このページは国際安全衛生センターの2008/03/31以前のページです。
NSC発行「Safety + Health」2002年4月

ニュース


ブッシュ政権、2003年度OSHA予算を縮小

 ワシントン − ブッシュ政権は、2003年度予算案を発表、執筆者らが「戦時」資料と呼ぶこの予算案は、テロリズムの撲滅を最優先課題に掲げており、OSHA予算は、2002年度予算より約800万ドル低い、1.7%減となる。
 「われわれは、予算を増やすよりも、手持ちの資源で、よりよい成果をあげることができる」と、ジョン・ヘンショーOSHA長官は、先日、報道陣に述べた。「これは戦時予算であり、非常事態における枢要な決定を下し、解決策を懸命に探さねばならない」とOSHA長官。
 予算の削減幅が最大となるのは、労働組合や安全訓練団体への訓練助成金である。ブッシュ政権は、助成金を1,120万ドルから400万ドルへと削減する。また、年金、保健費用は、200万ドル減らし、1,170万ドルとする。また、安全衛生基準作成予算は、130万ドル減らし、1,420万ドルとする。
 連邦法規施行予算は、70万ドルの微減で1億6,110万ドルとなるが、連邦遵守支援および州相談助成金は、各々150万ドル増えて、それぞれ6,030万ドル、5,250万ドルとなる。
 予算案では、OSHAの常勤労働者83名を削減するとしており、このうち64名は、連邦法規施行に関わるスタッフある。法規施行スタッフの削減は、中間管理職その他を対象とするものであり、監督官の削減ではないと、OSHAは述べた。
 事業者らは、OSHAに対し、その軸足を、法規施行から事業者に対するOSHA規則遵守支援へと移すよう、久しく主唱していた。


大統領の公害対策に賛否両論

 ワシントン − 気候変動に関する京都議定書や、その他環境保護に向けた一連の展開に対するブッシュ政権の取り組みは、環境団体の攻勢にさらされている。先日、同政権が発表した京都議定書に代わる代案やEPA予算は、賛否両論で迎えられた。
 欧州の数カ国は、地球温暖化対策に関し、ブッシュ大統領がともかくなにか提案したというだけで、歓迎した。欧州連合(EU)のスポークスパーソンは、「ブッシュ大統領が、気候変動に対し、なにかせねばならないということを認識していることは明らかであるが、われわれには、このとてつもない変動に対しては、京都多国間アプローチこそが最善策だと思われる」と発言した。
 日本の大木浩環境大臣は、より手厳しい。大臣は、「この計画では、米国が京都で合意した(京都議定書で義務付けられている、先進各国における二酸化炭素排出の)7%削減目標を達成できない」と述べた。
 京都での合意にもかかわらず、議定書を批准すべき米上院は、いまだに批准していない。今日現在、議定書に調印した国はわずかで、いわゆる先進国で調印した国は、一握りである。
 ブッシュ大統領の計画は、温暖化ガス排出削減を、主に産業界の自主努力にまかせ、排出削減を経済水準と連動させようとするものである。
 世界野生生物基金、全米野生生物連盟などの環境団体は、ブッシュ政権の提案では、「地球温暖化や有毒水銀排出から人類、野生動物を保護することは、まったくできない」と語る。
 大統領のEPA予算案は、もう少し好意的に迎えられた。大統領の2003年度予算案は、昨年度の予算要求を2億ドル上回り、これには、ブラウンフィールド向け予算(未活用の産業用地の再生をめざす)の100%を超える増加や、流域保護予算の増加などが含まれる。EPAは、先日、2001年度には、同局の法規施行や遵守活動により、公害管理、環境保全活動の違反者は、43億ドルにのぼる負担を強いられたと述べた。
 「われわれが提出した予算案は、われわれの就任時より一段と大気や水をきれいにし、土地をよりよく保護しようというブッシュ大統領の強いコミットメントを反映したものである」と、クリスティ・ホイットマンEPA長官は述べた。
 全米資源防衛会議は、意見を異にする。同会議は、ハドソン川のPCB一掃、有機汚染物質に関する国連条約の調印には賛成する一方、公害、地球温暖化、湿地帯に関する政策は「凶報」と形容した。


