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NSC発行「Safety + Health」2002年5月

ニュース



労組、エルゴノミクス問題の進展に向け、訴訟を起こす

 ワシントン − 食品商業労働者連合は、テキサス州ラフキンにあるピルグリムズ・プライド社の鳥肉工場の労働条件は危険であると主張して、OSHAに対し、エルゴノミクス関連の措置を講ずるよう求めて、連邦裁判所に申し立てた。
 食品商業労働者連合は、事業者は、危害のない安全で健康な職場を提供せねばならないとした、OSHAの一般義務条項をもとに、告訴した。
 鳥肉加工は、国内で最も危険な職業のひとつであり、毎年5人に1人が負傷している。
 食品商業労働者連合のジャッキー・ノウエル労働安全衛生部長は、反復性負荷傷害による外科診療件数は、すさまじい数にのぼると述べた。ノウエル部長は、傷害には、手根管症候群や、親指、肩、ひじの負傷などが含まれると述べた。
 ラフキン工場の従業員の大半は、移民や少数民族であるため、ピルグリムズ・プライド社などの企業は、これらの労働者の不安や労働者の権利に関する教育の欠如に付け込んでいると、ノウエル部長。
 ピリグリムズ・プライド社のジェイン・ブルックシャー人的資源担当副社長は、こうした主張に真っ向から対立、「われわれは、早期発見・対策を強調しており、職種別に正しい職務遂行のしかたについて訓練を提供し、必要な折には、適切な医療を提供している」と述べた。同氏は、OSHA(労働安全衛生庁)は、ラフキン工場を数度訪れたが、エルゴノミクス問題で同社が召喚されたことは一度もなかったと付け加えた。
 OSHAのスポークスパーソンは、同庁は、調査・告発に6ヵ月間の期間を有すると述べたが、現在進行中の調査については、コメントを控えた。
 1980年代後半から1990年代初頭にかけて、食品商業労働者連合は、OSHA一般義務条項を根拠に、食肉加工産業を数件に及び告訴した。ピルグリムズ・プライド社訴訟も、この種のキャンペーンの再開かとの問いに、ノウエル氏は、「われわれは、頼りとするものがないような気分である。(エルゴノミクス)基準撤回の1周年記念日を迎えたが、OSHAはなにか講じようとしているようには見えない。われわれは、仲間の面倒を見なければならない」。


事実チェック 身体部位別、非死亡休業災害(アメリカ、1999年)



出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2001年


救急隊員、保護具の効力を疑問視

ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の新しい報告によると、救急隊員の多くは、世界貿易センターの大惨事のような大災害に対し、十分対応できるだけの備えがあるとは考えていない。これらの調査結果は、職場での個人用保護具の利用についても、幅広い意味を包含していよう。
 NIOSHは、2001年12月に開催した2日間の会議から、知見を拾い集めた。会議では、テロ行為に対応した際の個人用保護具の適切性について、救急隊員の体験談が記録された。
 参加者は、消防隊員、消防特別作戦本部、緊急医療サービス、警察、建設その他の業界、安全専門家などであった。会議では、昨年9月11日の世界貿易センターおよび国防省攻撃、1995年のオクラホマ市の爆発事件、昨秋の炭疽菌騒動への対応を検討した。
 出席者らは、保護具に「重大な欠点」があったと指摘した。頭部保護および高可視ベスト*は、よく機能したものの、保護衣や呼吸用保護具には、欠点があった。たとえば、支給された保護衣は、生物学的危険、感染症の危険や、火災の熱、不安定ながれきといった物理的環境から、十分防護するものではなかった。また、狭隘空間に入るに足る軽量性と柔軟性に欠けていた。救急隊員らはまた、支給された保護めがねでは、世界貿易センター跡地の絶え間ない粉じんを免れることはできなかったと指摘した。
 呼吸用保護具は、会議参加者らの注目をもっとも集めた。参加者らは、これらの保護具は、労働者が作業できるためには、「保護の度合いと、軽量性や実用性、着用性の度合い」との間で、しばしば折り合いをつけねばならない点を指摘した。参加者によると、作業員らはしばしば、不快感から、呼吸用保護具を外した。
 会議出席者らは、救急隊員の保護に向け、総合的な個人用保護技術を概括した調査事項や、救急隊員の安全衛生に関する連邦レベルでの教育・訓練プログラムの改善の必要性を挙げた。
 「救急隊員の保護:対米テロからの教訓」と題した報告書は、NIOSHの監督下、ワシントンのRAND科学技術政策研究所が作成した。
 報告書の全容は、NIOSHのwww.cdc.gov/niosh/npptlもしくはRANDのwww.rand.org/publications/CF/CF176/CF176.pdfで閲覧できる。

