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NSC発行「Safety + Health」2002年1月
ニュース
OSHA 、世界貿易センターの清掃活動を監督
安全手順の不備が批判される
ワシントン − OSHA(労働安全衛生庁)は、9月11日、テロリストにハイジャックされた航空機が衝突したマンハッタン南部の世界貿易センター跡地の復旧作業に、約400名の同庁職員が直接携わっていると発表した。
OSHA 職員は、清掃活動の支援・助言や、大気、飲料水のモニターなど、他省庁職員と共に、24時間体制で活動している。同庁は、ヘルメット、手袋や安全メガネといった個人用保護具と共に、一日あたり1,500個の呼吸用保護具(攻撃直後の一日あたり4,000個から減少)を配給、その顔への密着性検査を実施している。
OSHAはまた、アスベスト、金属、シリカやさまざまな有機化合物の含有量を調査するため、大気サンプルを採集、また、クレーン、掘削機やダンプカーなど、増える一方の重機械を使用するおよそ1,350名の建設労働者を含め、救助作業員の身体的安全をモニターしている。
しかし、ノースカロライナ州リサーチ・トライアングル・パークにある国立環境衛生科学研究所の労働者教育・訓練プログラムに対し提出された昨9月下旬の評価報告書は、5千人を超える救助隊員、復旧作業員が患った傷病は、「容認しがたい水準である」と結論付けた。評価を実施したワシントンの全米労働安全衛生訓練情報センターは、建設労働者の有毒物質暴露に関するデータは、「深刻な懸念を喚起する」と語った。
同センターは、個人用保護具の使用は均一化されておらず、また、呼吸用保護具の使用はまれであったと述べた。また、潜在的に有害な塵芥や残骸は、敷地の外に押しやられるか、ダンプカーの積荷から吹き飛び、また高圧ガスボンベやガソリン容器の大半は、適切な表示がなく、あるいは適切に保管されていなかったと語った。「安全衛生プログラムが実施されていたとの証拠や示唆は見受けられなかった」と、同報告書は主張する。
一方、下院教育・労働力保護小委員会の少数党筆頭委員、ジョージ・ミラー氏(民主党、カリフォルニア州)は、先日、新設された国土防衛局トム・リッジ局長宛に書簡を送り、国土防衛局の組織表にOSHAおよび「職場監督官」が含まれていないと苦情を述べた。
ミラー委員は、米国の職場は、テロに「最も狙われやすい」と指摘し、国土防衛活動にOSHAを深く関与させるよう要請した。本誌印刷開始時刻で、ミラー議員事務所は、リッジ議員事務所からの返答を受け取っていない。
事実チェック
2000年度州別人口10万人あたりの死亡率
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出所:各州衛生省、全米衛生統計センター、米国国勢調査局のデータをもとに、全米安全評議会(NSC)が推計した。 |
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1998年度全米衛生統計センター |
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一部推計。 |
炭疽菌事件で、関係当局、警告を相次ぎ発令
ワシントン − 郵便その他の労働者が、報道機関や議員宛の郵便物に付着していた炭疽菌胞子に感染した事件を受け、OSHA、米郵政公社および疾病対策予防センターは、郵便物取り扱いや潜在的に有毒な生物病原体に対処するためのガイドラインを発表した。
OSHAは、「炭疽菌マトリックス」を開発、これは、労働者への炭疽菌リスク評価、保護具の支給、安全な労働慣行の特定について、事業者を手引きするものである。ピラミッド型のマトリックスは、3層から成る。低レベルの暴露危険については緑、中レベルは黄、高レベルは赤で、各レベルに応じた対策についてガイダンスを設けた。OSHAのガイドラインは、労働者に、疑わしい書簡や小包、特に異常に重い物や通常のものとは違うサイズのもの、宛名が手書きのものには警戒するよう勧告している。OSHAはまた、小包の内容物を振る、取り出すなどしないよう指導している。
