このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
NSC発行「Safety + Health」2001年7月

ニュース



ジェフォーズ氏の離党で、OSHAに対する民主党の影響力に拍車


ワシントン― 先日のジェームズ・ジェフォーズ上院議員の共和党離党決定により、民主党は、労働安全衛生法規など、得意分野のプログラムに関し、議会での力を増した。

無所属となったバーモント州選出の同議員は、民主党に上院議席の過半数を与え、上院委員会、小委員会の委員長職を許した。このなかには、OSHA政策関連の委員会も含まれている。

自由主義的な民主党議員数名が、委員会、小委員会の議長職に就く予定であり、前任の共和党議員に比べ、OSHA問題に格段の好意を寄せるだろう。

下記の議員らも、新委員長に連なる。

  • 衛生・教育・労働・年金委員会のジェフォーズ委員長の後任に、テッド・ケネディ上院議員(民主党、マサチューセッツ州)。

  • 雇用・訓練・安全小委員会のマイケル・エンジ委員長(共和党、ワイオミング州)の 後任に、ポール・ウェルストーン上院議員(民主党、メイン州)。

  • OSHA予算を取り扱い、OSHA政策に影響力のある、歳出小委員会のアーレン・スペクター委員長(共和党、ペンシルバニア州)の後任に、トム・ハ―キン上院議員(民主党、アイオワ州)。

さらに、民主党は、各委員会で議決権を増し、法制関連の聴聞会で、聴聞会の証人選出についても、発言力を増す。民主党はまた、ブッシュ大統領の規制緩和計画に対し、より強硬な反対論陣を張ることができるようになる。

「世の中が変わる」と、ワシントンにある国際サービス労働者組合のビル・ボーウェゲン安全衛生部長は、手放しの喜びよう。通常、証言するのは典型的な事業家だが、労働者が委員会で証言するよう求められることもあろうと、例を挙げた。

ワシントンを拠点とする大企業グループ、LPAのティム・バード一般顧問補は、OSHA規則寄りの「徹底した聴聞会」や、業務上の死傷についての「悲惨な話が増える」だろうと予想。今回の動きで、ブッシュ大統領は、労働組合や民主党寄りの人物を指名せざるを得なくなるのではないかとも語った。



事実チェック

1998年度の労働損失日を伴う労働災害

出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2000年



労働長官、エルゴノミクスに期限、公開討論会を招集

ワシントン― エレイン・チャオ労働長官は、職場のエルゴノミクス的安全に関し、全国公開討論会を3回招集し、9月までに、本題について最終的な行動方針を決定すると発表した。
 「この重要な問題を進展させ、解決するため、全ての人々を会議に招集する」とチャオ長官。「エルゴノミクス的傷害への最善のアプローチを定義するのは、簡単ではない。検討過程では、皆の意見を聞く必要がある。指針原則は、本題を評価する重要な出発点となり、そこから最終的な行動方針を決定する」。
 公開討論会は、ワシントン州で7月16日、イリノイ州で7月29日、カリフォルニア州では7月24日に開催される。一般参加者は、討論会で発言することも、書面で意見を提出することもできる。
 討論会の詳細については、労働省まで、電話202-693-4650で照会、またはウエブ・サイトwww.dol.govを閲覧されたい。



ILO、安全指針を採択

 スイス、ジュネーブ― 国際労働機関(ILO)は、労働安全衛生管理システム(OSHMS)の技術指針を採択した。同指針は、労働災害の削減に向け、団体や各国の支援を目的としている。
 労働安全衛生管理計画のジョアナ・ボアザダ部長は、同技術指針は、ILO基準の設定に向けた第一歩となろうと語った。同指針は、ISO(国際標準化機構)の基準を阻む可能性が高い。
 類似の基準につき作業中の米国規格協会対策委員会は、同委員会に近い情報筋によれば、「新国際指針に配慮する」。
 ILO指針は、いかなる団体、国でも採用できるよう、広範な内容を持ち、労働者参加、適性と訓練、体系的な文書整理、災害調査と管理の見直しといった、馴染み深い話題を網羅している。
 国連の関連機関としてジュネーブに本部を置くILOは、「不平等、辛苦と窮乏」を伴う労働条件に対処する国際基準の採択を目的として、1919年に創設された。
 同指針は、www.ilo.org.で入手可能。

