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NSC発行「Safety + Health」2002年6月号
OSHAの最新情報
OSHA、監督件数、召喚率を引き上げ
OSHA(労働安全衛生庁)の監督件数、召喚件数は、2002会計年度上半期で増え、重大事例は減り、ジョン・ヘンショーOSHA長官は、法規施行は、引き続き同庁の最優先課題のひとつであると断言した。
米国労働環境医学学会、及びアメリカ労働衛生看護師協会を聴衆に迎えたシカゴでの講演で、ヘンショー長官は、近年の監督件数は、ほとんど横ばいであるが、「今年度は、2000年度を400件上回る監督を行う。来年度は、さらに1,300件上乗せする」と述べた。
しかし、ヘンショー長官はまた、「監督業務にインパクトを持たせたい。同じ事業場に繰り返し訪れるなどは、したくない」と述べた。長官は、監督官の信用を高め、かつOSHAの遵法支援プログラムを拡大すると強調した。(10頁、「ニュース」欄「ヘンショー長官、職場の安全改善協定をめざす」を参照のこと。)
2002年3月31日を末日とする上半期では、OSHAの監督件数は、2001年度同期の17,052件から17,226件へと増加した。召喚件数は、37,416件から37,769件へ増加、故意、重大、繰り返し違反は、25,935件から27,164件へと増加した。
しかし、同上半期に10万ドルを超える罰金を課した「重大な」事例は、40件にとどまった。このような事例は、2001年度では、通年で141件、前年度の170件、1999年度の195件を下回った。
ヘンショー長官は、OSHAの法規施行業務は、9月11日の対米テロ、それに引き続いて起きた炭疽菌騒動で、遅いスタートを切ったと述べた。OSHAの監督件数は、2001会計年度はおよそ35,800件で、2000会計年度の36,608件を下回り、召喚件数は、79,525件から79,100件へと減少した。最重大違反による召喚は、6%増の56,440件であった。
OSHAエルゴノミクス諮問委員会、発足
職場のエルゴノミクス関連傷病の削減に向けた「総合的アプローチ」の一環として、ジョン・ヘンショーOSHA長官は、全米エルゴノミクス諮問委員会の構成の詳細を発表した。
「職場のエルゴノミクス関連傷病の削減維持・推進に向けた、われわれの四叉アプローチ、すなわち、ガイドライン、調査、アウトリーチと支援、法規施行業務は、本委員会の委員の経験と専門知識で、充実したものとなろう」と、ヘンショー長官は述べた。
委員会の責任には、以下が含まれる。
- さまざまな産業別、職種別ガイドラインに関する情報をはじめ、多数の問題について助言を与える。
- 既存のエルゴノミクス調査や、エルゴノミクス原理の職場への応用におけるギャップを特定する。
- 調査ニーズ、調査活動を吟味する。
- 事業者、従業員を対象にエルゴノミクスの重要性を説く、アウトリーチや支援活動の提供方法を提案する。
- 関係者間のコミュニケーションを深める方法を探る。
「既存の調査のギャップを特定するのを手伝うのは、委員会の任務のなかでも重要な部分である」とヘンショー長官。「われわれは、NIOSH(国立労働安全衛生研究所)などの他の政府機関をはじめとする調査団体と、協力するのを楽しみにしている。共に、このようなギャップを埋め、調査の全体像をより完成されたものにして、これを共に研究の対象としていきたい」。
キャスリーン・レストNIOSH所長代理は、「OSHAその他のパートナーと協力するにあたり、NIOSHは、この作業に信頼に足る科学でもって臨むという責任を引き続き果たす」と付け加えた。
委員会は、エルゴノミクス問題に関する専門知識および/または経験を有するとして選ばれた、15名の委員で構成される。指名手続きの詳細は、5月2日付けの「フェデラル・レジスター(官報)」に掲載されている。
OSHA、ナーシングホームの安全をめざす
ジョン・ヘンショーOSHA長官は、全米でもっとも傷病率の高い産業のひとつ、ナーシングホームの安全衛生問題に対処するため、2段階の措置を講じた。
