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NSC発行「Safety + Health」2002年11月号

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ナドラー議員、EPA、OSHAに矛先を向ける

 ワシントン − ジェロルド・ナドラー下院議員(民主党、ニューヨーク州)は、議会でも攻撃的な議員のひとりとして知られている。9月11日の対米テロ以前は世界貿易センタービルのあったマンハッタンは、ナドラー議員の地盤だが、これが関係するとなると、同議員は一段と攻撃性を強めることを、一部の連邦政府機関は、昨年の一年間を通じて学んだ。
 1年以上かかった災害現場の清掃期間中、ナドラー議員は、現場の2つの主要機関、環境保護局(EPA)と労働安全衛生庁(OSHA)の苦労の種であった。ツインタワー崩壊後、グラウンド・ゼロ(爆心地)は、実質的には、マンハッタン南部を広範囲でむせさせた、空前かつ不可抗力の危険に満ちた職場となった。
 ナドラー議員は、災害への連邦当局の対応は、法律に則ったものではなかったと考えている。EPAは、汚染された建物や建造物の清掃、ならびにグラウンド・ゼロ周辺の大気の質の確保に関し、責任を十分に負わなかったと、ナドラー議員は非難する。また、OSHAについては、グラウンド・ゼロのような不安定かつ未知の環境にもかかわらず、作業場規則(workplace rule)を施行せず、主として技術面で対応したと主張する。
 「法規はある。それを守ればいいだけである。」と、ナドラー議員のスポークスマン、エリック・シュメルツァー氏は言った。
 ナドラー議員が一番よく口にするのは、全米不測事態計画、1968年に開発、公布された正式名称、全米石油・有害物質汚染不測事態対応計画である。この計画は、石油の流出や有害物質の放出に対応するための連邦政府の青写真で、EPAが管理する。
 何年にもわたり、議会は、全米不測事態計画に、有害廃棄物投棄場での放出を加えるなど、その守備範囲を拡大してきた。不測事態計画には、連邦政府の対応を実行に移すよう設計された一連の引き金を設けている。不測事態対応チームは、OSHAも含めたさまざまな連邦政府機関、州政府機関、市政機関の職員で構成する。
 「これは、清掃活動の処理に向け、多数の対応を列挙した、とてもよい方策である」とシュメルツァー氏。
 2002年3月25日付けのトム・リッジ国家安全保障局長宛の書簡で、ナドラー議員は、不測事態計画の条項に照らして、EPAの対応の「正確な種類」を決定することができないと書いた。
 ナドラー議員は、「ただひとつ明白なのは、EPAの行動は、公共の安全を確保するには不十分であり、明らかに法定権限に反したものであった」と訴える。ナドラー議員は、EPAの対応に関する「白書」さえ発行するに及んだ。
 疾病対策予防センターは、9月11日の対米テロ一周年記念日に、グラウンド・ゼロにおける救急隊員の呼吸用保護具の利用状況について報告するなかで、直接的な呼吸危害をおこすものとして、爆発、火災、残骸物の落下、粉じんを挙げている。
 救急隊員から報告のあった身体的な症状で共通しているのは、目の炎症、鼻、のどの炎症、息切れ、胸の締めつけ感、ゼーゼーとした息をするであった。
 アトランタ市を拠点とする同センターによると、ニューヨークの消防士、救急医療士約700名は、しつこい呼吸器疾患、ストレス、整形外科の傷害で、休暇をとっているか、軽い業務に配転されている。
 ナドラー議員の批判の大半は、EPAに向けられたものであるが、OSHAにもその矛先を向け、ジョン・ヘンショーOSHA長官と、論戦的な書簡を往来させている。
 1992年に当選したナドラー議員は、グラウンド・ゼロでのOSHAの24時間体制の活動を褒めつつ、OSHA第2地域事務所は、救命、復旧、清掃活動中の法規施行を見合わせたと抗議した。2002年6月3日付けのヘンショー長官宛の書簡で、ナドラー議員は、「9月11日以降の世界貿易センターにおける労働安全衛生法の施行に関する」総合的な資料を作成するよう主張した。
 ヘンショー長官は、8月9日付けの書簡で、ナドラー議員は、「OSHAが、9月11日直後の大混乱の時期に、当局としての優先課題を相談、安全モニタリング、大気サンプリング、呼吸用保護具の密着性テストに絞ると決定したことが、当局の法規施行に関する法定権限を棄却したことになるとの連想に煩わされている」と述べた。
 長官はまた、世界貿易センターでは、OSHAは、労働安全衛生法の条項の施行が「予想だにしなかった状況」に直面したと付け加えた。
 また、安全衛生法下の当局の権限は、法規の施行に限定されたものではないことも指摘した。
 シュメルツァー氏は、ヘンショー長官の書簡は、ナドラー議員がOSHAから受け取った唯一の反応であると述べた。
 EPAは、住宅もふくめた建物の汚染された内部を清掃すると述べて、5月になんとかナドラー議員を納得させた。
 ナドラー議員は、8月、マンハッタン南部の交通インフラを取り替えるために、連邦緊急事態管理局が45億5000万ドルの拠出を合意した際にも、勝利を主張した。
 シュメルツァー氏は、「回答を得ていない問題」が残っており、ナドラー議員は「引き続き、仕事をこなしていく」と述べた。
 それはつまり、この次に議会の公聴会で労働力保護を討議する際には、ナドラー議員は、関係当局を相手に矛先を研ぎ澄ませるということを意味しているのであろう。