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NSC発行「Safety + Health」2001年11月号
OSHAの最新情報
OSHA基準の改正要求が高まる
ジョン・ヘンショー新長官を迎えたOSHAに、各方面から、安全衛生基準の改正または変更の要請が寄せられている。
例えば、バージニア州アーリントンの国際安全機器協会は、OSHAに対し、1998年の呼吸用保護具規則に、使用者や労働者がどの保護具を使用するか決める際に参考となる、指定保護因子の表を追加して、充実化を図るべきであると要求している。
同協会はまた、緊急時の洗眼・シャワー設備、工業用頭部保護、救急箱、建設労働者用高可視性安全服、建設業および一般産業向け聴力保護、建設現場での閉鎖空間、作業面でのすべり、つまずき、墜落・転落防止に関する「全米のコンセンサスを得た」自主的基準の採用をはじめとする、さまざまな変更を要請した。
同協会はまた、安全靴や他の個人用保護具が必要とされる場合は、その費用を使用者が負担しなければならないと明記した最終規則を公布するよう要請した。
消費者運動家、ラルフ・ネイダー氏が創設した在ワシントンの団体、パブリック・シティズンは、テニシー州ナッシュビルの製紙・産業・化学・エネルギー労働者組合同盟と共同で、歯科用機材、スポーツ用品や航空機器部品に用いられる金属であるベリリウムの許容暴露限界値を、1立方メートルあたり
0.2マイクログラムと、90%引き下げるよう要請した。同二団体によれば、ベリリウムへの暴露は、致死的な肺疾患に関連している(ベリリウムに関する詳報は、38頁に掲載)。
一方、使用者団体は、訴訟の争点でもある、OSHAの新しい記録保持基準の聴力損失、筋骨格系障害条項を緩和するよう要求している。OSHAは、これらの要請について、新しい事務処理規則に基づき検討すると述べた。
鉄骨組立基準に批判集中
異論の多いOSHAの新しい鉄骨組立基準は、新たな批判を招いている。
同規則は、折衝により作成された初の基準であるが、非難の集中砲火を浴びている。最近では、バージニア州アレキサンドリアの米国ゼネコン連合が、OSHAが2002年1月18日に延期した新基準の発効日を、さらに延期するよう要請している。同連合は、規則内容の変更も希望している。
在ワシントンの米国道路・運輸建設協会は、シアーコネクター(ボルトや棒を鉄鋼梁に溶接する)を建設現場で取り付けるよう義務付ける新基準の条項について、橋梁建設業者を免除するよう要求した。この規定は、実際、製作の際にシアーコネクターを取り付けるより危険であると、同協会は主張する。同協会は、後日、法的手段に訴えるだろうと語った。
米国ゼネコン連合は、最終規則にはいろいろな欠陥があるが、なかでも、墜落・転落防止は不十分で、シアーコネクターの取り付けは安全性の低いものになると述べた。「多くの人にとって、異論の多い法律である」と同連合のキャロリン・ガグリールモ安全衛生担当部長は述べた。
鉄鋼その他の金属企業団体である鉄鋼連合およびサウス・カロライナ州マートル・ビーチの鉄鋼ジョイスト(梁)研究所は、同規準の施行延期を求めて提訴した。
OSHA、安全相談を推進
OSHAは、事業者が、各自の安全衛生プログラムについて、連邦または州当局に容易に相談できるよう、対策を進めている。これは、自主性と協力的アプローチの尊重を段階的に取り入れる当局の対策の一部である。
例えば、先日の遵守命令は、相談を受けた事業者名や現場監督の結果は、「切迫した危険または重篤な危害」が改善されない場合を除き、州または連邦法規の施行とは別にして、機密扱いとするとしている。
また、事業者が、すでに監督猶予を享受している場合や、州の認識プログラムに参加している場合は別である。
しかし、事業者は、相談中に受理された危険リストを、3労働日間、または危険が改善されるまでの、いずれか遅い日まで掲示しなければならない。
遵守支援担当官の増強という面では、OSHAは、9月、ミシシッピー、ジョージア、フロリダ、アラバマ州の9ヶ所で、新任の遵守支援専門官を指名した。来年9月30日を末日とするブッシュ政権の2002年度予算は、連邦遵守支援費を140万ドル増の5,720万ドルに増加する。安全衛生規則に関する事業者の遵守相談のための州への助成は、4,880万ドルと増減なしである。
第三者による職場監査に弾み
ブッシュ政権は、事業団体が熱烈に歓迎するアイディアに生命を吹き込んだ。これは、事業者に対し、各社の安全衛生対策に第三者機関による監査を導入するよう奨励し、監査を受けると、OSHAの監督を免除するというものである。
クリス・スピア政策担当労働副長官は、第三者機関監査を公けに支持した。これは、副長官が、上院雇用・訓練・安全小委員会のマイケル・エンジ前委員長の補佐を務めていた時に擁護していた考えである。OSHA批判家、エンジ上院議員が、第三者機関による監査と監督免除に関する法案を起草したが、民主党の反対やクリントン大統領の拒否権発動の恐れもあり、立ち消えとなった。
現在、事業者団体は、OSHAが、労働安全の改善にコンサルタント利用を奨励する行政手段をとるよう、ロビー活動を実施する一方、労働組合は、OSHAの法規施行を弱めるとして、この提案に反対している。本案は、OSHAが、スタッフを増員することなく、あるいは若干減員して、安全衛生問題をカバーしたいとする思惑に合致すると、ワシントンの米国商工会議所のピーター・エイド労働法政部長は指摘した。
また、ジョン・ヘンショー労働副長官が大々的に打ち出している、事業者のための遵法支援、OSHA、事業者その他とのパートナーシップの構築、事業者による自主的なプログラムの尊重といった諸計画とも一致する。しかし、ヘンショー副長官は、OSHA長官に就任して以来、第三者機関による監査を明確に支持したことはない。
化学安全委員会、工程管理の改善を勧告
米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation
Board)は、化学産業に対し、死傷や物損を防止するため、化学工程の変更管理をよりよくするよう要請した。
同委員会は、1998年に発生した2件の事故を引いた。1件は、ワシントン州アナコーツにあるイクイロン・エンタープライジズ精油所における熱分解設備(Delayed coking(デイレードコーキング)unit)の火災で、労働者6名が死亡した。
2件目は、バルティモアにあるコンデア・ビスタ社の洗剤用アルキレート工場における反応釜の爆発火災で、4名が負傷、甚大な被害を被った。
どちらの場合も、安全のための意思決定の時間の欠如が問題となったわけではない。しかし「変更管理」プログラムが適切に作成され、実施されていたならば、2件とも、事故の影響を防止または軽減することができただろう」と、化学物質安全性調査委員会は述べた。
委員会は、OSHAおよびEPA(環境保護局)は、「変更管理プログラム」を義務付けていると指摘する。また、化学工場の管理者には、工程条件の安全限度を規定する、変更管理プログラムを発動せねばならないのはどのような場合かを認識できるよう、監督者や労働者を訓練する、定期的なプログラム監査を実施するなどの対策を講ずるよう、強く要請した。
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