第1に、OSHAは、ナーシングホームの監督を増強し、違反者への召喚状交付をより精力的に試みるなどを含む、全米重点監督プログラムを開始すると、長官は述べた。このようなOSHAのプログラムでは、通常、重点分野での召喚件数が増加する。
ナーシングホームでの傷病の大半は、腰痛などといったエルゴノミクス的外傷や、骨髄病原体、有害物質の取り扱い、すべり、つまずき、転落などであるため、OSHAは、重点監督アプローチを用いると、ヘンショー長官は述べた。「これは、危害が把握され、その効果的な管理が立証されている、成長産業である」と長官。
労働安全衛生法の一般義務条項をもとに、エルゴノミクス関連で召喚されたアーカンザス州フォートスミス市のビバリー・エンタープライジズは、最近になって和解したが、これにより、ナーシングホームである種のエルゴノミクス危害を低減することができることが示された。
第2に、OSHAは、新しいエルゴノミクス政策のもと、腰痛その他の傷害が一般的にみられるナーシングホームに狙いを定めて、初のガイドライン一式を作成する。
新政策は、エルゴノミクス関連傷病の低減をめざし、一般義務条項や、産業別、職種別ガイドラインにもとづく法規施行の強化などを含む。
長期ヘルスケア産業団体の最大手2団体で、ワシントン市にあるアメリカ・ヘルスケア協会とアメリカ高齢者住宅・サービス協会は、ガイドラインの開発でOSHAと協力する旨確約した。
ワシントン市の国際サービス労働者組合は、これらの措置に「謝意」を表する一方で、このような対策は、「上っ面をなでるだけ」だと、同組合のビル・ボーウェゲン安全衛生部長は述べた。同氏は、ナーシングホームでよくある患者の暴力に、労働者が対処できるよう支援する活動にも、OSHAは注力してほしいと述べた。
労働省法務官、安全法規の積極的な施行を誓約
労働省の首席弁護士、ユージーン・スカリア氏は、安全法規を精力的に施行すると誓約、労働安全衛生規制の敵対者であるとの自身への批判に挑む。
アリゾナ州トゥーソン市で開かれた、アメリカ法曹協会の労働安全衛生委員会の会合で、スカリア氏は、事業者を対象とした、OSHAの安全規則遵守支援業務を支援する一方で、法規の施行は、「法務官室の特別な任務である。この任務に、私は、ひるまない。むしろ反対で、米国の弁護士であれば誰であれ、喜んで取り組むように、私は、この任務に取り組みたい」と述べた。
同氏のアジェンダは、「一流の法務」。スカリア氏は、「法規を超える安全衛生保護を熱心かつ効果的に主張する」労働組合とその弁護士を称賛した。
スカリア氏の労働法務官指名は、労組や多数の民主党議員の怒りを買った。彼らは、スカリア氏が、経営者側の代理人を務めた経歴や、クリントン政権の政策、とくにエルゴノミクスについて批判した著作を挙げた。
その結果、スカリア氏は、労働法務官として、労働安全衛生の熱心な擁護者とはならないのではないかとの懸念を口にする向きも出てきた。実際、トム・ダシュル上院多数党院内総務(民主党、サウスダコタ州)は、同氏の指名をめぐる上院の承認手続きの日程調整を妨げたため、ブッシュ大統領は、1月、議会休会時にスカリア氏を任命せねばならなくなった。この任命は、2002年度の議会会期中は有効である。
OSHA、聴力損失規則、筋骨格系障害規則を確約
OSHAは、筋骨格系障害(MSD)や、職場の過度の騒音により引き起こされる聴力損失の記録に関し、新しい最終規則を今月末までに発表する予定であると述べた。
OSHAは、筋骨格系障害と聴力損失の二つについては、1月1日付で発行した新しい記録保持基準からはずしていた。これは、ひとつには、筋骨格系障害条項が、同庁の採択したエルゴノミクス基準と合致しなかったからである。エルゴ基準は、その後、議会により廃棄された。ワシントンの全米製造者協会は、筋骨格系障害および聴力損失条項について、裁判で異議を申し立てたが、OSHAが、これらの条項を棚上げすると合意したため、訴訟を取り下げた。
6月30日に新規則を発表し、2003年1月1日に発効させると、州政府は、独自の労働安全衛生プログラムを新しい記録保持規則に適合させるために、通常与えられる6ヶ月間を確保することができる。また、事業者も、コンピュータを補正する時間を与えられる。事業者は、およそ半数の州では、州政府の労働安全衛生当局の規制対象となっているが、州政府の規制は、少なくともOSHA連邦規則に合致していなければならない。
