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NSC発行「Safety + Health」2001年6月
ニュース
チャオ労働長官、エルゴノミクスへの新アプローチの概略を述べる。
ワシントン − 上院での説明会で、エレイン・チャオ労働長官は、負傷の減少、負傷防止と透明性を強調した、エルゴノミクスへのアプローチについて、原則を発表した。長官は、これらの原則が、新しいエルゴノミクス基準の開発に向け、いつ、どのように立法化されるのか、そもそも、新しい基準がありうるのかどうかについては、明言を避けた。
チャオ長官の原則は、発生前に負傷を防止する方法の開発、小規模事業者の遵守費用対策の支援、十把一からげ的なアプローチの回避、将来のいかなる基準にも明確性と科学的根拠を確保する、などを含む。
「エルゴノミクス的負傷は、現実のものである」と、チャオ長官は、パネルに説明した。「エルゴノミクス的負傷に向け、最良かつ包括的なアプローチを定義するのは容易ではない。しかし、基本原則のガイドは、共通の理解に向け、重要な出発点を提供し、そこからコンセンサスを得ることができよう」。
しかし、数名の上院議員は、チャオ長官の発言の多くに反駁。とくに、先のエルゴノミクス基準の存続に投票したトム・ハーキン議員(民主党、アイオワ州)は、新しい基準に向け、ただちに対応するよう要求している。「『検討します』では、不十分である。私の質問は、期限をいつにするか、だ」と、同議員は尋ねた。
ジョン・スウィーニーアメリカ労働総同盟(AFL-CIO)会長も、長官の発言をつっぱねた。「長官には、長期計画も、暫定措置も、対策の時間枠もない。忍耐せよとの主張は、健康を害し、生計手段を失い、長年救済を求めてやまない労働者に対する侮辱である」。
チャオ労働長官は、旧エルゴノミクス基準が崩壊したのは、人為的に期限を設けたからだと述べ、議会に対し、期限を設定しないよう強調した。労働者団体は、この点、間違いなく異論を唱えるであろう。というのも、ジョージ・H・ブッシュ政権下、当時のエリザベス・ドール労働長官が、エルゴ基準の検討を開始したのは、10年以上も前のことだからである。
「昨年、OSHAは、非現実的な期間内に、旧基準を完成するよう求められていた」と長官。
チャオ長官はまた、米国の安全記録の改善を讃えた。「前世紀には、我々は、労働安全面で、飛躍的な改善を遂げた」と、長官は、パネルに説明。「しかし、これはまた、新世紀および新しい労働力人口は、米国の労働安全ニーズに向け、新しい取り組みを必要としていることを示している」。
労働統計局によれば、統計の入手可能な直近の1999年では、労働損失時間をもたらした筋骨格系障害は
582,300件であった。これは、1998年の592,500件より少なく、1993年の 763,000件からは、大幅に減少した。
事実チェック
1999年の業務上・業務外負傷

出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2000年
情報・規制問題局長官の指名、論争を呼ぶ
ワシントン − 監視団体、パブリック・シティズンの調査報告は、ハーバードのジョン・D・グラハム教授が、情報・規制問題局(OIRA)管理者として議会の承認を得れば、同氏は、安全衛生、環境法規を停止または遅延させるだろうと述べている。
グラハム教授は、ハーバード危険分析センターの共同創設理事であり、政府の法規は、しばしば、利益より費用がかかるとする10年論争を実行に移すとみられている。連邦政府は、法規を定める権限を有し、規制問題局は、しばしば、その中止を命じる権限を有する。
「教授は、情報・規制問題局で、法規の経済的影響を検討する独自のルールをつくり、これが、大勢の駆け引きの機会をつくるだろう」と、パブリック・シティズンの報告書を執筆したローラ・マックリーリ氏は語った。
「安全衛生保護法規が、良い案であるかどうか決めるのに、費用効果分析を用いるのには、我々は反対である」。
グラハム教授の権限は、連邦政府は、ある種の環境規則を制定する場合には、経済的要因を考慮すべきではないとする、最近の最高裁の決定で、多少は加減されよう。しかし、グラハム教授が承認された場合、規制問題局は、議題を左右する、情報要求を棄却するなど、規制作業のあらゆる面で影響力を行使できると、マックリーリ氏は語った。