事実チェック
職場の健康増進プログラムの効用




出所:「従業員の健康増進プログラムは、勤労意欲を高める」、人的資源専門職531名を対象とした調査、ヒューマン・リソース・エグゼキュティブ、2002年


ビバリー社エルゴノミクス訴訟は、一般産業の前例となるか?
エリザベス・アンバル、キャレン・ガスパース

 アーカンザス州フォートスミス市のビバリー・エンタープライジズ社とOSHA(労働安全衛生庁)の間で成立したばかりの和解(本誌2002年3月号25ページ「産業特集」参照)について、本件が保健衛生産業にもたらす影響を、業界の消息通が憶測した。
 シカゴ市に本社を置くエルゴノミクス・コンサルティング会社、MSIC鰍フローレン・ウルフ社長は、本訴訟は、保健衛生産業の前例となると述べた。ウルフ社長は、ANSI(アメリカ規格協会)の上半身蓄積外傷に関するZ365委員会の委員を務める。同社長は、「OSHAは、本件を和解するにあたり、患者を持ち上げる行為は、ナーシングホーム(高齢者などの看護を行う主に個人施設)における危害として認定されることを証明した」と述べた。
 同氏はまた、本件は、リフトその他の機材を求めて闘う人々に「より多くの攻撃材料」を与えることとなったと付け加えた。
 本訴訟は、1991年、OSHAが、患者を持ち上げる行為の反復により、従業員を腰部傷害に曝したとして、ビバリー社を召喚したのが発端である。ビバリー社は、腰痛は、職場に起因させるにはあまりに一般的な症状であるとして、召喚に異議を唱えた。同社はまた、患者を持ち上げるテクニックについては、個人により異なってくるため、教授できなかったと主張した。
 本訴訟は、労働安全衛生再検討委員会に持ち込まれ、同委員会は、同社の休業件数の多さは、持ち上げる行為が従業員にとって危害性があることを示していると述べた。同委員会は、本問題の是正は、技術的かつ経済的に可能かどうかを見極めるよう、別の行政法審判官に送り返した。ビバリー社は、対立を続けるより和解を選んだ。
 ワシントン市のケラー・アンド・ヘックマン社の代理人、ラリー・ハルプリン氏は、10年前にOSHAがビバリー社に採用を求めた対策の多くは、現在、職場に広く行き渡っていると述べた。
 「法的な見地から、ビバリー社は、最終的にはOSHAが勝訴するだろうと見てとったのだろう」と同氏。同社は、「追加の訴訟費用に出費するより、エルゴノミクスを改善させたほうが、効率的だった」と認識したのである。

一般産業への影響
 しかし、エルゴノミクス訴訟という意味で、ビバリー社訴訟事件は、一般産業に対し、なにか意味があるだろうか。ウルフ社長は、懐疑的である。エルゴノミクス問題について、「保健医療では、解決策がわかっている」と、同氏は指摘する。しかし、エルゴノミクス問題への対処は、産業により異なる。保健医療産業ですら、病院は、ナーシングホームと異なると、ウルフ社長。たとえば、ナーシングホームには、長期間の患者の集団があるが、病院では、患者は、毎日変わるといってよい。
 復員軍人省の産業安全衛生プログラム・マネジャー、フランク・デニー氏は、OSHAが、ビバリー社訴訟事件を保健医療産業以外に適用することはないだろうが、事業者は、エルゴノミクス問題を先取りしておくのが賢明であると警告する。
 同氏は、OSHAの罰金刑を受けないまでも、労働者災害補償費用など他の費用がかかると指摘。その意味では、ビバリー社のケースは、「一般産業全体に適用される」と述べた。
 しかし、この問題に関し、保健医療産業は、目を離せない産業である。
 労働安全衛生法の一般義務条項でもって、エルゴノミクス違反を召喚するとすれば、その対象は、保健医療産業であり、とくにナーシングホームが狙われるだろうと、ウルフ氏。OSHAにとって、「簡単な仕事」だからである。
 ハルプリン氏は、重量物を持ち上げる行為を通常の作業とする産業では、OSHAが、一般義務条項を用いて、エルゴノミクスの分野での法規施行活動を展開するよう期待すると述べた。
 「このようなケースでは、提訴し、実行可能な排除対策を打ち出すという点で、OSHAは優勢となるだろう。これは、専門家同士の戦いとなる」。
 しかし、デニー氏は、エレイン・チャオ労働長官が、同省の計画を発表するまでは、同省のやり方を推測するのは難しいと述べた。チャオ長官は、3月14日、上院衛生・教育・労働・年金委員会で、これらの計画について証言する予定。
 OSHAは、同庁の法規施行活動にとって、あるいはエルゴノミクス問題への一般義務条項の適用にあたり、ビバリー社訴訟がどのような意味を持つかについては、明言を避けた。