反射テープ、大型トラックの衝突を防止


 ワシントン― 全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration : NHTSA)の新しい調査により、トレーラー・トラックに連邦規模で義務付けられている反射テープ(Reflective Tape)が、衝突事故を防止すると確認された。これは、業務上、可視性を必要とする全ての労働者にも関わる、産業全域にかかわる意味合いを含持つ結果である。
 本調査によると、反射テープで、夜間の大型トレーラーの側面、後面衝突は、29%減少した。トレーラー全車両がテープを採用すれば、年間7,800件の衝突事故を防止すると試算。年間191〜 350人の死亡と3,100〜5,000人の負傷も防止できると見込んでいる。
反射テープは、特に夜間に、トレーラーが他のドライバーに見えやすいようにする。テープがないと、トレーラーはよく見えず、他の車は、衝突を避けられない距離まで接近してしまうと、本調査は指摘する。
テープはとくに、次の場面で効果があった。
・ トレーラーに衝突した車両運転者は、15〜50歳の年齢層。
・ 激突するところであった。
・ 天気は、晴天か、または霧雨。
・ 平台型トレーラーに、テープが使用されていた。
全米幹線道路交通安全局は、1993年 11月以降に生産された大型トレーラー全車両に、反射テープか同等の反射板を取り付けるよう、義務付けている。連邦自動車運輸安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration : FMCSA)は、6月1日付けで、大型トレーラー全車両に同種の装置を装備するよう、義務付けた。
本調査は、フロリダ州高速道路パトロールとペンシルバニア州警察が収集した、大型トレーラーが関与した衝突事故10,959件に基づいている。
本調査は、www.nhtsa.dot.gov/cars/rules/rerev/evaluate/pdf/809222.pdfで閲覧できる。




上院での勢力交替で、内閣の任命が遅延


 上院で民主党が優勢を得、内閣の主要ポストは、恐らく今年末までの間、空席のままとなる可能性がある。
 EPA(環境保護局)、連邦危機管理庁等各省庁の322席の上級ポストのうち、76席は、期日までに確定。全ての政府機関を含む、より広いくくり方では、492席中108席の任命が確定したと、USAトゥデイ紙は報じた。
 ワシントンのブルッキングズ研究所によると、印刷開始時点で、労働省の任命ポスト18席のうち、埋まったのはわずかに6席。厚生・人的サービス省では、15席中3席であった。
 任命における最大の障害は、全ての任命ポストに要する複雑な背景調査で、これに数ヶ月を要すこともある。背景調査は、ホワイト・ハウス、上院のほか、FBI、行政倫理局など、いくつかの政府機関も加わって、実施される。
 通常、任命ポストは、夏までに埋められる。クリントン前大統領の任命は、1993年秋まで承認されなかった。専門家は、ブッシュ新政権が全陣容をそろえるのは、2002年になるだろうとみている。

人材募集中
 大統領任命の閣僚ポストはすべて上院で確定されたものの、次官ポストの大半は、空席のままである。


役職数 確定ポスト
農務省 14 5
商務省 24 9
国防省 45 10
教育省 15 1
エネルギー省 16 5
環境保護局(EPA) 12 1
連邦危機管理局 4 0
厚生・人的サービス省 15 3
住宅都市開発省 15 4
内務省 16 0
司法省 34 5
労働省 18 6
国務省 47 17
運輸省 17 3
財務省 19 2
復員軍人省 11 5
          

