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NSC発行「Safety + Health」2002年8月号

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上院委員会、新エルゴ法案を支持。しかし、先行きは不透明

 ワシントン − 上院衛生・教育・労働・年金委員会は、先日、OSHAに対し、2年以内に新エルゴノミクス基準を公布するよう要求する法案を承認した。
 11対10の投票内訳は、各党の政治路線に沿ったもので、委員会の民主党員10名と無所属1名が賛成、共和党員10名が反対に回った。
 OSHAの蓄積外傷規則の復活をめざす民主党の企ては、猛烈な反対に直面している。上院に持ち込まれれば、共和党はおそらく、議事妨害で法案通過を阻止するであろう。共和党優位の下院では、そのような法案は起草すらされておらず、より大規模な反対に直面している。
 かりに、議会が法案を通過させたとしても、ブッシュ大統領は、おそらく拒否権を行使するであろう。ブッシュ政権下では、OSHAは、代わりに、自主的産業別エルゴノミクス・ガイドラインや、労働安全衛生法の一般義務条項を用いた法規施行の強化を推進している。
 委員会の投票は、熾烈な論争を経て行われた。共和党出身委員は、2001年初頭に議会が廃案としたクリントン政権のエルゴノミクス基準をまたもや厳しく批判し、同法案に盛り込まれたいかなる新基準も改善策ではないと主張した。
 マイケル・エンジ上院議員(共和党、ワイオミング州)によれば、同基準の欠陥は、「でき損ないの証拠と不完全な科学」、「業務関連」のあいまいな定義や、「一事が万事」的アプローチである。同議員は、基準は、小規模企業に不当な負担を強いると主張する。エンジ議員は、OSHA批判や、エルゴノミクス基準をめぐる論争で、上院共和党の急先鋒である。
 一方、民主党は、ブッシュ政権下で、OSHAは、廃案となった基準の欠陥を是正できるし、また、是正しなければならないと言う。ワシントンを拠点とするAFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別会議)のジョン・スウィーニー会長は、ブッシュ政権主導のOSHAは、「労働者を身体障害から保護するための有意義な措置を講じてこなかった」と発言し、同委員会の投票結果を称賛した。会長は、ジョン・ブロークス上院議員(民主党、ルイジアナ州)とアーレン・スペクター上院議員(共和党、ペンシルバニア州)が共著した同法案について、「(多くの)事業者がすでに実施している有効なプログラムや慣行に基づいた基準をOSHAに公布させる、堅実かつ穏健な方策である」と評価した。
 全米トラック運転手組合のジェイムズ・ホッファ総会長も、投票結果に喜んだ。「2年以内に新エルゴノミクス基準の公布を義務付ける。これは、労働省が、筋骨格系障害の著しい減少には非力であると実証済みの、自主的ガイドラインその他のアプローチをよりどころとするより、遥かに優れていると、われわれは思う」と同氏。