米国商工会議所など、グラハム教授擁護陣は、教授が、法規を罰するとする考えを笑いとばし、教授の任命は、法規方程式に経済感覚をいくぶん注入する好機とみている。彼らは、グラハム教授は、尊敬すべき学者であると述べ、効果が費用を上回るシート・ベルト着用義務など、安全衛生法規を支持した例を引いた。
インテルCEO、安全緑十字賞を受賞
イリノイ州アイタスカ − 全国安全評議会(NSC)は、クレイグ・バレット・インテル社社長兼最高経営責任者(CEO)の職場の安全および法人シティズンシップに対するコミットメントを評価して、同氏を、2001年度のNSC緑十字メダル受賞者に選出した。
1993年、カリフォルニア州サンタ・クララ市にある同社の安全衛生水準は、産業平均並みであった。バレット社長や幹部らの挑戦に応じ、1998年までには、同社は、半導体産業における従業員・請負業者の安全実績で、世界のリーダーとなった。1996年から
2000年までの間に、実績は大きく改善され、NSCによれば、2千件以上の記録すべき負傷を回避した。
インテル社が基準とした従業員安全衛生プログラムも、同様の改善を示した。1998年以来、負傷率は48%、1994
年以来では、80%減少した。過去4年間、記録すべき傷病は、年平均30%減少した。OSHAの測定によると、同社は、2000年、従業員
100人当たりの傷病率 0.27を世界規模で達成した。同社のマレーシア工場では、昨年10月、記録すべき負傷や労働損失日数を伴う負傷はゼロで、8百万延労働者時間を達成した。
「バレット博士の事業運営哲学は、労働安全衛生、環境責任と地域社会サービスへのトップのコミットメントの典型を示している。他企業もすべて、みならうべきである」と、NSCのアラン・マックミラン会長兼最高経営責任者(CEO)は語った。
「インテル社では、市場で利潤を追求するのと同じ手法で、環境・安全衛生を追求している」とバレット社長。「このコミットメントは、役員から従業員一人一人に至るまで、全社的に組み込まれている。従業員と請負業者者は、協力して、近年の見事な成果を達成した」。
安全緑十字メダルは、6月 25日、ニューヨークでの毎年恒例のNSC資金調達晩餐会で、バレット社長に授与される。
EPA、清掃費用を求めてW・R・グレイスを提訴
ワシントン − 本誌でも最近報じたが、石綿は、米国のいたるところで、依然、大問題である。EPA(環境保護庁)は、モンタナ州リビー市近郊にあるW・R・グレイス社のバーミキュライト(蛭石)鉱山の石綿汚染にかかる調査・清掃費用に充てる一千万ドル強を求めて、同社を訴えた。当局は、W・R・グレイス社が、第11章会社更生法の申請を発表した1日前に提訴した。
リビー市周辺の土地は、家庭用断熱材その他の製品に使用されるバーミキュライト(蛭石)が採掘され、市の内外で精製された70年間にわたり、石綿で汚染された。バーミキュライト(蛭石)鉱石には、石綿が混じっていた。
EPAは、精製工場2棟と鉱山へつづく砂利道で、高濃度の石綿汚染を特定。リビー市内外の家庭や校庭の抜き取り調査を継続する。
「リビー市の公衆衛生や環境を危険にさらしている石綿汚染を一掃することが、最優先課題である」と、EPAのポール・ペロナード現地調整官は述べた。「今回の訴訟の目的は、汚染浄化費用を、納税者ではなく、汚染をもたらしたW・R.・グレイス社に支払わせようということである。」
EPAは、シアトル・ポスト・インテリジェンサ誌が、リビー市近郊のバーミキュライト(蛭石)鉱山の石綿で、192人が死亡、少なくとも375人が重病になったと報道したのを受け、調査を開始した
最高裁、反復的負荷傷害/ADAの場合を審理
ワシントン − 米国最高裁は、反復的負荷傷害を、1990年のアメリカ障害者法(ADA)の障害とみなせるかどうかを決定する二つの訴訟を審理すると同意した。
トヨタ対ウィリアムズ訴訟では、最高裁は、手根管症候群が身体障害にあたるかどうか裁定する。このケースは、ケンタッキー州ジョージタウン市のトヨタ工場の組み立てラインに従事し、手首、手、腕に手根管症候群を発症したエラ・ウィリアムズ氏が関わる。同氏は、上司が彼女の配置転換を拒否したので、アメリカ障害者法に基づき、提訴した。
USエアウェイズ対バーネット訴訟では、元荷物取り扱い係のロバート・バーネット氏が、腰を傷め、高齢者用に確保してある仕事への転換を要求した。同社が拒否したので、バーネット氏は、ADA法に基づき、訴訟を起こした。
ウィスコンシン州裁判所、労災補償水準に画期的な判決