郵政公社ガイドラインは、過剰にテープ貼りや紐がけされたもの、宛名が役職名だけのもの、あるいは不正確な役職名のもの、また切手が余分に貼ってあるものに注意することなどを含む。炭疽菌がこぼれた場合には、中身に触れない。現場から退避し、石鹸と温水で手を洗い、警察、郵便監査官、地元の消防署有害物質担当班を呼ぶこと。
アトランタにある疾病対策予防センターも、疑わしい郵便物の取り扱いに関する類似のガイドラインを出した。センターは、これとは別に、郵便物を取り扱う労働者を炭疽菌から保護するためのガイドラインを配布した。ガイドラインには、効率の高い微粒子フイルターが付いた産業用電気掃除機、炭疽菌粒子がエアゾール化した恐れのある場所では、労働者の人数や入室者の制限、適切な場合には、労働者への手袋、呼吸用保護具の支給といった工学的管理が含まれている。
センターはまた、救急隊員、行政官や公衆衛生担当官に対し、自給式呼吸器、防護服や呼吸用保護具といった保護具の使用に関する勧告に従うよう、一連の暫定ガイドラインも発表した。
最高裁、反復的負荷傷害は障害にあたるか審理中
ワシントン − 反復的負荷傷害をもって、米国障害者法(Americans with Disabilities
Act : ADA)の規定する障害者と認定することはできるか? 米最高裁は、何百万人の労働者に影響を及ぼしかねない訴訟に取り組んでいる。
エラ・ウィリアムズ氏は、ケンタッキー州ジョージタウンにあるトヨタ工場で働いていた。職務内容には、組み立てラインを流れてくる車両をスポンジで拭く作業があった。ウィリアムズ氏は、手根管症候群により、車両を拭く際、痛みとしびれが生じると訴えた。同氏は、当該作業を拒否したため解雇されたと主張、トヨタは自発的に退職したと主張している。
口頭弁論で、トヨタの代理人、ジョン・G・ロバーツ・ジュニア弁護士は、同社は、ウィリアムズ氏に充分な便宜を与えていたと論じた。ロバーツ氏は、手根管症候群は「特殊かつ特異な障害」であると称した。
ロバーツ氏は、「肩の高さで、腕を使って自動車を繰り返し拭くのは、主要な生活活動ではない」と法廷で述べた。
ウィリアムズ氏の代理人、ロバート・L・ローゼンバウム氏は、障害者法は、部分的障害を持つ労働者にも適用されるべきであると主張した。
「障害者法(ADA)は、労働に関するものである」とローゼンバウム氏は、法廷で述べた。「これは、アメリカの根本価値である。これを守らないということができようか」。
弁論中、サンドラ・デイ・オコナー判事は、ウィリアムズ氏に労働者災害補償は適用されなかったのか、いぶかしがった。
多くの団体が、法廷助言者趣意書を提出した。ブッシュ政権、米商工会議所その他いくつかの事業者団体は、トヨタを支持。AFL-CIO(米国労働総同盟産業別労働組合会議)、全米障害会議(National
Council on Disability)および米国作業療法協会(American Occupational Therapy
Association)は、ウィリアムズ氏を支持する。判決は、7月に下る見込み。
保健計画費用、2002年に再び増加
ワシントン − ワトソン・ワイアット・ワールドワイド(Watson Wyatt Worldwide)が行った最近の調査によると、労働者に対する保健計画費用は、2002年に著しく増加する見込みである。現役労働者の保健計画費用は、13.6%上昇すると予想されており、これに比し、2000年の上昇率は8.1%、2001年は12.2%であった。
補償計画を有する事業者は、2002年には14.4%と、最大の上昇率に直面するとみられる。しかし、管理医療計画も13.9%と、同様の伸びを見せ、ついで保険維持機構(HMO)も大幅な上昇が見込まれることが、同調査結果で明らかになった。
調査回答者は、退職者向け医療計画については、これらをさらに上回る15.1%の費用増(2002年)を予想。この増加は、退職者に対する処方薬剤給付費用の増加予定率18%に帰せられる。
「景気の悪化、労働市場の軟化、保健費用の急増により、事業者側は、現行の保健戦略を、注意深く見直すよう求められている」と、ワトソン・ワイアット社のモリーン・コッター団体・保健国際業務担当部長は語った。
事業者は、さまざまな解決策を熟考中である。調査対象者の71%は、費用増を相殺しようと、給付の削減、または定額自己負担の増加を検討中である。過半数(56%)は、労働者の負担を費用増分、あるいはそれ以上増加させると回答している。管理医療計画の導入、あるいは業者の入れ替えといった従来の手法では、事業者にとって、もはや十分な救済とはならない。