* 高可視ベスト―――高輝度反射材付ベスト


EPA、グラウンド・ゼロ(爆心地)活動で、非難の的
ワシントン − マンハッタン南部でのアスベスト、重金属その他の汚染物質の水準に関し、懸念が高まっている。消防署によると、ゼロ地点(爆心地)で作業する消防隊員の4人に1人は、呼吸性の、または、喘息様の症状を示している。
 危険にさらされているのは、作業員だけではない。この地域の自宅に戻ってきた人々は、層をなす粉じんを目の当たりにし、有害物質の水準に懸念をあらわにしている。
 対米テロの数日後、クリスティ・ホイットマンEPA(環境保護局)長官は、大気の安全性を表明したが、EPAは、清掃・検査義務を怠っているとの批判もある。
 EPAは、屋外の大気を検査し、長期的な健康上のリスクはないと結論した。しかし当局は、屋内の空気検査については、州、地方当局に委ねた。
 ホイットマン長官は、マンハッタン南部を調査する屋内空気特別調査団を編成すると約束したが、そのような調査団はまだない。
 ジェロルド・ナドラー下院議員(民主党、ニューヨーク州)は、EPAは、国家不測事態対応計画に基づく取締りを怠っているとして、連邦法違反で同局を告発した。
 「ニューヨークは、米史上最大のひとつに数えられる大災難の中心となったが、EPAは、本質的には逃げ腰だ」と、ナドラー下院議員は、声明で述べた。ナドラー下院議員は、国家有害廃棄物担当のEPAオンブズマン(行政監察官)、ロバート・マーティン氏に対し、爆心地の大気の質に関するEPAのデータについて、公聴会を設けるよう要求した。
 ニューヨークでの公聴会のひとつで、マウント・シナイ労働衛生クリニックの内科部長、ステファン・レビン医学博士は、爆心地で働く建設作業員数百人もの副鼻腔炎、気管支炎、喘息を診療したと証言した。


NSC「政府の日」勉強会、高齢者転倒・転落防止法案を取り上げる

 ワシントン − 全米安全評議会(NSC)の「政府の日」には、連邦議会議事堂で、NSCの支部幹部、職員35名が、2002年度の高齢者転倒・転落防止法案について、83名の議員およびそのスタッフと話し合った。この勉強会により、議員数名が、同法案の共同発起人として署名した。
 「驚異的だ」と、大セントルイス安全評議会のレスリー・フォラン常務理事。同氏は、下院議員1名、上院議員1名、議員補佐官4名と会合した、「彼らはすばらしく、熱心で、プロであり、われわれを快く受け容れてくれた」。
 ネブラスカ州の大オマハ安全衛生評議会のケイ・ファレル会長兼CEO(最高経営責任者)は、NSCグループがよい反応を得た理由のひとつに、法案が支持しやすいことが挙げられると述べた。
 「同法案が、将来、どういう意味をもたらすかを考えれば、法律として成立するのになんら問題はないと思う」とファレル会長。
 同法案は、高齢者の転倒・転落を減らすことを目的とした教育、調査、デモンストレーション・プロジェクトに対し、資源を提供するものである。転倒・転落は、65才以上の人々の傷害による死亡原因のトップである。
 NSCグループはまた、一般人が自由に利用できる除細動プログラムの実施を推進するため、州政府その他に資源を提供する法案について、下院議員らと話した。同法案には、心肺蘇生法(CPR)訓練、体外式自動除細動器の購入、除細動器の利用についての公衆の訓練なども含まれる。同法案は、すでに上院を通過した。


