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NSC発行「Safety + Health」2001年8月

ニュース



ブッシュ大統領、OSHAトップに安全衛生のプロを起用


ワシントン − ブッシュ大統領は、OSHA(労働安全衛生庁)担当の労働副長官にジョン・ヘンショー氏を指名、好評を博している。
 「ヘンショー氏は、有能で経験豊富な安全衛生専門家で、安全衛生の世界では高く評価されている」と、ワシントンを拠点とするAFL-CIOのペグ・セミナリオ労働安全衛生担当部長は語った。
 しかし、「気がかりは、同氏が、骨の折れる規制プログラムを推進できるかどうか。プッシュ政権の支援が必要だから。」と、セミナリオ部長。「この点について、ホワイトハウスが、強力な労働者安全衛生保護を支援するとは思えない」。
 ニューーヨーク市の縫製・工業・織物労働者組合のエリック・フルミン安全衛生部長は、「ジョン・ヘンショー氏は、OSHA長官として、専門家としての経歴と実績の両者を持ち合わせている。管理システム、法の施行や労働者/組合の権利に関する同氏の見解については、賛成できないこともでてくるだろうけれども」と語った。
 ヘンショー氏は「誠意のある人物で、労働者のことを気にかける」とオハイオ州アクロン市の食品・商業労働者組合連合の国際化学労働者組合協議会、マイク・スプリンカー安全衛生担当部長は語った。同氏は、化学安全衛生分野で、ヘンショー氏と働いたことがある。しかし、政権の他の人物らが「OSHA行政を担う人々に、問題を持ち込むかもしれない」と語った。
 使用者団体は、ヘンショー氏について多くを知らないが、「同氏の得た幅広い支持に元気づけられる。共に仕事するのを楽しみにしている」と、ワシントンの全米製造者協会のジェニー・クレス労働政策部長は語った。
 大規模使用者団体の一つ、LPAのティム・バード一般顧問補は、LPA会員他は「同氏を強く推薦する」と語った。ワシントンにある米国商工会議所のランディ・ジョンソン労働担当副会頭は、「ヘンショー氏が、所管分野に精通しており、我々の懸念に公平に耳を傾けてくれるだろうと安堵している」と付け加えた。
 全米安全評議会アラン・マックミラン会長は、「ジョン・ヘンショー氏は、労働安全衛生行政を率いるに群抜の候補である。職場の死傷病削減に対する氏の長年の強い責任感に、同評議会およびその37,500の会員団体は、心から支持を寄せる」。
 ヘンショー氏は、全米安全評議会の支部網の一部をなす、大セントルイス安全評議会理事会の会長である。
 上院衛生・教育・労働・年金委員会のエドワード・ケネディ委員長(民主党、マサチューセッツ州)のスポークスマンは、「大統領が、この重要な役職に、真の安全衛生専門家を指名したのは喜ばしい」と語った。
 本誌印刷開始時点で、同スポークスマンは、ホワイトハウスは、上院に同氏指名の正式文書を送っておらず、上院は、新しい委員会の顔ぶれについて票決していないので、いつ確認の聴聞が行われるのか、言い難い、と語った。



事実チェック

事実チェック
1999年、労働損失時間を伴う筋骨格系障害は、582,400件発生した。
どこで発生したのだろうか?
発生件数 平均損失日数
製造業 149,800 8日
サービス業 152,800 5日
運輸・公益事業 66,600 10日
小売業 90,900 6日
建設業 48,800 10日
卸売業 50,700 7日
鉱業 3,300 32日
金融・保険・不動産 12,400 6日
農林漁業 7,100 7日

  出所:労働統計局、2001年




遺伝学的差別立法が活発化

 ワシントン − トム・ダッシュル上院議員(民主党、サウス・ダコタ州)が、上院多数党院内総務となった現在、同議員提案の遺伝学的差別立法が真剣に受け止められている。「今こそ、法律が科学に追いつく時である」とダッシュル議員は、最近の記者会見で述べた。「科学で1歩前進し、人権で2歩後退するわけにはいかない」。
 ダッシュル議員は、エドワード・ケネディ議員(民主党、マサチューセッツ州)と共同で、同法案を提案した。
同法案は、使用者が、採用決定の際に遺伝学的情報を用いること、保険会社が、遺伝学的情報を用いて、保険対象範囲を制限または拒否することを、それぞれ禁ずる。ダッシュル議員のみが、同法案の推進者というわけではない。ブッシュ大統領も、週例ラジオ放送で、本題を取り上げた。
 大統領は、「遺伝学的差別は、労働者とその家族にとって不公平である」と語った。「多々ある理由のなかでも、医学的憶測の域をほとんど出ないという理由で、不当な差別である」。
 下院で、過去5年間、遺伝学的差別法案を提案してきたルイーズ・M・スローター下院議員(民主党、ニューヨーク州)は、本題が然るべき注目を浴びつつあるのは、喜ばしいと語った。
 「誰もが完全な遺伝子を持っているわけではない。遺伝学的差別が許されるならば、我々は皆、就職もできず、保険にも入れないということになる」と同議員。