ウィスコンシン州マディソン − ウィスコンシン州最高裁は、州議会は、労働者災害補償水準を算定する際に、企業に、医療手当を賃金に算入させるつもりは毛頭ないと裁決した。
1997年10月、ウィスコンシン州ラシーン市にあるガントン・テクノロジー社で、スティーブ・ソイア氏が、業務上負傷した。労働力開発省は、ソイア氏の労働者災害補償金額算定のため、賃金計算をした際、健康保険のための奨励金を外した。
ソイア氏は、同省の査定を訴えたが、行政審判官は、補償パッケージの算定に際し、健康保険のための奨励金も算入するよう求める同氏の申し立てを棄却。最高裁は、労働者災害補償の請求は、余分な費用や複雑な請求を生み、算定にも費用がかさむとして、下級裁判所を支持した。
「労働災害補償金額の算定のために、賃金に付加給付を加えると、ウィスコンシン州の産業にとって30%のコスト増となる」と、マディソン市のウィスコンシン・マニュファクチャラーズ&コマースのジェイムズ・ブッケン副社長は言った。
慢性疾患と労働損失の関係が判明
イリノイ州アーリントン・ハイツ − 労働・環境医学ジャーナル誌(Vol.66, No.11)に掲載された新しい調査によると、慢性疾患のなかでは、ガンが、最も休業時間の多い疾病である。調査員らは、ガンその他の慢性疾患が、就業制限や休業を含め、毎年25億日の「労働障害」日数をもたらしていると見積もった。
ハーバード医科大学のロナルド・ケスラー氏らは、25〜54才の 3,032人を調査した。慢性疾患を患うこれらの人々に、健康上の理由で働けなかった、または、労働量を減らさねばならなかった頻度について尋ねた。ガンが、労働損失日数または就業制限日数の最多を記録した。
労働損失の第2位、第3位は、パニックと不安障害であった。労働損失を伴うその他の疾患は、関節炎、潰瘍、精神障害と薬物依存であった。
職業生活への病気の影響に関する以前の調査では、就業制限日数を含めずに労働損失日数を算出していた点を指摘。これらの日数は、「使用者にとっては、隠れたコストで、非常に管理しづらい」。
とくに、ガンは、使用者にとって経費がかかると結論した。
「ガンによる労働損失の甚大さや、ガンと診断された人々の大半が、治療を受けつつ、少なくともある期間は働き続けていることにかんがみ、当該疾病の職場コスト削減対策は、優先課題である」と著者らは記す。
第89回NSC年次大会&展示会、盛会の見通し
イリノイ州アイタスカ− 第89回NSC年次大会&展示会は、9月21〜28日、アトランタのジョージア・ワールド・コングレス・センターで開催予定、1万8千人以上の参加が見込まれる。展示会は、9月24〜26日の期間。
年次大会の今年のテーマは、「オデッセイはここから始まる」であり、20の専門開発ゼミナーと
170の包括的な、または的を絞った技術セッションを予定、国内外800社余の出展者を迎える。
開発ゼミナーは、職場の暴力に向き合う、効果的なエルゴノミクス・プログラムの要素、安全な通信技術、OSHAの新旧記録保持手順など、10の新トピックを取り上げる。
半導体産業、フロン排出削減
ワシントン − 半導体産業協会は、EPA(環境保護庁)と共に、地球温暖化ガスのなかで最も温暖効果があり、滞留性のパーフルオロ化合物(PFC)の排出削減をめざし、自主的プログラムを開始する。同産業の当該化合物排出を、2010年末までに、1995年水準を10%下回る水準までに削減することをめざす。
パーフルオロ化合物は、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、硫化ヘキサフルオライドなどがある。これらは、半導体製造機器の洗浄や、シリコン・ウエーハーに回路図を描くために食刻するのに用いられる。この化合物は、100年間で、二酸化炭素の1万倍の地球温暖化作用がある。また、2千年から5万年間、大気中に留まる。
このPFC削減パートナーシップに参加する半導体メーカー20社の試みは、世界半導体協議会その他の半導体産業団体の類似プログラムを補完するものである。パートナーシップの会員は、オレゴン州ユージーン市の現代半導体アメリカ、ニューヨーク州ロチェスター市、イーストマン・コダック、カリフォルニア州パロアルト市、ヒューレット・パッカード、ニューヨーク州アーモンク市、IBM、カリフォルニア州サンタ・クララ市、インテル、アイダホ州ボイス市、マイクロン・テクノロジー、イリノイ州シャウンバーグ市、モトローラ、テキサス州サン・アントニオ市ソニー半導体、および同ダラス市テキサス・インスツルメントなど。