職場での呼吸用保護具の使用不足、調査で判明

 ワシントン − 労働統計局は、このたび、職場における呼吸用保護具の使用と慣行について、事業者を対象に調査を行った。この調査を実施するまでは、とくに日々の利用や職場で確立された慣行に関する情報など、呼吸用保護具に関する最新のデータはなかったと、労働統計局のスポークスパーソン、ビル・マッカーシー氏は述べた。
 調査では、呼吸用保護具をだれが、どれだけの頻度で、なぜ使うのかを調べた。その結果、民間部門で呼吸用保護具を使用する事業場は、わずかに10%で、そのうち半数近くは、自主的な使用にとどまっていることが判明した。労働者が呼吸用保護具を使用するのは、アレルギーや、規制基準を上回るレベルで自身を保護したいなど、個人的な理由によるものであった。
 呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場に対しては、訓練や呼吸用保護具の選択に関し、詳細な質問を設けた。従業員訓練については、59%は、従業員に対し、着用する呼吸用保護具の「使用と限界について理解する」よう訓練していると回答した。鉱業は、この点では断然良心的で、事業場の82%は、呼吸用保護具の使用について、従業員を訓練している。
 しかし、全事業場の32%は、メーカーの使用説明書に依存していると回答、約9%は、訓練を義務付けていないと回答している。これはつまり、呼吸用保護具を義務付けている10社中4社を超える企業では、従業員に対し、ほとんど、あるいはまったく訓練を提供していないということである。OSHA(労働安全衛生庁)の呼吸保護基準では、事業者は、従業員に対し、詳細な訓練を提供せねばならない。
 ほとんど、あるいはまったく訓練を提供しないとの回答が多かったのは、従来、呼吸用保護具の必要性が高くはなかった産業部門に集中する。調査対象の全事業場のうち、サービス部門は、メーカーの使用説明書にもっとも依存しがちで(40%)、一方、金融、保険、不動産業は、訓練を義務付けていないとする回答がもっとも多かった(14%)。より深刻なのは、建設業が、両方の設問で、同様の回答が2番目に多い産業であったことである。建設会社の36%は、メーカーの使用説明書に依存すると回答、14%は、どのような訓練も義務付けていないと回答した。

使用の決定
 従業員の呼吸用保護具の使用が必要かどうかを決定する際、事業場では、寄せ集めの情報源に依存していることが、調査で判明した。管理職が書面によるプログラムを採用しているとの回答は、他の回答よりも多く、企業の34%にのぼった。しかし、事業場では、たいてい、現場監督者や従業員の判断に任せるらしい(それぞれ23%、22%)。やや少ない、20%の企業は、メーカーの使用説明書をもとに判断を下していた。
 企業は、業務に最適な呼吸用保護具を選択するのに、類似の情報源を活用していた。メーカーの印刷物、販売代理店、従業員の提案や地元の店の販売員の助言というのまで、大気サンプリング以上にとはいわないまでも、それと同じ程度にあてにされているらしい。半数強(57%)が、化学物質等安全データシートを参考にしていた点は、評価すべきである。
 最近になって呼吸用保護具の使用を義務付けた事業場の報告によると、以下の結果が浮かび上がった。
  • 労働者が、ろ過式呼吸用保護具を使用する理由の首位は、塗料の蒸気と粉じんである。給気式呼吸用保護具をもっともよく使うのは、塗料の蒸気や溶剤の場合である。
  • ろ過式呼吸用保護具で、もっともよく使われるのは、防じんマスクである。
  • ろ過式呼吸用保護具を使用していたのは、これらの事業場の95%にのぼる。およそ17%は、給気式呼吸用保護具を使用していた。
  • これらの事業場の約94%で、電動ファン付でないろ過式呼吸用保護具が使用されていた。
  • 給気式呼吸用保護具で、もっともよく使われているのは、自給式呼吸器である。
 本調査は、政府の呼吸用保護具検定プログラムを監督する国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が、職場での呼吸用保護具の使用パターンをよりよく把握するのに役立つ。同研究所は、呼吸用保護具の使用について、新たな勧告を作成し、呼吸用保護具の効果を高めるための調査プロジェクトを企画する予定である。
 労働統計局は、2001年末、事業場に対し、2000年8月から2002年1月までのいずれかの12ヶ月間に、呼吸用保護具を使用したかどうかを尋ねる調査を実施した。マッカーシー氏は、当局は、将来、追跡調査ができるように、調査を設計したと述べた。今年中に、共同刊行物を発行する予定である。

