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NSC発行「Safety + Health」2001年12月号

OSHAの最新情報


OSHA、記録保持規則の3条項を先送り

 OSHAは、記録保持規則の3条項を先送りし、職業性聴力損失の暫定的な記録基準を設定すると発表した。
 これは、聴力損失および筋骨格系障害に関する、OSHAの先日の発表を受けた結果である。
 職業性聴力損失記録基準のほか、OSHAは、記録保持基準の筋骨格系障害の定義や、OSHA傷病記録上の筋骨格障害の欄の記入に関する使用者の義務について、2003年1月1日まで延期する。
 「我々は、事業者が職場の傷病をできるだけ簡単に正確に記録できるようにしたい」とジョン・ヘンショーOSHA長官。「そのためには、これらの基準を評価して、これら特定の症例を特定し、記録する最も良い方法を決定せねばならない」。
 OSHAは、OSHA300職業関連傷病記録および300A職業関連傷病記録から筋骨格系障害および聴力損失の欄を省いた、新しい記録保持書式を公布する。
 書式に添付される説明書は、2002年初頭から発効する義務に照らし、修正された。
 記録保持最終規則の開発は、政府が労働災害及び業務上疾病をよりよく把握できるよう、1980年代からはじまった。同規則は、事業者の関与を深め、簡略化した書式を開発し、OSHAの法定義務を遂行するにあたりコンピューター使用を認めるなど、事業者により柔軟性をもたらした。



新記録保持規則の援助活動開始

 OSHAは、2002年1月に鳴り物入りで発効する新記録保持規則に対応できるよう、140万の事業者を支援する大規模な援助活動を開始した。
 「新規則は、より柔軟で、守りやすく、30年間義務付けられていたものを変更している」とジョン・ヘンショーOSHA長官。「我々は、援助活動で、新記録保持システムへ移行できるよう労使を支援するにあたり、できることはすべて行う所存である」。
 ヘンショー長官は、10月29日の週に、ウェブサイトでの参考資料の提供や、全米各地での訓練活動の予定など、OSHAの援助活動の詳細をまとめた書簡を、200人近いOSHA関係者、同業者団体、専門職団体、労働組合に送付した。同書簡はまた、関係者は各自、所属する会員と連絡をとり、会員が新規則を理解できるように支援するよう、促した。



労組、OSHA訓練助成金の廃止に抗議

 OSHAは、安全衛生教育への助成金を交付してきた連邦プログラムを段階的に縮小、労働組合はこれに不満を表明した。
 ワシントンにあるAFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議)は、この動きについて労働省に苦情を申し出、同組織のコンサルタント、ジョーダン・バラブ氏は、助成金の一部を2000年度労働省予算の一部として復活させようと議会が試みているが、その結果(本誌印刷開始時点では未決定)如何では、AFL-CIOは、苦情を申し立て続けるだろうと述べた。
 予算の制約を理由に、OSHAは、クリントン政権が、組合、大学、事業者団体、労使協議会、非営利団体に対して、昨秋または今年1月に初回分を交付した助成金や、ブッシュ政権が予定していた助成金を取り消し、または減額した。また、助成を継続した場合でも、5ヵ年助成プログラムは、わずか1年のプログラムに切り替えられ、2年目は、再度更新することとなった。
 2002年度の助成金総額は25%削減され、OSHAは、同年度でもって訓練助成金は廃止すると述べた。ワシントンにある国際サービス労働者組合のビル・ボーウェゲン安全衛生部長は、その影響は「甚大」であると述べた。
 ボーウェゲン部長は、訓練助成金は「単独でもっとも成功したOSHAのプログラム」と称し、使用者の遵法支援を主眼としたジョン・ヘンショーOSHA長官の計画にとって、重要であると述べた。
 61の非営利団体に対する新規の安全衛生訓練助成金(1ヵ年)1,060万ドル、および、危険度の高い職務に就く労働者またはOSHAの新基準ないし改訂基準で影響を被る労働者のための既存の33助成プログラムへの助成更新470万ドルを発表したエレイン・チャオ労働長官は、助成は「OSHAの安全衛生パートナーシップや遵法支援プログラムの根幹をなすものである」と述べた。