EPA法規施行部長、辞任を発表

 ワシントン― 「われわれが施行しようとする規則を弱体化させようと決意しているかのようなホワイトハウスと戦うのは」固辞するとして、エリック・シェーファー氏は、クリスティ・ホイットマンEPA(環境保護局)長官に辞表を提出した。シェーファー氏は、EPA法規施行部長である。
 「とどまるところを知らない延期と、エネルギー産業ロビイストらによる規則改正案のリーク(漏洩)で」、発電所に対し「提起した訴訟を足元から揺さぶられるのと、どちらがより悪質か、わかったものではない」と、シェーファー氏。「こうした提案は、本当のところ、古い「既得権にあぐらをかく」発電所を、近代的な公害管理のないまま、(排出量が増えるにもかかわらず)引き続き再建できるよう、わずかな適用免除を大きな抜け穴にしようとするものである」。
 シェーファー氏は、EPAに12年間勤務した。同氏はまた、ブッシュ政権の2003年度EPA予算削減案に対し、批判的である。「ブッシュ政権の予算案は、法規施行プログラムで、2001年度のレベルを200名以上下回る人員削減を掲げており、われわれの交渉の地歩をさらに弱めるものである」と、同氏は非難する。
 行政環境問題の批評家らは、大気・水質浄化に対するブッシュ大統領の無関心を示すものとして、辞任騒ぎに飛び上がった。「辞表は、ベールをはぎ取り、大気浄化に取り組んでいるとするブッシュ政権の主張の矛盾をつくものである」と、ワシントンのクリーン・エア・トラスト(Clear Air Trust)のフランク・オドネル部長は、MSNBCニュースに語った。
 本誌印刷開始時点で、EPAは、シェーファー氏の辞任または批判に関し、声明を発表していない。


高齢者の墜落・転落転倒防止法案

 ワシントン − 衝撃的な統計がある。65歳以上で、負傷に起因する死亡原因の首位は、墜落・転落、転倒である。しかも、腰部を骨折したうちの4分の1は、1年以内に死亡する。1998年には、米国では16,274人が、墜落・転落、転倒による負傷がもとで死亡しており、このうち11,000人は75歳以上であった。
 こうした死傷を減らそうと、ティム・ハッチンソン上院議員(共和党、アーカンザス州)とフランク・パロン下院議員(民主党、ニュージャージー州)は、2002年高齢者墜落・転落、転倒防止法案を提出した。
 「高齢者墜落・転落、転倒防止法は、墜落・転落のリスクを減らし、墜落・転落、転倒しやすい人々を特定し、墜落・転落、転倒の再発を防ぐ目的で、教育、調査、デモンストレーション・プロジェクトに必要な資源を提供する」と、ハッチンソン上院議員。
 パロン下院議員は、墜落・転落、転倒防止は、メディケア、メディケイドの費用を節約できると述べた。アトランタ市の疾病対策予防センターによると、墜落・転落、転倒関連の医療費は、毎年200億ドル以上にのぼる。
 「われわれの保健医療制度の大部分は、病院への入院やナーシングホームでの介護など、施設収容を指向するもので、最終的に施設収容を招く諸問題を防止しようと努めるのとは対極にある」とパロン下院議員。
 本法案は、全米安全評議会(NSC)が支持・後援した。法案が議会を通過すれば、イリノイ州アイタスカ市に拠点を置く同評議会は、墜落・転落、転倒の減少、その影響の軽減をめざし、全米規模で、教育戦略やデモンストレーション・プロジェクトを展開する。
 「わが国を強く健全な国として維持するのであれば、高齢者層の墜落・転落、転倒は、対処すべき甚大な公衆衛生問題である」と、全米安全評議会のアラン・C・マクミラン会長は語った。

・ 写真キャプション:全米安全評議会アラン・C・マクミラン会長兼CEO(最高経営責任者)(右)と、法案を提出するフランク・パロン下院議員(左)、ティム・ハッチンソン上院議員(中央)。