出所:大統領任命イニシアチブ、ブルッキングズ研究所


個人用保護具2大メーカーが合併

 ロードアイランド州スミスフィールド市― バコ―USA社株の過半数を保有するバコー(株)社とクリスチャン・ダロー(株)が合併に合意した。これで個人用保護具の最大手の一つが誕生する。
 バコ−USA社は、1993年、バコー(株)の100%子会社として設立された。2000年の年間売上は、3億2千万ドルと発表。バコー社の製品群としては、ユべクッス社(視覚保護具)、ハワード・ライト社(聴覚保護具)、パーフェクト・フィット社(安全手袋)、バイオシステムズ社(循環式呼吸器用ガスモニター及び試験器)、サバイブエア社(呼吸器官保護具)、ホワイティング+ディビス社(ステンレス製メッシュ製品)、プロ-テック社(呼吸器、現在サーバイブエアの一部)、ティトマス社(安全フレーム)、レーザービジョン社(視力矯正手術会社)とレイズ-R・シールド社(眼鏡レンズ及び一般の安全眼鏡)を含む。
 クリスチャン・ダロ―・グループは、仏サン・クロード市で1957年の創立。視力・聴力保護、落下防止と呼吸用具、サン・レンズを専門とする。2000年の売上高は2億5千6百6十万ユーロで、1999年の約41%増となった。
 バコー(株)の会長、社長、最高経営責任者でバコ−USA社の共同会長であるフイリップ・バコー氏は、新会社で、クリスチャン・ダロ―(株)のフィリップ・アルフロワ会長と共に共同社長に就任する。




2005年度世界労働安全衛生会議、米国で開催


 イリノイ州アイタスカ市― 第17回世界労働安全衛生会議は、全米安全評議会の第93回年次安全大会&展示会の直前、2005年9月に、フロリダ州オーランド市で開催される。ILO、国際社会保障協会共催の世界安全会議が、米国で開催されるのは、これが初めてである。
 「ILOと国際社会保障協会が、第17回世界安全会議の招請に応じ、全米安全評議会(NSC)は感激し、誇りに思う」と、アラン・マックミランNSC会長。「世界一流の労働安全衛生専門家が集うこの権威ある会議は、向こう4年間で、世界の労働安全衛生の増進を目指す数多の共同活動を最高潮に至らしめるだろう」。
 全米安全評議会及びその他の米国の団体は、世界安全会議の米国招請に向け、1999年より、ILOや国際社会保障協会と交渉してきたと、マックミラン会長は語った。
 「全米安全評議会は、米国政府、NGO及び安全会議の主催団体と緊密に連携し、今後4年間で、最前線の各種調査、デモンストレーションや情報共有プログラムを実施する」とマックミラン会長。「2005年の世界安全会議では、これらの活動を発表し、この重要な会議を機に、既存プログラムを発展させ、対処すべきニーズを特定する」。
 因みに、第16回世界労働安全衛生会議は、2002年5月26〜31日にオーストリア、ウイーンで開催される。



議員ら、ドライバーの携帯電話使用禁止を提案

 携帯電話の使用で注意散漫な運転がもたらした交通死傷事故についての数週間にわたる証言を受けて、ゲイリ−・アカ−マン下院議員(民主党、ニューヨーク州)とジョン・コーザイン上院議員(民主党、ニュージャージー州)の両氏は、ドライバーの携帯電話使用禁止法案を提案した。「携帯電話の誤用は、道路や高速道路での新手の恐怖となっている」とアカ−マン議員。
 同法案は、全米の携帯電話加入者、推定1億1千5百万人の車内通話規制を求める公衆の抗議に応える、新たな一歩である。ABCNEWS.comの世論調査では、回答者の69%は、運転中の手持ち携帯電話の使用は違法とすべきであるとし、約72%は、握り不要の携帯電話は合法とすべきである回答した。
 アカ−マン議員の法案は、握り不要装置のない携帯電話の使用は禁止する。この禁止を実施しない州は、連邦高速道路予算の一部を失う。コーザイン議員の法案は、各州に規制を委ねる。両法案共、各州独自の刑罰を認めている。
 多くの州議会も、対策を検討している。デンバーの全米州議会会議によれば、38州で約100法案が、通信技術の利用規制を目指している。