労働サミット、労働人口が直面する課題を検証

 ワシントン − 労働省は、6月20日、産官学労リーダーを招集、21世紀の労働力に関するサミットを開催した。同会議は、米国労働力における技能格差、労働者の人口学的変化と労働力人口の将来について、検討した。さらに、ブッシュ大統領は、労働省に21世紀の労働力室を創設すると発表した。
 同サミットは、エレイン・チャオ労働長官の21世紀労働力イニシアチブの第一歩である。これは、連邦政府が、現代の労働力を左右する課題を絞り込むよう、ブッシュ政権が創設した。
 「米国は、労働力人口にモーニング・コールが必要である」と、チャオ長官は、サミットで語った。「我々が、労働者の人口学的の変化と、現場における技術変化に対応しなければ、経済に重大な影響を及ぼすであろう。米国の労働者、使用者、組合は、地平線のすぐ向こうにある困難な課題について、今、取り組まねばならない」。
 チャオ長官は、サミットで、いくつかのイニシアチブを提唱した。
  • 労働省と教育省の共同事業。これらの事業には、成人労働者のための読解力と数学力向上や、リスクを負う青年が、労働省の職業学科へ参加し、通信教育や各地の公立学校での受講を通して、高校卒業証書を取得するプログラムを検討する。
  • 障害者の求職を支援する新しいウエブサイト。
  • モンスター・コムとの共同事業で、労働省の求人検索プログラムである、アメリカ職業銀行の情報その他を共有する

サミットでは、退職しつつある団塊の世代に代わる労働者は、技術進歩や新しい変化にどう適合すべきか、検討した。団塊世代の退職で、労働力人口は出超となり、労働者不足に直面する。
サミットでは、代替労働者の多くは、米国の少数民族のなかで、最も人口増加率の高いヒスパニック系住民となろうとの指摘があった。(増加するヒスパニック系労働力に関わる、安全への挑戦については、68頁の記事を参照。)
高齢労働者の再就職、移民労働者の増加で、熟練労働者不足を埋める、教育・訓練された労働力の必要性が、サミットの議論で明らかになった。
同サミットに並行して、125社余りが集まった地域職業フェアーがあった。



裁判所、インフルエンザにも家族医療休暇法を適用


 バージニア州リッチモンド市、セントルイス市 − 二つの控訴裁判所で、先日、インフルエンザやウィルス感染のような一般的な疾病も、家族医療休暇法の「深刻な健康状態」とみなされるとの裁定が下った。
 ニューヨーク市のAT & T営業担当、キンバリー・ミラー氏は、インフルエンザによる家族医療休暇を要求した。AT & Tは、インフルエンザは、同法の規定する状態とはみなされないとして、要求を拒否した。一方、バージニア州リッチモンド市の第4連邦巡回控訴院は、インフルエンザは、「通常、深刻な健康状態という基準」を満たさないとしながらも、ミラー氏の場合は、3日以上欠席し、継続した治療を受けていたので、その要件を満たすと決定した。ミラー氏は、金利上乗せの遡及賃金及び弁護費用を支払われた。
 第2のケースは、カリフォルニア州スコッツ・バレー市シーゲート・テクノロジー社の上級管理部門担当官、ローズ・ランキン氏の場合で、職場で発病し、欠勤過多により解雇された。セントルイス市の第8連邦巡回控訴院は、ランキン氏は、自身の主張に関し、「過剰な証拠」を用意しなかったが、同氏が、ほんの数日間に2度、医師の診察を受けていた事実は、充分、家族医療休暇法が定める「継続した治療」にあたるとして、地方裁判所の判決を覆した。



