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NSC発行「Safety + Health」2001年9月

ニュース



上院、ヘンショ−OSHA担当副長官を全会一致で承認


 ワシントン − 米上院は、ジョン・ヘンショー氏のOSHA(労働安全衛生庁)担当副長官就任を全会一致で承認した。
 労使団体は共に、同氏の指名を称えていたため、反対はほとんど予想されなかった。
 ヘンショー氏は以前、セントルイス市のソル―シャ(株)とシカゴ市のFMCの合弁事業で、セントルイス市を拠点とするアスタリスLLCで、環境安全衛生担当部長を務めていた。
 同氏は、中小企業の安全衛生で26年余りの履歴を積んでいる。また、空軍州兵で生物環境エンジニアとして務めたこともある。「アメリカの労働者は、ジョン・ヘンショーと共に勝利する」とエレイン・チャオ労働長官。「アメリカの労働者のために最も安全で衛生的な環境を整えるのに、申し分ない人材である」。



上院、エルゴ調査の必要性を指摘

 ワシントン − マイケル・エンジ上院議員(共和党、ワイオミング州)は、衛生・教育・労働・年金委員会の雇用・安全・訓練小委員会で、職場におけるエルゴノミクス的障害の削減をめざし、包括的な分析が必要だが、障害が、業務関連要因によるものかどうか、見極めねばならないと語った。同議員は、バーモント州選出のジェイムズ・ジェフォーズ上院議員が共和党を離党、無所属となり、民主党が優勢を得るまでの間、同委員会の長を務めていた。
 「2001年全米科学学会での調査で、業務関連要因と個人要因との関連については、もっと調査する必要があると判明。この類の調査は、複雑だと認めている。より基本的なレベルで、あるエルゴ障害は本当に業務に関連するのか、専門家の間でも意見が分かれている」と同議員。
 同議員はまた、2001年全米科学学会調査委員会は、業務と手根管症候群との関連に挑んだと述べた。同議員は、コンピューター使用が、手根管症候群のリスクを高めるのではないとしたメイヨー・クリニックの最近の調査報告結果に言及。調査の追加を要請した。特定の産業では、エルゴノミック計画の開発はより難しいとも指摘した。
「保健産業が、適例である。自然災害が発生したら、緊急治療室で法規の遵法などできるだろうか。遵守義務と患者の尊厳や希望をどう天秤にのせられるだろうか」と同議員は尋ねた。
同議員は、解決に向けてニーズを共有すべきであると結論、エルゴノミクス問題については、労働省で、信用に足るプロセスが進行しているとして、自身の見解を補強した。



事実チェック
(1999年部門別不慮の負傷費用)



  出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2000年




国際化学物質分類計画に各国合意

 ニューヨーク − 化学物質の取り扱いをめぐる安全性の向上を目指してすでに10年になるが、先進国は、化学物質の分類と表示に向けた、新しい国際協調システム(GHS)の基本内容に合意した。
GHSの作業には、国連の専門機関である国際労働機関(ILO)、危険物輸送に関する国連専門家小委員会(U. N. Subcommittee of Experts on Transport of Dangerous Goods)、経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development)が参加した。
 国際協調システムは、化学物質のラベル表示と安全性データシートを含む化学的要因情報を扱う。分類は、人類の身体的健康障害の危険要因、魚類、水生植物への危険要因と関連付けられている。
唯一、意見が分かれたのは、極度且つ即時の危険のある貨物や、慢性的健康障害の恐れのある貨物に用いるダイヤ型フレーム(Diamond shaped frame)で、米航空機産業がこれに反対した。在ワシントンの航空運輸協会は、即時の危険のある貨物に表示するよう米運輸省が義務つけているダイヤ記号(Diamond signs)については、これを引き抜くよう、貨物選別係を訓練していると説明。同協会は、選別係が、GHS記号をみて、慢性的障害の恐れがある貨物についても不必要に引き抜くのではないかと、懸念を示した。航空パイロット協会(在ワシントン)も同じ懸念を表明した。
 ILO出席者は、GHS標示は、運輸標示と見た目が随分違うと指摘。7月5日の会合で、国連専門家らは、14対 3でGHS標示を支持。米国、メキシコ、スペインが反対に回った。