大衆の携帯電話使用支持は明々白々
69%は、ドライバーによる手持ち携帯電話の使用は違法とすべき、28%は、握り不要の携帯電話の使用は違法とすべきだと、信じている。出所:ABC NEWS.com


調査、脳ガンと労働条件の関連を指摘

 イリノイ州アーリントンハイツ― 労働環境医学ジャーナル(Vol.43, No.4)で発表された調査によると、農業、ゴム、電子、織物工業またはガソリンや溶剤に暴露される仕事に従事する人は、脳神経膠腫に罹る危険性が高い。脳神経膠腫は、脳ガンの一種で、業務上の危険因子に最も関連しているらしい。
 エール大学のトンザン・ツエン博士の率いる研究チームは、脳神経膠腫を患った412人にそれぞれの職業と勤続年数を質問した。
 研究チームは、農業用殺虫剤や殺菌剤、樹脂製造に用いる酸化防止剤や可塑剤その他の化合物、運送業や自動車産業でのガソリン溶剤が、脳ガンの一因になっている可能性を指摘した。配管業者は、溶接の際に出るアスベスト、金属ヒュ−ムやガスなど有害物質に曝されるので、脳ガンの危険性がより高い。織物産業での染料やホルムアルデヒドもまた、脳ガンと連関している。
 同様に、ルイビル・クーリエ・ジャーナルの10ヶ月間の調査によれば、600人以上もの鉄道労働者は、有害な脱脂溶剤への長期間の暴露により、脳損傷と診断された。
 同ジャーナルは、フロリダ州ジャクソンビル市のCSX鉄道(株)が、強力な溶剤による健康障害に関連して、和解または陪審員評決により、現役、元従業員466人に対し、3千5百万ドルを支払ったと報じた。
 従業員らは、短期的記憶喪失、うつ病、不安、精神機能減退を特徴とする脳障害と診断された。
 鉄道産業は、溶剤暴露と脳障害その他の疾病との関連性を否定してきた。
 新聞報道の数日後、溶剤に暴露したが、まだ脳障害を発症していない元鉄道労働者18名は、溶剤被害が疑われる労働者に対する医療検査費用を求めて、提訴した。
 これは、実際に罹病する前、また、は医学的兆候が現れる前に労働者が金銭的損失を要求する、初のケースと言われている。



プレス・タイム (P13)
ブッシュ大統領、OSHA担当労働副長官にヘンショー氏を指名


 ワシントン― 本誌印刷開始時点で、ブッシュ政権は、OSHA担当労働副長官にジョン・レスター・ヘンショー氏を指名、上院の承認を求めた。
 ヘンショー氏は最近まで、アスタリス(有)の環境安全衛生担当部長を務めた、安全衛生専門家である。
 セントルイスを拠点とする同社は、リン及びリン酸塩製品を製造販売している。
 ヘンショー氏は、米国産業安全衛生協会の元会長も務めた。同協会は、同氏の指名について、「全ての人々が納得する安全衛生アジェンダを効率よく推進するため、多様な団体間に連立とコンセンサスを構築する見識と能力がある」と文書で支持している。
 ヘンショー氏はまた、EPA(環境保護局)の全米環境試験所認定委員会の委員で、大セントルイス安全会議理事会の会長である。米国安全技術者協会のサミュエル・グアラード会長は、ヘンショ−氏は「この枢要な職責を果たす充分な能力が備わっており、労働安全衛生の増進を目指して、イニシアチブを推進しようとの決意が固い」と語った。ヘンショー氏は、同協会のメンバーである。
 労働組合や事業家は、同氏の経験と安全衛生への精通ぶりを評価。主要な使用者団体は、同氏についてはほとんど知らないと発言している。