米国企業は、世界規模で安全を推進

ワシントン − ワシントン市の全国製造業者協会とバージニア州アーリントン市の製造業者同盟/MAPIの共同報告によれば、米国の製造業者は、海外拠点のある発展途上国の倫理、労働、環境基準の向上に貢献しているもよう、大方の印象とは違うようだ。
 発展途上国42ヶ国に拠点を有する北米企業44社の調査によれば、その多数は、いわゆる「どんじり競争」に甘んじておらず、どこへ行くにも高い基準を採用している。
 例えば、ミネソタ州レッドウイング市のレッドウイング製靴社は、全製造工場に適用する安全衛生基準を有する。出発点は、現地の安全衛生法規の遵守であるが、保護具、火災安全装置、適切な設備安全装置や有害物質の保管など、潜在的な問題分野リストに沿った施設検査を含めた方針もある。
 モントリオール市のアルカン鰍ヘ、毎年策定する安全衛生目標、目的、実施対策を含む全社的国際安全衛生方針を採用している。
 マサチュ―セッツ州ケンブリッジ市のポラロイド社は、例えば、人的安全衛生への悪影響を最小限にするよう、設備を設計、有害物質を除去または削減し、従業員には情報、訓練を提供している。
 調査結果をいくつか挙げると:

  • 米国の製造業者の87%は、労働安全衛生に関し、詳細な方針を採用、しばしば、操業している発展途上国の標準的な慣行を上回る。
  • 米国の製造業者の91%は、各国の労働法規を遵守していると報告している。
  • 米国の製造業者の90%は、操業している発展途上国の製造業部門の現地企業に比べ、高い安全衛生基準を維持していると考えている。
  • 米国の製造業の42%は、児童労働に関して、直接納入業者に社の方針を適用している。
  • 米国の製造業者の78%は、発展途上国の現地施設で、環境保全の改善に向け、評定可能な目標を組み込んだ環境管理システムを有する。
  • 米国の製造業者の95%は、発展途上国の現地施設に対し、全社的な行動規範および/または倫理基準を適用している。


州政府、全米安全月間を認識

1995年、全米安全評議会は、6月を全米安全月間と定め、週毎に具体的な安全目標を掲げた。今年の週別テーマは、十代の自動車運転、家庭と地域社会、環境と公衆衛生、そして労働安全であった。


全米安全月間を認識していた州




出所:全米安全評議会、2001年



ニューヨーク州、運転中の携帯電話の使用を禁止

ニューヨーク州オルバニー市 − ニューヨーク州は、自動車運転中の携帯電話の使用を禁ずる初の州となった。使用禁止法案は、1996年、ニューヨーク州フェリックス・オーティス下院議員が初めて提案した。
同法案によれば、運転中に電話機を握っているところを捕まると、2001年12月1日以降は、罰金を最高額100ドルまでの範囲で課される。同法案の抜け穴は、緊急時の使用などがある。ドライバーが電話機を持たずに通話できる装置を購入したと証明すれば、2002年3月1日までの間、初犯者は罰金が免除される。コネチカット州ハンデン市にある、クイニイピアック大学世論調査研究所が実施した世論調査によると、87%のニューヨーク州民は、この禁止に賛成した。
マサチューセッツ、カリフォルニア、アリゾナ三州は、運転中の携帯電話の使用につき、小規模な制約を既に導入している。オハイオ州ブルックリン市は、運転中の手持ち式携帯電話使用を禁じた最初の都市であり、警察は、1999年 9月以降、約500件の召喚状を発した。現在までに、41州で、運転中の携帯電話使用禁止法案が浮上したが、ほとんどは、さまざまな理由により廃案となった。
一方、高速道路安全関係者は、より徹底的な法律を制定する前に、もっと調査・検討を重ねるよう、求めている。ワシントン市の全米高速道路安全州知事代表協会は、このような立法は、意図はよいが、誤った方向付けをされており、望ましい安全目標を達成できないであろうと語った。
「運転中、手持ち式に比較して、握り不要の電話機で話す場合の利点については、決定的な調査結果がでたわけではない」と、同協会のジョン・モファット会長は語った。「握り不要の電話機についても、認知的散漫が生じるので、これが解決策となり得るか、不明である」。
携帯電話の関与した自動車事故データを収集した州は、少数であるため、本問題の大きさを測るのは難しいと、同会長。




2001年安全功労者賞(DSSA)受賞者


全米安全評議会は、アトランタ市での第89回年次会議&展示会で、下記の安全衛生専門家に対し、安全功労者賞を授与する。この賞は、同評議会が、安全専門家の卓越した貢献を表彰して個人に授与する、最高の栄誉である。受賞者は、同業者により選出された。

