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NSC発行「Safety + Health」2002年6月号

ニュース

OSHA長官、職場の安全改善協定をめざす

シカゴ − 4月17日、労働安全衛生庁(OSHA)のジョン・ヘンショー長官は、全米労働衛生会議での基調演説で、出席者を前に、OSHAは、効果的な政府機関であるためには、成果追求型でなければならないと述べた。
 「OSHAは、労働安全衛生の推進の立役者であらねばならない。しかし、成果を追求するべきであり、活動指向であってはならない。労働安全衛生界全体との緊密なパートナーシップを構築せねばならない」と、ヘンショー長官。全米労働衛生会議は、4月12〜19日に開催された。
 OSHA長官は、職場の安全向上に向け、法規施行をおろそかにせず、一方で、関係者とパートナーシップや提携関係を構築するといった、同庁の未来像を描いた。
 この達成に向け、ヘンショー長官は、四つの目標を掲げた。
  1. 安全衛生分野で、指導力を発揮する。
  2. 強力、公正かつ有効な法規施行を維持する。
  3. 遵法支援・教育を推進する。
  4. パートナーシップを構築する。
 「OSHAは、安全衛生の重要性を主張していくにあたり、指導力を発揮せねばならない。しかし、OSHA単独ではできない。活動を前進させるには、安全衛生専門家の手助けが必要である」とヘンショー長官。「法規施行は、依然、基幹業務であり、推進力である。しかし、正しいことをしない事業者は、僅かな割合にすぎない。事業者の90〜95%は、正しいことをしようとしている」。
 「常習犯」の取り締まりを、引き続きOSHAの品質証明とするとの主張を裏付けるため、OSHAは、インシデント発生率のもっとも高い事業場宛に、1万3千通もの書簡を送付したと、長官は強調した。
 「書簡を受け取った企業は、各自安全衛生記録を認識し、事態改善のための対策を始めてほしい。われわれは、支援するために在る」と、ヘンショー長官。「仮に、当局が、同一事業者を3度も召喚するようなことがあるとすれば、OSHAがしくじったということである。われわれの仕事は、事態を改善することであり、改善を奨励する方法を探ることにある」。
 これを達成する最も効果的な方法は、教育、アウトリーチ、訓練であると、ヘンショー長官は主張した。「安全衛生界の専門知識を活用したい」と長官。
 自主的保護プログラムをはじめ、OSHAを通じて利用できるさまざまなパートナーシップ・プログラムは、安全な労働環境を確保する鍵であると、ヘンショー長官は主張した。長官は、それを拡大しようと計画する。「現在、労働者約25万人が、当局とパートナーシップを組んでいる。これを数百万人にしたい」と長官。
 労働省が先日発表した、新しいエルゴノミクス・ガイドラインについては、ヘンショー長官は、その四本柱のアプローチこそ、後々ではなく今、エルゴノミクス問題に取り組むのに、もっとも効果的な方法であると述べた。企業や個人、団体には、エルゴノミクス的危険有害要因の改善に向け、独自のエルゴノミクス・ガイドライン作成を奨励することこそ、良策であると確信していると、長官は語った。
 「本当の解決策は、職場から出てくる。一つの型が、全てに合うということはない。エルゴノミクス的危険有害要因は、あまりにも多様であり、その解決策もまた多様である」と、ヘンショー長官は指摘した。「したがって、法規施行ガイドラインも同一のものではありえない」。
 ヘンショー長官は、エルゴノミクス規則は、一般義務条項により施行できると付け加えた。長官は、アーカンザス州フォートスミス市を拠点にナーシング・ホームを運営するビバリー・インダストリーズ社との間で締結した協定を例に挙げ、OSHAが、法規施行力とパートナーシップ力を駆使して、事業者側と協定を結び、実際に事態を改善することができることを示した。「このプロセスは、問題を特定し、解決するものでなければならない。留意しなければならないのは、いかに解決するかではなく、解決したかという点である」と長官。「当局が発表したエルゴノミクス計画全体の目的は、防止の一語に尽きる」。
 ヘンショー長官は、そのため、エルゴノミクス訓練に照準を当てる、12カ所の訓練センターを挙げた。OSHAは、全米に調整官を配し、エルゴノミクスに関する電子訓練を提供し、電子ツールを増やし、エルゴノミクス傷害を削減した企業の実例に基づき、実際の解決策に光を当てる。
 「われわれは、活動の多くで、エルゴノミクス傷害の多い職種に従事することの多い移民労働者に焦点を当てる」と、長官は付け加えた。
 ヘンショー長官はまた、OSHAは、災害対策に関する討議に参加すべきであると述べた。当局は、EPA(環境保護局)、連邦非常事態管理局その他の政府機関との討議に、積極的に参加している。「われわれが、建物からの避難計画、化学工場の安全保障などといったガイドラインを必要とするのは間違いない。これは、全く新しい分野であり、困難な道程である」と、長官は認めた。
 最後に、長官は、ブッシュ政権の2003会計年度予算案を擁護した。この予算案では、OSHA予算を、2002会計年度より1%強減額している。
 「ブッシュ大統領が議会に提出したのは、私の予算案である。わずか1.3%の削減である。法規施行予算は減らさないが、管理部門が若干削られる。ブッシュ政権は、職場の安全には、真剣である」と長官。「当局は、任務の遂行に十分な資源を有す。OSHA予算案は、総額を要求してから、それをどう消化するかを考えるものでなく、何をせねばならないか、いかになすか、それにはどのような資源が必要か、その概略を示したものである」。