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NSC発行「Safety + Health」2003年1月号

ニュース

フロリダ州、職場の喫煙を禁止

 フロリダ州オーランド― フロリダ州の有権者は、70.8%という圧倒的多数で、職場の喫煙を禁じる憲法修正案を承認し、歴史的な一歩を踏み出した。職場の禁煙に向けた立法措置を陳情した連合体によると、米国の有権者が、州レベルのレファレンダム(国民投票)で、職場の禁煙施策を承認したのは、これが初めてである。
 憲法修正第6条は、レストランを含め、囲いで仕切られた屋内の職場での喫煙を禁ずる。この規制を免れるのは、タバコ小売店、ホテルやモーテルの指定された喫煙用客室、一戸建てのバー、児童保育や商業衛生に使われていない民間住居である。
 この立法措置をフロリダ州での2002年の投票で問うよう、キャンペーンを先導したのは、米国癌学会(American Cancer Society)、米国心臓協会(American Heart Association)、米国肺協会(American Lung Association)である。
 この連合体のマーティン・ラーセン会長は、修正条項の承認によりフロリダ州は、「全米規模での職場の禁煙運動の最前線」となると語った。
 フロリダ州は、同様の法律を可決したカリフォルニア、メイン、ユタ、バーモントの4州や、ニューヨーク、ボストンなどといった都市に名を連ねた。専門家は、今回の修正条項の可決が、全米規模での禁煙に拍車をかけるだろうと考えている。
 修正条項は、1月7日、フロリダ州憲法の一部となる。州議会は、遅くとも7月1日までに法律を制定して、法施行できるようにせねばならない。


大統領、スカリア労働省主席法務官の任期を延長

 ワシントン― ブッシュ大統領は、2002年11月22日、ユージーン・スカリア氏を法務官代行として任命、これで、同氏の任期は、210日間延長された。
 ブッシュ大統領は、議会が休会していた2002年1月、スカリア氏を労働省法務官として任命、上院の承認プロセスを回避した。議会休会時に任命されたスカリア氏の任期は、上院の承認が取れない限り、そして事実、取れずじまいとなったため、議会が第22回議会を継続審議とした時点で、切れていた。
 上院民主党員らは、論争を呼んだスカリア氏の労働安全に関する著述、とくに廃案となったOSHA(労働安全衛生庁)のエルゴノミクス基準に対する同氏の立場を理由に、法務官任命をめぐる票決を妨害していた。
 中間選挙後の大改造で、上院の支配権が共和党に移った今、ホワイトハウスがスカリア氏を再任命すれば、同氏は、ずいぶんと楽な承認プロセスを経ることができるだろう。


ワシントン州の安全規則刷新、称賛される

 ワシントン州オリンピア― OSHAは、連邦労働法規を利用者本位の形式に書き直すにあたり、ワシントン州の"OSHA"の方法を参考にしたほうがよさそうだ。同州では、労働産業省が、州の労働安全衛生規則を徹底的に改め、これが、全米の称賛を得るところとなった。
 ワシントン州のゲイリー・ロック知事(民主党)によると、ケンタッキー州レキシントン市の州政府協議会は、同州労働産業省の労働安全規則の書き直しに対し、8つの「2002年度革新賞」のひとつを贈った。8受賞者中、同プロジェクトの得票は最多であった。
 一方、ハーバード大学ジョン・F・ケネディ政治学部政治革新研究所(Institute for Government Innovation)は、ワシントン州の「平易な英語による法規」を「米国政治革新賞」の準最終選考へ送り込んだ。最終選考に残ったのは、参加者数の12%未満である。5月には、5名の受賞者が発表される。


事実チェック
2001年産業別非意図的死亡労働災害

建設業 1,210
輸送・公益事業 930
農業 700
サービス業 690
製造業 630
政府機関 490
商業 470
鉱業・採石業 180
合計 5,300人