受賞者はこちら



3名が、安全殿堂入り

イリノイ州アイタスカ市 − アトランタ市での第89回NSC(全米安全評議会)年次会議&展示会で、安全衛生専門家3名の国際安全衛生殿堂入りが決定される。式典は、9月24日。新会員は、スウン-シック・チャン、ダニエル・E・デラギウスティナ、ジェイムズ・W・ブリンクリーの三氏である。
スウン-シック・チャン氏は、韓国労働安全衛生局の発展に貢献、労働者保護の初の法的枠組みとなった、産業安全衛生法を草案した。また同氏は、現在、労働安全衛生調査研究所として知られている、災害防止技術、統計、職業病を研究する調査機関の設立に尽力した。
ダニエル・E・デラギウスティナ博士は、モーガンタウン市にあるウエスト・バージニア大学の安全環境管理学大学院プログラムを創設し、全米最高水準の一つに育てあげた功績が認められた。博士は、7冊の教本を執筆、多くの法人安全専門家が、これらの教科書を、社内安全衛生プログラムの開発、実施、保持に利用している。さらに、運輸省は、障害のある生徒の安全移送改善に向けた博士の勧告を実施した。博士は、小誌の編集指導委員会のメンバーでもある。
ジェイムズ・W・ブリンクリー氏は、安全衛生の多方面にわたる開拓者である。同氏は、NASA(アメリカ航空宇宙局)のスペース・シャトルの開発に携わった。ベトナム戦争中、同氏は、ジェット噴射による脊髄損傷を50%から12%に減少させた、空軍システムを設計した。自動車輸送分野におけ氏の研究は、エアバッグ装置生産の基礎を確立した。同氏は、オンタリオ州ケスウィック市の国際落下防止協会の創立メンバーであり、「落下防止の原則」の著者でもある。



ブッシュ政権、核廃棄物埋蔵基準を開示

 ワシントン − ブッシュ政権は、ラスベガス市の北西900マイルのユカ山の核廃棄物埋蔵候補地に関する、最終安全衛生基準を開示した。これにより、放射性物質7万トンを埋蔵する、異論の多いプロジェクトが着工されるよう、当局は希望している。同基準は、1982年に始まったプロセスの最終段階の一つとなる。
 同基準は、どれほど厳密か? 同基準は、全線源から年間15ミリレム未満の線量限界を容認している。これは、レンガ造りの家に居住して被爆する量の約2倍である。
クリントン政権時代にEPA(環境保護局)が提案した厳しい基準を承認することで、ブッシュ政権は、環境問題批評家やネバダ州内の批判者を鎮静したいと望んでいる。
 ブッシュ大統領は、年末までに、本プロジェクト着工計画を進めようとしているが、上院のトム・ダッシュル多数党院内総務(民主党、サウス・ダコタ州)は、ユカ山プロジェクトは、上院で民主党が優勢な限り、「死に体」であると語った。実際、プロジェクトの廃止は難しいが、ダッシュル議員には、ネバダ州選出上院議員であるハリー・M・リード院内幹事という強力な盟友がいる。両議員は共に、予算を絞って、プロジェクトをさらに遅延させるだろう。



安全会議での講演案は、ネットで応募可

イリノイ州アイタスカ市− 全米安全評議会の第90回年次安全会議&展示会の教育講座の講演案の応募は、ネットwww.nsc.org/expo02/call.htmで、12月 3日まで受け付ける。同会議&展示会は、2002年 10月 7〜9日、サンディエゴ市で開催される。
講演募集案内ウェブ・ページの主な特徴は、要約の提出書式にあり、これに各自、講演題目、内容説明、講演者の情報などを記入する。各自、「送信」ボタンを押すと、送信内容を全部記録した確認メールが、自動的に作成される。
同会議プログラム検討委員会は、全ての応募案を検討し、所定の基準により、選抜する。選抜は、2002年 1月に実施され、採択案については、2月に、応募者宛て通知する。




通信教育の機会求む

先日、バージニア州フェアファクス市の米国産業衛生協会(AIHA)、イリノイ州デス・プレイネス市の安全技術者協会(American Society of Safety Engineers)、および、アトランタ市の全米労働衛生看護師協会(American Association of Occupational Health Nurses)の会員を対象に、安全衛生の通信教育機会について、調査が実施された。反応は下記のとおり。

  • 87.4%の回答者は、受講する見込み。
  • 関心のある分野。上位から:
    • 労働衛生(Occupational health)
    • 災害防止・管理
    • 産業衛生(Industrial hygiene)
  • 受講目的:
    • 勉強の継続
  • 回答者の68%は、教育費の支払いを受けている。


  出所:米国産業衛生協会(AIHA)ジャーナル(V62,No.3)2001