呼吸用保護具の使用者
産 業 呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場の割合(%)
製造業 12.8%
鉱業 11.7%
建設業 9.6%
農林水産業 9.4%
卸売業 5.2%
民間産業 4.5%
サービス業 4.0%
運輸・公益事業 3.7%
小売業 1.3%
金融、保険、不動産 0.7%
出所:労働統計局、2002年



JICOSH註) 労働統計局2002年のデータ(下記参照)によれば、以下の通り。

呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場の割合(%)

民間産業 全体 4.5%

農林水産業 9.4%
鉱業 11.7%
建設業 9.6%
製造業 12.8%
運輸・公益事業 3.7%
卸売業 5.2%
小売業 1.3%
金融・保険不動産 0.7%
サービス業 4.0%



エアロビクス、手根管症候群に有効

 イリノイ州アーリントンハイツ − 労働環境医学ジャーナル(Vol.43,No.10)に掲載された調査によれば、10ヶ月の体操プログラムで、神経機能が著しく改善し、手根管症候群の症状も軽減する。
 これまでの調査では、手根管症候群に悩む患者の多くは、標準体重を超えて、身体的に不活発であり、手根管症候群と身体の健康状態との関係が示唆されていた。
 調査員らは、手根管症候群を患う有志30人を、10ヶ月間、週3回のエアロビクス体操プログラムに参加させた。これにより、体脂肪が減り、身体の酸素消費量が改善されただけでなく、手根管の症状も軽減した。
 試験の結果、神経機能が改善し、手の苦痛やこわばり、ぎこちなさが緩和した。
 「この調査結果から、身体の健康状態を改善する長期間のエアロビクス体操は、正中神経機能に働き、手根管症候群の諸症状を改善すると考えられる」と、調査報告者らは記している。


事業者は、傷害の間接費用に要注意

 ボストン − 業務上の傷害は、企業にとって、依然、毎年何十億ドルもの負担となっている。これは、傷害の原因についての、事実との比較における、事業者の捉え方に一因がある可能性が、リバティ・ミューチュアル社の2002年度職場の安全指数の最新統計から浮かび上がる。
 職場の安全指数によると、障害を伴う業務上の傷害の10大原因は、1999年に労働者に支払われた推計400億ドルの賃金、医療費の86%を占める。これは、「過労」と「墜落・転落」が、やはり傷害原因の首位に並んだ2001年度の統計と、よく符号する。
 しかし、直接費用は、全体像の一部にすぎない。業務上傷害は、さらに800億ドルから2,000億ドルもの間接費用を生み出していると考えられ、1999年の業務上傷害の財務面への影響は、合計で1,200億ドルから2,400億ドルとなる。
 リバティ・ミューチュアル社は、同社の2002年度安全指数と2001年度の職場の安全に関する役員対象の調査結果を比較したが、それによると、事業者が業務上傷害の首位原因として捉えているものと、直接費用からみた首位原因との間に開きがあった。
 企業役員らは、業務上の傷害原因で最重要なものとして、「反復動作」を挙げていた。しかし、2002年度安全指数では、これは第6位であり、上位5位の原因の直接費用は、各々 これを上回る。同様に、役員らは、「同一平面での転倒」については、第7位に格付けており、あまり反省の念が見られないが、安全指数では、これは第2位の原因である。
 「われわれは、損害原因について、見解の相違があるとみる」と、リバティ・ミューチュアル社のカール・ジェイコブソン首席副社長は述べた。同氏は、こうした認識は、一部、メディアの誇張や政治の影響によると指摘した。たとえば、反復動作を上位に挙げたのは、エルゴノミクス論争の影響があるのではないかというのである。
 これらの結果は、企業役員と安全実務担当者らの間の断絶を示しているとも考えられると、ジェイコブソン副社長。各々、業務上の傷害やその予防策について、違った見解を有するらしい。また、企業が、的外れの分野に努力を傾注している可能性も示している。
 「企業社会は、業務上の傷害について、特定の原因に注意を払っているが、労働安全の優先順位を見直すべきではないだろうか」と、リバティ・ミューチュアル社はいう。
 リバティ・ミューチュアル社は、労働者災害補償保険会社。安全指数についての詳細は、オンラインwww.libertymutual.comで閲覧できる。

