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重大違反トップテンリスト

OSHAの「違反件数がもっとも多いトップテンの基準」の2001年版には、
もっとも重大で、意図的で、反復性の違反が掲載されている。

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety + Health」2001年12月号 p42-48
(訳:国際安全衛生センター)


アル・カー

ブッシュ政権下で、OSHAは事業者による死傷病報告の件数を基準として、きわめて危険性の高い労働現場と、もっとも重大な違反に焦点をあててきた。

政権2年目の今年も、「Safety + Health」は年次報告書の「OSHA違反トップテン」で同様の方針をとり、もっとも重大な召喚状発行例、つまり「意図的」で「重大」で「繰り返される」違反を取り上げている。今年の「トップテンリスト」は2001年9月30日までに行われた召喚状発行に基づいている。その内容は、若干の変化はあるが2000会計年度(1999年10月から2000年9月まで)と共通している。

「負傷と死亡の件数がもっとも多いのは在り来たりの危険有害要因によるもので、いつも同じ内容だ」と指摘するのは、大企業向けに安全衛生調査を行うオルガニゼーション・リソーシス・カウンセラーズ(ワシントン)の安全コンサルタント、ジョアン・リンハード氏である。

労働組合などは、ブッシュ政権がOSHAの厳格な方針を後退させるのではないかと懸念したが、実際は逆のようだ。リスト上位に位置する重大違反に対する召喚状は、2001会計年度に増加した。すべての基準について、意図的で、重大で、繰り返される違反に対する連邦段階でのOSHAの召喚状発行は、6%増えて56,440件になった。ただし全体の召喚状発行は79,525件から79,084件に減少し、検査の合計件数も36,608件から35,726件に減った。

労働省のジョン・ヘンショーOSHA担当次官補は、基準の施行はOSHAの業務の「基礎」であると断言した。同次官補は、事業者および事業者団体との協力関係を強調し、中小企業を中心として順法のための支援を強め、OSHAの資源をもっと有効に活用したいと考えている。また、この方針は強力な施行プログラムを止めることにはつながらないと述べた。

「次官補の発言は、現場ではOSHAが従来方針を踏襲するという意味に解釈されている」と指摘するのは、労働安全衛生専門のアトランタの弁護士、パトリック・R・タイソン氏だ。同氏は元OSHA担当副次官補で、現在は全米安全評議会(NSC)(イリノイ州アイタスカ)の理事長を務めている。

「基準徹底の手を緩めることはありえない」と、OSHAのリチャード・フェアファクス順法部長は断言する。また「召喚状発行を受けたトップテンの違反(2001会計年度)が、安全衛生上の危険有害要因と直結しているのを確認できて満足」とし、OSHAはもはや単なる書類事務や、重大な安全上の影響をもたらさない違反を重視することはない、とも述べている。

OSHAは、引き続き危険度の高い現場に焦点をあて、先ごろ、1999年に死傷病件数の多かった一般産業の14,000カ所の労働現場に警告書を発送した。また2001年末までに、これらの現場のうち約1,000カ所での検査を計画している。

2000年の事業者報告件数の調査は、2002会計年度中の対象を絞った検査のための土台になる、とフェアファクス順法部長は述べた。またOSHAの建設部長は、対象を絞った検査を建設業に拡大するよう提案したが、労働省はまだ最終決定していない。

簡単な解決策がなおざりに

安全問題の専門家は、文書による体系的な安全衛生プログラムを保持し、その指示を順守する取り組みをすれば、事業者は召喚状発行を受けなくてすむはずだと主張する。

「OSHAは企業が安全衛生に積極的に取り組むよう促している」と、OSHAのモービル(アラバマ州)地域事務所のラナ・グレイブス所長はいう。同所長は、カロリナ・スチール社(ノースカロライナ州グリーンズボロ)の数件の安全違反容疑の例をあげた。違反はガードレールの不設置、フォークリフトとクレーンの不適切な使用、電気および防火設備への通路の障害などで、モンゴメリー(アラバマ州)の同社の橋梁製造工場で発生した。OSHAは現在、合計5万5,775ドルの罰金を課している。