世界貿易センター地区を対象に綿密な調査

 ワシントン − 上院は、先日、昨年9月11日以来作業してきた消防隊員や救助隊員に対する、世界貿易センター大殺戮の影響に関し、聴聞会を開催した。調査員らも、現場で働く消防隊員や鉄鋼労働者の健康や、対米テロ当事、妊娠中であった女性への影響、グランド・ゼロ(ゼロ地点)で活動した救助犬に対する影響すら、作図している。 
 民主党コネチカット州選出のジョセフ・リーバーマン上院議員とニューヨーク州のヒラリー・ロダム・クリントン上院議員は、特に、EPA(環境保護局)の世界貿易センター跡地への対応や、有害性が疑われる汚染物質の試験に対し、批判的であった。
 「空前の出来事とはいえ、現場での緊急対策や捜索・救助活動と環境対策は、うまく調整できていなかったようにみえた」と、リーバーマン議員は述べた。 
 セント・ルイス・ポストディスッパチ紙は、崩壊した建物から放出された粉塵は、排水管クリーナーと同レベルのアルカリ度であると発表したUSジオロジカルの調査結果を、EPAは無視したと報道した。EPAのジェイン・ケニー第2地域行政官は、「無防備な人々に対するリスクを矮小化したことはない」と述べ、当局が、故意に人を欺くようなことはしていないと語った。
 専門家らは、世界貿易センターの倒壊時、付近に居合わせた子供たちについても、調査が必要であるとも言う。
 「子供たちの発育システムは、成人のそれに比べ、有毒物質に侵されやすい」と、イリノイ州エルクグローブ市を拠点とする米国小児科学会の会長で、ニューヨーク市のコロンビア大学小児科学教授でもあるルイス・ク−パー氏は語った。
 喘息やその他の呼吸器疾患のリスクが、特に懸念されている。小児が、体重1ポンドあたり吸い込む粉塵や取り込む空気の量は、成人より多いのに対し、肺や他の臓器は、成人に比べ、傷つきやすい。
 ニューヨーク眼耳診療所の小児耳鼻咽喉科の専門医である、ジェイ・ドリツキー医学博士は、9月11日以来、小児の上気道感染が増加しているが、これらの感染例を世界貿易センター跡地と直接結び付ける科学的データは、まだないと語った。


上院議員、ハート上院議員ビルの検査を要求

 ワシントン − チャールズ・グラスリー上院議員(共和党、アイオワ州)は、議会の法令遵守局に対し、上院事務所ビル3棟で勤務する職員が、ハート議員ビルの炭疽菌除去作業や、照射処理された郵便物の暴露による副作用を被っていないか、調査するよう要求した。
 「法令遵守局の責務の一つは、議会職員の労働環境の安全を確認することである」と、グラスリー議員は、法令遵守局の主席法律顧問、ゲイリー・グリーン氏に書簡を送付した。「ハート議員ビルと照射処理された郵便物をめぐる健康問題は、法令遵守局の調査の格好の対象である。健康上どのようなリスクがあるのか、あるとすれば、どう解決するか、こうしたことに光をあてるのに、独立した調査は役に立つ」。
 グラスリー議員は、1月22日から2月4日までに、上院事務所ビルに勤務する73名が、照射処理済み郵便物を取り扱った後、頭痛、発疹、口の渇き、目の炎症を付設診療所に訴えたと述べた。ハート議員ビルに勤務する約50〜60名の職員は、各々事務所に戻ったのち、ドライ・アイ、喉の渇き、頭痛を訴えた。
 上院議員事務所3棟の修復作業直後、いくつかの事務所が再開したが、ハート議員ビルの再開は、有害廃棄物処理班や環境対策班によるビル清掃が不首尾だったため、三度も延期された。ようやく、有害物質対策チームが、二酸化塩素ガスをビル内に充満させるのに成功した。検査の結果、清潔であると判明したため、ビルは、閉鎖以来4ヶ月以上を経て、1月下旬に再開された。