新聞社の調査で、べリリウム問題の拡大が判明

 シカゴ − シカゴ・トリビューン紙の調査で、職種もさまざまな労働者数千人が、適切な保護具や警告がないままべリリウムに暴露、死に至る事もある慢性肺疾患を患う可能性があることが判明。労働者は、エレクトロニクス、リサイクル、機械、歯科にわたり、人肺を徐々に損なう危険性の高い有毒金属粉に曝されたという。
トリビューン紙は、OSHA規則や指針を遵守した企業はほとんどなく、政府もこれらの法規を施行していなかったと主張。OSHAは、べリリウムについて、職場で警告表示するよう義務つけており、べリリウム粉じんの暴露限界も設けている。OSHAは、べリリウムを扱う企業については、職場の空気中のべリリウム粉じんの監視、労働者への作業着とシャワーの提供、暴露の恐れのある労働者に対する健康診断を勧告した、自主的ガイドラインを設けている。
トリビューン紙の調査は、裁判、業界、政府の膨大な資料と、衛生当局者や事業主へのインタビューに基づいたもので、以下、調査結果を一部紹介する。
  • べリリウム製造、販売業者の警告は、しばしば不正確で誤解しやすく、不完全である。トリビューン紙は、10のべリリウム警告表記を調査、うち9点は、OSHA規則を守っていなかった。4点については、べリリウム疾患について記載していなかった。
  • OSHAは、べリリウムを扱う企業の監督をほとんど行っていなかった。同紙は、OSHAは、シカゴ地域でべリリウムを扱っている企業数社を10年間監督していなかったと報じた。
  • べリリウムを扱う企業のごく一部のみ、労働者の健康障害を探るため、血液検査を行っていた。
しかし、エネルギー省(Department of Energy)でさえ、過去25年間、兵器施設の労働者保護に何百万ドルも投じて、べリリウムに対処。トリビューン紙は、べリリウムからの労働者保護に、小企業が充分対処できる能力があるとは思えないとの、エネルギー省の元高官デビット・マイケルズ氏の話を引用。マイケルズ氏は、国家の安全保障目的以外でのべリリウムの禁止こそ、唯一の解決策だと述べた。



NSCの新幹部


 イリノイ州アイタスカ市 − 全米安全評議会(NSC)は先日、副社長兼最高経営執行者にテッド・ボレク・ジュニア氏を任命した。同協議会はまた、新しいポスト、ワシントン事務所全国プログラム担当副社長に、ボビイ・ジャクソン氏を指名した。
日常業務を取り締まる最高経営執行者として、ボレク氏は、国民の死傷削減、衛生・環境の改善を目的としたNSCの事業開発、発展を担当する。
ボレク氏は、先日まで在ダラス市の保健衛生コンサルト会社、ボレク・グループの最高経営執行者を務めていた。また同市のアメリカ心臓協会で、心血管緊急ケア・プログラム担当副社長や総括管理者を務めたこともある。
また、ジョージア州ノクロス市の医療機器製造、アラダン(株)で営業・マーケティング担当副社長、マサチュ―セッツ州チコピー市にある欧州の病院産業向け製品製造業者の子会社イレマUSA(株)で、常務取締役を務めた。
 「彼は、実績のあるビジネス眼と協会運営の知識で、NSCの公私両部門、非営利部門のパートナーとの連携強化に活躍してくれるだろう」とアラン・C・マクミラン会長。「彼の指導力の下、NSCは、アメリカの職場、ハイウエイ、家庭、地域社会の安全衛生を推進する代表的な組織として、長年培ってきた評判を維持し、よりよく向上させていくだろう」。
ジャクソン氏は、公認安全専門家で、安全衛生問題、プログラムに関し、NSCを代表、ワシントン市の政府、議会、非営利団体、企業幹部の対応にあたる。同氏は、NSC代表として、議会、州議会の聴聞会での証言を担当する。
ジャクソン氏は、これまでの6年間、ワシントン市の全米鉱業協会(National Highway Traffic Safety Administration)の副会長を務め、人的資源問題に関し、鉱業界を代表して、議会、議会職員、ホワイトハウス行政官らとわたりあった。それ以前は、アメリカ鉱業評議委員会(American Minig Congress)で同様の役割を務めた。またアリゾナ州トゥーソン市のASARCO(株)で、安全管理を18年間担当した。