「しかし、事業者は、保健制度をよりよく利用するよう、労働者を支援する必要性を認めている。これにより、保健費用が改善されるからである」とコッター部長。約75%の回答者は、医療情報ウェブサイトを利用して、労働者教育を支持したいと述べている。
世界規模で展開する人的資本コンサルタント会社のワイアット社の本調査は、140万人の従業員を擁する200社からの回答をもとにしている。調査報告書の全容は、www.watsonwyatt.comで入手可。
2002年保険料の前年比増加予定率平均値
全計画 |
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13.6% |
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補償 |
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14.4% |
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医療者選択会員制団体健康保険(PPO) |
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13.7% |
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ポイント・オブ・サービス(POS) |
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12.7% |
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保険維持機構(HMO) |
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13.9% |
処方薬剤給付 |
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17.0% |
医療のみ |
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13.0% |
歯科 |
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6.7% |
出所:ワトソン・ワイアット・ワールドワイド、2001年 |
EPA規則、冷却水取水工程を規制
ワシントン − 冷却水取水工程のある産業施設、発電所は、設備を新設する際には、EPA(環境保護局)の新規則を遵守せねばならない。
同規則は、冷却工程で1日あたり2百万ガロンを超えて消費する新設備の立地、設計、最大出力、建設を規制。同規則は、冷却水取水構造により殺傷されうる魚類、甲殻類の保護を目指す。同規則は、企業が、これらの要件に見合う最良の技術的解決策を用いるよう奨励している。
EPAは、同規則は、今後20年間で121の新設工場・発電所に影響を及ぼすと推定している。
水質保全法では、同規則以外に2規則が今後3年の間に発効される。第2の規則は、大量の冷却水を利用する既存の発電所に対して、第3の規則は、比較的小量の冷却水を利用する発電所や製造業者に対して適用される。
詳細情報は、EPAのウェブサイトwww.epa.gov/ost/316b参照のこと。
EPA、飲料水の砒素含有率基準を公布
ワシントン − クリントン政権時の飲料水中の砒素許容水準に関する基準を見合わせてから7ヶ月を経て、クリスティ・ホイットマンEPA長官は、同基準の勧告する水中砒素含有率10ppbを採用すると発表した。
「本基準は、何百万人もの米国人の飲料水の安全性を改善し、ガン、心臓疾患、糖尿病のリスクからよりよく守る」とホイットマン長官。
ブッシュ政権の批判者によれば、全米科学協会の調査が、EPAの現行基準では、膀胱がん、肺がんが増加しうる砒素レベルに国民がさらされていると結論した以上、EPAは、クリントン政権時の基準を維持する以外、選択肢がなかったという。
