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NSC発行「Safety + Health」2002年3月号
OSHAの最新情報
OSHA、長い遅延期間を経てエルゴ計画を準備
OSHA(労働安全衛生庁)は、紆余曲折を経て、この程、異論の多い職場における累積外傷性傷害に向けた多面的アプローチを完成させた。しかし、本誌印刷開始時点では、発表はなかった。
この計画では、エルゴノミクス基準に向けた新規の規則作成はない。報じられるところによれば、ホワイトハウス、エレイン・チャオ労働長官、ジョン・ヘンショーOSHA長官が、協力して新アプローチを打ち出した。
本方針については、いくどか発表を試みたが、諸般の事情で流れた。元々、発表は9月に予定されていたが、9月11日の対米テロにより、OSHAは、その延期を余儀なくされた。同庁は、2001年晩秋までに発表すると述べ、その後、1月に延期すると訂正した。
エルゴノミクスへの新アプローチは、クリントン政権下で公布されたOSHAエルゴノミクス基準を、ブッシュ大統領の後押しで、議会が無効化したため、必要となった。
新しい基準の代わりに、「彼らは、規則以外、できる限りのことをする」と、OSHA問題に詳しい法制弁護士は語った。伝えられるところでは、新計画は、精肉工場を対象に作成されている自主ガイドラインの類に加えて、パートナーシップと遵法支援を活用するよう、OSHAに求めるものである。これらのガイドラインは、H.W.ブッシュ政権初期に、当時のジェラルド・スキャネルOSHA長官とエリザベス・ドール労働長官の在職中に起草された。そのほか、自主的保護プログラムのもと、模範的な職場をはぐくむなども考えられる。
新計画にはこのほか、エルゴノミクス違反に適用されるOSHA「一般義務条項」の施行強化が含まれる予定である。スキャネルOSHA長官在任中、同庁は、本条項を拡張適用、その結果、皮肉にも、多くの事業者からより明確なエルゴノミクス基準を求められる顛末となった。
ヘンショーOSHA長官、労働監督の増強をめざす
当初、OSHAによる職場監督は緩慢なペースであったが、ヘンショーOSHA長官は、9月30日を末日とする2002年度の監督件数を引き上げたいと発表した。
ヘンショー長官は、連邦レベルでのOSHA監督目標を、2002年度は36,400件と、前年度の35,778件より約2%高く設定した。OSHAは、2001年度には、目標を120件上回り、2000年度の約36,000件に近い件数を処理した。
ヘンショー長官は、事業者に対するOSHA基準遵守支援や、労働安全改善に向けたその他の穏便な手法に努力を傾注する一方で、強力なOSHA法規施行プログラムを維持したい意向である。長官や他のOSHA幹部は、対外的にも庁内でも、遵守支援を含めた全プログラムは、強力な法規施行基盤がなくては機能しないことを強調している。
同長官は、監督ペースの低下は、ニューヨーク市の世界貿易センター復旧作業における労働安全や、生物テロ問題に傾注していたことによると発言した。2001年12月31日を期末とする2002年度第1四半期の監督は、年間36,000件のペースからはずいぶん遅れをとったものの、7,332件を処理した。これは、2000年12月31日を期末とする前年度同期の連邦監督7,044件より約300件多い。12月の監督活動は、季節事情による影響も出る。
同四半期の召喚は、17,685件から17,730件に微増、罰金総額は、2,030万ドルから1,910万ドルに低減した。
記録保持基準の遵守徹底に向け、プログラム発動
OSHAは、新しい記録保持基準の遵守を支援する、事業者向けの強力な援助プログラムを開始した。
事業者140万人を対象とする新基準は、1月1日に発効した。しかし、ワシントンを拠点とする全米製造者協会から提訴された訴訟を和解するにあたり、OSHAは、120日間の施行延期に合意した。当局はまた、同基準の主要条文の解釈について、遵守支援担当官を教育する旨合意した。例えば、業務に起因することが明らかな傷病のみが記録対象となること、また、業務関連傷病が成立するには、労働者側からの苦情だけでは不十分であることを、遵守支援担当官に指導する。
OSHA幹部は、新基準の詳細の事業者への通知や、同基準のニュアンスに関するOSHA監督官の訓練を本格的に開始したと述べた。これは、新規則を施行するに先立ち、遵守支援を実施するよう求めた、全米安全衛生諮問委員会の要請に従ったものである。OSHAは、ウェブサイトに詳細なガイダンスを掲載、また、2001年12月には、3,500の事業場を対象とした衛星放送講座を放映するなど、多様なアウトリーチ活動を行っている。