作業ゾーンでの死亡最多、議会、対策を要請

 ワシントン―全米幹線道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration)の報告した最新の年間統計によると、1999年には作業ゾーンで872人が死亡し、過去最悪の記録となった。これまでの最多記録は、1994年の828人で、1990年代後半は、年平均3万9千人が負傷している。
 死亡者の約85%は、他の車両または道路わきの建設機材に追突した車に乗車していたドライバーその他の人々であった。死亡者の15%は、道路建設労働者や通行人であった。
 事故率は、1997年の死亡者数693人から26%の急増。このため、議会が調査にのりだし、連邦幹線道路局(Federal Highway Administration)、州政府職員、安全専門家、労働団体が、下院幹線道路・路線小委員会で証言台にたった。
 「作業ゾーンを通過するドライバーや仕事を完成させようと昼夜働く労働者は皆、作業ゾーンの安全確保のために、できることは全てしなくてはならない」と、小委員会のトム・ペトゥリ委員長(共和党、ウィスコンシン州)は述べた。
 在ワシントン市の幹線道路建設労働者組合である国際作業技師組合(International Union of Operating Engineers)を代表して、ラリー・エディントン氏は、建設ゾーンの労働者保護は充分でなく、また、幹線道路建設・復旧の効率改善イニシアチブが、労働者の安全にマイナス影響を及ぼしている可能性があると語った。
エディントン氏は、懸念として、安全の重要性を軽視した競争的な入札プロセス、過密な作業スケジュール、労働者を狭い空間へと追いやる通行権の縮小(reduced right-of-way)、労働者の視力が劣り、疲労もたまりやすい夜業の増加を挙げた。
 建設工事や交通量の増加は、問題を悪化させている。現在、幹線道路作業ゾーンは、バージニア州では、600以上、ニューヨーク、カンザス両州では500ゾーン、イリノイ州では400ゾーンあると、カンザス州のE・ディーン・カールソン運輸長官は述べた。カリフォルニア州では、向こう5年間で5マイルあたり1マイルの作業が予定されているとも述べた。
 聴聞会では、証人らは、現状打開の可能性を幾つかあげた。
  • 入札過程に安全プログラム費用は含まないこととし、安全関連費用が削られないようにする。また、建設会社はすべて、必要な予防措置を採る。
  • 作業ゾーンの労働者により十分な保護を確保する。
  • いくつかの道路プロジェクトでは、全体を通行止めとし、効率と労働安全の最大化を図る。
  • 作業ゾーン問題、関連法規を施行し強化する。
  • 作業ゾーン問題、関連法規について、一般公衆を教育する。
  • 作業員、関連法規施行担当職員らの研修を改善する。
 事故の最大の原因は、スピードの出し過ぎ、不注意、通行権の奪い合いである。



EPA、有毒化学物質の取り扱い規定を公布

 ワシントン − EPA(環境保護庁)は先日、41種の化学物質について、生産量、使用方法、暴露関連データの提出を製造業者、輸入業者に義務付ける、最終規則を公布した。
政府当局は、現行の暴露限界値は、半導体産業その他の労働者を肺がんから保護するには、不十分ではないかと懸念している。
同規則は、半導体、自動車ベアリングその他の製品製造に用いられる37種のインジウム、金属、化学物質及び4種のその他の化学物質を対象としている。同規則は、政府請機関試験委員会が、危険評価のための情報収集を目的とした規則を公布するようEPAに要請したのを受けて、有害物質管理法(Toxic Substances Control Act)の下、公布された。データが収集されれば、同委員会は、化学物質の調査を続行すべきか決定する。



手指傷害の原因調査

 マサチュ―セッツ州ホプキントン − 全米電子傷害監視システムは、1998年の米国の病院の緊急治療室が扱った最多の業務上傷害は、手指の裂傷であったと報告した。
 なぜ、どの様にこのような負傷が起きたかを探るため、リバティ・ミューチュアル・リサーチ・センター・フォー・セイフティ・アンド・ヘルス(The Liberty Mutual Research Center for Safety and Health)とマサチュ―セッツ州ハーバード大学公衆衛生研究所は、1997年に起きた外傷性手指傷害の事例交差調査を開始した。
 同調査員らは、負傷した労働者へのインタビューを通じ、危険因子を特定しようと企図。負傷前の状況について尋ねた。情報を編集・吟味し、多忙、その他の混乱、非定常作業などの危険因子の発生を特定しようとした。
 調査員らは、手を負傷して2日以内の18〜77歳の労働者1,179名にインタビューした。232の事例に基づく初期データは、アメリカ産業衛生ジャーナル(American Journal of Industrial Medicine)(Vol.39, No.2)に掲載された。
 調査結果を挙げると、
  • 裂傷は負傷の57%を占める。
  • インタビュ−した人々の35%は、機械産業で働いていた。
  • 外傷性手指傷害は、不調な機械や工具の使用中に、リスクが最も高かった。
  • 非定常作業方法や特別作業は、手指傷害のリスクをかなり高めた。
  • 多忙、混乱も手指傷害のリスクを高めた。
  • 手袋の使用は、手指傷害のリスクを軽減した。