職場での怒り、攻撃性を調査

 ワシントン − 職場での怒りや攻撃性は、しばしば、業務上のストレスや職場に対する不満をもたらす。時には、怒りは、職場の暴力にエスカレートする。職場での攻撃性は、大抵、些細な事柄から始まるため、手におえなくなる前に、職場での怒りの感情を認識し、これに歯止めをかけることが可能であるということが、新しい調査で判明した。
 ミネアポリス市のミネソタ大学労使関係センターのテレサ・グロム教授は、製造メーカー2社の従業員74名に、インタービユーした。職場で怒りを覚えた場面について、その予兆や結果をあぶりだすため、踏み込んだ質問をした。
 業務関連ストレスのような、怒りの一般的な予兆を見いだし、職場での一見無害ないさかいに注意を払うことで、管理職は、職場における攻撃性の高揚を予測できると、調査は結論した。
 「職場の怒りと攻撃性:衝突事例データにみる概念的モデル報告」と題する調査は、労働衛生心理学ジャーナル(Vol. 7, No.1)に発表された。

 攻撃行動の最も一般的な予兆(上位5位) 
分類 回答者の割合
業務上のストレス(多忙ストレス) 90%
他人とのフラストレーション 89%
人の不当な振る舞い 89%
業務上の葛藤 80%
敵対的性格、短気 71%

* インタビューでは、複数回答を受け付けたため、パーセンテージの合計は、100%とならない。
出所:労働衛生心理学ジャーナル、2002年


自給式呼吸器の検定手続き変更

 ワシントン − 昨年の対米テロ攻撃と炭疽菌騒動をうけ、NIOSH(国立労働安全衛生研究所)は、新たなテロ攻撃に際し、救助隊員の呼吸器を適切に保護できるよう、自給式呼吸器の新しい検定手続きを実施すると発表した。
 呼吸用保護具メーカーに宛てたNIOSH書簡は、昨年9月11日の世界貿易センター・ツインタワー攻撃と、その後に続いた、致死性のある炭疽菌胞子入り郵便物騒動の所産である。書簡によれば、スキューバ式酸素タンクを含む自給式呼吸器の新検定では、自給式呼吸器は、化学、生物攻撃、放射能や核攻撃に対応できるものでなくてはならない。
 これは、製造業で用いられるシリカ粉塵、有毒化学物質や、その他の職場での呼吸危害に対する保護という、従来の自給式呼吸器の守備範囲を超えるものである。有毒液体の飛散といった危害から保護する「半面型マスク」のような、他のタイプの呼吸器や、防護性に優れた吸収缶付き呼吸用保護具の新検定については、後日とりかかるだろうと、NIOSHスポークスマンのフレッド・ブロッサー氏は述べた。
 また、これらの器具の新検定手続きは、自給式呼吸器メーカーに対し、使用期間の長い新設計の検討を促すことになるだろうと、ブロッサー氏は述べた。
 OSHAは、世界貿易センターのような緊急事態に際し、呼吸用保護具の調達、支給、利用をめぐる改善策を、目下検討中であると述べた。


州政府環境予算、大幅減

 ワシントン − 不況と歳入不足により、少なくとも30の州で、本年度の環境予算が削減または減額されると、全米州議会会議は報告する。12州の環境当局は、現時点では削減されていないが、事態が変わる可能性はあると示唆した。
 「削減」は、一般的には恒久的減額を意味し、「減額」は本年度予算に限定される。環境予算が削減されたとする30州では、その総額は、約2億ドルにのぼる。30州の予算削減額の平均は、およそ650万ドル、予算の6.2%減である。
 全米州議会会議によれば、2003年度の見通しは暗い。調査した42州は、平均11%の予算削減に直面していると答えた。予算削減は、ユーザーの負担増、水資源予算の削減、水質モニタリングや水質管理プログラムでの予算縮小、職員の給与凍結、優良企業に対する監督の縮小と「不良」企業に対する監督強化、支援プログラムの削減という結果を招く。

本年度の予算削減(30州)

最高値 平均値 最低値
州別削減額(ドル) $89,100,000 $6,547,407 $18,800
削減率(大抵、一般予算の削減) 26.3% 6.2% 1.0%
予算総額に対する一般予算の割合 60.0% 21.5% 6.4%
業務予算からの削減率 100.0% 77.2% 12.7%


