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NSC発行「Safety + Health」2003年2月号

ニュース

労働省、安全衛生諮問委員を選出

 ワシントン― 労働省は、全米労働安全衛生諮問委員会(National Advisory Committee on Occupational Safety and Health)の新しい委員を発表した。本諮問委員会は、労働省長官と保健社会福祉省長官に対し、労働安全衛生プログラムに関する助言を行う。
 定員12名の委員会の委員は、1年または2年の任期で、さまざまな分野から交替で指名される。

再任委員

経営者代表
  • ジュディス・フレイマン、オーガニゼーション・リソーシズ・カウンセラーズ(ニューヨーク市)、西部労働安全衛生作戦部長、任期1年
公益代表
  • ロン・ヘイズ、ファミリーズ・イン・グリーフ・ホールド・トゥゲザー(略:F.I.G.H.T.、被災者家族団結の会、アラバマ州フェアホープ市)、任期1年
安全代表
  • リクシオ・メディナ、CITGOペトロレアム(株)(オクラホマ州タルサ市)、法人安全衛生安全保障マネージャー、任期1年
新委員

経営者代表
  • スーザン・エカーリー、全米自営業連合(ワシントン市)、連邦公共政策、副会長、任期2年
公益代表
  • ピーター・ディルカ、オレゴン州消費者&事業サービス省(セーラム市)、長官、任期2年
労働代表
  • リチャード・ダフィ、国際消防士連合(ワシントン市)、会長補佐、任期2年
  • ドナルド・カーソン、国際営業技術者組合(ワシントン市)、危険物質プログラム、センター所長、任期2年
安全代表
  • ジェームズ・スタンリー、AKスチール(オハイオ州ミドルタウン市)、安全衛生部、部長、任期2年

 全米労働安全衛生諮問委員会の以下の新委員は、トミー・トンプソン保健社会福祉長官が指名し、エレイン・チャオ労働長官が任命した。

公益代表
  • レティシア・デイビス、マサチューセッツ州公共衛生省(ボストン市)、労働監視プログラム長、任期1年
  • ビッキー・ウェルズ、衛生省(サンフランシスコ市)、労働安全衛生、CIS部長、任期2年
衛生代表
  • ジェームズ・ブレスマン、ウェイン州大学(デトロイト市)、助教授、任期1年
  • ジュリア・フォーサット、カリフォルニア大学(サンフランシスコ市)、看護学教授、任期2年
「(委員会の委員らは、)安全衛生分野でのすぐれた能力と経験を分かち合い、われわれが、職場における死傷病を減らすために可能なことはすべて行うよう、補佐してくれる」。
エレイン・チャオ労働長官


事実チェック

2000年度職業性疾患
単位(件)
資料出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2002年


全米安全評議会(NSC)創立90周年:「予防の父」
標章の概観)
 全米安全評議会(NSC)のもっとも知名度の高いシンボルは、疑いもなく安全緑十字である。
 しかし、緑十字とNSCは、同時期にスタートしたわけではない。1913年、NSCの標章は、緑の地に白の十字を抜き、しばしば羽がつくこともあった、万国安全十字であった。緑は若さの象徴で、白は目的の純粋さと誠意、十字は救援活動を意味する。ふたつの羽は力と安全を象徴、合わせて保護を意味した。
 1940年代に作られた緑十字は、寄付金集めの活動を識別するためであったが、一般人の目には、またたく間に、安全のシンボルとしてより良く認識されるようになった。「赤十字は、偉大なる「救済の母('Mother of Mercy')」。緑十字は、「予防の父('Father of Prevention')」とならんことを」との声さえ聞こえるようになった。
 NSCは、1947年、安全緑十字を正式な標章として採用した。2002年、NSCは、もうひとつの十字を採用、これで、NSCの活動を識別することとした。
 安全のリーダーであるNSCの創立90周年を記念して、本誌は、1年間を通じ、NSCの遺産のなかでも重要なものを紹介する。毎月号の90周年記念の囲み記事で紹介する、NSCの安全第一の取り組みにまつわる話題に期待されたい。
イラスト出所:全米安全評議会図書館

