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NSC発行「Safety + Health」2002年10月号

ニュース



ヘンショーOSHA長官、最優先課題に合わせ、組織再編を発表

ヘンショーOSHA長官、最優先課題に合わせ、組織再編を発表
 ワシントン − 今年初め、ジョン・ヘンショー労働安全衛生庁(OSHA)長官が提案し、本誌7月号で報道した組織改革案に青信号が出たと、先日、OSHAは発表した。
ヘンショー長官は、この改革により、当局は、4つの最優先戦略プログラムに照準をあてることができると繰り返した。その4つとは、1)強力、公正かつ有効な法規施行、2)遵法支援、教育、アウトリーチ活動の拡大、3)パートナーシップおよび自助努力の拡大と、4)労働安全衛生の価値の推進における全米規模のリーダーシップである。
 今回の組織改革の主な特徴は、次のとおり。
新しく協調・州プログラム局が、現行の連邦‐州プログラム局に取って代わる。新設局は、遵法支援やアウトリーチ関連機能を調整し、新しく3部を増設する。すなわち、小規模事業支援部、パートナーシップ・認証部、アウトリーチサービス・協力体制部である。現行の州プログラム部と訓練・教育部は、存続する。
 評価・分析局は、現在の政策局に取って代わる。新局は、地域事務所、地方事務所の事業の現場監査を含めた、目標達成機能の測定とプログラム評価に重点を置く。その他の部は、新局へ入籍または転籍される。
 基準・ガイダンス局は、現在、基準の開発と公布を担当する2局、衛生基準局と安全基準局に取って代わる。新しく統一される局では、安全衛生基準の開発活動は、すべて統合され、OSHAの規則作成活動を合理化する。
 法規施行プログラム局は、遵法プログラム局に取って代わり、幾つかの管理階層を取り除く。一般産業遵法支援部は、一般産業法規施行部となり、その下部組織は廃止する。
 これに平行して、衛生遵法支援部は、衛生法規施行部に改称、その下部組織は廃止する。現在の海事支援課は、部(海事法規施行部)に昇格させ、現在の11(c)プログラム部は、調査支援部に改称する。
 現行の行政改革部は廃止する。
 「この改革で、OSHAは、ブッシュ大統領とチャオ労働長官が明言している課題を、より効果的に達成できるようになる」とヘンショー長官は述べている。



事実チェック



出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2001年

NIOSH、若年労働命令の合理化を模索

 ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、労働省に対し、いくつかの危険有害度の高い職業への18歳未満の就労を禁じている危険有害労働命令を更新するよう、要請している。NIOSHは、就労禁止対象と考えられている業務の定義を更新するよう要請、また、商業漁業、建設業、廃棄物収集、水輸送、スクラップ・廃棄物取り扱いなどの産業を対象とした、新しい命令を公布するよう、勧告している。
NIOSHは、米国内で、毎年約70人のティーンエイジャーが死亡し、約7万7千名が、緊急治療室に搬送されるような重傷を負うと推計。NIOSHの推計では、15歳以下の若年労働者は、45万人、16歳、17歳が278万人。危険有害労働命令を施行しているのは、労働賃金・時間課である。
NIOSHは、危険有害命令のうち、時代遅れのものは廃止し、一方、溶接、高所作業や鉛暴露については命令を追加するよう、勧告している。労働省高官は、ティーンエイジャーの爆発性物質の取り扱いなどを含め、多くの改変に既に着手していると述べた。一般的には、保護命令は、最低でも死亡率が全米労働者の死亡率の2倍、すなわち10万人あたり10人の職業を対象として公布される。


改定基準、床・階段に関する安全要件を規定

 イリノイ州デスプレインズ − 米国安全技術者協会(The American Society of Safety Engineers : ASSE)は、先日、全米基準A1264.1-1995 (R-2002)、「職場の床、壁の開口部、階段と手すりシステムに関する安全要件」の最新版を発行した。
 同基準は、職場での梯子、階段、床、壁の開口部からの落下事故を減らすためのガイドラインの役目を果たす。
 同基準はとくに、
  • 歩行、作業領域の最低限の安全要件を確立している。
  • 安全な通路の主要な構成要素に焦点を当てている。
  • 壁の開口部の防壁や遮蔽物、床の開口部のカバーや、階段の踏板に関する要件を提示している。
 基準は、オンラインwww.asse.orgで、または、電話847-699-2929で入手可。価格は、協会の会員については32ドル、非会員は48ドル。