ジョージタウン大、事業・公共政策センターを開設

 ワシントン − ジョージタウン大学は、労働安全の改善に向けた事業実習を提供する、事業・公共政策センターを開設した。同センターは、2001年3月に同大学のマックドナウ・ビジネス・スクールで開催された労働安全サミットの結実の一つである。
 「労働安全は、政策立案者が現実的なものと認識できるだけの、見えやすさと調査を要する」と、事業・公共政策センターのジョン・メイヨー所長は述べた。「同センターでは、学問上の卓見を、事業・公共政策に結びつけることができる」。
 同センターの機能には、次の事項が含まれる。
  • 労働安全サミットを主催する。
  • 安全情報センター、ウェブサイト情報源を維持する。
  • 事業倫理セミナーのシリーズを補佐する、継続中の一連の事業・政策セミナーを主催する。
  • 安全分野での調査を奨励する助成金、研究奨励金プログラムを提供する。
  • 経営学修士(MBA)を取得した同大卒業生と共同して、ジョージタウン大学のMBAプログラムに組み込む労働安全コースを開発する。
  • マックドナウ・ビジネス・スクールで提供する、幹部職員向け労働安全プログラムを開発する。
  • 労働安全の分野で、全米規模の指導力を発揮できるよう努める。
第2回年次労働安全サミットは、4月11〜12日、新センターで開催される。


運輸安全委員会、携帯電話関与の衝突事故を調査

 ワシントン − 全米運輸安全委員会は、携帯電話の利用が原因となった衝突事故を調査中である。この2月、ワシントン市の環状道路で5名が死亡した衝突事故を受けて、同委員会は初めて、自動車衝突事故における携帯電話の関与に言及した。
 2月の衝突事故では、ドーン・リチャードソン氏(20歳)が運転していたスポーツ汎用車が、中央分離帯を越え、2本のガードレールを激破したが、運転者は、携帯電話でボーイフレンドと話し中であったと伝えられている。この車3台の衝突事故で、リチャードソン氏と他の4人が死亡した。
 全米運輸安全委員会のスポークスマン、テッド・ロパキーウイックス氏は、調査員団は、事故時の携帯電話使用が「焦点」であると結論づけた、と語った。
 この環状道路事故の調査は、「携帯電話の使用が関与する衝突事故の調査に、先鞭をつけるものとなるよう期待する」とロパキーウイックス氏は述べた。同氏は、同委員会は、携帯電話使用の関与が当初から判明しており、調査すべき情報がある衝突事故のみを調査すると語った。


NIOSHとNSC、若年労働者の支援を目指す

 イリノイ州アイタスカ − 全米安全評議会(NSC)は、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)と共同で、新卒や若年労働者、とくに学校を卒業して就職しようとする十代の労働者を対象とした、効果的な教材を開発する1年間プログラムを実施している。2月には、ワシントン市、シカゴ市、フロリダ州オーランド市で会合を設け、新卒・若年労働者に対し、労働安全衛生の原則を最も効果的に教える方法について、議論した。議事録は、間もなく刊行される。
 若年労働者の負傷率は、同一産業における熟練した成人労働者の負傷率に比べ、著しく高い。


毎年、何千人もが目を損傷

 ワシントン − 全米失明予防協会によれば、家庭や職場で、毎日千件を超える眼損傷が発生している。労働統計局によれば、眼を損傷した労働者の大半は、保護めがねを着用せず、着用していた40%は、不適切な保護めがねを使用していた。
 OSHAは、眼損傷は、生産性の損失や医療費、労働者災害補償費で、年間3億ドル以上の費用がかかると見積っている。これには、目の損傷による心理的、物理的苦痛は含まれない、
 同庁は、企業や労働者は、目の損傷を防ぐにあたり、個人用保護具に頼るだけではなく、保護装置、工学的管理や、しっかりとした製造慣行を採用するよう、提案している。

安全大会のウェブサイトで、自分の日程を作成しよう

 イリノイ州アイタスカ − www.congress.nsc.orgにアクセスして、サンディエゴ市での第90回全米安全評議会年次大会における、自分だけの日程表・議題を作ろう。毎日の行動予定を作成し、出席する安全講演を選択し、自社の情報や会場案内を会議日程に入れる。年次大会&展示会は、10月7〜9日、サンディエゴ会議センターで開催される。
 大会は、緊急時対応のような題目から、効果的な安全委員会・会合の設置や、安全と生産性に及ぶ、150以上の講演を呼び物にしている。ウェブサイトは、大会&展示会を最大限に活用できるよう、各自の日程表を作成するのを支援する。ウェブサイトの予定表および議題には、講演内容、日時、場所といった詳細が掲載されている。