技術的情報については、EPA世界規模プログラム部のサリ・ランドまで、電話: 202-564-9739もしくは電子メール
rand.sally@epa.gov.で照会されたい。
EPA、企業の鉛排出量公表を義務化
ワシントン − 新しいEPA規則により、企業は、大気、水資源と地表への鉛排出についてより詳細を報告せねばならない。この新規則は、推計11,680の事業場に適用される。ほぼ1万増である。
以前は、年間2万5千ポンドを超える鉛を生産・加工する、ないし、1万ポンドを超える鉛を使用する事業場に、報告が義務付けられていた。今後は、鉛又は鉛化合物の排出量計が100ポンドを超える場合に、それを報告せねばならない。
この新しい規則は、有毒物質排出調査記録に定められており、今年から発効する。2001年度の鉛および鉛化合物排出報告書は、2002年7月迄に提出しなければならない。新しい報告義務負担にかんがみ、EPAは、この報告書提出期限までの間、各社の遵守努力を支援する。
この新しい鉛規則は、クリントン政権末期に公布された。ブッシュ政権は、発足後数週間は、同規則を保留したが、当初の予定通り発効するよう許可した。
有毒物質排出調査記録に関する一般的な情報は、www.epa.gov/triで入手可能。
石油精製3社、大気浄化協定に同意
ワシントン − 石油精製3社は、連邦および州政府との間で、大気汚染物質の排出を削減し、罰金および環境保全プロジェクトに1千4百万ドルを支払うと合意。モティバ・エンタプライゼズ、イクイロン・エンタプライゼズ、およびディア・パーク・リファイニング・LPの締結した合意により、デラウェア州デラウェア市、ルイジアナ州ノーコ市とコンベント市、テキサス州ポートアーサー市、ワシントン州アナコーツ市、カリフォルニア州ベーカーズフィールド市、ロサンゼルス市、マルティネス市に所在する石油精製所が、影響を受ける。
この合意は、司法省、EPA(環境保護庁)、ルイジアナ州、デラウェア州と北西大気汚染局による、石油精製所からの大気汚染物質の不法排出を減らそうとの試みの一環である。また、これにより、数ヵ所の精製所での有害廃棄物法規違反の疑いも解決した。
三社は、民事罰金950万ドル、大気汚染を被った地域社会での環境保全プロジェクトに約550万ドルを支払い、また、4億ドルを投じて、大気汚染物質の排出を削減する最新式の汚染制御装置を設置する。
新規則、PCB廃棄物の移送も網羅
ワシントン − EPA最終規則は、米国本土以外の領土で生産されるポリ塩化ビフェニル(PCB)廃棄物は、適正な処分のため、本土に移送してよいと明記。当局は、処理目的での米国各州間のPCB廃棄物の移送は、有害物質管理法下で、輸入とはみなさないと決定した。
この影響を受ける可能性のあるのは、石油・ガス採収、電力発電、石油・石炭製造、化学製造、一次金属製造、廃棄物処理・廃棄、および資源再生である。有害物質管理法は、EPAが、健康や環境が危険にさらされることはないと判断しない限り、商業目的でのこれらの物質の製造、使用、加工および流通を禁ずる。
製造者協会、OSHAの記録保持基準に挑む
ワシントン − 全国製造者協会は、OSHAの新しい記録保持基準を提訴した。ワシントン地方裁判所に提訴されたこの訴訟は、新規則の「業務関連」の定義の拡大は、負傷が、健康状態に影響を及ぼす程度の症状、もしくは、以前からの傷病を悪化させるような症状でも、報告すべき負傷となると主張。
同協会は、これでは、業務関連とみなされる負傷数が「人為的に増え」、「職場と全く関係のない、あるいは関係性に乏しい」事例の記録を使用者に強いると述べた。
AFL-CIOは、4月17日、新基準を支持して訴訟に加わり、労働組合は、傷病情報を職場における問題の特定に利用すると主張。全国製造者協会は、労働者および労働者代表の「労働安全衛生の保護に向け、有意義に、また、見識をもって参加する」権利を否定しようとしていると、労組は抗議している。
全国製造者協会は、また、新規則下の聴力損失の記録義務について、10デシベル(A)閾値移動基準の採用に疑問を投げ、この程度の聴力損失は、「医学界、州労働者災害補償システム、関連のOSHA基準のいずれも、身体障害とみなしていない」と主張している。
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