衛生担当官、爆心地の疾病に注目

 ワシントン − ニューヨーク市の世界貿易センターにおける清掃・復旧作業が完了した現在、衛生担当官は、作業員やボランティアに降りかかった長わずらいや、衰弱を招くおそれのある疾病や不健康に注目している。保健社会福祉省は、ニューヨークのマウント・シナイ医科大学に1,140万ドルを拠出し、健康問題の真相を探るよう委託したと発表した。
 トミー・トンプソン保健社会福祉長官は、世界貿易センター跡地での消防士、警官、建設労働者、ボランティアらの作業が、健康へ長期的な影響を及ぼすかどうか、これを確認するため、同省は、「スクリーニング検査」に資金を提供すると述べた。労働者の間で最も懸念されているものの一つに、倒壊現場に立ち込めるヒューム(煙霧)への暴露が挙げられる。清掃作業の期間中、マスコミの記事は、労働者が、喘息や、しつこい咳、肺容量の減少を患っていると報告している。
 マウント・シナイ医科大学は、清掃作業による健康への影響について、定期的にガイダンスを発表し、地域の医療機関に対し、呼吸器官の病状のおそれのある患者が殺到することを予期されると、勧告してきた。労働者が暴露している可能性のあるものは、セメント、ガラス粉塵、アスベスト、ガラス繊維、微粒子物質や、これより大きめの粒子状物質、鉛その他の重金属、PCB、ジベンゾフランや揮発性有機化合物などである。
 保健社会福祉省のこの委託調査は、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が管理することとなるが、これにより、ニューヨーク州やニュージャージー州の少なくとも8千5百人の労働者に対し、無料のスクリーニング検査が提供される。


企業、法人シティズンシップに価値を見出す

 ニューヨーク − 新しい報告書によると、企業が、法人シティズンシップ(市民活動)プログラムに安全衛生や環境問題を含めるなど、プログラムの守備範囲を拡大するにともない、最高経営責任者(CEO)や経営陣は、プログラムの価値を実感し始めている。
 およそ700社以上ものCEO、役員、法人シティズンシップ・プログラム・マネジャーを対象とした調査では、法人シティズンシップは、企業収益へ反響する戦略的、管理機能として企業に容認されつつある傾向がみられた。
 特定された最優先事項のなかには、従業員の安全衛生と環境が含まれている。この新たな焦点は、世界的に拡大しようとする企業にとっては、とくに重要である。
「米国では、シティズンシップは、企業の寄付行為や資金援助の同意語とみなされている」と、報告書を著したソフィア・ミュアヘッド氏。「一方、寄付行為という社会基盤や伝統があまりない国々では、企業の事業とシティズンシップ活動は、どう相互に作用するか、この観点で、法人シティズンシップは取り上げられ、実践されている」。
 管理職の約60%は、このような市民指向の活動により、地域社会への門戸は開かれ、企業と消費者の関係は改善している、と報告した。
 「新世紀の法人シティズンシップ」と題した報告書は、優良企業会員・調査団体のザ・カンファレンス・ボードより発行。詳細は、www.conference-board.orgで閲覧可。


2003年度NSC年次会議&展示会に向け、講演者募集中

 アイタスカ − 全米安全評議会(NSC)は、2003年の年次会議&展示会で、知識や専門性に基づき講演する産業専門家を募集している。
 NSCは、とくに次の演題に関心がある。労働力の高齢化、文化の多様化、不注意運転、業務外傷害、安全と生産性、安全保障、若年労働者。
 応募者は、12月6日までに、オンラインでwww.nsc.orgに申し込むこと。応募書式および詳細情報は、このウェブサイトで閲覧できる。
 第91回年次会議&展示会は、2003年9月5-〜12日に、シカゴ市で開催される。