結核記録を再検討
OSHAは、結核規則作成に向け、記録を公開、60日間の批評期間を設けて、同庁の最終リスク評価や医学研究所による報告「職場の結核」に対し、検討や批評を公募している。
前回は、1999年6月に結核記録を開示、職業上の結核暴露リスクを判断するのに役立つ新しい調査やデータについて批評を求めた。OSHAは、結核疫学およびリスク評価の分野の専門家二名に、リスク評価案の検討を依頼した。この検討結果は、希望者に配布、批評を受け付ける。
議会は、米国科学学会の衛生政策部門である医学研究所に、保健医療労働者の職業上の結核リスクに関する報告書を委託した。報告書は、アトランタ市の疾病対策予防センターの結核ガイドラインの実施や、保健医療労働者の保護を目的としたOSHA基準の潜在的効果をめぐる問題を検討した。
批評希望者は、批評を二部作成して、200 コンスティチューション・アヴェニュー、N.W.、ワシントン、DC 20210、米国労働省OSHA、N−2625室、処理予定事項 H−371、処理予定事項室宛郵送すること。3月25日の消印有効。10頁未満の批評は、202−693−1648にファックス可。また、http://ecomments.osha.govにメールすることもできる。
労働者傷病率、最低値を記録 − 2000年
労働統計局の報告によると、民間産業の職場の傷病率は、2000年度には、従業員100人当たり6.1件に低下、1999年度の6.3件から3パーセント減少した。
2000年度の傷病率は、当局が1970年代初めに傷病統計の発表を始めて以来の最低記録である。傷病率は、より危険な建設業、製造業も含め、ほとんどの産業で低下し続けている。
2000年度の傷病者数は、1999年度とほぼ同じ約570万人であった。しかし、延労働時間は、2パーセント上昇した。総労働損失日数率(total
lost-workday rate)は、1999年度、2000年度とも3.0で、統計局が記録した最低値であった。
OSHA、職場での除細動器の利用を推進
ホワイトハウス法制事務室の要請に応えて、OSHAは、職場での突然の心拍停止に備えて、自動体外式除細動器(AED)の配備を検討するよう、事業者を奨励する方策を講じた。
ホワイトハウス予算局内の情報・法制事務室は、職場でのAED配備を義務づけるよう、OSHAに検討を要請、その後、同庁は、AEDの利用に関するデータカードや技術資料を発行した。
ジョン・ヘンショーOSHA長官は、小型のコンパクトな装置で、心臓の律動が正常に戻るよう、電気ショックをすぐに与えれば、心拍停止に陥った人々の90%以上を蘇生させることができると指摘した。「AEDは、取り扱いが簡単で、心臓危機に陥った人々を蘇生させる点で、決定的な違いを生む」とヘンショー長官は語った。患者の蘇生率は、この種の介助がなければ、一分経過するごとに10%下がるが、3分以内に電気ショックを与えれば、AEDは、蘇生率を5%から75%に引き上げると、長官は指摘した。
1999年および2000年にOSHAが報告を受けた職場での死亡者数6,339人のうち、815人は、心拍停止によるものであった。
OSHA、職場の禁煙案を撤回
OSHAは、すべての職場での禁煙をめざした提案を撤回した。職場の禁煙案は、クリントン政権下で提案されたが、公開批評の段階にはいたらなかった。
米国心臓協会、米国ガン協会、米国肺協会および主要な喫煙反対団体は、連邦の介入は、地方の地域社会、民間事業者、州政府の努力を阻むのではないかとの懸念から、禁煙撤回を支持した。
「懸念するのは、連邦政府が、職場の室内空気法を施行すれば、地方や州政府がなしうるものより手ぬるいものになる可能性である。我々には、禁煙案は、より強力な室内空気法の制定を脅かすように思えた」と、アトランタ市の米国ガン協会のスポークスパーソン、レイチェル・タイリー氏は述べた。
ニューヨーク市の米国肺協会によると、今日では、米国労働者のおよそ70%は、禁煙環境で働いており、禁煙を実施している職場は、1994年から50%増加した。
カリフォルニア州バークレー市の「米国禁煙者の権利」団体のティム・フィラー副部長は、この15年間で、地方、州政府や企業の禁煙条例や禁煙方針が劇的に増加したと述べた。緩い連邦法は、多くの地域で後退をもたらすと述べた。
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