出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」 2002年


化学安全委員会、報告の欠陥の解消をめざす


 ワシントン― 米国化学物質安全性調査委員会(U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board)は、米化学工場での事故による化学物質の流出に関し、報告の「欠陥」を解消するよう、努力している。
 化学工場に、改善された、整合性のある測定基準がないままでは、事故による化学物質の流出が増加しているのか、あるいは減少しているのか、これを知る手がかりはほとんど皆無であると、同委員会のイザドア・ローゼンタール委員は、2002年11月14日、50名を超える官産学リーダーが出席した討論会で、こう述べた。
 討論会の出席者は、報告の問題には、データ収集やデータの質も含まれていると述べた。たとえば、記録されない「ニアミス」は、たとえ作業効率を測定するためにも、勘定に入れるべきである。提案のなかには、EPA(環境保護庁)は、リスク管理プログラムの下で収集している記録すべき事故データを、5年間毎ではなく、毎年収集すべきであるというのがあり、多数の同意を得た。ローゼンタール氏は、OSHA、EPA、化学安全委員会等、関係機関の間で、報告がよりよく整合されれば、産業区分別のデータが得られ、どこに最大の問題があるかを特定できると述べた。同氏は、この問題について、3年以内に進展をみたいと付け加えた。
 化学物質安全性調査委員会は、規制あるいは法規施行機関というよりは、むしろ、独立した科学調査機関である。いかなる勧告や新しい規則作成も、適切な政府機関の承認を必要とする。


全米安全評議会(NSC)創立90周年:事故は日常茶飯の時代

 今日の比較的安全な職場からすると、20世紀初頭に、国が、組織化された安全推進団体をどれほど渇望していたか、これを理解するのは難しい。
 1900年代はじめ、産業革命は、持続するために膨大な資源を消費していた。工場その他の施設は、危険かつ容赦のない職場で、死亡事故は、進歩の代償と思われていた。
 しかし、1911年、1912年と、世に広く知れ渡った事故が2件相次ぎ、国の安全に対する姿勢は変わった。1911年春、ニューヨークのトライアングル・シャツウエスト工場の火災で、女性146人が死亡した。ドアは施錠されており、非常口も不十分だったため、多くの労働者は、飛び降りて死亡した。1912年には、タイタニック号が沈没した。豪華客船には、十分な救命ボートが備えられておらず、乗客のほとんどは、極寒の海で死亡した。
 この2つの事故は、労働災害と人命損失の時代に終止符を打ったが、この結果、安全改革に向けた機運が、急速に高まった。1912年秋には、鉄鋼電気技術者協会(Association of Iron and Steel Electrical Engineers)が、第1回協同安全会議(今日の年次会議&展示会の前身)を開催した。会議では、「人命の安全の推進」のため、全米労働安全評議会を設立するとの決議が可決された。1913年に正式に発足した評議会は、翌年、全米安全評議会(NSC)と改称した。
 安全のリーダーであるNSCの創立90周年を記念して、本誌は、1年間を通じ、NSCの遺産のなかでも重要なものを紹介する。毎月号の90周年記念の囲み記事で紹介する、NSCの安全第一の取り組みにまつわる話題に期待されたい。


ウェルストン議員の飛行機墜落事故は、パイロットの疲労が原因か

 ミネアポリス― 労働安全の先鋒として名をはせた、ミネソタ州選出のポール・ウェルストン上院議員(民主党)が死亡した2002年10月の飛行機墜落事故は、労働安全問題が原因だった可能性がある。ミネアポリス・スター・トリビューン紙によると、墜落した飛行機のパイロットは、過労していた可能性がある。
 スター・トリビューン紙は、パイロット、リチャード・コンリー氏のスケジュールや、これが、パイロットの操縦能力にどう影響を及ぼしたかが、全米運輸安全委員会(National Transportation Safety Board)の事故調査の対象の一部となっていると伝える。
 コンリー氏は、パートタイム看護師として働いてもおり、事故前日の夜には、4時間の交替勤務をし、この同じ日、夜勤前には予定外の飛行任務も入っていた。コンリー氏を雇っていたアビエーション・チャーター社は、同氏の兼業を知らなかったと、スター・トリビューン紙は伝えている。


調査: 24/7勤務体制は、労働力を酷使、ミスも出やすい

 マサチューセッツ州レキシントン― 新しい調査によると、2001〜2002年の不況時に、経営者は、24/7(1日24時間/週7日操業)操業体制に大いに挑み、人員を危険なまでに低く抑え、従業員をこれまで以上に事故や傷害、作業ミスといったリスクにさらしている。
 調査の回答者は、人員不足、残業時間の増加や、ストレスや働きすぎ、不十分な訓練が原因でのヒューマン・エラーによる事故の増加を報告している。
 サーカディアン・テクノロジーズ社(Circadian Technologies)の実施した「2002年度交替制勤務慣行("2002 Shiftwork Practices")」調査は、製造業、加工生産、公益事業、公共安全、保健医療、サービス業で、24/7体制をとっている623事業場を調査した。


