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NSC発行「Safety + Health」2001年10月号

ニュース

親の化学物質暴露で、小児癌のリスクが高まる

 ユタ州クリアフィールド市 − アメリカ疫学ジャーナル(American Journal of Epidemiology)(V154 、No.2)に発表された調査によると、ラッカー希釈液、テレピン油、ディーゼル油、木材粉じんやその他の毒性物質に労働者が暴露すると、その子供が神経芽腫を発病する可能性が高まる。
神経芽腫は、主として乳児、子供がかかるガンで、大人が発病するのは稀である。神経組織が侵され、しばしば、リンパ節、肺、肝臓、骨に広がる。小児ガンでは、三番目に多いタイプである。
チャペル・ヒル市のノース・カロライナ大学、アンクレア・ド・ルーズ氏他は、神経芽腫と診断された小児538名の両親の業務上の暴露について調査した。母親のほとんどは、化学物質へ暴露しておらず、父親は、暴露している可能性がかなり高いことが判明。塗装工、大工、金属職工の子供は、神経芽腫の発病リスクが高まるように見受けられた。
塗装工の子供は、リスクが二倍にもなる。調査グループは、これは、おそらく塗料よりも塗料希釈液や他の溶剤への暴露に関連しているだろうと報告している。テレピン油への暴露は、労働者の子供の神経芽腫のリスクを十倍以上高める。
調査グループは、毒性物質への父親の暴露が小児ガン発病率を増すのは、毒性物質が精子構造を変え、子供がその変異を継承するからではないかと推測している。

  • 何がリスクか?
    下記に、子の神経芽腫の発病に対する親の化学物質暴露の影響(推定)を表した。下記の化学物質による発症率は、1.5以上であった。

    化学物質 症例数 発症率
    切削油 16 1.7
    ディーゼル燃料 42 1.5
    アセトン 23 1.5
    ベンゼン 5 1.8
    ミネラルスピリッツ 26 2.2
    塗料希釈液 43 1.9
    テレピン油 25 10.4
    金属(その他不特定) 10 2.6
    はんだ 17 2.6
    穀物粉じん 6 3.2
    木材粉じん 37 1.5

    *比率は、産業衛生専門家のインタビュー再検討により修正した数値。
    出所:アメリカ疫学ジャーナル、2001