーネル大学のケイト・ブロンフェンブレナー教授は、同判決は、この種のものでは初めてで、米国の労働者の権利にとって、よい兆候であると考えている。

 「和解によると、組合結成の回避を目的とした移転を中止させるのは、合法である」と、ブロンフェンブレナー教授は、ロサンゼルス・タイムズ紙で述べた。



衛生関係者、米国・メキシコ合同衛生チームを結成


 昨年11月、テキサス州エルパソに、国境の両方から衛生担当官が集い、米国・メキシコ国境衛生委員会の発足式を開催した。

 委員会は、各国13名ずつ計26名の委員からなり、共有の衛生問題を討議し、国境沿いの住民の衛生改善策を模索するフォーラムとして機能する。

 国境沿いの住民らは、貧困水準が高く、生活水準も標準未満で、医療機関もなく、環境問題が多々あることも重なり、きわめて悪い衛生状態にある。

 委員会は、最初の1年間で、米国平均の3倍にものぼる国境沿いの結核罹病率を下げ、農場労働者や住民の殺虫剤中毒を減らそうと期している。

 委員会は、1994年に、米国・メキシコ国境衛生委員会法が可決して、発足した。連邦予算500万ドル強が拠出された。



精神的外傷には、管理職の支援が一番------英国


 英国2州の地方警察を調査した結果、警察官の大半は、事件に巻き込まれ、精神的に深く傷ついた(精神的外傷、トラウマ)場合、最も救いとなるのは、「よい、支援的な監督」であると回答している。

 グラスゴー・カレドニア大学の調査員が調べた結果、警察官らは、管理職の支援、業務の規制、前向きなものの見方、組織としての責任体制、仕事への満足に高い優先順位をつけている。脆弱な労使関係、社会的支援の欠如、職務への後ろ向きな姿勢はすべて、事件後の症状の悪化に関わっていた。

 精神的外傷後ストレス障害や関連疾病による休業には、英国警察が、精神的外傷事件後に通常実施している「重大事件ストレス・ディブリーフィング(CISD)」よりも、こうした職場要因の方が、重要な役割を担っている、と調査は結論づけている。



フランス、法律で、女性の夜業を禁止


 フランス上院は、女性の夜業規制の廃止を企図した政府法案を却下した。1979年、管理職、技術管理職の女性は例外とされたとはいえ、フランス労働法は、依然、工業部門の女性の午後10時から午前5時までの就業を禁じている。(その例外とされた人達も1987年には特にシリアスな環境や交替勤務での連続勤務は禁じられた。)

 ヨーロッパ連合(EU)は、医療、妊娠、強制交渉条項も含めた同法案を推進したとして、とくに、長期夜勤による健康への悪影響に関連して、フランス政府に罰金を課した。女性の権利担当国務長官は、政府は屈しないと語った。

 フランスの女性労働者の6%は、夜業に就いており、1990年代に比べ、大幅に増加した。