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NSC発行「Safety + Health」2002年10月号

OSHAの最新情報

OSHA、繊維製造業、安全改善に向け、結束

 労働安全衛生庁(OSHA)とアメリカ繊維製造業者協会は、繊維産業が不況で揺さぶられている今、同産業の安全で衛生的な労働条件を推進するため、協力体制を打ち立てた。
 協力体制では、綿粉、騒音や、機械的、電気的その他のエネルギー放出への暴露といった危害から労働者を守るための情報やガイダンスを、繊維製造業者協会の会員に与える。OSHA、繊維製造業者協会は、双方とも、協会の会員に対し、遵法支援や自主的保護プログラム、相談、SHARP(Safety and Health Achievement Recognition Program)、助言指導などといった、OSHAの協同プログラムへの参加を推進、奨励する。
 繊維製造業者協会によれば、繊維産業は、大恐慌以来のもっともひどい経済危機にさらされており、昨年は、116もの繊維工場が閉鎖され、およそ6万7千人が失職した。協会は、繊維産業の支援に向け、早急に措置を講じるよう、政府と議会に要請している。
 ブッシュ政権下でのOSHAのプログラム目標の一つに、パートナーシップと自助努力の拡大がある。8月にはOSHAは、射撃場の労働安全プログラムの改善に向け、全米ライフル射撃場協会およびスポーツ火気・弾薬製造業者協会との間で、協力体制を敷いた。


掘削基準の小企業への影響を検討中

 OSHAは、ブッシュ大統領の意向を受けた規制弾力性法に基づき、掘削基準を再考している。同法は、小企業や小規模団体に対し、著しい影響を及ぼすおそれのある規則を再検討するよう、政府機関に指示するものである。OSHAへの書面によるコメントは、11月19日までに提出されなければならない。
 同法のもと、政府機関は、規則案が小規模団体に対し、どう影響を及ぼすか、これを配慮して書面にした手続きおよび政策を公布するのに、180日間を有する。政府機関の長は、小企業庁政策提言室主席顧問による初回審査を受けるため、これらの手続きを提出するのに、90日間を与えられている。
 OSHAは、掘削基準を変更なしとするか、または無効とするか修正するか、また、規制による負担を軽減するため、または規制の効果を高めるために、規則を変更するかどうか、再考の上、決定する。掘削基準は、掘削による落盤から労働者を保護する手段として用いる支柱システム、斜面ベンチ採掘システムについて、規制する。
 溝堀事故や死亡事故は、依然として、OSHAの重大懸念事項であることから、同基準は再検討されている。OSHAによると、1990〜2000年間には、年平均70人が、掘削・溝堀事故で死亡している。7月には、20フィートの深さの溝で、パイプを敷設していた17才の作業員が死亡した事故で、OSHAは、溝堀・掘削作業に関する安全衛生違反9件で、テキサス州の建設会社を召喚した。事故に関わっていた地下設備建設会社、ペイト&ペイト(有)は、23万8千ドルの罰金を課される。(本誌2002年9月号22ページの「産業特集」参照。)


ブッシュ大統領、労働安全衛生再検討委員会にレイルトン氏を指名

 ブッシュ大統領は、議会休会時に、労働安全衛生再検討委員会に労働弁護士、W・スコット・レイルトン氏を指名した。ホワイトハウスは、同氏の指名を6月に発表、任期は2007年4月27日までである。
 レイルトン氏は、リード・スミス・ショー&マクレイ法律事務所の労働担当パートナーで、1970年代には、労働安全衛生監督をめぐる紛争を解決する労働安全衛生再検討委員会で、委員を務めていた。レイルトン氏は、「OSHA遵法ハンドブック」を著している。レイルトン氏は、議会休会時の被指名者であるため、指名が承認されないかぎり、本来の任期ではなく、上院の次の会期末で任期切れとなる。


OSHA、六価クロム へのコメントを募集

 OSHAは、実話に基づく映画「エリン・ブロコビッチ」の核心ともなった、天然に存在する元素、六価クロム について、その職業性暴露への最善の対処法を探るため、一般からコメントや情報を収集している。映画は、公益企業が、裏打ちされていない池に汚染排水を垂れ流し、これが地下水へと流れ込み、カリフォルニア州ヒンクリーの町の人々が、さまざまな健康障害を患う話である。
 六価クロム は、ステンレス鋼、クロム鉄、鉄鋼の生産の際、構造剤、防腐食剤として使用されたり、電着メッキ、溶接、塗装の際に用いられるのが、もっとも一般的である。六価クロム への暴露は、肺がん、皮膚病、呼吸障害と関連性がある。ヒンクリーの人々は、肝臓、心臓、呼吸器、生殖器の障害や、脳ガン、腎臓ガン、乳ガン、子宮ガン、胃腸ガン、ホジキン病や、流産の多発に悩まされた。
 OSHAの情報要求には、次の項目が含まれる。健康への影響。リスク評価。暴露水準の分析方法。職業性暴露の調査、管理対策、技術的、経済的な実行可能性。個人用保護具や呼吸用保護具の使用。現行の従業員訓練や健康診断による適格審査プログラム。環境への影響や小企業への影響。コメントの提出期限は、11月20日とする。
 OSHAの現行の一般産業基準は、六価クロム の許容暴露限界を、天井値として1立方メートル当たり100マイクログラムとして定めている。建設産業基準では、8時間加重平均として、1立方メートルあたり100マイクログラムとしている。


グリコールエーテルの規則作成記録を再開

 潜在的な危険性を疑われる化学溶剤群についての情報バンクを一新するため、OSHAは、グリコールエーテルの規則作成記録を再開した。
 グリコールエーテルは、建設用塗料や、表面加工、印刷用インク、半導体など、工業用塗布剤として利用されている。OSHAは、二つのエチレングリコールエーテル、2-メトキシエタノール(2-ME)と2-エトキシエタノール(2-EE)およびこれらの酢酸塩、2-MEA、2-EEAが、現在、職場でどの程度使われているのか、これらの生産量も含め、調べようとしている。
 OSHAはまた、事業者が用いているであろうエーテルの代替品について、その使用パターンや従業員の暴露状況、毒性の度合いなどを知りたいとしている。ジョン・ヘンショーOSHA長官は、現在の記録は、約10年前のもので、時代遅れであろうと述べた。
 二つのエチレングリコールエーテルについては、ネズミ実験で、雌雄双方の生殖機能に有害で、先天的欠損症を引き起こすことが確認され、懸念が指摘されている。半導体産業では、ボストン市の先天的欠損症および半導体チップ製造に関する法律センターが、コンピューターチップ製造過程でのエチレングリコールエーテルの使用に反対して、陳情活動を展開している。(本誌2002年7月号28頁の記事、「事業者は、健全な生殖機能への責任を有するか」を参照。)
 コメントの提出期限は、11月6日である。