「包括的な文書による安全プログラムを備え、完全に履行していれば、この事業者は監督中に発見されたような危険有害要因を排除できたはずだ」とグレイブス所長は主張する。

回避できるはずの違反があまりに多い。「いつもいつも同じ種類の負傷が発生している」と前述のリンハード氏は指摘する。事業者は該当するOSHA基準をときどき検証し、社内監査を行い、労働者に「念には念を入れた安全訓練」を実施する必要があるという。

だがなかには、OSHAの施行プログラムでは、より深刻な危険事態が見逃されていると考える人もいる。OSHAは、前政権下ではエルゴノミクス基準の策定に多大な時間と労力を投入したが、結局は議会に否決された。このため、全米自動車労組(デトロイト)のフランクリン・ミラー安全衛生部長は、「違反トップテン」リストにはエルゴノミクス基準に基づく召喚状発行例がないと批判する。

そして「職場での負傷の半数がエルゴノミクスの問題によるものなのに、それと無関係の召喚状発行が上位に掲載されている」と指摘する。またOSHAの衛生基準は1960年代の緩やかな最大暴露水準に「とらわれ」すぎているともいう。このため、OSHAの順法担当官が有害化学物質の危険有害要因に取り組むのは、危険・有害性の周知徹底基準(Hazard Communication Standard)違反について召還状を発行する場合だけだというのだ。この基準は、有害化学物質に暴露する可能性を労働者にすべて周知するよう事業者に義務づけているが、適切な暴露限界を超えた事例そのものを問題にしているわけではない。

トップの座を占めた違反

建設業での適切な足場技術の基準に対する違反が、昨年に続き、もっとも重大な召喚状発行の1位を占め、2000会計年度の5,988件から6,710件に増えた。墜落・転落防止(同じく建設関係の基準)も引き続き2位になった。「足場基準への違反については、建設での召喚状発行が断然トップを占めている」と指摘するのは、OSHAのベリエン・ゼトラー建設副部長だ。

足場の基準は、違反がきわめて多い4つの基準の一つで、これ以外に墜落・転落防止、機械防護措置、機械式動力伝達装置の基準がある。これらの基準に対するもっとも重大な召喚状が、全召喚状発行の90%を超える割合を占める。例をあげると、OSHAが先ごろフォー・スター・アクリリック・スタッコ社(ニューヨーク州エルモント)に20万ドルの罰金を課した。同社がロングアイランドとクイーンズの2カ所で違反を繰り返したからだ。OSHAによると、同社は足場に墜落・転落防止機構、作業床への安全な通路、全面に板を貼った作業床を確保せず、足場上で作業する労働者への訓練を行わなかった。

ゼトラーOSHA建設副部長は、労働統計局のデータで、墜落・転落で死亡した労働者は1999年の721人から2000年には734人に増え、10年ぶりの高水準になったと指摘した。最近、OSHAはダマロス&サンズ社(フロリダ州ターポンスプリングス)に21万7,000ドルの罰金を課した。同社は橋梁の研磨材噴射加工と塗装を行っている。エリザベス(ニュージャージー州)の橋梁作業現場で、事実を知りながら労働者を墜落・転落死の危険にさらしたとして、2度目の召喚状発行を受けたのだ。

「もっとも重大な違反」リストの3番目は、危険・有害性の周知徹底基準の違反だ。ところが、重大でないものも含めた「召喚状発行がもっとも多い」リストの方では、危険・有害性の周知徹底基準違反は例によって第1位を占める。また同リストで墜落・転落防止は4位から3位に上がったが、これは、多発するこの建設現場での危険をOSHAが一貫して重視してきたからである。

「召喚状発行がもっとも多い」トップテンのうち、8番目までは2000会計年度と同じだった。うち6種類は召喚状発行件数が増加し、呼吸器保護、機械式動力伝達装置の二つは若干減少した。フォークリフトや動力工業用トラックの分野に関する基準は、OSHAが最近、新たに訓練要件を加えて強化したが、これに対する違反は11位から9位に上がった。

溝堀りをはじめとする掘削に関する建設基準の違反は、OSHAの全国的な施行強化プログラムの焦点となっている。掘削基準への召喚状発行は、「もっとも重大な違反」リストで前年の12位から10位に上がった。機械式動力プレスの基準に対する違反は、OSHAの前年の全国施行強化プログラムの焦点だったが、件数は減っており今年のトップテンから外れた。電気システム基準の違反もリストから外れた。フェアファクス順法部長によると、OSHAは動力プレス施行強化プログラムに代わり、職場での切断事故の減少を目標に、もっと一般的な強化プログラムを実施するよう計画している。