会計検査院、化学物質危険分析の不統一を指摘

 会計検査院(GAO)は、OSHAその他の連邦政府機関による化学物質の危険分析手法はさまざまで、危険性についての結論も違ってくると指摘した。
 下院商業委員会のビリー・トージン委員長(共和党、ルイジアナ州)のスポークスマンによると、同委員長は、連邦政府諸機関は、最適な科学的知識も用いず、化学物質の危険性を過剰評価しているとの懸念から、報告書を要求していた。
 会計検査院は、OSHA、EPA(環境保護局)、食品医薬品局間で、またこれら諸機関の事務所間でも、仮定や手法、結論が大きく違っていると結論した。このような相違は「評価から引き出される結果や結論に大きく影響する」。
 例えば、EPAは、スーパーファンド(有害産業廃棄物除去基金)の敷地内の汚染物質の調査の結果、塩化メチレンは比較的「危険性が低い」とみなすとする。しかし、OSHAは、1日8時間の労働で、塩化メチレンに曝された場合、塩化メチレンは「有害性の高い」化学物質であるとする可能性が高い、と会計検査院は述べた。



行政管理予算局、除細動器普及をOSHAに要請

 ホワイトハウス情報規制問題室の新室長は、OSHAに対し、自動体外式除細動器(AED)の職場への普及を優先課題として検討するよう要請した。
 行政管理予算局(OMB)情報規制問題室のジョン・D・グラハム室長は、先日、ジョン・ヘンショーOSHA長官あてに、除細動器は「将来有望な救命テクノロジーである」と書き送った。
 除細動器の職場への設置は、同室の予備計算によれば費用効果はあるという。
 除細動器は、心停止を起こした患者の心臓の拍動をもとに戻すため、電気ショックを与える。この機器は、ふつう、心停止の数分内に用いると、効果がある。空港、カジノその他公共施設は、除細動器の利用が拡大しつつある。 
 書簡は、行政管理予算室が公けに新たな規制を奨励したものとしては初の試みで、規制当局に書き送った二つの「助言」書簡のひとつである。
 グラハム室長は、元ハーバード大学の規制問題専門家で、消費者団体その他の批評家が、同氏は連邦規制を抑制するだろうと予測するなか、情報規制問題室長に就任した。



会計検査院、職場火災のよりよいデータ収集をOSHAに要請

 議会の調査部門である会計検査院(GAO)は、連邦施設での火災事故の系統的な収集・分析ができるかどうか、連邦政府機関に検討するよう勧告した。
 データには、火災件数、出火原因、その火災によっておきた財物損壊、死傷、消火にあたって有効な製品または無効な製品等を含む。会計検査院によれば、このような情報は、火災のリスクを知り、そのリスク対策を開発するのに重要である。
 良質なデータや情報の収集・発信に統一された手続きがないことには、連邦政府は、連邦施設での火災原因に関する情報を、基準の開発・改定を請け負う団体に折りよく提供することはできないと、会計検査院は結論した。



2化学物質の危険性について再調査

 OSHAの警告を受けて、国立毒物学プログラムの人類生殖リスク評価センター(the National Toxicology Program's Center for the Evaluation of Risk to Human Reproduction)は、先日、有害の可能性がある2つの化学物質がもたらす健康障害を調査する委員会を設置すると述べた。
 OSHAによれば、1‐ブロモプロパンは、一般的な毒性があり、2‐ブロモプロパンは、生殖機能に有害である。国立毒物学プログラムによると、1‐ブロモプロパンは、樹脂、脂肪・蝋の溶剤、スプレー式接着剤など他の化学物質の製造に用いられる。2‐ブロモプロパンは、医薬品、染料その他の化合物の製造に用いられる。
 OSHAは、製造業者が、換気装置の設置や、労働者の暴露を減らすのに必要なその他の制御装置を使わなくて済むよう、塩化メチレンから1‐ブロモプロパンへと切り替えたとの報告が多数あったと述べた。これは、1997年にOSHA規則は、塩化メチレン(Methylene chloride)の許容暴露限界値を500ppmから25ppmへと下げたことによるものである。OSHAによると、企業はまた、成層圏のオゾンを破壊するクロロフルオロカーボンはハイドロクロロフルオロカーボンの代替物として1‐ブロモプロパンを検討している。