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NSC発行「Safety + Health」2002年3月

ニュース



チャオ労働長官、女性局地域事務所を維持

ワシントン − エレイン・チャオ労働長官は、労働省女性局の10の地域事務所を閉鎖する提案書を棚上げした。
同省のスポークスパーソン、スー・ヘンスリー氏によれば、ブッシュ政権の2003年度予算には、長官の女性局に対する傾倒ぶりが反映されているという。
今年1月、下院議員69名からなる超党団体は、女性局の地域事務所の存続を要請する書簡をチャオ労働長官に送付した。
「女性局の地域事務所の閉鎖は………働く女性の関心事に低い優先順位をつけるものであり、われわれは、とくにこれを危惧する」と議員らはしたためた。
書簡のまとめ役、ローザ・ドローロ下院議員(民主党、コネティカット州)は、女性局は、働く女性の労働条件を改善し、効率を上げて、高収益の職への就業機会を促進するなど、働く女性の福祉を推進していると述べた。
女性の権利団体もまた、労働省予算110億ドルを370万ドル節約する事務所閉鎖案に抗議してきた。予算手続きに近い筋によると、この勧告は、行政管理予算局から出たものだが、チャオ労働長官が真剣に取り上げることはなかったという。


ブッシュ大統領、商工業地域再開発法案に署名

 ペンジルバニア州コンショーケン − ブッシュ大統領は、連邦スーパーファンド(有害産業廃棄物除去基金)法を改正して、ブラウンフィールドと呼ばれる古い、または放置されたままの産業用地の清掃・再開発を奨励する法案に署名した。
 スーパーファンド法下では、汚染された用地の所有者および経営者は、汚染へのかかわり具合を問わず、清掃費用を負う義務がある。EPA(環境保護局)によると、この清掃責任が、ブラウンフィールドの再開発を企業が避ける、強い動機づけになっているという。
 小企業責任緩和・ブラウンフィールド再活性化法H.R.2869は、こうした用地の開発を希望する見込みあるバイヤー等に対し、責任保護を提供するものである。同法はまた、州・地方政府のブラウンフィールド評価・清掃プログラムに対する予算増を是認している。
 同法は、ごみ埋立地に廃棄物を運び、このため用地を汚染することとなった小企業主に対し、責任保護を追加する。スーパーファンド法では、これらの事業主は、用地全体の清掃責任を負うとしていた。
 署名するにあたり、大統領は、州および地方政府のブラウンフィールド再開発を支援するため、EPAの助成金を2003年度には倍に、すなわち、9,800万ドルから2億ドルにすると発表した。加えて、住宅都市開発省には、都市再開発のため2,500万ドルの予算を計上した。


事実チェック
労働災害の主要原因および直接費用(1998年)


出所:リバティ・ミューチュアル、2002年


世界貿易センター労働者に高濃度の水銀

 ニューヨーク − ニューヨーク州、ニュージャージー州の港湾管理委員会は、世界貿易センタービル跡地で働いていた警察官4名の血流から、高濃度の水銀を検出した。
 水銀の許容濃度は、血液1リットルあたり0〜13マイクログラムである。警察官2名は、1リットルあたり14マイクログラム、1名は18マイクログラム、残る1名は24マイクログラムであった。高濃度の金属は、脳、腎臓、肺を侵す。
 4名とも健康で、水銀中毒の兆候はないものの、安全のため再配置されたと、港湾管理委員会のスポークスパーソンは述べた。
 EPA(環境保護局)、OSHA(労働安全衛生庁)、ニューヨーク市の定期的な大気モニタリングでは、大気中に水銀は検出されなかったが、港湾管理委員会は、11月、グラウンド・ゼロ(ゼロ地点)で働く労働者の水銀その他の重金属検査を始めた。水銀の出所については不明である。