基準違反のトップテンリスト
2001年度の基準違反トップテン(「もっとも重大な」違反通告に基づく)

「もっとも重大な」違反
トップテン

(2001会計年度)
「召喚状発行がもっとも多い」違反
トップテン

(2001会計年度)
1.  足場(1926.451) 6,710件
2. 墜落・転落防止(1926.501) 4,143件
3. 危険・有害性の周知徹底
(Hazard Communication)
(1910.1200)
3,619件
4. ロックアウト・タグアウト(1910.147) 3,023件
5. 機械防護(1910.212) 2,541件
6. 呼吸器保護(1910.134) 2,219件
7. 電気配線(1910.305) 2,152件
8. 機械式動力(1910.219) 2,003件
9. 動力工業用トラック(1910.178) 1,656件
10 掘削(1926.651) 1,528件
1.  危険・有害性の周知徹底
(Hazard Communication)
(1910.1200)
7,233件
2. 足場(1926.451) 7,134件
3. 墜落・転落防止(1926.501) 4,421件
4. 呼吸器保護(1910.134) 3,971件
5. ロックアウト・タグアウト(1910.147) 3,875件
6. 電気配線(1910.305) 3,125件
7. 機械防護(1910.212) 2,797件
8. 動力工業用トラック(1910.178) 2,334件
9. 電気的システム(1910.303) 2,223件
10 機械式動力伝達装置(1910.219) 2,191件

1. 足場−建設(29 CFR 1926.451)

この基準は、10フィートを超える高さの足場で作業する労働者の墜落を防止するためのものだ。だが不適切な足場の組み立ての方が「墜落・転落防止基準より違反発生の可能性が高い」とOSHAのゼトラー建設副部長はいう。さらに支持が不適切な足場、また設計、組み立て、適切な安全帯の使用などの安全確保措置を監督すべき「適格者」の不在も、よくある問題だと指摘した。基準は、足場の作業床の幅を4フィート以上と規定しているが「たった1枚の板の上で作業していることが多くて、おどろかされる」とゼトラー建設副部長はいう。管理者も労働者も、OSHAが義務付けている足場の安全確保措置の必要性を軽視している場合があまりに多いと訴える。

OSHAは、10の地域事務所のうち3カ所で、足場基準の施行強化特別プログラムを実施している。各企業は、建設請負業協会(Associated Builders and Contractors)(ワシントン)のチャールズ・マラスカ氏がいう「膨大な内容の基準」に対処するため、訓練プログラムの策定に向けて努力している。マラスカ氏は「この基準が徹底されれば、召喚状発行件数は減り続けるだろう」という。

2. 墜落・転落防止−建設(1926.501)

この基準は、6フィートを超えた高さで作業する建設労働者の墜落・転落を防止するためのものだが、議会の圧力の結果、OSHAは住宅建築労働者に例外規定をつけ、労働者の訓練の拡充といった代替策を認めた。他の建設業界も同様の救済措置を求めていたが、いまのところ認められていない。建設に付随する高所からの墜落・転落の危険性を背景に、問題が多発しているため、OSHAは10地域事務所のうち9地域で、墜落・転落防止のための特別施行強化プログラムを策定した。カリフォルニア州、アリゾナ州、ネバダ州、ハワイ州を範囲とする第9地域だけは、すべての州がOSHA承認による独自の労働安全衛生計画をもっているため、プログラムの対象外となった。

「相変わらず、床の外端に手摺りなどがないケースが多い」ため、墜落・転落の危険性が高いとゼトラー氏はいう。また「建設業の就労者数が過去8年に増え続け」た結果、問題がいっそう深刻化しているとも述べた。また断熱材だけが床に敷かれ、「労働者がその上に乗って下の階に墜落・転落する」ケースが非常に多いと指摘した。

3. 危険・有害性の周知徹底(Hazard Communication)(1919.1200)

この基準違反の召喚状発行件数がもっとも多かった背景には、化学物質の使用が広がっていること、また化学物質等安全データシート保持規則への違反は、きわめて簡単に起こるという事実がある。この基準は、各種の物質による危険・有害性を詳細に示し、容器への適切なラベル表示を義務付け、労働者に化学物質等安全データシートを参照させるよう義務付けている。OSHAが報告した2001会計年度の危険・有害性の周知徹底違反7,233件のうち、意図的で、重大な、または繰り返しの違反に分類されたのは半数にすぎないが、それでも「もっとも重大な違反」リストの第3位となっている。