新しい薬物検査でごまかしも発見


 テネシー州ノックスビル − 麻薬使用を隠そうと、通信販売製品やハーブ製品を使って薬物検査を「ごまかす」労働者は、すぐに見つかる。
 ジョンソン市のイースト・テネシー州立大学クウィレン医科大学(East Tennesee State University's Quillen School of Medicine)の研究チームは、標準的な薬物検査で麻薬を隠蔽する混和剤を特定する技術を開発した。
 新しい検査では、尿一滴を充電した管に入れる。正または負の電気を帯びた分子に分かれると、コンピュータを用いて、薬物検査の結果を陰性と偽る物質を特定する。この物質には、硝酸塩、燐酸塩、塩化物、クロム酸塩などがあり、薬物検査で、麻薬の痕跡を隠蔽する化合物に含まれている。保健社会福祉省(Department of Health and Human Sercivces)は、薬物検査所向けの新しいガイドラインを作成中で、薬物検査の手法を見直している。
 昨年、アトランタ市の旅客機パイロット協会デルタ支部は、デルタ航空が、尿サンプルを取り替えたかどうかを調べる薬物検査で落第した5人の従業員を解雇したとして、同社に対し、異議を申し立てていた。この問題で、同社は、このやり方を見合わせた。




安全専攻の学生、減少の一途

イリノイ州デプレ-ンズ― 米国安全技術者協会(American Society of Safety Engineers:ASSE)によると、労働安全衛生・環境管理のキャリアを目指す学生が減りつつある。この減少傾向は、2年前に始まったと同協会は述べた。
この傾向に歯止めをかけ、安全専門職の将来を保障しようと、同協会は、対策を講じた。同協会の理事会は、最近、安全衛生・環境担当教職員のニーズや目的に焦点を当てた教職者実務専攻の設置を承認した。
教職者実務専攻は、大学、単科大学の教職者を対象に、今秋、調査を行う。調査では、安全関連単位の取得に、より多くの学生の関心を引くにはどうすればよいか、意見、アイディアを募る。
「この教職者実務専攻で、この職業が直面している危機を政府機関に認識させるに足る洞察が得られればと願っている」と、米国安全技術者協会のエディ・グリーア会長は語った。




鉛暴露に新NIOSH勧告

 ワシントン − NIOSH(国立労働安全衛生研究所)の新しい刊行物は、31の調査を要約、その結果を職業性鉛暴露からの労働者保護に関する勧告にまとめた。要約には、橋、造船所など、さまざまな職場設定が含まれている。
 調査は、1994〜1999年にかけて、NIOSH健康障害評価プログラムのもと、行われた。このプログラムでNIOSHは、個別の事業場の労働衛生問題を見直す目的で、労働者、労働者代表、経営者からの要請に応じた。
 この「健康障害評価:職業性鉛暴露に関する諸問題、1994〜1999年」と題した調査報告書は、個別の事例報告からの所見と勧告を掲載。また、職業性鉛障害に関する主要な調査、教本、基準の一覧表も載せている。
 31の調査結果をいくつか挙げる。
・ 鉛暴露は、換気の改善、良い労働慣行の励行といった安価な手段で減らすことができる。
・ 造船所やバッテリー製造工場といった在来の事業場ではない事業場で、鉛を有する場合、労働者は、有害な暴露の危険にさらされている可能性がある。
・ 労働者の衣服、皮膚に付着した鉛粉塵で、その家族も危険にさらされる。
 「健康障害評価:職業性鉛暴露、1994〜1999年」は、電話:800―356―4674または、www.cdc.gov/nioshで、NIOSHより入手可能。



エネルギー、労働両省で、労働者災害補償センター開設

 ワシントン − エネルギー省、労働省は、先日、核兵器製造関連業務に従事し、罹病した人々に、労働者災害補償を給付する初の供給センターを開設した。
 エネルギー省によれば、センターは、ケンタッキー州パドゥカ市に開設、このほか、9つのセンターを全米に開設する。センターは、両省の共同出資によるものだが、労働省が、昨年制定されたエネルギー労働者職業性疾病補償法(Energy Employees occupational Illness Compensation Act)に基づき、業務上罹病した現役、元労働者に対する補償、療養給付の管理を所管する。
 対象疾病は、放射線、ベリリウム、シリカ暴露に起因する疾病である。




