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NSC発行「Safety + Health」2001年10月
ニュース
労働者の死亡率、引き続き低下
ワシントン― 労働者数の増加にもかかわらず、2000年の業務上での死亡者数は、1999年の6,053人から5,915人へと、2%減少した。
労働統計局のこの数値は、殺人と自殺を含む。平均すると、2000年の1日当たりの死亡傷害は、16人であった。
「多くの進展を見たが、本報告書は、傾注すべき点を指摘している」とエレイン・チャオ労働長官。「職場の惨事を減らし続けるため、遵守支援と訓練を推進したい」。
産業別では、建設業が死亡者数1,154件と最多を記録したが、1999年 1,191件より
3%減少した。 1996年以来初の減少である。
労働者の死亡原因のトップは、全職種を通じ、幹線自動車道路事故である。1992年の報告開始以来、初の減少をみた。幹線自動車道路事故による業務上死亡者数は、9%
減の1,363人であった。
自動車両または可動機器に激突された労働者は、2000年にはわずかに減少した。しかし、農業関連作業など、幹線自動車道路事故以外の死亡者数は、1999
年の352人から 2000年の 399人に増加した。
ヒスパニック系労働者の死亡も又、昨年増加した。ヒスパニック系労働者の労働災害死亡者数は、1999年の725人から
2000年の 815人へと、12%の急増であった。同期のヒスパニック系建設労働者の死亡者数は、24%
増加した。 1992年から、ヒスパニック系労働者の死亡者数は60%増加した。
「ヒスパニック系労働者は、職場で大きな、今後とも増大しつつある、重要な位置を占めている」とワシントンのジョン・スウィーニーAFL-CIO(米国労働総同盟産業別会議)会長は述べた。「彼らは、あまりにもしばしば、危険や雇い主の虐待からほとんど、あるいは全く保護されることなく、危険な仕事に従事している」。
職場での殺人も、6年間で初の増加。昨年は、677人が業務関連で殺され、 1999年の
651人の4%増となった。
墜落・転落による死亡も、734人に増加、年間総数としては過去最多となった。梯子や静止車両からの墜落・転落による死亡は増加した一方、足場、建物の梁や屋根からの墜落・転落は減少した。
業務上死亡者数は、製造業では7%減、 農林漁業では12%減で、ともに最低水準を記録した。死亡者数は、小売業では高く、業務関連の殺人の増加によるところが大きい。サービス業における死亡災害は、2000
年は約4%増加した。
事実チェック

出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2000年
アスベスト関連支払い請求が急増― 保険団体の報告
ニューヨーク― アスベスト関連求償が300件と最低値を記録した1980年代以降、保険金支払い請求が急増、ここ数年間は何千件にも達している。ニューヨークにある保険情報研究所によれば、最近の支払い請求は、アスベスト製造業者よりも、アスベストを利用する企業から申請されている。これまでは、責任保険請求の大半は、企業の商業責任保険証券の製品部分について、申請がなされた。この場合、保険会社の責任は有限である。現在、企業は、原則的に総額限度のない、保険証券の土地・家屋、操業部分に補償を求めている。
また、同研究所によれば、弁護士や労働組合は、暴露の兆候はあるものの発病していない労働者に対し、請求を申請するよう奨励している。後日発病しても、責任を問うべき企業は、アスベスト補償で破産しているかもしれないという懸念からである。しかし、アスベストに暴露したもの全てが障害者になるわけではないと、同研究所は述べている。発病前に請求するのも利点はあろうが、後日発病した場合、追加補償を受ける資格はないかもしれないと警告している。また、ロンドンの保険会社は、アスベスト補償を支払う前に、疾病の医学的根拠を求める。
インシュアランス・サービス・オフィス社によれば、保険会社は、主に1986年以前に作成された保険証券の環境、アスベスト関連支払い請求で、1991〜1999年には、損害、損害査定費用430億ドルを計上した。同期間中の保険金支払額は、計267億ドルであった。ワシントンにある同社のデータから、保険業界は、最終責任を考慮して、請求を加速的に処理していると推察できる。1999年、保険業界は、環境、アスベスト関連補償に54億ドルを支払った。これは、年間支払い総額としては過去最高で、同年に新たに支払い請求のあった29億ドルを25億ドル上回った。
2002年に健康保険料大幅引き上げの見込み
ワシントン― USAトゥデイ紙によると、保険各社は、国内企業に対し、2002年に、13%