現実と認識の違い

障害を伴う業務上傷害の上位原因 企業役員らの格付けによる重大な傷害原因
1. 過労(103億ドル) 反復動作
2. 同一平面での転倒(46億ドル) 過労
3. 動作の反動(38億ドル) 幹線道路での交通事故
4. 墜落・転落(37億ドル) 動作の反動
5. 激突され(34億ドル) 墜落・転落
6. 反復動作(27億ドル) はさまれ、巻き込まれ
7. 幹線道路での交通事故(23億ドル) 同一平面での転倒
8. 激突(17億ドル) 激突され
9. はさまれ、巻き込まれ(16億ドル) 高温、低温のものとの接触
10. 高温、低温のものとの接触(4億ドル) 激突
出所:リバティ・ミューチュアル社 2002年


睡眠不足、事故や健康不安を招く

 ワシントン − 全米睡眠基金が最近行った、アメリカの睡眠習慣に関する世論調査によると、アメリカ人の圧倒的多数は、睡眠不足が仕事に支障をもたらし、事故や負傷、健康問題のリスクを高めると認めている。
 調査によると、回答者の65%は、睡眠不足のときには、かなり、またはいくぶん、間違いを起こしやすいと回答している。これより少ない37%は、仕事を安全に遂行するのに、かなり、またはいくぶん難渋すると答えている。別の44%は、睡眠不足の折には、ほかの人々とよい関係でいることが難しいと認めている。
 調査によると、睡眠は、機嫌を左右する。人生に満足している、エネルギーが充満しているなど、機嫌がよいと分類された高得点群は、元気を回復して起床するには、最低限の睡眠時間が必要だと考えていた。悲観的である、ストレスに悩む、人生に不満を感じるなど、機嫌が悪い最低得点群は、正反対の睡眠体験を有していた。
 そして、これらすべての要因は、職場へ影響を及ぼす。どう対処しうるか。回答者の大多数は、事業者は、過労している、または睡眠不足の従業員に残業させてはならないとしている。過半数は、前日、十分な睡眠をとれず、「うまく仕事することができないと感じる」時には、従業員は、病気、私用で、もしくは単なる休暇をとるべきだと考えている。
 回答者は、多くの職業で、とくに業務上機敏性を求められる職業については、安全の確保のために、労働時間を制限することに賛成の意を示している。
 「2002年の米国の睡眠」世論調査の摘要は、www.sleepfoundation.orgで閲覧できる。詳細は、本誌6月号に掲載予定。


16団体、労働安全宣言に署名

ワシントン − 企業、労働、政府、学会、非営利団体、専門研究機関、活動団体などを代表する16団体が、職場の安全衛生パートナーシップ宣言に署名した。
署名した宣言書により、各団体は、以下の義務を負う。
  • 明確、積極的かつ集団指導的なリーダーシップを通じて、職場に、安全衛生を重んじる社風を形成する。
  • 安全衛生水準の低い職場がもたらす人的、経済的影響について、人々の理解を高める。
  • 労働安全衛生、労働生活の質の向上に向け、革新的、協同活動を打ち出す。
  • 専門家の実務と管理職の指導力について、最高水準を追求する。
  • 傷病の減少に向け、野心的な目標を設定し、第一流のベンチマーク(基準)組織との比較における成功度合を測定し、ベンチマーク団体から教訓を得るシステムを開発する。
  • 社会責任の重要な指標として、安全衛生の実践を大々的に推進する。
 宣言書には、フォード・モーター社、UAW(全米自動車労組)・フォード全米安全衛生合同委員会、北米国際労働組合、ジョージタウン大学、FIGHTプロジェクト、デュポン社、米国労働衛生看護師協会が署名した。