NIOSH、作業関連ストレスに関するビデオ・ガイド刊行

 ワシントン― NIOSH(国立労働安全衛生研究所)は、職場のストレスに関する初の訓練・教育ビデオを刊行した。「ストレスと共に働く("Working With Stress")」は、作業関連ストレスの原因、症状、罹患率を説明、業務に関連するストレスを減らす実践的な対策を提言している。
 ビデオは、無料で配布。希望者は、郵便、4676 Columbia Parkway, Cincinnati, OH 45226、またはeメール、nioshtv@cdc.gov のNIOSH-TV(C-12)のロジャー・ウィーラー(Roger Wheeler)に連絡するとよい。


新手法で、自動車衝突事故の発生原因を数量化

 ワシントン― 運転中の従業員にとって、携帯電話がどれほど危険か。企業各社は、まもなく、これをよりよく判断できるようになるだろう。今月(2003年1月)はじめ、各州は、不注意運転を含む、自動車衝突事故に関する新しい報告ガイドラインにアクセスできるようになる。
 州知事幹線道路安全協会(Governors Highway Safety Association)によると、モデル統一衝突事故最低基準(Model Minimum Uniform Crash Criteria)の最終改訂版は、各州が衝突事故現場で収集したデータを標準化するのに役立つ。改訂版のリストには、いくつか新しい部類が加えられた。このなかには、次のような原因による不注意運転のコードもある。
  • 電子通信機器(携帯電話、ポケットベル)
  • その他の電子通信機器(カーナビゲーション、手持ち式電子手帳)
  • その他、車内で注意散漫を招くもの(ラジオ、他の乗客)
  • 車外の物体(道路標識、他の自動車)
 ガイドラインは、信号無視、酒酔い運転、ブースターシート(チャイルドシート)を使用しての運転、ひき逃げ、特殊用途車も対象としている。


調査によるとモンタナ州の労働安全、悪化

 モンタナ州へレナ― モンタナ州労働産業省によると、同州の2000年の労働安全は悪化している。
 同省の年次労働傷病調査によると、2000年には、民間産業のフルタイム労働者100人あたり8.2人の傷病例があった。1999年の傷病率は、7.2人であった。
 同州の傷病率は、いずれの年も、全米傷病率(1999年は6.1人、2000年は6.8人)より高かった。


米国医師会、騒音性聴力損失に耳を傾ける

 シカゴ― 騒音性の聴力損失は、労働者が被る障害のなかでも、依然としてもっとも多くみられるもののひとつだが、米国労働環境医学学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)は、先日、聴力損失に関する意見書を更新、これにより、さらなる調査を推進し、新しい研究を奨励する。
 「騒音性聴力損失」("Noise -induced Hearing Loss")に関する意見書(改訂)は、症状の特徴を特定し、臨床上配慮すべき点を列挙して、医師が、労働者の騒音性聴力損失を評価しやすいようにした。同大の意見書はまた、症状のある側面については、ほとんど理解を得られていないと主張、騒音性聴力損失の調査計画を作成すべきだと提案している。 
 意見書全文は、www.acoem.org/guidelines/article.asp?ID=53で閲覧できる。


NIOSH、職場の暴力防止調査を助成


 ワシントン― NIOSH(国立労働安全衛生研究所)は、職場の暴力の防止に関する調査への資金協力として、新たに5件の助成金を交付した。助成金の交付は、議会が、NIOSHに対し、職場の暴力を対象とした調査の開発を指示した、職場の暴力に対する指導の一環である。
 調査4件は、社会福祉サービス労働者、保健医療従事者、警察官、長距離トラック運転手といった特定の職業群をめぐる職場の暴力について、危険因子の特定を目的としたものである。残る1件は、職場内部の暴力に焦点を当てる。
 詳細は、www.cdc.gov/niosh/vioprevgrants.htmlで参照できる。