スカリア氏、労働法務官を辞任

 ワシントン― ユージーン・スカリア氏は、労働省主席法務官として1年間務めたが、このたび、辞任した。
 労働省の新聞発表によると、スカリア氏は、1月17日、「労働省を去って、新たな挑戦に挑むには、今こそ好機である」と述べて、労働省法務官代行を辞任した。
 2001年のスカリア氏の任命は、論争を呼び、クリントン政権のエルゴノミクス規制に反対した同氏の立場に反感を持った労働組合や民主党員が、反対していた。
 ブッシュ大統領は、2002年1月、上院の確認プロセスを回避するため、議会の休会時に、スカリア氏を任命した。任期が11月で切れると、ブッシュ大統領は、法務官代行として同氏を任命した。
 労働省次席法務官、ハワード・ラズリー氏は、新たな任命があるまで、スカリア氏の後任を務める。
 スカリア氏は、米最高裁判所のアントニン・スカリア判事の子息である。


製鋼所近辺と遺伝子損傷は関連

 オンタリオ州ハミルトン― カナダで最近発表された調査によると、マウスのDNA(デオキシリボ核酸)は、製鋼所の風下で呼吸していると損傷を受け、当のマウスやその子孫が、癌その他の疾病にかかりやすくなる。
 オンタリオ州ハミルトン市のマクマスター大学の科学者らは、突然変異は、製鋼過程でコークス炉から放出される化合物のなかまで、多環式芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbons)に暴露することにより、生ずるのではないかと疑っている。
 調査結果は、製鋼所で働く人々や、その近郊で暮らしている人々が、大気汚染により遺伝子を損傷しうるということを示唆している。
 本調査は、カナダ自然科学会議事録(Proceedings of the National Academy of Sciences)(Vol.99、No.25)に掲載された。


政府、特定因子規則を設ける

 ワシントン― 保健社会福祉省および農業省は、公衆や動植物の安全衛生を脅かす可能性のある、特定の生物学的因子や毒素(select biological agents and toxins)の所有、使用、運搬について、補則を設け、より厳重な管理体制を敷いた。
 保健社会福祉省の暫定規則は、従来の特定因子規則を更新したもので、人類の健康を脅かす可能性のある特定因子を所有する事業場に対し、同省への登録を義務付けている。従来の規則では、特定因子を運搬するときにのみ、登録を義務付けていた。
 同様に、農業省の暫定規則も、動植物の健康を脅かす可能性のある特定因子を所有するものは、同省に登録するよう義務付けている。
 2002年12月13日付けフェデラル・レジスター(官報)によると、両規則は、2月7日付で発効する。


車の運転と電話は、両立しない
ドライバーによる携帯電話の使用は、1年間で次のような災害を招くおそれがある。
死亡者数 2,600人
中度または重度の負傷 330,000件
軽傷 240,000件
財物損壊 1,500,000件

資料出所:ハーバード危険分析センター、2002年


負傷後の薬物検査は違憲 - オハイオ州裁


 オハイオ州コロンバス― オハイオ州最高裁判所は、州内の事業者は、負傷した労働者に対し、薬物・アルコール検査を課してはならないとの判決を、4対3で下した (アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議(AFL-CIO)オハイオ州支部対オハイオ州労働者災害補償局、2002−オハイオ−6717)。
 2001年4月に発効した法律の修正条項により、事業者は、規制薬物による中毒またはその使用により負傷した従業員に対し、労働者災害補償の給付を拒否できるようになった。従業員が検査を拒めば、推定有罪とみなされた。
 最高裁は、この法律は、不合理な捜索からの保護に違反しており、違憲であると判決した。「労働者は、単に労働災害を被ったからといって、節制を問題視されるとは予想だにしないだろう」と、ポール・E・ファイファー判事は多数派の意見を述べた。
 最高裁の判決は、本法律が反薬物的というよりは反労働者的だと考えるAFL-CIOや全米自動車労組(UAW)の大勝利とみなされる。労組側は、最高裁に対し、職務執行令状による直接介入を要請した。最高裁によれば、そのような令状は、特別な法的救済とみなされる。


