NSC発行「Safety + Health」2002年1月号
OSHAの最新情報
議会、2002年度OSHA予算の増額を提案
議会は、2002年9月30日を末日とする2002会計年度OSHA(労働安全衛生庁)予算を4億2千580万ドルに据え置くとするブッシュ政権の予算案を一蹴、予算の大幅増を推し進めた。
本誌印刷開始時点で、議会は、下院予算案の4億3千530万ドルと上院予算案の4億5千30万ドルとの間で調整を計画中。
ワシントンの食品・商業労働者組合連合のジャッキー・ノウェル安全衛生部長によると、議会はどうやら、ブッシュ大統領の予算案はOSHA予算の「減額」措置であると認識したらしい。
下院および上院の2002会計年度予算案は、OSHA法規施行予算を2001年度の1億5千180万ドルから、それぞれ1億5千800万ドル、1億6千300万ドルへと増額しようとするもので、一方、ブッシュ政権は、2002年度予算を2001年度と同額に据え置くとしている。
使用者の遵法支援向け連邦予算については、下院予算案は5千740万ドル、上院予算案は6千万ドルと、2001年度の5千580万ドルからの増額を提案。ブッシュ政権の2002会計年度予算案では、5千720万ドルとなっている。
OSHA、傷病報告の新書式を導入
OSHAは、1月1日付で発効した新しい記録保持基準に基づき、使用者が傷病を記録するのに用いる新しい書式を公布した。
新しくなったのは、OSHA300業務関連傷病日誌、OSHA300A傷病摘要書、OSHA301傷病発生報告書である。これらは、およそ30年間にわたり適用されていた旧記録保持規則で用いられていたOSHA200日誌に取って代わる。
OSHAは、約200もの関係者、業界団体、専門家団体、労働組合に書簡を送り、新規則の遵守を支援するため、使用者に対する援助活動を開始した。同庁は、12月初旬、新規則の適用を受ける140万人の使用者に対し、新しい記録保持書式を郵送する予定である。訓練活動の開始に向け、同庁は、衛星放送による訓練をいくつか予定している。
一方、OSHAとワシントンの全米製造者協会は、同協会が新記録保持基準をめぐり起こした訴訟で、争点となっていた問題を解決した。OSHAは、新基準発効後の120日間については、監督官は、遵守支援に絞って監督すると合意した。この期間中、使用者は、記録保持義務の履行に努め、遵守のため必要な修正を施していれば、監督官に基準違反で召喚されることはない。
OSHAはまた、労働者の申し立てだけで、業務関連傷害が成立するとはしないと合意した。同庁によれば、ある傷病を業務関連と認定するのは、業務による暴露が、識別しうる原因である場合、または、既存の健康状態を著しく悪化させる場合のみとし、使用者による記録がない傷病が業務関連かどうかを立証する責任は、OSHAにあると説明した。
OSHA長官、新人事発表
ジョン・ヘンショーOSHA担当労働副長官は、ゲイリー・ヴィッシャー氏をOSHA担当労働副長官補に任命した。ヴィッシャー氏は、アメリカ鉄鋼協会の労使関係担当副会長であった。
ヴィッシャー氏は、労働、OSHA問題で経験豊富。1999年7月~2000年11月には、労働安全衛生調査委員会の委員を務めた。また、1983年~1999年には、議会の要職をいくつか歴任、このなかには、米下院教育・労働力委員会の労働力政策コンサルタントも含まれる。
労働副長官補としてヴィッシャー氏は、連邦州事業局、技術支援局、情報技術政策局、基準局、公共問題室、再作成室を監督する。
R・デイビス・レイン労働副長官補は引き続き、地域事業および遵法局、建設局、行政プログラム局、雇用機会均等プログラム室を監督する。
このほか、ヘンショー労働副長官の管理システム・活動実績基準担当特別補佐官としてルネ・ウィルダームス氏、衛生基準局長兼安全基準局長代行にスティーブ・ウィット氏、技術支援局長にルース・マカリー第1地域行政官がそれぞれ任命され、ポーラ・ホワイト氏は、連邦州事業局長の任務の一環として、遵法支援プログラムを監督する。
OSHA、改訂血液由来病源体基準遵守命令を公布
OSHAは、2001年1月に改訂された血液由来病源体基準の施行に向け、新しい遵法命令を公布した。同基準は、血液その他感染性の物質への職業性暴露に適用される。
遵法命令では、同基準の主要な新要件を大きく取り上げた。第1は、使用者の年次暴露管理計画による適切な工学的管理の再評価の一環として、より安全な注射針装置の評価・実施である。第2は、安全な注射針の選択における非管理職、第一線の従業員の関与を文書化するという要件である。第3は、汚染針による傷害記録のため、刺傷日誌を確立・維持するという要件である。
遵法命令は、OSHA安全衛生監督官に同基準の施行を手引きし、一貫した監督手続きを採るようにした。また、1999年の命令を更新、2000年11月に可決された注射針安全予防法に基づく変更を盛り込んだ。
同命令は、OSHAウェブサイトwww.osha.gov/OshDoc/Directive_data/CPL_2-2_69.htmlで入手可。
炭疽菌データ表、労働者の備えを支援