から最高50%までの範囲の健康保険料引き上げが見込まれると通知している。この急増の原因は、医薬品や病院、医師費用の増加である。また、連邦アナリストによると、患者の権利章典(a
patient's bill of rights)が議会を通過すれば、健康保険料は、向こう5 年間でさらに4〜5%上がる可能性がある。
ニューヨークの保険給付金コンサルタント業、マーシュによると、中小企業は、2000
年には9.2%の保険料率増をみた。全規模の企業では、8.1%の増加であった。同紙によると、企業の多くは、保健費用を縮小するため、従業員に禁煙、減量、健康増進のための運動を奨励し始めた。アーカンザス州ベントンビル市に拠点を置く巨大小売業のウォールマートでさえ、2001年第2四半期の収益は、売上高を上回る伸びをみせる保健費用などの要因で、減収となった。
出所:ヒューウイット・アソシエーツ(Hewitt Associate)、2001
共和党、クリントン政権時成立の法規破棄を断念
ワシントン― ジェイムズ・ジェフォーズ上院議員(独立、バーモント州)の離党の余波を受け、議会共和党は、クリントン政権末期に成立した連邦法規の破棄を断念した。今春、共和党は、クリントン政権の法規乱発を非難し、45規則について、議会再審理法を用いて審理、撤回すると断言していた。同法は、法規を撤回するのに、フェデラル・レジスター(連邦官報)で当該法規が公布された日より60立法日間を議会に与える。
3月、議会は、同法を用いてOSHAエルゴノミクス規則を破棄しようとしたが、7月に60日間が経過した。共和党議員らは、ジェフォーズ氏の離党と党内穏健派の増大が勢いをそいだと認めた。7
月19日には、下院共和党議員19名が、民主党議員198名に加わり、飲料水中の砒素をめぐる基準を緩和しようとのブッシュ政権の動きに反対票を投じた。また、共和党は、国立公園近郊での事業や発電所の排出を規制する規則を撤回しようともくろんでいた。また、政府発注先の請負業者については、その安全衛生・環境記録を考慮するとした「ブラックリスト」法案を阻止しようとも模索した。
ブッシュ政権、環境配慮に傾く
ワシントン― 将来の環境問題に関して、世論が、ブッシュ政権の立場に影響を与えるだろうか? ブッシュ大統領が、特にエネルギー政策において、環境穏健派と企業との間でどっちつかずの態度を取り続けるとの証拠がある。世論調査では、同政権の環境政策に対し、大統領の主要な支持者層を構成する穏健派女性議員が低い評価をつけた。
EPA(環境保護局)は、従来の発電方式による環境、健康リスクを減らすための、代替エネルギー市場の育成をめざす新自主的プログラム、グリーン電力パートナーシップ(Green
pPower Partnership)を、フォーチュン誌500 社中20社、自治体、大学その他とともに組んだ。最近のEPA助成金は、燃料電池の利用開発を奨励、ブッシュ大統領のエネルギー計画は、資源の保護と代替エネルギーのための資金を含んでいた。これは、ANWR
あるいはAnwarとして知られる国定北極圏野生動物保護区での掘削を許可しているのと同じエネルギー計画である。
自分たちに影響のある環境規制はどうなるのかと気をもむ企業は、どこに置き去りにされているのだろうか。ストラテジストは、企業は、共和党穏健派の怒りを買うことなく、環境規制を抑制する政策を期待すべきであると語った。
親の化学物質暴露で、小児癌のリスクが高まる
ユタ州クリアフィールド市― アメリカ疫学ジャーナル(American Journal
of Epidemiology)(V154 、No.2)に発表された調査によると、ラッカー希釈液、テレピン油、ディーゼル油、木材粉じんやその他の毒性物質に労働者が暴露すると、その子供が神経芽腫を発病する可能性が高まる。
神経芽腫は、主として乳児、子供がかかるガンで、大人が発病するのは稀である。神経組織が侵され、しばしば、リンパ節、肺、肝臓、骨に広がる。小児ガンでは、三番目に多いタイプである。
チャペル・ヒル市のノース・カロライナ大学、アンクレア・ド・ルーズ氏他は、神経芽腫と診断された小児538名の両親の業務上の暴露について調査した。母親のほとんどは、化学物質へ暴露しておらず、父親は、暴露している可能性がかなり高いことが判明。塗装工、大工、金属職工の子供は、神経芽腫の発病リスクが高まるように見受けられた。
塗装工の子供は、リスクが二倍にもなる。調査グループは、これは、おそらく塗料よりも塗料希釈液や他の溶剤への暴露に関連しているだろうと報告している。テレピン油への暴露は、労働者の子供の神経芽腫のリスクを十倍以上高める。
調査グループは、毒性物質への父親の暴露が小児ガン発病率を増すのは、毒性物質が精子構造を変え、子供がその変異を継承するからではないかと推測している。
- 何がリスクか?
