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NSC発行「Safety + Health」2002年8月号

OSHAの最新情報

OSHA下半期アジェンダ、引き続き、基準作成から後退

 労働安全衛生庁(OSHA)が昨年12月に発表した上半期規制アジェンダでは、基準作成による規制から手を引き始めたが、これは5月に発表された下半期アジェンダでも引き継がれた。
 新アジェンダで、合理化、抵触・重複の削減あるいは廃止など、再検討が予定されているのは、エチレンオキシド暴露、穀物の取り扱い、溝堀り・掘削、動力プレスなどの基準や、多数の衛生基準である。
 造船所の従業員については、すでに造船所・一般産業規則が適用されているため、造船所の足場や出入りに関する基準案は、撤回する。
 本誌印刷開始時点で、OSHAは、広範囲にわたる「傷病予防」基準や、狭隘空間に関する建設産業規則、造船所の火災防護基準を提案する意向を発表した。当局はまた、建設業、送配電線の保守に関する安全規則の合理化や、クレーンやデリックなど建設産業で使われる揚貨装置に関する安全規則を改正する意向である。
 OSHAはまた、幹線道路標識・信号・バリケード基準に、連邦幹線道路局(FHWA)の統一交通整理機器マニュアルの変更案を組み入れて、更新する。
 アジェンダは、一定の時間枠内でなしうる項目だけを盛り込むべきだとの、ジョン・ヘンショーOSHA長官の主張を反映したものである。


聴力損失条項、ようやく公布される

 OSHAは、1年遅れでようやく、記録保持基準の聴力損失記録条項を改正した最終規則を公布した。
 2003年1月1日より、事業者は、従業員の聴力テストで、初期のテスト結果を平均で10デシベル下回る、いわゆる業務関連の聴力損失の事例を記録せねばならない。
 2002年7月1日付けのフェデラル・レジスター(官報)によると、OSHAにコメントを寄せた利害関係者のなかには、10デシベル閾値移動は意味がないとして、新基準に反対する向きもある。OSHAは、10デシベル閾値の採用を決めたが、これは、オールパスの聴覚レベルが25デシベルの場合に限るとして、記録事例が、重篤な症例を確実に把握するようにしている。
 OSHAは、改正記録保持基準を2001年1月に公布したが、聴力損失および筋骨格系障害の条項については、再検討を加えるとして、保留していた。


OSHA、ソルジャー・フィールド改修工事で、安全パートナーシップを締結

 フットボール・チーム、シカゴ・ベアーズの本拠地である、シカゴ市のソルジャー・フィールド改修工事における建設労働者の安全衛生の向上をめざし、建設会社、イリノイ州政府諸機関および労働省は、パートナーシップ協定に調印した。
 6月28日の調印式には、ジョン・ヘンショーOSHA長官、キャメロン・フィンドリー労働次官が出席した。本パートナーシップ協定は、安全な労働環境の確保に向けた協力活動の概略を述べたもので、傷病率を2.9人未満とする目標値をたてた。これは、建設産業平均の30%を下回る目標値である。新しい特定事業場向けの労働者訓練プログラムや、労使、OSHA、イリノイ州政府代表者から成る安全チームの設置などといった、新しい安全衛生イニシアチブが実施されている。
 本パートナーシップは、労働者が、落下、感電、溝掘り、掘削、足場、クレーン、機材等の移動などにからむ深刻な危害にさらされないよう、総合的な安全監査プログラムを実施する。
 「本パートナーシップは、建設産業における死亡災害や重度の負傷災害の予防を目標とする」と、マイケル・コナーズOSHA第V地域事務所長は語った。「そのためには、協力的かつ高度に協調された活動を要するが、本パートナーシップは、そのための枠組みを提供するものである」。


公労使、許容暴露限界(PEL)促進法案に向け、連合体結成

 労働界、産業界、安全専門家の連合体は、およそ400もの有害化学物質に適用されているOSHAの作業場における暴露上限値(work place exposure ceilings)について、その再検討および改善を迅速化するよう、OSHAに法的に強いる計画に取り組んでいる。
 下院労働力保護小委員会の委員長を務めるチャールズ・ノーウッド下院議員(共和党、ジョージア州)は、そのための立法措置を検討している。本計画は、化学物質の許容暴露限界を、一時あたり10種類ずつ、OSHAに漸次取り組ませるものである。大半は、論争を呼ぶものではなく、速やかに処理されるであろうから、当局は、異論の多い50種類程度の化学物質に注力すればよいわけである。
 本計画を推進する連合体は、AFL-CIO(アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議)およびその傘下の労組数団体、米国産業衛生協会および大規模事業者調査団体であるオーガニゼーション・リソーシズ・カウンセラーズから成る。
 OSHAは以前、世論のうねりを背景とした規則作成活動で、暴露限界を更新しようと試みたが、1992年、連邦控訴院は、これを無効とした。このため、同庁は、1971年の創設以来の、低い、時代遅れの暴露限界を適用してきた。チャールズ・ジェフレス前OSHA長官のもとでは、数種類の化学物質を選び、暴露限界の引き上げを検討したが、遅々として進まなかった。
 現政権下の労働省は、昨年12月、初の全面的な半期規制アジェンダを発表したが、これは撤退色の濃いもので、暴露限界の引き上げについては、あらゆる計画を放棄している。


予算管理局、規則作成へのインターネット・アクセスポイントを計画

 ホワイトハウス予算管理局は、OSHAなど規制各局の規則作成活動への国民のアクセスを合理化する計画を発表した。
 予算管理局の計画の第1段階では、新しい規制について、意見の提出を希望する個人、企業や団体は、コメントを単一の政府インターネット・ポータルに入力できるようにする。(現行プロセスでは、関係者は、関係当局のポータルに入力せねばならない。)電脳システムが完璧に開発されるまでは、書面によるコメントを共通の位置にファイルするようなものであると、予算管理局の職員は述べた。
 当局の産業向け政府発信書類担当マネジャー、タッド・アンダーソン氏によれば、第2段階では、規則作成に寄せられたコメントに目を通したい人々は、政府機関の未処理案件担当室へ足を運ぶ代わりに、統一された未処理案件システムへアクセスできるようにする。
 ミッチェル・E・ダニエルズ・ジュニア予算管理局長は、各省庁長官へ宛てた覚書で、規則案や政策案にコメントするのに、インターネットを利用している国民は、2001年では、2,300万人であったとの、ピュー基金の調査結果を引用している。
 予算管理局によれば、規則作成関連のウェブサイトの「乱立」は、向こう10ヶ月で7千万ドル以上の出費となる。