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NSC発行「Safety + Health」2002年5月号

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事業者は、傷害の間接費用に要注意

 ボストン − 業務上の傷害は、企業にとって、依然、毎年何十億ドルもの負担となっている。これは、傷害の原因についての、事実との比較における、事業者の捉え方に一因がある可能性が、リバティ・ミューチュアル社の2002年度職場の安全指数の最新統計から浮かび上がる。
 職場の安全指数によると、障害を伴う業務上の傷害の10大原因は、1999年に労働者に支払われた推計400億ドルの賃金、医療費の86%を占める。これは、「過労」と「墜落・転落」が、やはり傷害原因の首位に並んだ2001年度の統計と、よく符号する。
 しかし、直接費用は、全体像の一部にすぎない。業務上傷害は、さらに800億ドルから2,000億ドルもの間接費用を生み出していると考えられ、1999年の業務上傷害の財務面への影響は、合計で1,200億ドルから2,400億ドルとなる。
 リバティ・ミューチュアル社は、同社の2002年度安全指数と2001年度の職場の安全に関する役員対象の調査結果を比較したが、それによると、事業者が業務上傷害の首位原因として捉えているものと、直接費用からみた首位原因との間に開きがあった。
 企業役員らは、業務上の傷害原因で最重要なものとして、「反復動作」を挙げていた。しかし、2002年度安全指数では、これは第6位であり、上位5位の原因の直接費用は、各々 これを上回る。同様に、役員らは、「同一平面での転倒」については、第7位に格付けており、あまり反省の念が見られないが、安全指数では、これは第2位の原因である。
 「われわれは、損害原因について、見解の相違があるとみる」と、リバティ・ミューチュアル社のカール・ジェイコブソン首席副社長は述べた。同氏は、こうした認識は、一部、メディアの誇張や政治の影響によると指摘した。たとえば、反復動作を上位に挙げたのは、エルゴノミクス論争の影響があるのではないかというのである。
 これらの結果は、企業役員と安全実務担当者らの間の断絶を示しているとも考えられると、ジェイコブソン副社長。各々、業務上の傷害やその予防策について、違った見解を有するらしい。また、企業が、的外れの分野に努力を傾注している可能性も示している。
 「企業社会は、業務上の傷害について、特定の原因に注意を払っているが、労働安全の優先順位を見直すべきではないだろうか」と、リバティ・ミューチュアル社はいう。
 リバティ・ミューチュアル社は、労働者災害補償保険会社。安全指数についての詳細は、オンラインwww.libertymutual.comで閲覧できる。

現実と認識の違い

障害を伴う業務上傷害の上位原因 企業役員らの格付けによる重大な傷害原因
1. 過労(103億ドル) 反復動作
2. 同一平面での転倒(46億ドル) 過労
3. 動作の反動(38億ドル) 幹線道路での交通事故
4. 墜落・転落(37億ドル) 動作の反動
5. 激突され(34億ドル) 墜落・転落
6. 反復動作(27億ドル) はさまれ、巻き込まれ
7. 幹線道路での交通事故(23億ドル) 同一平面での転倒
8. 激突(17億ドル) 激突され
9. はさまれ、巻き込まれ(16億ドル) 高温、低温のものとの接触
10. 高温、低温のものとの接触(4億ドル) 激突
出所:リバティ・ミューチュアル社 2002年