職場でのすべり、転倒にANSI基準

 イリノイ州デプレーンズ― 職場でのすべり、転倒の削減に照準をあてた米国規格協会(ANSI)の新基準が、米国安全技術者協会で入手できる。基準A1264.2、「歩行/作業面でのすべり阻止手段の設置に関する基準」は、2001年7月2日、米国規格協会で承認された。
 米国安全技術者協会によれば、同基準は、OSHA基準やその他のANSI基準で用いられている用語「すべり阻止手段」をさらに明確に規定するのに必要であった。同基準は、マットと細長いじゅうたんの設置などといった床の特質などの分野での点検、すべりやすい環境への入所制限、適切な信号の設置など、適度に安全な歩行面や作業面を確保するガイドラインを提供するものである。その他のガイドラインには、履物の床との間の静止摩擦特性、物的管理、訓練と保守、作業面点検機器、床材の選択などがある。
 同基準は、米国安全技術者協会の会員については32ドル、非会員については48ドルで配布している。オンラインwww.asse.orgで、または電話847−699-2929で注文できる。

職業性肺疾患は数十億ドル単位の出費

イリノイ州ノースブルック − アメリカ胸部医大学が発行する「チェスト」誌2002年1月号に掲載された調査によると、職業性肺疾患のコストや発症率は高まっており(2001年には推計85億ドル)、予防対策を要する事態である。
 同調査では、業務関連の喘息、肺疾患のパーセンテージを推計して、閉塞性肺疾患について、1996年度の直接、間接費用を調べた。これにより、職業性慢性閉塞性肺疾患は50億ドル、職業性喘息は16億ドルもの費用がかかったことが判明した。直接費用は、医療費および管理費、間接費用は、損失賃金、損失付加給付、国内生産の損失を含む。
 「こうした費用は、とくにその大半を、罹病した労働者やその家族が負担し、全労働者も賃金の低下を被る形で負担し、納税者が負担しているだけに、莫大なものである」と、調査の主筆で、デイビス市のカリフォルニア大学疫学・予防医学部のJ・ポール・リー保健経済学教授は述べた。
 人的損失という観点では、同調査は、1996年には、職業性慢性閉塞性肺疾患で15,032人の労働者が、更に職業性喘息では805人が死亡していると推計。閉塞性肺疾患は、米国の死亡原因の第4位であると、調査は指摘する。1980年から1994年の間に、閉塞性肺疾患による女性の死亡率は、2倍となったが、これはいくぶん、喫煙の増加と女性の労働力参加の急増による。
 職場の空気中の粉じんや粒状物質の含有率を低下させることで、職業性肺疾患の罹患は予防できると、リー教授は述べた。


自動車衝突事故のコストを会報で説明

イリノイ州アイタスカ − 全米安全評議会(NSC)の新しい会報では、地域社会や州内での不慮の負傷による死亡、非死亡のコストの算出方法をわかりやすく説明している。
 「不慮の負傷の費用推計、2000年」は、2000年度の自動車事故や、家庭、職場、公共の場での非自動車事故負傷の全体的な経済的損失を見積もっている。
 自動車衝突事故については、賃金・生産性の損失、医療費、管理費、自動車の損害、事業主の費用をもとにした。2000年度の自動車衝突事故の費用は、死亡1件当たり467万ドルであった。
 会報ではまた、「障害を伴う負傷」の概念を用いない地域社会や州を補佐するため、負傷の重度等級別に費用を見積もった。また、生活の質(QDL)の損失を測定するのに算入した総合費用も列挙した。
 その他の負傷については、総費用は、2000年度の平均値を用いて、「死亡1件当たり」で推計した。これらの平均値は、各々の負傷/死亡率に基づく。会報では、火災その他の災害のように死者多数が出る場合の費用や、業務関連の自動車衝突事故の費用の算出方法を説明している。また、職場、家庭、公共の場での非自動車事故について、死亡1件あたり、障害を伴う負傷1件あたりの経済的損失(概算)を列挙した。
 会報は、「Injury Facts」最新版の発行に伴い、負傷が国家経済に及ぼす影響をわかりやすく説明するため、毎年作成されている。www.nsc.org/lrs/statinfo/estcost0.htmからダウンロード可能。