下記に、子の神経芽腫の発病に対する親の化学物質暴露の影響(推定)を表した。下記の化学物質による発症率は、1.5以上であった。
化学物質 |
症例数 |
発症率 |
切削油 |
16 |
1.7 |
ディーゼル燃料 |
42 |
1.5 |
アセトン |
23 |
1.5 |
ベンゼン |
5 |
1.8 |
ミネラルスピリッツ |
26 |
2.2 |
塗料希釈液 |
43 |
1.9 |
テレピン油 |
25 |
10.4 |
金属(その他不特定) |
10 |
2.6 |
はんだ |
17 |
2.6 |
穀物粉じん |
6 |
3.2 |
木材粉じん |
37 |
1.5 |
*比率は、産業衛生専門家のインタビュー再検討により修正した数値。
出所:アメリカ疫学ジャーナル、2001
上院、情報・規制問題局長にグラハム氏を承認
ワシントン― 上院は、先日、元ハーバード大学リスク評価センター所長であった、ジョン・D・グラハム哲学博士のホワイト・ハウス事務局情報・規制問題局長就任を承認した。
グラハム氏の指名には、異論があった。大統領予算局の一部である情報・規制問題局は、規制当局から規制が出されるかどうか、またどういう形で出されるかという点で強力な統制力を行使するが、同氏は、OSHA支持者からは、規制反対派として、またOSHA規制産業の盟友と目され、広く批判を招いていた。しかし、同氏は、情報・規制問題局長の前任者の大半を含め、多くの人々から、堅い支持を得た。他方、民主党政権下で政府の規制担当の要職にあった人々は、反対した。
化学委員会、アルコール・タバコ・小火器局、爆発事故調査で連携強化
ワシントン― 化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard
Investigation Board)とアルコール・タバコ・小火器局(Bureau of Alcohol,
Tobacco and Firearms : ATF)は、化学工場の爆発事故の調査で、連携を強化すると合意した。
二機関は、爆発事故調査でのよりよい協調や、化学安全データの交換も含めた、爆発事故、事故調査開始の相互通報の改善に関する10原則について、覚書に署名した。化学安全委員会のスポークスマンが調整問題を未然に防止する「予防措置」と称する同覚書は、訓練、相互専門支援と公報をカバーする。
化学安全委員会は化学プラントの事故を調査し、安全改善策を勧告し、一方ATFは放火と爆発物の犯罪的使用に関する法律を施行する。
手洗いは、呼吸器疾患を予防
サンディエゴ― 軍隊若年兵の欠勤で最も多い原因が、呼吸器疾患であるため、国防省保健班は、風邪対策として、紫外線照射からワクチン、粉じん抑制にいたる全てを試みた。アメリカ予防医学ジャーナル(American
Journal of Preventive Medicine)(Vol.21, Issue2)に掲載された調査によると、一般的な風邪に対する最強の武器は、常識である。同調査では、最低5回の手洗いを命じられた海軍新兵は、呼吸器疾患の発症が45%少なかった。
イリノイ州の新兵訓練センターで試験的に導入されたその他の対策は、すべての洗面台に液体石鹸を設置し、湿式洗面台を査閲合格とするなどであった。
海軍は、咳止め作戦を中止した。海軍新兵には、1 日5回も手洗いする時間がないからである。しかし、国防省国際感染症監視・対策システムのジョエル・ゲイドズ氏は、手洗いで、違いは出ると主張した。
「目に付くほど手が汚れることがあまりないような職場では、食前に手を洗おうとはしないだろうと、私は思う」とゲイドズ氏は記す。「日常生活での手洗いを再度強調しておくと、ごく僅かな努力や費用で、とくに風邪のシーズンには多大な恩恵を受けられる」。
職務の複雑性、騒音、血圧の関連が判明
ワシントン― 仕事が複雑になればなるほど、労働者は騒音に悩まされるようになる。労働衛生心理学ジャーナル)(Journal
of Occupational Health Psychology)(Vol.6 No.3)に掲載された新しい調査によると、高水準の騒音に曝された労働者のなかでも、複雑な仕事に従事している者は、単純な仕事に就いている者の二倍以上の血圧上昇を示した。
高水準の騒音は、職場でもっともありふれた環境ストレッサー(ストレス刺激)との認識から、国立労働環境衛生研究所(National
Institute of Occupational and Environmental Health)他の調査チームは、21の工場で働く1,507人を調査した。調査チームは、労働者の騒音暴露レベル、職務内容の複雑性、仕事への達成感と血圧を測定した。
「血圧上昇の割合が最も多かったのは、高水準の騒音の下、複雑な仕事に従事した労働者群であった」と調査チームは記す。「高水準の騒音の下でも、単純作業の労働者群は、血圧上昇の割合は低かった」。
意外な展開であるが、調査チームは、単純作業には、低い環境音や音楽が有効らしいと発見。ほどよいレベルの騒音は、「単純作業にありがちな退屈さや単調さといった低刺激を」相殺しているのであろうと推察している。
カビ関連疾患で、保険請求が急増
ニューヨーク― ここ数ヶ月、カビの大量発生によるシック・ビルディング症候群で、全米各地の学校が閉鎖されている。学校がメディアの注目を浴びているが、カビ問題は、学校に限らない。
ニューヨークを拠点とする保険情報研究所によると、保険会社に対するカビ関連の支払い請求が、事務建物や家屋を含めて、昨年は著しく増加した。アトランタ市の疾病対策予防センターによると、ある種のカビへの暴露は、高濃度の場合、一般的に花粉症に似たアレルギー症状などを起こす。
家屋や建物所有者に対して、カビが保険証券で担保されているかどうかは、カビがどのように発生したかによる。保険情報研究所は、配管の破裂など、担保範囲の直接結果については、補償される。しかし、湿気、結露、水漏れや出水によるカビは、補償されない可能性が高い。これらの場合は、保全問題とみなされる。
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