NSC第90回年次会議&展示会、オンラインで参加登録開始

 イリノイ州アイタスカ − サンディエゴ市での全米安全評議会(NSC)の第90回年次会議&展示会を数ヶ月先(10月4-〜11日)に控えた今、希望者は、ウェブサイトで参加登録ができる。
 旅行日程は、遅くなるより早めに作成するのが最善である。www.congress.nsc.orgに接続して、参加登録を済ませ、ホテル情報、航空運賃・レンタカー割引情報を入手しよう。また、サンディエゴ市の公共交通機関、シャトルの時刻表、駐車場、気候その他の情報も閲覧できる。
 本誌今月号に同封された年次会議予定プログラムをみてみよう。技術会議、専門開発コース、来賓などの情報がすべて判る。今年度のプログラムには、スペイン語による安全講座やヒスパニック系労働者を対象とした題目を集めた部会も新設した。


ブッシュ大統領、EPA高官2名を指名

 ワシントン − ブッシュ大統領の大気保全政策に抗議して、EPA(環境保護局)の法規施行担当副長官が辞任したが、産業界や環境団体は、誰が後任となるのか、首をひねっていた。ブッシュ大統領は、エリック・シェーファー氏を交替してはいないものの、法規施行担当高官職に2名を指名した。
 ブッシュ大統領は、先日、法規施行・遵守確保担当EPA副長官に、ジョン・ピーター・スワレズ氏を指名した。スワレズ氏は、ニュージャージー州賭博施行部の部長で、以前には、当時知事職にあったクリスティ・ホイットマン氏の副法律顧問を務めた。
 大統領はまた、法規施行・遵守確保担当EPA副長官補に、スティーブン・シンバーグ氏を指名した。シンバーグ氏は、ワシントンにある全米野生生物連盟で活動し、上院環境・公共事業委員会の首席法律顧問であった。
シンバーグ氏は、環境分野で20年間の経験を有するが、スワレズ氏はそうでない。これは、環境活動家が即座に指摘する点である。環境団体のアース・ジャスティスは、「スワレズ氏は、環境法規やプログラムに関する職歴がないらしい」と、公開文書で指摘した。


EPA、自主的温暖化ガス削減プログラムを作成

 ワシントン − ブッシュ政権の京都議定書への署名拒否に対する批判に、ある程度対応する形で、EPA(環境保護局)は、企業の温暖化ガス排出削減を支援する、自主的パートナーシップ・プログラムを開始した。
 ゼネラル・モーターズ社、ロッキード・マーティン社、ミラー・ブル−イング社、ベスレヘム・スチール社その他の各社は、温暖化ガス排出削減目標を設定する旨、また、世界資源研究所と持続可能な発展をめざす世界事業者協議会が開発した議定書を遵守する旨、署名した。
 参加企業は、各社施設からの直接排出、燃料消費、廃棄物の処理、その他主要な資源に付随する、6種類の主要な温暖化ガスの排出を詳細に記録する。EPAは、排出目標の設定や目録の作成について技術支援を提供し、「高水準の国民的認識」を醸成する。
 本プログラムのチーム・リーダー、シンシア・カミス氏は、署名した企業の多くは、すでに排出削減を実施しているが、EPAプログラムは、確固とした枠組みを提供すると述べた。企業は、これで競争力を増すと考えているとも言った。
 EPAプログラムは、第3者による検証がなく、純粋に自主的なものであるため、実効性を欠いた広報的演出であると、環境界の批判を招いている。企業団体は、強制力はないものの、排出を削減するプログラムではあるから、大気を保全する、と反論している。
 気候先導者プログラムに関する詳細は、www.epa.gov/climateleadersで閲覧可。


