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NSC発行「Safety + Health」2001年9月号

OSHAの最新情報


OSHA、鉛暴露プログラムを開始

 OSHAは、職業病の主要原因のひとつである鉛の職業性暴露の削減をめざす全国強調プログラムを展開する。
 「鉛の職業性暴露は、産業全体で最も広くはびこった問題である」と、R・デイビス・レインOSHA長官代理は述べた。「労働者の鉛暴露削減に向け、でき得ることは全てなさねばならない。本プログラムは、鉛を扱う事業所に監督業務を絞り込む一助となる」。
 本プログラムでは、一般産業、建設業、港湾労働、海運業、造船など、OSHA所管の事業場全てが対象となる。
 今年7月にOSHAが地域事務所に発した遵守命令には、高い暴露値や高い血中鉛濃度が記録された産業コード一覧表が含まれていた。
 OSHAは、2002会計年度末までに職業性鉛暴露を15%削減するという、OSHA戦略計画で設定した目標を達成したいと希望。同戦略計画では、労働災害で最も多い、次の3タイプの削減を目標に掲げた。切断とシリカ、鉛暴露による健康障害である。



OSHA、8万の事業者から2000年度災害データを収集
 
OSHAは、先日、製造業その他の8万の事業者から、2000年度の労働災害データを収集し始めた。法規施行、技術援助その他のプログラムのための最新の根拠を得るためである。
 収集した情報はまた、政府行動・成果法(Government Performance and Results Act)に基づき、OSHAが監督した事業場の傷病率が減っているかどうかを確認するのに用いられる。
 しかし、2001年については、災害記録の収集に5万6千の建設事業者を追加するという当初の計画を破棄した。追加するとしても、2001年度データの収集前、即ち2002年まではあり得ないと、OSHAスポークスパーソン。
同スポークスパーソンは、OSHAが2002年中に1万5千〜2万の建設会社を調査するだろうが、調査予算の制約で、たぶん調査は限定されたものとなるだろうとした、名を伏せたOSHA職員のコメントを載せた報告書については、コメントを差し控えた。その報告書は「不確かだ」と述べた。
 OSHAは通常、事業者から収集したデータを基に、危険性の高い事業場に的を絞り、毎年4千の事業場を監督する。また、1万3千の事業者に書簡を送付、各事業場での高度の危険について対処するよう警告、OSHAの無料相談プログラムも紹介している。



OSHA、今年中に法規遵守支援官増員

 OSHAは、法規施行より事業者支援を優先するようにとの事業者、ブッシュ政権からの圧力で、今年、法規遵守支援官を増員すると、R・デイビス・レインOSHA長官は述べた。
 カリフォルニア州アナハイム市での米国安全技術者協会(American Society of Safety Engineers in America)の会合で、レイン長官は、「今年末までに、各連邦施行事務所に1名ずつ、遵守支援担当専門官を配置する」と述べた。遵守支援専門官は、法規施行担当官から独立したものであるとも付け加えた。
 また、2年前に策定された戦略行動計画のもと、訓練・教育に重きをおいて、OSHAおよび関係者の資源を融合した。OSHAは現在、本プログラム下、97組の積極的パートナーシップを構築しており、これに5,500人強の使用者、12万5千人の労働者が参加していると、レインOSHA長官は述べた。
 法規遵守支援と法規施行の組み合わせは、長い間、論争の的となってきた。事業者側は、遵守支援へ重点が移るのを歓迎したが、食品・商業労働者合同組合(在ワシントン)のジャッキー・ノウェル安全衛生部長は、OSHAの厳しい予算状況を考慮すると、遵守支援への傾注は、いずれにせよ事業者は利用しないのであるから、意味がないと述べた。



大穀物倉庫爆発報告書、OSHAと業界を非難

 カンザス州ウィチタ市で1998年に起きた、ディブルース・グレイン社(De Bruce Grain Co.)の大穀物倉庫の大爆発事故について、OSHAの委託を受けた5人構成の調査チームは、OSHAと穀物産業両方が安全確保を怠ったと批判して、報告書を結んだ。
 世界最大の穀物倉庫で起きた爆発事故は、穀物粉じんの集積が原因となった。労働者7名が死亡した。
 調査チームは、原因究明で浮上した問題は、約20年前、1977年12月に59名が死亡、48名が負傷した5件の穀物倉庫爆発事故の原因と防止に関し、全米科学学会(National Academy of Sciences Panel)が特定した問題と同じであったと指摘。報告書は、ディブルース社は、「穀物粉じんが爆発物となることを全く無視しており」、同社が業界の例外というわけではないだろうと記した。
 「アメリカの穀物産業は、穀物粉じんの爆発物としての重大性を否定しようと、相当量の政治的影響力を結集している」と同報告書。穀物産業の役員は、排除すべき真の問題は、着火源であると、本誌に語った。「穀物粉じんは、燃料にすぎない。これを完全に安全な水準に下げることはできない」と同氏。
 保健会社数社は、穀物倉庫を検査せずに保険を引き受けていると、報告書は付け加えた。最後に、OSHAは、穀物倉庫労働者の保護に関し「全く無力であった」と調査チーム。OSHAの基準は、爆発防止に不十分で、施行もされておらず、爆発のあったディブルース社穀物倉庫へのOSHA監督官の立ち入りは、1983年以降皆無であったと、報告書は述べている。



下院聴聞会、OSHA規則作成を非難

 先日の下院労働力保護小委員会の聴聞会では、証人らは、OSHAの規則作成プロセスについて、多くの点を非難した。
 しかし、証人らは、多くの様々な法定義務、相反する政治勢力、政権交替による一貫性の欠如など、OSHAが、基準設定にあたり抱えている難題については認めた。ニューヨークの大規模事業者調査団体、オーガニゼーション・リソーシィズ・カウンセラーズ(Organization Resources Counselors)のフランク・ホワイト副会長は、近年、「規則作成プロセスは、煩雑、時間浪費型で、ほとんど完全に停滞の域にある」と述べた。
 OSHA指導部による選択が、当局の優先課題を変えたことも、表面上の非効率を説明しうると同氏。ホワイト副会長は、元OSHA担当労働副長官補でもあった。同氏は、新基準に向けて「環境を整えるために戦略的、前向きなことは、OSHAはほとんどしてこなかった」と述べた。
 AFL-CIO(在ワシントン)のペグ・セミナリオ労働安全衛生部長は、6年前に議会が共和党支配となった頃から、安全衛生基準に対する政界、産業界の反対勢力が勢いづき、「重要な労働者保護をずいぶんと妨げ、遅らせている」と述べた。
 


下院法案、OSHAの2計画を支持
 トーマス・ペトゥリ下院議員(共和党、ウィスコンシン州)の提出した法案は、安全衛生を推進する模範的な事業場を奨励する、OSHAの自主的保護プログラムを成文化する。
 ペトゥリ議員によれば、7月中旬に14名の共同発起人を得た同法案は、「プログラムの突然の取り消しにより、プログラム参加者が足をすくわれることのないよう」保証するものである。同法案は、本プログラムの発展を促す。
 自主的保護プログラムでは、使用者は、OSHA要件を上回る水準で安全衛生プログラムを実施することを確約し、OSHAが各プログラムを点検の上、一般的監督リストからこれらの使用者を外す。現在、735の事業場が参加しており、これらの傷病率は、産業平均の60%を下回る水準となっている。
 これとは別に、ロバート・アンドゥルー下院議員(民主党、ニュージャージー州)は、州労働安全衛生当局が州・地方公務員を保護していない諸州で、連邦労働安全衛生保護法規を拡張適用しようとしている。