NSC発行「Safety + Health」2002年2月号
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最高裁、ADA(アメリカ傷害者法)の適用を制限
ワシントン − 米最高裁は、手根管症候群を患っている労働者は、業務上だけでなく、日常生活上の死活的な活動にも支障をきたしていることを示さねばならないとの判決を下した。予期されたとおり、使用者団体は、判決を賞賛。一方、障害者活動家や労働組合は、判決は「冷却効果」があるとしている。
最高裁での全員一致による本判決は、手根管症候群に関する初の主要な判決である。判決は、なにをもって障害とするかを取り決めた高次の基準を適用した。
ケンタッキー州トヨタの組み立てライン労働者、エラ・ウィリアムズ氏は、手根管症候群と腱炎のため、異動させるべきだと主張したが、最高裁は、同氏は、入浴など主要な生活活動にも支障をきたしていることを示さねばならないと説明した。
サンドラ・デイ・オコナー判事の見解は、審理中の本件に絞ったもので、ADA(アメリカ傷害者法)訴訟にうんざりしている企業に対し、または積年の偏見を克服しようとしている障害者支援者に対し、議論の余地を残さなかった。判事は、「手作業の実質的な制限を受けるには(かつADAの適用を受けるには)、……大方の人々にとり主要な日常生活上の活動を妨げる障害を有していなければならない。障害はまた、永久または長期間のものでなければならない」。
本判決は、シンシナティ市の第六巡回控訴院の判決を覆した。最高裁はまた、トヨタ自動車対ウィリアムズ氏の訴訟をさらに審理するよう、下級裁判所に差し戻した。
トヨタの代理人、パトリック・ネピュ−ト氏は、「すべての業務上の傷害をADA事例にしたてかねない」判決を逆転させた最高裁の判決を賞賛した。
ワシントンにある全米製造業者協会のパトリック・クレアリ人的資源政策・対外問題担当上席副会長は、「今日の最高裁判所の判決で、ADAは、アメリカ障害者法であり、アメリカ傷害者法ではないということが明らかになった」と語った。
しかし、障害者の権利・教育・擁護基金のアーリーン・マイヤーソン氏は、「心配なのは、この判決が、敷居をとても高くしようとする裁判所のもうひとつのシグナルだということである。これにはひどく落胆した」。
独立の連邦機関、全米障害者協議会のマーカ・ブリスト会長は、「今日の最高裁判決は、議会がADAを適用しようとしていた多くの人々から、雇用の確保・維持に必要な保護を奪うものである」と語った。同協議会のジェフリー・ローゼン氏は、本判決は、人々の就職あるいは職の維持に「冷却効果」をもたらすと語った。