簡単な安全対策で、職場における殺人を予防

 シカゴ − 新しい調査によると、単独勤務をなくす、勤務時間中は、扉を施錠または閉鎖する、明るい外部照明を設置する、または管理規制の組み合わせを採用するなどした企業では、職場における殺人「のリスクが著しく低下」した。
チャペル・ヒル市のノース・キャロライナ大学の調査員らは、政府が勧告する就労中の労働者の死亡防止対策について、その効果を調査した。
一般に、管理規制は、環境規制に比べて、リスクの低減に一貫して関わっていることが判明した。リスクを30%〜70%低減した管理規制を次に挙げる。
  • 勤務時間中は、玄関を施錠または閉鎖する。
  • 現金は、毎日預けておく。
  • 採用予定の従業員については、心理学的な選別試験を行うか、犯罪歴をチックする。
  • とくに夜間は、複数名を勤務させるようにする。

環境規制のなかでは、明るい外部照明、警報、金庫安全装置について、いくぶん効果がみられた。従業員と公衆との間に、物理的な障壁を設置すると、リスクが40%減少した。しかし一般的には、職場で顕著な結果を得るには、5つ以上の環境対策を組み合わせる必要がある。
調査「職場における殺人の予防に向け、政府が勧告する安全対策の効果」は、アメリカ医師協会ジャーナル(Vol. 287, No. 8)に発表されている。


国立衛生研究所所長に、ジョンズ・ホプキンズ医学部長を指名

 ワシントン − ブッシュ大統領は、ボルティモア市にあるジョンズ・ホプキンズ大学のイライアス・ザーホウニ医学部長を、国立衛生研究所所長に指名した。
 情報筋によれば、ザーホウニ氏は、クローンや胚性幹細胞など問題の多い研究に関し、大統領の倫理的な制約のなかで研究活動できる、尊敬される科学者という、ブッシュ政権の一対の目標を満たしている。民主党優勢の上院で承認されれば、ザーホウニ氏は、重大な時期に、莫大な部門を引き継ぐ。国立衛生研究所は、1万5千人以上を雇用、国内外の2千件以上の生物医学プロジェクトに資金を提供している。


ブロックバスター社、無災害記録を達成

 ダラス − テキサス州マッキニー市にあるブロックバスター社の配送センターが、3月7日、延100万労働時間の無災害目標を達成した。本誌印刷開始時点では、同センターは、無災害で延110万時間を達成した。
 同配送センターの従業員は、11ヵ月で目標を達成したが、これに先んじて、英語とスペイン語による3ヵ年集中訓練・コミュニケーションプログラムがあった。
この栄誉を祝って、ビデオ・DVD配送センターは一時的に閉鎖し、従業員を対象に、フォード社マスタング新車2台を含む懸賞付きの食事会を催した。全米安全評議会(NSC)の代表者は、ジョン・ヘンショーOSHA長官からの記念盾と祝辞を贈呈した。


OSHAに人口知能はあるか?

 オンライン技術刊行物、ニューズファクター(www.NewsFactor.com)誌の記事によると、OSHA(労働安全衛生庁)は、人口知能を利用している数少ない政府機関の一つである。
 ティム・マクドナルド氏の記事、「AI(人口知能)は、いつ商用化されるか」は、ハリウッド流人口知能の現象を検証している。珍しいことに、OSHA公共問題室は、そう知らされた際、当局が人口知能を採用しているとの認識がなかった。
記事には、OSHAの「専門アドバイザー」についての記述がある。マクドナルド氏が言及しているソフトウェアは、双方向の遵法支援ツールで、ユーザーと対話して、基準がどう適用されるのか、理解できるよう支援する。OSHAは、アスベスト、狭隘空間、火災安全、危険認識と建設業における鉛中毒に関し、専門アドバイザー・ソフトウェアを用意している。すべて、ずいぶんとハイテクであるが、人口知能なのであろうか?
ニューズファクター誌によれば、そうらしい。ほとんどの人口知能が、一般大衆の目につかないのは明らかである。OSHAのソフトウェアは、ユーザーと対話するという人間の能力を模したものであるから、人口知能といえる。自分用に、無料の人口知能をダウンロードするには、www.osha.gov/dts/osta/oshasoftを参照のこと。