オクラホマ州にある全米地方水道協会、ダンカン社のアナリスト、マイク・キーガン氏は、同基準を「恣意的」と形容、確固としたいかなる調査にも基づかないものであると述べた。同氏は、この基準により、地方の地域社会では、月あたりの料金は200ドル増となると見積もっている。
使用者、欠勤の抑制に奮闘
イリノイ州リバーウッズ − CCH社が実施した新しい調査によると、2001年度の労働者の欠勤理由の筆頭は、健康問題というよりは個人の事由である。結果として、労働者を出勤させるには、欠勤の真の理由に取り組まねばならない。
「2001年度予定外欠勤調査」では、全欠勤の3分の1、わずか 32%が、疾病によるものであったことが判明。代わりに、家庭事情、ストレス、私用が、大半の「病気休暇」の理由であった。とくに、ストレス関連の欠勤が増加。1995年には、ストレスは、労働損失日数のわずか6%を占めるに過ぎなかったが、2001年には19%にも及んだ。
さらに、欠勤費用は、実際の欠勤日数同様、増加した。労働者1人あたりの平均費用は、2000年の610ドルから2001年の755ドルに増加した。平均すると、常勤労働者は、病気休暇として付与された8.4日のうち、6.8日を取得しており、2000年には2.1%だった欠勤率を、2001年には2.2%へと押し上げている。
企業の大半は、この傾向は続くと確信している。調査回答者は、企業の規模縮小に伴う仕事量の増加、新入社員の低い勤労倫理、家庭問題の増加、ずさんな管理、労働者の権利意識を指摘した。回答者のおよそ43%は、予定外欠勤は、企業にとって重大な問題であると認識している。
予定外欠勤への対策として、勤労生活・欠勤管理プログラムを始めている企業が増えていることが、調査で判明した。これは、「新しいツールや画期的なプログラムで、この問題に対処しようとの、組織の能力と意欲を強調するものである」と調査は報告する。回答者は、フレックス・タイム、在宅勤務、コンプレストワークウィーク(compressed work week)の3つを、最も有効な勤労生活プログラムとして格付けた。実際に活用されているものとしては、フレックス・タイム制がもっとも多く、63%の企業がこれを採用している。
欠勤管理プログラムの分野では、有給休暇銀行(paid leave bank)は、労働者を仕事に従事させておくには最も有効であると考えられていた。有給休暇銀行は、病気や私用、休暇などの特定の理由により休日を与えるのでなく、労働者が妥当だと思うとおりに活用できるよう、与える。これは、労働者には、ニーズに応じて休日を予定させた方が、直前になって病欠の電話を受けるより、効率的だと考えられている。しかし実際には、企業の93%は、欠勤の削減にあたり、懲戒処分に頼っており、年1回の再調査(yearly review)(81%)、疾病の確認(71%)がこれに続く。
「2001年度予定外欠勤調査」は、約140万人の労働者を擁する米国の企業、組織の人的資源担当役員234名を対象に調査した。CCH社は、事業、雇用、税法情報、ソフトウェア、サービスを提供している。
2001年予定外欠勤の理由
疾病 |
32% |
家庭事情 |
21% |
ストレス |
19% |
私用 |
11% |
権利意識 |
9% |
その他 |
8% |
出所:CCH社、2001年 |
2001年常勤労働者の病気休暇取得日数
産業 |
付与日数 |
取得日数 |
金融・銀行業 |
14.3 |
6.1 |
官庁 |
11.9 |
9.6 |
医療 |
7.0 |
5.9 |
製造業 |
7.2 |
5.6 |
卸売・小売業 |
8.6 |
6.1 |
サービス業 |
8.3 |
8.4 |
大学・教育 |
9.9 |
7.4 |
公益事業 |
4.1 |
4.1 |
出所:CCH社、2001年 |
欠勤率・費用
年 |
欠勤率* |
労働者1人あたりの費用 |
1995 |
2.8 |
$662 |
1996 |
2.8 |
$603 |
1997 |
2.3 |
$572 |
1998 |
2.9 |
$757 |
1999 |
2.7 |
$602 |
2000 |
2.1 |
$610 |
2001 |
2.2 |
$755 |
*欠勤率=有給予定外欠勤時間/有給実働時間
出所:CCH社、2001年 |
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