児童労働規制命令は時代遅れと、監督室長

 ワシントン― 非農業部門における児童労働有害職業規制命令(Nonagricultural Child Labor Hazardous Occupation Orders)は更新する必要があると、監督室長は、新しい報告書で述べている。同命令は、労働省が、児童労働のもっとも深刻な危害を特定するのに用いる。
 監督室は、半期毎に議会に提出する報告書のなかで、労働省賃金・時間課は、児童労働の安全ガイドラインが、時代に見合い、かつ今日の職業を反映するように、再評価するのを「怠っている」と述べている。報告書は、過去5年間の技術や産業の進展ぶりにかんがみ、再検討は必要であると述べている。


NIOSHの新手法、ヒストプラズマ症の検出を簡便化

 ワシントン― 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の報告によれば、同研究所は、呼吸器系感染症であるヒストプラズマ症を引き起こす可能性のある真菌類の胞子に、労働者が暴露される危険性があるかどうかを見極める、迅速かつ経済的な手法を開発、特許を取った。
 新しい手法は、DNA分析技法を用いて、2日以内に、実験試料内のヒストプラズマ真菌莢膜きょうまく(Histoplasma capsulatum fungus)を特定する。費用は60ドル。従来の手法だと、一試料あたり何週間もかかり、数百ドルと費用もかさんだ。NIOSHによると、旧式の手法は、時間と費用がかかり、時宜を得たやり方で業務上のリスクを低減する能力を減速させていた。
 真菌は、広い範囲の土壌に生息する。暴露の恐れのあるのは、建設・解体労働者、橋梁検査員、塗装工、農業従事者、煙突掃除、屋根ふき、害虫駆除、庭師、暖房や空調システムの設置・サービス労働者などである。


NIOSH、未発表の職業性暴露データを公開

 ワシントン― 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、これまではそのほとんどを未発表としてきた全米職業性暴露調査(National Occupational Exposure Survey)の情報を公開している。
 1981〜1983年の間、NIOSHは、化学的、物理的、生物学的因子への潜在的な職業性暴露に関するデータを収集するため、調査を実施してきた。これらのデータは、NIOSHの多数の刊行物で引用されている。
 最初に発表された二つは、特定因子や特定産業でみられる因子に潜在的に暴露している労働者数を扱ったものである。残りは、今後掲示される。情報にアクセスするには、www.cdc.gov/noes/default.htmlまで。


うつ病検査は企業収益を改善

 シカゴ― 抑うつ性障害により、年間推定430億ドルの経費が発生、このうち170億ドルは、労働損失日数を表す。しかし、米国労働環境医学学会(American College of Occupational and Environmental Medicine)が先日発表した意見書によると、うつ病検査プログラムは、うつ状態の従業員を特定するのに効果的かつ安価な方法であり、最終的には先に挙げた経費を縮減する。
 意見書によると、うつ病従業員を特定するもっとも単純な方法は、過去2週間に落ち込む、意気消沈する、絶望するなどの状態があったか、また、何をするにも興味を失うといったことはなかったかを、医師が問診するというものである。
 適切な診断と治療で、うつで悩む従業員は、臨床的に改善をみせるようになり、その結果、職場での生産性が向上すると、意見書は述べている。
 意見書の全文は、www.acoem.org/guidelines/article.asp?ID=54で閲覧できる。


外傷性脳損傷、血中鉛濃度に関する新報告

 アトランタ― 疾病対策予防センター(CDC)は、先日、外傷性脳損傷および血中鉛濃度に関する報告書を発表した。
 外傷性脳損傷に関する報告書は、小火器(拳銃、小銃など)、自動車、墜落・転落により、この種の傷害が、依然、年平均53,288人の死者を出していることを示している。報告書では、1989〜1998年間に発生した外傷性脳損傷を分析し、この種の傷害に関連した死亡例の傾向を特定している。報告書は、www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/ss5110a1.htmで閲覧できる。
 血中鉛濃度に関する報告書は、異常に高い血中鉛濃度を示すアメリカ人被雇用者数は減少していることを示している。10リットルあたり25マイクログラム以上の高レベルの血中鉛濃度を示す成人の年間州別有病率の平均値は、労働者10万人あたり13.4人であった。1994〜1997年の年間州別有病率平均は、15.2人である。血中鉛濃度報告書は、www.cdc.gov/mmwr/PDF/ss/ss5111.pdfで閲覧できる。