その理由は「事業者による日常的な違反の回数が他より多いからではなく、どんなものでも危険・有害化学物質が存在しさえすれば適用できるからだ」と、全米鉄鋼労組(ピッツバーグ)のマイケル・ライト安全衛生部長は指摘する。最近の例では、金属再生会社のメタリックス社(ニュージャージー州ジャージーシティ)にOSHAが10万2,000ドルの罰金を課した。召喚状の内容は、労働者に対し、自分たちが暴露している鉛などの化学物質の危険・有害性についての訓練をしなかったことなどだ。

4. ロックアウト・タグアウト(1910.147)

この基準は、事業者に対し、保守労働者の作業中は機械の電源をしゃ断するか、または少なくとも、事前に装置を停止すべしとの警告を表示するよう義務付けたものだが、この違反は「多数の負傷の根本原因になっている」とリンハード氏は指摘する。「かなり労力を要する基準で、要件を実行するのはむずかしい。非常に神経を使うため、どうしても手抜きになる」

昨年6月、OSHAはアムレップ社に対し、ジョージア州マリエッタのエアゾール工場での意図的な違反に関連して14万ドルの罰金を課した。違反の内容は、労働者がチャンバー内に入ってカード紙の詰め直し作業をする際、コンパクターを停止させる手順を採用しなかったことである。OSHAのアトランタ西部地域事務所のスーザン・ジョンストン所長によると、労働者は機械の電源を入れるための両手操作の制御装置を操作せず、コンパクターへのカード紙の補給を続けたまま、機械を停止しないでチャンバー内に入っていた。

OSHAの召喚状によると、ある労働者が機械を作動させたまま足でカード紙を踏みつけていた時、足がカード紙に挟まって機械に押しつぶされた。労働者の両足はひざの上から切断された。

5. 機械防護−一般(1910.212)

「機械防護とロックアウト・タグアウトは、コインの裏表の関係にある」と、全米自動車労組(UAW)のミラー氏はいう。この基準は、機械の可動部分で、個別の防護基準の対象になっていない箇所について、全体に、または前面に防護装置を取り付けるよう事業者に義務付けている。労働者が機械の保護を外し、運転を再開する前に再設置しないケースがきわめて多い。「これは非常に危険な状態だ」と指摘するのは、ビンス・ギャラガー氏。元OSHA監督官で、現在は訴訟人と事業者対象のコンサルタント会社、セーフティー・リサーチ社(ニュージャージー州オーデュボン)の社長を努める。

10月、OSHAはケーブル製造会社のフォート・パワー・システムズ社(アラバマ州ヘフリン)に対し、ケーブルの巻き直し機の締め付け部分と回転部分に、意図的に防護装置を設置しなかったとして召喚状を発行した。この他の違反を含め、8万6,500ドルの罰金を課した。OSHAによると、同社の労働者が大型の木製リールに廃棄ケーブルを巻き直していた際、防護装置が付いていない機械に巻き込まれて頭部に重傷を負い、2日後に死亡した。

6. 呼吸器保護(1910.134)

この基準は、有毒ヒュームなど呼吸に対する有害性から労働者を保護するため、呼吸用保護具の使用を義務付けたもので、「召喚状発行がもっとも多い」リストで3位から4位に下がった。だがミラー氏は「呼吸器保護がリストの上位にランクされているのは納得できる」という。たとえば世界貿易センターのテロ現場に出動した救急労働者には、呼吸器を守るための保護具が支給されず、同氏によれば「OSHAが現場に到着」し、メーカーから寄付された保護具を渡して、ようやく装着できた。

最近の例では、アップル・ファブリケーション社(テキサス州ダンカンビル)に対し、OSHAが6万3,000ドルの罰金を課した。空気のモニタリングを怠り、また労働者に呼吸用保護具の使用を義務付けないなど、意図的で重大な違反があるとして召喚状を発行した。OSHAが違反に気づいたのは、鉄製の洗浄タンク内で作業していた労働者がトリクロルエチレンによって死亡したのを調査したことがきっかけだった。

7. 電気的−配線方式、コンポーネントおよび装置(1910.305)