最近の炭疽菌攻撃に対応して、OSHAは、全米の職場で炭疽菌リスクを評価する際の一助となるよう、データ表を作成した。データ表は、炭疽菌を定義、暴露されうるのはどういう人々かを論じ、健康管理面から炭疽菌を取り上げている。また、怪しい小包の扱い方、炭疽菌その他生物脅威への対処、生物・化学的攻撃への備えについて勧告した他省庁のウェブページとリンクしている。医療従事者、救急隊員については、個別に取り上げている。
データ表はまた、牧羊者、農家、織工、獣医等、動物と関わる職業に就く労働者の暴露も取り扱っている。炭疽菌は、動物を扱う職種ではかなりありふれたものだが、大半の労働者は、おそらくテロ関連の項に関心を寄せるだろう。
データ表は、www.osha.gov/bioterrorism/anthraxfactsheet.htmlで入手可。
OSHA、州相談プログラムの効果を未評価
会計検査院(GAO)によると、OSHAは、相談プログラムが、その主目的である職場の傷病の削減に貢献しているかどうかを判断するのに必要なデータを持ち合わせていない。
議会の調査部門である会計検査院は、OSHAの州相談プログラムの管理強化を唱えた報告書で、同プログラム予算は、1996会計年度から2001会計年度の間に50%以上増えたと指摘。しかし、職場の安全衛生対策の改善に関する訪問相談については、使用者の要請件数は、1996会計年度から2001会計年度の間、わずか4%増にとどまった。一方、会計検査院によると、OSHAおよび州相談担当職員はともに、同プログラムの効果測定に向けたデータ収集システムは「煩わしく非効率である」と認めている。さらに、OSHAの予算配分プロセスは、活動実績を考慮していない。会計検査院によると、1996~2000会計年度の間、全州とも予算増となったにもかかわらず、16州は活動実績が減った。
OSHAは、使用者に対する相談プログラムの効果評価を改善すると述べた。一方、OSHAが新たに力点を置いている使用者のための遵法支援については、「地域事務所や担当職員にまだ浸透していない」と、ワシントンにあるアメリカ法曹協会労働安全衛生課のケネス・クラインマン会長は、ワシントンのフェデラリスト・ソサエティ労働・雇用慣行部会に対するスピーチで、先日こう語った。OSHAは、法の施行後に監督官に遵法支援させるというのではなく、遵法支援と法の施行をよりよく統合すべきであるとクラインマン会長は述べた。
労働安全衛生調査委員会、非常口の利用困難を重大違反と裁定
労働安全衛生調査委員会は、開けにくい非常口は「ゆゆしい」安全違反と裁定、行政法審判官の判定を覆した。
同委員会の裁定は、グルメット・アウォード・フーズ(Gourmet Award Foods)社のネブラスカ部門として営業しているツリー・オブ・ライフ㈱(Tree of Life inc.)に対するOSHAの召喚を支持。OSHA監督官によると、非常口のひとつは施錠されており、もうひとつの扉は、開くのにかなりの力を要するほど密着しており、いずれも火事その他の緊急時に危険な状態であった。
コベット・ルーニー行政法審判官は、いずれの扉も、基準に定める「利用が容易で、さえぎるもののない出口」としては機能していないものの、監督の最中には最終的に開いたと指摘。同審判官によれば、当該違反は「技術的なもので」、「労働者の安全衛生という点では、取るに足らない」。
労働安全衛生調査委員会はこれに反対、いずれの扉も「ふつうの圧力」を加えただけでは開かず、同社の違反は、安全衛生面で「取るに足らない」というものではないと述べた。死亡または重大な肉体的損傷をもたらしうる違反は重大であり、OSHA監督官が重大違反と格付けしたのは有効であると、同委員会は判定を下した。
OSHA、塔建設業者協会、安全パートナーシップ協定に調印
OSHA中西部第V地域事務所および全米塔建設業者協会(National Association of Tower Erectors)は、先日、ダラスで、無線通信塔の建設安全の改善をめざしたパートナーシップ協定に調印した。
協定は、オハイオ、イリノイ、ウィスコンシン州の連邦OSHA事務所管轄地域での塔建設に適用されるが、当面、インディアナ、ミシガン、ミネソタ州は適用除外とする。無線電話会社はサービスを拡大しており、通信塔建設労働者の墜落・転落その他の危険からの保護は「重要」であると、OSHAクリーブランド地域事務所長で同庁の塔建設業連絡担当、ロブ・メドロック氏は述べた。メドロック所長は、塔建設業の死亡率は、やはり死亡率の高い建設業全体の10倍だと言及した。
本協定は、より多くの使用者および使用者団体との協力的パートナーシップの形成をめざして、OSHAが継続している活動の一部をなすもので、労働者の安全衛生訓練に関し、OSHAおよび全米塔建設業者協会が手を組む。活動には、業界特有の規則・命令、ジンポールの使用や塔保守に関する指針、均一化された現場監督チェックリストの開発も含まれる。
また、各作業現場には、有資格の産業安全担当者を配する。また、塔建設現場では、OSHAは、包括的ではなく的を絞った監督を行い、罰金刑を軽減することにより、同庁が「安全衛生への配慮が少ない作業現場」への法の施行を集中できるようにすると、本協定は述べている。
|