顧問団、テロ対策で世間の注目を集めるよう、OSHAに要請
OSHA顧問団の作業委員会は、先日、OSHAは、テロ攻撃から労働者をどう保護すべきかといった情報を、事業者により積極的に提供していくべきだと勧告した。
全米安全衛生諮問委員会は、ジョン・ヘンショーOSHA長官に対し、OSHAは、「空隙」を埋め、国土安全保障局とより積極的に協力していくべきだと語った。これは、OSHAは、職場でのテロ対策に関するガイダンスを提供すべきかどうかという、同委員会へのヘンショー長官の照会に対する回答である。
オクラホマ州タルサ市のシトゥゴ・ペトロレアム鰍フ法人安全衛生・安全保障マネジャーで、委員会の委員長を務めるリクシオ・メディナ氏は、アプローチのひとつとして、専門家団体、労組、小企業局その他の関係者間で会議を開くとよいと述べた。
メディナ委員長は、OSHAは、たとえば、新しい緊急対応計画の開発、郵便や倉庫の安全確保の強化、テロ対策に関するワークショップや訓練実習の実施に向け、大企業の事業者はなにをしているのかを知ることができると述べた。
ヘンショー長官の質問に答えるにあたり、委員長はまた、OSHAが必要と感じるのであれば、全米規模の災害時に支援を提供する安全衛生専門家グループを形成するとよいと述べた。ボランティアの募集・組織については、既存のシティズン・コーズ(市民保安団体)を参考にするとよいと同氏。
消費者保護団体と労組、クロム水準でOSHAを提訴
ワシントン市の消費者保護団体、パブリック・シティズンと、テネシー州ナシュビル市の国際製紙産業等・化学・エネルギー産業労働者組合は、強い肺がん誘発物質である六価クロム の許容暴露限界の引き下げをOSHAに命令するよう、連邦裁判所に訴えた。
この2団体は、およそ10年間にわたり、許容暴露限界を引き下げるよう要求してきたが、OSHAは、暴露限界について規則作成を始めると約束を繰り返し、不首尾に終わっていた。しかし、2001年12月には、OSHAは、規制計画における六価クロム の格付けを「長期対策」へと格下げ、期限をはずした。
六価クロム は、クロムめっき、ステンレス鋼溶接、クロム酸塩の顔料・染料に使われており、OSHAの見積もりでは、100万人が暴露している。
1995年、OSHAは、1日あたり8時間で45年間、六価クロム に暴露した場合、労働者の34%が、ガンを患うと結論した。パブリック・シティズンと労組は、現行の許容暴露限界を200分の1までに引き下げるべきだと要求している。
移民労働者死亡災害予防計画 移民労働者、とくにヒスパニック系労働者の労働安全の改善をめざし、OSHAは、死亡・重大災害調査で、被災労働者すべての国籍、母国語についてのデータ収集を始める。
ジョン・ヘンショーOSHA長官は、毎年多数の移民その他の労働者が死亡する建設プロジェクトについて、事業場単位の情報を収集するのは、初の試みであると述べた。
「ヒスパニック系を含め、英語を話さない労働者に偏った、多数の労働死亡災害は、深刻な懸念である」と、ヘンショー長官は、労働者記念日式典で述べた。「これらの労働者は、アメリカでもっとも弱い立場にある。これらの労働者の安全を改善するため、われわれは、こうした事態を招いている根元的な問題や傾向を、はっきりと特定せねばならない」。
新しいデータ収集により、OSHAは、母国語や国籍を分析し、言語障壁やその他の危険因子が、労働死傷災害においてどのような役割を果たしているかを突き止める。OSHAは、これらの情報を用いて、こうした労働者の安全を改善するにはどうすればよいかを特定する。
OSHAはまた、初めて、1万3千の建設事業者からデータを収集する。これらのデータで、建設業における傷病の実態をよりよく把握し、傷病率が平均値を上回る事業場を重点的に監督する。
OSHAによると、データは、事業者へのアウトリーチ、遵法支援活動を絞り込むのにも用いる。データの恩恵にもっともあずかるのは、事業者であろう。建設産業は、概して、移民その他の労働者の死亡率が高い。
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