この基準は、電気的装置の接地、配線および絶縁を規定しており、軽微なものから重大な結果を引き起こすものまで、多数の召喚状発行につながる可能性がある。適切な接地の欠如については「OSHAの検査官が必ず点検する違反だ。10台の機械があれば、少なくとも1台は接地されていないだろう」とギャラガー氏は指摘する。

最近の例では、OSHAがテンプル・インランド・フォレスト・プロダクツ社(ペンシルベニア州マウントジュエット)に24万8,400ドルの罰金を課した。爆発と火災によって10人の労働者が重傷を負い、うち3人が死亡したことを受けてのものだ。意図的な違反として、使用しない開口部が電気装置にあるなどの危険な状態があり、また接合器や配線器具、プールボックスに認定済みのカバーを付けておらず、それが火災の一因になったとOSHAの職員は述べた。

8. 機械式動力−伝達装置(1910.219)

この基準は、ギア、チェーン、ベルト、プーリー、ドライブシャフトなどのコンポーネントに適切な保護装置を付けるよう求め、労働者が伝達装置に巻き込まれないようにするものだ。違反は簡単に発見できるため、「安易な召喚状発行につながる」とUAWのミラー氏は指摘する。

それでもOSHAは、最近、オウンズ・コーニング社(オハイオ州トレド)に召喚状を発行し、13万ドルの罰金を課した。デンバーの同社施設での事故を受けてのものだ。OSHAデンバー地域事務所のハーブ・ギブソン副所長によると、この事故で1人の労働者が片腕を失い、他の労働者も「機械の保護がないことによる重大な危険」にさらされた。同社はスプロケットホイールとチェーン、ベルトやプーリーなどの回転部分、動作時にはさまれる部分に保護装置を付けなかったとして、意図的で重大な違反とする召喚状発行を受けた。

9.動力工業用トラック(1910.178)

近年、違反ランクが一貫して上昇しているこの基準は、フォークリフトの運転を包含している。注意すべきは1999年に訓練要件が厳しくなったことで、OSHA監督官はこの点を注視している。この基準はまた、その厳格な指摘に沿ってプログラムを調整するよう事業者に義務付けている。OSHAの推計では、工業用トラックの災害が原因で、1998年には約100人の労働者が死亡、9万5,000人近くが負傷している。

やっかいな要件といえるのが、フォークリフトの運転者にシートベルトの装着を求めている点だ。全米トラック運転手組合(チームスター)は、フォークリフト運転手の組合員にシートベルトの装着を呼びかけているが、「組合員はシートベルトの装着に慣れていない。バックする時間が長いからだ」と、同労組のレイモント・バード安全衛生部長は指摘する。

OSHAは、化粧品メーカーのコスメティック・エッセンス社(ニュージャージー州リッチフィールド)に対し、通常の措置として10万1,250ドルの罰金を課し、召喚状を発行した。労働者に安全なフォークリフトの運転のための訓練を行わなかったことなど、フォークリフトに関連した違反による。召喚状発行の発端になったのは、昨年2月、1人の労働者がフォークリフトで持ち上げられ、2,000ガロンの混合用ケットルに転落したことだった。深刻な裂傷を負い、化学物質に暴露した。

10. 掘削(1926.651)

この基準もトップテンリストの新顔で、掘削孔への土止め支保工設置義務違反など、建設関係の違反を規定している。長期にわたって実施されている全国強化プログラムでは、陥没、墜落・転落、感電、飛来・落下、空気汚染による死亡と負傷を減らすことが目標となっている。これら掘削関連の2000年の死亡者数は、合計38人である。

「掘削関連の違反は、OSHAにとって対処が非常にむずかしい」とOSHAのゼトラー建設副部長はいう。建設会社は、ほんのわずかな時間しか掘削作業はしないというが、そのわずかな時間に死亡事故が起きるのが現実だとも指摘した。

最近の例では、掘削会社のブーン・コールマン・コンストラクション社(オハイオ州ポーツマス)に対し、労働者を危険な掘削条件にさらしたとして、OSHAが合計34万8,000ドルの罰金を課した。OSHAの監督のきっかけはポーツマス市当局からの連絡だった。陥没で埋まった二人の労働者の救出を支援した同市職員が、ブーン・コールマン社に安全な掘削作業を行うよう促していたのだ。