ISEA、新NIOSH試験所を支援

 バージニア州アーリントン市 − 国際安全機器協会(ISEA)は、NIOSHの国立個人用保護具技術試験所に対し、議会、行政府の支持を醸成しようと働きかけている。
 昨年創設された同試験所は、呼吸用保護具技術に焦点をあてる。将来は、反応体の組合わせにおける総合的防護効果の評価や、化学薬品、生物薬品に対する呼吸保護認定プログラムの開発などといったプロジェクトも手がける。




労使、OSHA記録保持計画をめぐり衝突
 
ワシントン―事業者団体と労働組合は、OSHAの業務上傷病記録保持基準の大幅改正を進めようとする労働省の決定に対し、明らかに異なる反応を示した。
 労働省は、州政府が、独自の労働安全衛生報告規則を連邦規則に適合させられるよう、早くから実施計画を予告してきたとして、同規則を2002年1月に実施すると発表した。下院の二小委員会の委員長は、同規則のいくつかの問題を検討し終えるまでは、同規則の発効を見送るよう要請していた。
 記録保持問題について労働省を訴えていた全米製造者協会(National Association of Manufacturers)(在ワシントン)の代理人、バルーク・フェルナー氏は、エレイン・チャオ労働長官に書簡をしたため、2点につき、労働省を称えた。チャオ労働長官は、同省がエルゴノミクス問題全体にとりかかるため、「筋骨格系障害」の定義および聴力損失の基準については、1年間の猶予を与える。
 しかし、フェルナー氏は、事業者の大半は、新しい記録保持システムに変更するゆとりがなく、現行システムをもう1年間許されないものか、尋ねた。また、記録していない傷病は業務外であるとの証明を、OSHAは事業者に課すのではないとした労働省の非公式見解を、書面にするよう要求した。
 ワシントン市の大規模使用者調査団体、オーガニゼーション・リソーシィズ・カウンセラーズ(Organization Resources Counselors)のウィリアム・アメント顧問は、少し違った方針を採っており、新規則は「実質的な改善」をもたらすと述べ、同団体は、基準の確立に向け、長年努めてきたので、その成立は喜ばしいと語った。しかし、同基準にはいくつか欠点があり、同団体は、新任のOSHA担当副長官に検討を要請する、と語った。
 AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議)(在ワシントン)は、同基準を支持するため、全米製造者協会の訴訟に参加しており、筋骨格系障害、聴力損失条項の猶予は「方向を誤ったものである」と、ペグ・セミナリオ労働安全衛生部長は述べた。



安全専門弁護士、有害物質問題に挑む

 ワシントン − 安全専門弁護士の第一人者は先日、有害物質に関する「非公開の規則作成」を止めるよう、議会に要請した。パットン・ボグズ・LLP事務所(在ワシントン)のパートナーで、ボルティモア市のジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院の元安全法規担当助教授でもあった、ヘンリー・チャジェット氏は、下院に対し、米国産業を脅かす規則の濫用や科学的な誤りを防ぐ改革を促すよう勧告した。
 「労働安全衛生庁(OSHA)、鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration)の両庁は、公衆の責任という、民間部門の意見を反映しない「非公開会議」でまとめた有害物質の公示や(世論抜きの)基準を採用、これを拠り所としているが、私見では、これは、違法な規則作成である。納税者の金を濫用したものであり、禁ずべき利害の対立である」とチャジェット氏。
 同氏は、下院教育・労働力委員会の労働力保護小委員会で、OSHA、鉱山安全衛生庁共、法規施行、規則作成権限を有する連邦政府職員も参加する非公式会議では、アメリカ産業衛生専門家会議(American Conference of Governmental Industrial Hygienists(ACGIH))などの団体から支援を得ていると指摘。
 不適切な基準が作られると、有害表示も不適切となり、労働者に害を及ぼし、産業を圧迫すると警告した。
 「議会は、潜在的有害物質の特定・規制に関し、連邦政府の手続きを改善すべきである。利害関係者全員の参加を得た、公開された、透明なプロセスにしなければならない」と同氏。
 チャジェット氏は、連邦政府諮問委員会法(Federal Advisory Committee Act)に基づく、連邦衛生基準諮問委員会の創設を勧告。委員会は、アメリカ産業衛生専門家会議(ACGIH)、労使、専門組織の代表で構成する。