負傷による経済的損失概算(2000年度)
分類 死亡 障害を伴う負傷
家庭での負傷 780,000ドル 10,700ドル
公共の場での非自動車関連負傷 780,000ドル 7,800ドル
職場での負傷(事業主の費用を除く) 970,000ドル 25,000ドル
職場での負傷(事業主の費用を含む) 980,000ドル 28,000ドル

・ 1件当たりの賃金・生産性損失、医療費、管理費の平均費用にもとづく。
・ 数値は、財物損壊の推定値や障害を伴わない負傷による費用は含んでいないため、これらの負傷の地域社会にもたらす総合的な経済的損失を見積もるには適さない。


出所:全米安全評議会、2001年


生物テロの恐怖、インターネットで詐欺商売を誘発

 ワシントン − 生物テロ防護用品に関する根拠のない製品説明を止めるよう、連邦取引委員会がウェブサイトの開設者に121もの警告を送付してから数ヶ月が過ぎたが、インターネットでは、多数のサイトが、疑わしい製品説明を続けている。
 最初に警告を受けたのは、主に、炭疽菌その他の生物テロ因子の治療・回復に効くと主張した医薬品の宣伝者であった。新しいところでは、空気浄化フィルター、ガスマスク、防護服、紫外線機能を売買するウェブサイトが、警告を受けた。サイトの開設者は、消費者への返金に加え、連邦取引委員会法違反で、最高11,000ドルの罰金刑の対象として起訴される。
 連邦取引委員会は、食品医薬品局および30州の法執行機関と協力して、まぎらわしい製品説明がないか、インターネットを調べた。その結果、EPA(環境保護局)は、アリゾナ州ギルバート市のホームランド・セキュリティ・プラス社、フロリダ州フォートローダーデール市のテスティング・キッツ鰍ノ対し、炭疽菌に効くとして売っていた殺虫剤の違法販売の中止命令を出した。
 「この種のうたい文句を使うのであれば、企業は、製品が実際に効くことを科学的に証明しなければならない」と、連邦取引委員会のハワード・ビールズ消費者保護部長は述べた。

企業に対する連邦取引委員会の警告
  • ガスマスク、呼吸用器具が、すべての汚染物質に対し有効であると説明してはならない。
  • 製品が、公認されていない場合には、政府、軍部「公認」であると主張してはならない。
  • 防護服の防護の度合いを不正確に伝えたり、誇張してはならない。
  • ガスマスクのフィルターは、使用条件のよいものだけを売ること。

頻繁な手洗いで、細菌が蔓延の可能性

カリフォルニア州アナハイム − 頻繁な手洗いは、細菌の蔓延を防ぐために多くの職業で必要とされているが、アメリカ皮膚科学会の医師らによれば、実際には、細菌の伝染を促している可能性がある。
 保健医療、フードサービス労働者など、頻繁に手洗いをせねばならない人々を対象とした調査では、しばしば手の表皮が破壊され、あかぎれ、かゆみ、炎症を起こしやすい状態になっていることが判明。保健医療専門職を対象とした調査では、たとえば、45%もの人々に、刺激性接触皮膚炎がみつかった。手の荒れた看護師は、細菌の繁殖する可能性が2倍になる。
 洗剤、研磨剤入りクリーナーを使用すると、労働者の手の刺激性皮膚炎をおこすリスクを高める可能性があると、リノ市のネバダ医科大学皮膚学科のジェームズ・デル・ロッソ臨床助教授は述べた。助教授は、手の皮膚炎を患う労働者は、「自身、微生物が繁殖するリスクが高いだけでなく、他の人々に感染させる可能性も高い」とも付け加えた。