AIHA、有毒カビ法案へのOSHA、NIOSHの関与を主張

 バージニア州フェアファックス市にある米国産業衛生協会(AIHA)は、8月13日付の書簡で、有毒カビ法案には、労働安全衛生庁(OSHA)、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)のより大きな役割を盛り込むべきであると、議会に伝えた。
 問題のH.R.(下院)5040法案では、主として住宅の所有者を有毒カビから保護することを目的としているため、この監督権はすべて、環境保護局(EPA)の手に委ねられており、労働保護当局は含まれていない。
「米国産業衛生協会(AIHA)は、カビの繁殖は、居住用建物のみならず、大勢の労働者が働く多くの職場にもみられると確信する」と、書簡で述べる。「さらには、監督や修復に携わる労働者についても、懸念される」。
 書簡は、下院に同法案を提出した、ジョン・コンヤ−ズ・ジュニア下院議員(民主党、ミシガン州)宛て送付された。同法案は、EPA、疾病対策予防センターと国立衛生研究所(NIH)に対し、屋内でのカビの繁殖の健康への影響を、連携して調査するよう指示し、EPAに対し、カビの繁殖の予防、検出と修復についての基準を公布するよう指示するものである。
米国産業衛生協会(AIHA)の主な関心は、法案の検査・修復の部分である。こうした活動には、公認インダストリアルハイジニストのような「労働環境危害について、適切な教育と訓練を受けた」個人があたるよう望んでいる。また、議会に対し、カビ試料の分析は、公認された試験所にのみ認可するよう、奨励している。
米国産業衛生協会は、米国有毒カビ安全・保護法は、有毒カビの許容暴露限界の定義や設定といった難題にも取り組むべきだと、考えている。協会によれば、有毒カビという用語は、ほとんど科学的な意味を持たない。
同協会は、コンヤ−ズ議員の「微生物の繁殖が、暴露した人の健康に及ぼす潜在的有害性についての懸念」を共有するものの、「どれが有害な微生物の繁殖で、どれがそうでないか、もっと調査すべきである」と書簡で述べている。

ASSE、参入
一方、イリノイ州デスプレインズ市にある米国安全技術者協会(ASSE)も、より多くのカビ研究の必要性を支持する書簡を、コンヤーズ議員に送付した。しかし、米国産業衛生協会(AIHA)が、検出や修復の責任をインダストリアルハイジニストに負わせたいとするのに対し、米国安全技術者協会は、責任範囲の拡大を望んでいる。
 「カビ問題へ対処する専門家の種類を制限するのは、カビのような環境的脅威から建物の安全を守るために、企業や公共機関が頼っている多くの専門家を見落とすことになるばかりか、法案の目標達成を妨げることにもなろう」と、同協会のマーク・ハンセン会長は、書面で述べている。
 米国安全技術者協会(ASSE)は、また法案が、カビ検査や修復に対する税優遇措置を盛り込んでいることを支持し、カビ検査試験所に関する条項で、現行の認可プログラムを認めるよう、勧告している。協会はさらに、OSHAやThe American Conference of Governmental Industrial Hyginists(ACGIH)が開発したガイドを用い、自発的コンセンサスの過程を経て、ガイドラインを作成するよう、議会に強く要請している。

(写真下) 有毒カビ問題は、職場や家庭での対処に向け、OSHA、NIOSH、EPAに大きな役割を与える法案の支持に向けて、米国産業衛生協会(AIHA)など諸団体を駆り立てている。


従業員の福祉は、最優先課題との調査結果

 ノースキャロライナ州チャペルヒル − ベスト・プラクティシズ(有)の新しい調査によれば、トップ企業は、従業員の安全衛生を、最重要かつ遠大な会社の優先課題の一つと見なしている。
調査は、5産業6社の安全管理を分析して、最も有効的な安全衛生慣行の特定を目指した。6社とは、ダウ・ケミカル、ダウ・コーニング、デュポン、ミラン、PPLグローバルとクァルコムである。
調査の結果、いくつかの一般的な傾向が明らかとなった。
  • 調査対象企業はすべて、労働安全衛生を企業の最優先課題と見なしている。
  • トップ企業は、中央集権的な安全衛生部署を設置し、専門家を配して、戦略やプロセスを調整させている。
  • トップ企業は、安全衛生意識を向上させるため、技術を活用している。

