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NSC発行「Safety + Health」2001年4月号

ニュース


シンクタンク、OSHA、MSHA再編を勧告

ワシントン − 雑誌「ワシントニアン」は先日、大統領選挙後、保守的なヘリテッジ・ファンデーションを「勝利者」として記載、このシンクタンクが勧告する政府改革は、傾聴する価値があろう。
 ヘリテッジ・ファンデーションは、新しい「アメリカの予算」のなかで、鉱山安全衛生庁(MSHA)のOSHA〔労働安全衛生庁〕への再編を勧告。同報告書は、MSHAとOSHAの合併により、向う3ヵ年で予算15%を削減できると主張している。
 同ファンデーションのマーク・ウィルソン調査フェローは、この再編では、OSHAの建設安全事務所を模倣すればよいと述べている。建設業は、鉱業と同様、危険性の高い産業で、合併で、鉱山安全が犠牲を払うことにはならないだろうと、ウィルソン氏は主張する。
 ウィルソン氏は、元労働省上級エコノミストで、鉱業労働者は、1920年の120万人から現在の538,000人に激減したと指摘。同氏によれば、MSHAは、一鉱山あたり年間16,400ドル、一労働者あたり年間638ドルを費やしている。一方、OSHAは、一事業所あたり74ドル、一労働者あたり56ドルである。
 「職場の死亡率をみると、この特別扱いは、正当化されない」と、ウィルソン氏は書く。「1999年の死亡労働災害6,023件のうち、炭鉱業で発生したのはわずかに35件(0.6%)で、対照的に建設業では死亡労働災害の17%、農業では13%、製造業では12%となっている。建設業、製造業とも、労働者一人あたりの傷病率は、鉱業より高いが、当該産業を専管する安全衛生庁はない」。
 このような統計で、鉱山労働者、労組、政府とも、MSHAのOSHAへの再編は、良い考えだと同意するであろうか。そうでもないだろう。この勧告は、以前に提案された。1995年、この問題で、ウィルソン氏が公聴会で証言した際、会場は、再編反対の鉱山労働者組合の組合員で満員であった。
 同組合の幹部らは、傷病率の低下は、まさしく鉱業専管の政府機関があるからであり、再編は、再度、炭鉱労働者を高い危険性にさらすこととなる。炭鉱労働者は、通常、水銀、ラドン、シリカなど、建設労働者がめったに目にすることのない有害物質のある,閉鎖空間で働く。
 鉱山法は、坑内作業については、年に4回、徹底した監督を行うよう、また、地表炭鉱については、少なくとも年に2回、監督を行うよう、MSHAに義務つけている。反対派は、これ未満にしようものなら、爆発で何百人もが死亡し、肺疾患で何千人が死亡した、暗黒時代に逆戻ると主張する。
 しかし、ウィルソン氏自身、再編はありそうにないと同意。「労働長官は、先日、上院で確認を受けた」と同氏。「次官や次官補は、まだ、指揮をとっていない。照準をあわせられるようになるには、しばらく時間がかかるだろう」。


MSHA/OSHA再編による費用節約(見積もり)〔単位:百万ドル〕

会計年度 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2002〜2006年
予算承認額での節約 $34 $67 $101 $101 $101 $404
歳出面での節約 $30 $63 $97 $100 $101 $391