不注意運転の危険性に関する調査報告

 新しい2つの調査は、不注意運転による問題の増大を取り上げている。
 ひとつは、リッチモンド市のバージニア・コモンウェルス大学の報告書で、不注意運転は、バージニア州の事故の主要原因であると特定。もうひとつ、バージニア州フェアファクス市のジョージ・メイソン大学の調査では、新技術とゆとりのなさが原因となり、ドライバーの注意力はこれまで以上に散漫となっていると結論づけている。
 両調査とも、携帯電話だけが不注意の型ではないと強調、問題解決に向けて法令を制定する前に、もっと調査するべきであると勧告している。携帯電話と運転に関する調査は、とくにさまざまである。衝突の危険性は、調査によっては34%から400%増加すると報告するものもあり、運転中に携帯電話で話しているのは29%から44%と、調査により異なる。
 「車中の複合行為(マルチタスク)は、ふつうのことになってきているが、二次的な役割にとどめるべきである」と、調査の主筆で、ジョージ・メイソン大学公衆衛生推進センターのデイビッド・アンダーソン所長は述べた。
 アンダーソン所長は、調査報告書のなかで、不注意運転およびその影響を明確に規定するため、より多くの調査を実施する、事業者による教育も含めて、問題の深刻性について公衆を教育する、不注意運転を規制する法律を施行する、州レベル、地方レベルで、この問題のよりよい取締りやベンチマーク(基準)を開発するなどを提言している。
 両調査報告書は、www.vcu.edu/cppweb/tstc/sr15.html およびwww.caph.gmu.eduで閲覧できる。


ACGIH委員会、2002年度TLV、BEIを承認

 シンシナティ − アメリカ産業衛生専門家会議(ACGIH)は、先日、2002年度の化学物質、物理的因子の許容限界値(TLV)および生物学的暴露指標(BEI)を承認した。また、TLVの変更提案値への追加提案を承認した。
 該当物質の一覧表は、同会議のウェブサイト、www.acgih.orgで閲覧可。TLVの変更提案値の対象物質に関する草案は、購入希望者に配布する。物理的因子のTLVの2002年版変更提案値には、聴覚、エルゴノミクスも含まれる。
 「2002年度許容限界値(TLV)、生物学的暴露指標(BEI)」および「許容暴露基準ガイド2002年版」は、今月末に入荷。予約は、www.acgih.org/storeまで。


NSC会議の詳細、ウェブサイトで閲覧可

 10月4〜11日、サンディエゴ市サンディエゴ会議センターで開催される全米安全評議会(NSC)第90回年次会議&展示会で、あなたの専門分野での受講計画を立てよう。今年の年次会議&展示会では、英語、スペイン語での新しい講義を数多く新設、専門開発セミナーも盛りだくさんである。展示会は、あなたの安全プログラムの推進に役立つし、最新の技術・訓練を知ることもできる。
 参加者登録は、4月1日から。ウェブサイトwww.congress.nsc.orgでは、年次会議&展示会で何が用意されているか、閲覧できる。宿泊情報、講義内容を知ることができ、日程を計画したり、サンディエゴ周辺の情報を得られる。展示会出品希望者向けの情報も、同じサイトに掲載。電話での照会は、800−621-7629、内線2339まで。


NSC、記録保持基準セミナーを開催

 イリノイ州アイタスカ − 全米安全評議会(NSC)は、新しい記録保持基準の遵守を支援するため、企業向けの訓練セミナーを新設した。セミナーは、業務関連傷病記録の作成・保持を担当する管理者向けに設計された。
 同セミナーは、全米各地のNSC支部で開催、OSHAの新旧記録保持基準の要件の違いを明らかにする。
 セミナーの日程、開催地については、www.nsc.org/oshareco.htmlまたは電話800−621−7619まで。


訂正
 本誌2月号の製品フォーカス(59ページ)では、製品の写真数点が、違う製品の広告文の隣に掲載されていました。深くお詫び申し上げます。