NSC発行「Safety + Health」2002年5月号
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職場での呼吸用保護具の使用不足、調査で判明
ワシントン - 労働統計局は、このたび、職場における呼吸用保護具の使用と慣行について、事業者を対象に調査を行った。この調査を実施するまでは、とくに日々の利用や職場で確立された慣行に関する情報など、呼吸用保護具に関する最新のデータはなかったと、労働統計局のスポークスパーソン、ビル・マッカーシー氏は述べた。
調査では、呼吸用保護具をだれが、どれだけの頻度で、なぜ使うのかを調べた。その結果、民間部門で呼吸用保護具を使用する事業場は、わずかに10%で、そのうち半数近くは、自主的な使用にとどまっていることが判明した。労働者が呼吸用保護具を使用するのは、アレルギーや、規制基準を上回るレベルで自身を保護したいなど、個人的な理由によるものであった。
呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場に対しては、訓練や呼吸用保護具の選択に関し、詳細な質問を設けた。従業員訓練については、59%は、従業員に対し、着用する呼吸用保護具の「使用と限界について理解する」よう訓練していると回答した。鉱業は、この点では断然良心的で、事業場の82%は、呼吸用保護具の使用について、従業員を訓練している。
しかし、全事業場の32%は、メーカーの使用説明書に依存していると回答、約9%は、訓練を義務付けていないと回答している。これはつまり、呼吸用保護具を義務付けている10社中4社を超える企業では、従業員に対し、ほとんど、あるいはまったく訓練を提供していないということである。OSHA(労働安全衛生庁)の呼吸保護基準では、事業者は、従業員に対し、詳細な訓練を提供せねばならない。
ほとんど、あるいはまったく訓練を提供しないとの回答が多かったのは、従来、呼吸用保護具の必要性が高くはなかった産業部門に集中する。調査対象の全事業場のうち、サービス部門は、メーカーの使用説明書にもっとも依存しがちで(40%)、一方、金融、保険、不動産業は、訓練を義務付けていないとする回答がもっとも多かった(14%)。より深刻なのは、建設業が、両方の設問で、同様の回答が2番目に多い産業であったことである。建設会社の36%は、メーカーの使用説明書に依存すると回答、14%は、どのような訓練も義務付けていないと回答した。
使用の決定
従業員の呼吸用保護具の使用が必要かどうかを決定する際、事業場では、寄せ集めの情報源に依存していることが、調査で判明した。管理職が書面によるプログラムを採用しているとの回答は、他の回答よりも多く、企業の34%にのぼった。しかし、事業場では、たいてい、現場監督者や従業員の判断に任せるらしい(それぞれ23%、22%)。やや少ない、20%の企業は、メーカーの使用説明書をもとに判断を下していた。
企業は、業務に最適な呼吸用保護具を選択するのに、類似の情報源を活用していた。メーカーの印刷物、販売代理店、従業員の提案や地元の店の販売員の助言というのまで、大気サンプリング以上にとはいわないまでも、それと同じ程度にあてにされているらしい。半数強(57%)が、化学物質等安全データシートを参考にしていた点は、評価すべきである。
最近になって呼吸用保護具の使用を義務付けた事業場の報告によると、以下の結果が浮かび上がった。
- 労働者が、ろ過式呼吸用保護具を使用する理由の首位は、塗料の蒸気と粉じんである。給気式呼吸用保護具をもっともよく使うのは、塗料の蒸気や溶剤の場合である。
- ろ過式呼吸用保護具で、もっともよく使われるのは、防じんマスクである。
- ろ過式呼吸用保護具を使用していたのは、これらの事業場の95%にのぼる。およそ17%は、給気式呼吸用保護具を使用していた。
- これらの事業場の約94%で、電動ファン付でないろ過式呼吸用保護具が使用されていた。
- 給気式呼吸用保護具で、もっともよく使われているのは、自給式呼吸器である。
本調査は、政府の呼吸用保護具検定プログラムを監督する国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が、職場での呼吸用保護具の使用パターンをよりよく把握するのに役立つ。同研究所は、呼吸用保護具の使用について、新たな勧告を作成し、呼吸用保護具の効果を高めるための調査プロジェクトを企画する予定である。
労働統計局は、2001年末、事業場に対し、2000年8月から2002年1月までのいずれかの12ヶ月間に、呼吸用保護具を使用したかどうかを尋ねる調査を実施した。マッカーシー氏は、当局は、将来、追跡調査ができるように、調査を設計したと述べた。今年中に、共同刊行物を発行する予定である。
呼吸用保護具の使用者*
産 業 |
呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場の割合(%) |
製造業 |
12.8% |
鉱業 |
11.7% |
建設業 |
9.6% |
農林水産業 |
9.4% |
卸売業 |
5.2% |
民間産業 |
4.5% |
サービス業 |
4.0% |
運輸・公益事業 |
3.7% |
小売業 |
1.3% |
金融、保険、不動産 |
0.7% |
出所:労働統計局、2002年
*JICOSH註)
労働統計局2002年のデータ(下記参照)によれば、以下の通り。
呼吸用保護具の使用を義務付けている事業場の割合(%)
民間産業 全体 |
4.5% |
|
農林水産業 |
9.4% |
鉱業 |
11.7% |
建設業 |
9.6% |
製造業 |
12.8% |
運輸・公益事業 |
3.7% |
卸売業 |
5.2% |
小売業 |
1.3% |
金融・保険不動産 |
0.7% |
サービス業 |
4.0% |