 詳細情報は、調査・コンサルティング企業のベスト・プラクティシズ社、www.benchmarkingreports.comで入手可。


雇用政策基金、職場をめぐる課題を指摘

 ワシントン − 雇用政策基金の新しい報告書によると、昨年は、経済的には困難な一年であったが、米国の職場は弾力的であった。
 「米国の労働力が直面する課題」と題した報告書は、米国の職場の現状を分析している。昨年は、対米テロ、株式市場の低迷、求人市場の伸び悩み、景気後退を経験したが、このような難題は、「米国の職場の底力を損なうことはなかった」と、雇用政策基金のエド・ポッター会長は説明した。
 しかし、ポッター氏は、企業はまだ難局を脱してはいないと警告。「報告書の将来予測では、今後とも、これまでと同様、課題が多いであろうと示唆している。われわれが、職場の政策や慣行で、雇用創出、技能開発、競争力や弾力性に重点を置き続けていけば、経済成長を期待できる」と同氏。
 報告書は、来年、職場が直面する7つの課題として、景気後退とテロ、医療費の上昇、労働力不足、国際化、失業と職業紹介、多様性、教育と技能不足を挙げている。
 雇用政策基金は、職場の傾向と政策に主眼を置いた経済調査教育基金である。


米国安全技術者協会(ASSE)、政府による安全専門職の管理は不要と発言

 イリノイ州デスプレインズ − 米自治領プエルトリコが提案した、安全専門家やインダストリアルハイジニストの認定に関する法案には、重大な欠陥があると、米国安全技術者協会(ASSE)は、8月27日付けの書簡で、議会に報告した。
 H.R.(下院)2405法案は、安全専門家の教育や経験を認定する基準は存在しないと「誤って」記しており、「広く認められている」公認安全専門家委員会(The Board of Certified Safety Professionals)やAmerican Board of Industrial Hygieneなどといった団体を無視していると、書簡は述べている。
 書簡は、上院労働・退役軍人・人的資源委員会(The Committee on labor, Veterans Affair and Human Resources)の委員長を務めるプエルトリコ出身のラファエル・イリザリ・クルース議員宛て送付された。
 法案はまた、認定の責任を政府に置こうとするものである。これについて、安全技術者協会は、「利害の対立するところであり、専門家の独立を傷つけるものである」と見て、事業者が、安全衛生専門家の採用を手控える可能性があるとしている。
 書簡全文は、www.asse.orgで閲覧可。


2005年世界労働安全衛生会議の準備開始

 イリノイ州アイタスカ − フロリダ州オーランド市での2005年の世界労働安全衛生会議には、世界中から専門家が参集し、国際的な見地から労働安全衛生の現状を発表する。世界会議が、米国で開催されるのは初めてである。
 全米安全評議会(NSC)は、世界会議を主催する。世界会議は、NSCの年次会議&展示会の直前、9月18〜23日に開催される。アラン・マクミランNSC会長は、NSCは、世界会議の主催に「感激しており、名誉である」と語った。
 「2005年の世界会議は、技術情報や優良な安全衛生慣行を国際規模で共有するユニークな討論の場を提供するだけでなく、米国や世界中での労働安全衛生をめぐる驚異的な進歩を祝う機会ともなる」と同氏。
 連邦政府職員3名は、NSCに出向してきており、世界会議の準備を支援する。環境保護局(EPA)からは、ジュリアス・ジメノ氏、労働安全衛生庁(OSHA)からは、マース・ケント氏、鉱山安全衛生庁(MSHA)からは、パトリシア・W・シルビー氏である。マクミラン会長は、NSCは、米国政府、労使団体、世界会議の国際主催団体と緊密に連携して、向こう4年間に、さまざまな調査研究、デモンストレーションや労働分担プログラムを実施する。これらのプログラムの結果は、2005年の世界会議で発表する。
 世界会議は、盛り沢山の教育講演や情報交換の機会のほか、農業、航空宇宙産業、海事産業、製造業と鉱業の安全衛生をテーマに、技術ツアーを提供する。このツアーは、フロリダ州を拠点とする企業で行う。
 2005年のトピック候補としては、以下が含まれる。
  • 先進国、発展途上国での異なる予防モデル。
  • 中小企業の諸問題。
  • 労働安全衛生マネジメントシステム。
  • 産業部門別労働安全衛生。
  • リスク・マネジメント。
  • 心理社会的な諸問題。
  • 有害な職業。
  • 有害な傷害。
  • 調査研究。

 世界安全衛生会議は、NSC、国際労働機関(ILO)、国際社会保障協会(ISSA)との共催である。世界会議は、3年毎に開催。2002年の世界会議は、オーストリアのウィーン市で、5月26〜31日に開催された。