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NSC発行「Safety + Health」2001年2月号

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裁判所、エルゴノミクス違反による召喚を支持


 OSHA(労働安全衛生庁)は、エルゴノミクス基準をめぐる法廷闘争で、数ヶ月または数年間、没頭することとなろうが、裁判所の新しい判決は、エルゴノミクス違反をめぐる召喚に、労働安全衛生法の一般義務条項を用いる道を少し広くした。待望の判決までに9年間を要したが、OSHAおよび組織労働者の勝利と考えてよいだろう。

1991年、OSHAは、ビバリー・エンタプライジズの運営する800の養護施設のうち、5箇所で、繰り返して行われる患者の持ち上げ、運搬により、労働者が腰痛を被っているとして、同社を召喚した。同社は、腰痛はあまりにも一般的で、因果関係を見極めるのは難しいとして、召喚に異議を唱えていた。また、持ち上げ技術は、労働者により違ってくるため、社の方針として教えることができなかったと語った。

労働安全衛生再審理委員会のスチュアート・ワイスバーグ委員、トマシナ・ロジャース委員長は、OSHAは、特定の持ち上げ方が腰痛の原因となっているといった、数学的な証明をする必要はないのだと主張した。「準看護師らは、1日あたり50〜55回もの持ち上げをしており、これが、許容限度を超えた回数であるということは、十分に定着しており、科学的にも認められるものである」と言い、休業災害の多さをみても、持ち上げは、危険な労働慣行であると述べた。

判事は、危険の存在を認め、会社側も危険を承知してはいるものの、問題の是正は経済的に可能かどうか、審理するよう、本件を行政法審判官に差し戻すこととした。

ワシントンD.C.のケラー&ヘックマン法律事務所のラリー・ホルプリン弁護士は、OSHAがエルゴノミクス基準を通過させていなければ、エルゴノミクス関連の召喚に、一般義務条項をより頻繁に引き合いに出せるが、案件によっては、証明が難しいものもあろう、と述べた。

「持ち上げに関して言えば、OSHAにとっては、判例を確立するには、可能性を示す方がはるかに容易だ」と、ホルプリン弁護士。

もうひとつ、労働安全衛生再審理委員会がOSHAに勝訴の判決を下したペパリッチ・ファームの件とも併せ、当局は、エルゴノミクスをめぐる法廷論争で、前例をつくろうとしている。

 「問題があるということは、年月とともに、より多くの医学的擁護を得るようになるだろう」とホルプリン弁護士は述べた。