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NSC発行「Safety + Health」2003年2月号

OSHAの最新情報

OSHA、記録保持書式を変更

 2004年1月1日より、事業者は、労働安全衛生庁(OSHA)の新しい記録基準に照らして、聴力損失(hearing loss)欄をチェックし、業務関連症例を記録せねばならない。
 新しい記録基準は、従業員の聴力テストで、全周波数の聴力に著しい低下がみられた場合、事業者は、職業性の聴力損失を記録せねばならないと定めている。
 新基準のもとでは、事業者は、その従業員の聴力テスト基準線より、いずれかの周波数で10デシベルの聴力低下がみられ、かつ全周波数の聴力レベルが25デシベル低下した例を記録する。
 「この新しい欄のデータで、職業性聴力損失に関する全米統計情報が改善し、聴力障害がどこで発生するのか、これを特定する当局の能力も改善し、聴力損失予防対策の優先順位を決めるのに役立つ」と、ジョン・ヘンショーOSHA長官は述べた。
 OSHAはまた、筋骨格障害の記録保持に関する3つの条項を1年間延期すると述べた。3つの条項とは、規則上の筋骨格障害の定義、筋骨格障害のプライバシー問題としての配慮、OSHAログ(記録)上の筋骨格障害欄の記入要件に関するものである。
 この延期により、事業者の労働傷病記録義務や、職場の安全確保義務に影響がでることはない、とOSHAは警告する。しかし、2003暦年中は、事業者は、OSHAログ(記録)で筋骨格障害の事例を分類するために、その定義を用いる必要はない。その代わりに、症例の状況により「傷害」あるいは「その他の疾病」欄に記入しなければならない。


チャオ労働長官、起訴で「法律違反は容赦しない」とのメッセージを発す

 1999年および2000年に従業員2名が死亡したかどで、シカゴ地区の電気業者とその親会社を12月中旬に起訴した件について、エレイン・チャオ米国労働長官は、「これは、法定義務を故意に無視する事業者は容赦せず、労働安全衛生法規を施行するという、ブッシュ政権の強い決意を明確に示したものである」と述べた。
 本件は、高圧送電塔での架線作業員の感電死に関する、米国初の刑事訴追であると考えられている。2002年10月には、ニューヨークの足場建設業者が、死亡事故に関連して、故殺(manslaughter)の5つの訴因で連邦裁判所に起訴された。
 シカゴ地区の被告は、イリノイ州ローリング・メドウ市にあるL・E・マイヤー社とMYRグループ社である。両社は、連邦大陪審が訴因4件と答申した件で起訴されていると、イリノイ州北部地区担当のパトリック・J・フィッツジェラルド検事は述べた。
 L・E・マイヤー社は、全米に千人以上の従業員を抱える電気工事会社で、MYR・グループ社の100%子会社である。この持ち株会社は、およそ4千人の従業員を擁し、ハーラン・エレクトリック社、スタージャン・エレクトリック社、ホークアイ・コンストラクション梶Aグレート・サウスウェスタン・コンストラクション鰍含め、数社を所有している。
 起訴状によると、1999年にはイリノイ州マウント・プロスペクト市で、また2000年には同州プレインフィールド市で、34万5千ボルトの電圧がかかった三相電線を配した高圧送電塔で作業していた見習架線作業員とベテラン架線作業員の計2名が死亡したが、L・E・マイヤー社とMYR・グループ社は、故意に数多くの連邦労働法規違反をしていた。
 事故の起きた2年間、L・E・マイヤー社は、コモンウェルス・エジソン社との契約で、イリノイ州北部の送電塔の電線や機器の修理作業を行っていた。
 L・E・マイヤー社とMYRグループ社は、各々、OSHA安全法規違反2訴因に問われている。死亡事故1件につき、1訴因である。
 OSHA法規では、二社は、軽罪で告訴される。もし有罪となると、L・E・マイヤー社とMYRグループ社は、それぞれ最高5年の保護観察と最高百万ドルの罰金、つまり、2訴因の各々に対し50万ドルの罰金が課せられる。


OSHA、訓練センターを増設
 OSHAは、最近、12あった訓練研修教育センターを、20(35か所)へと増設した。新設センターにより、OSHAは、訓練需要増に向けた目標の達成や、エルゴノミクス、ヒスパニック系労働者、若年者イニシアチブに対するアウトリーチ活動の一層の充実を図る。
 向こう2年間で、当局は、民間労働者や連邦公務員も含めた訓練生を、2002年度の14,500人から倍増するという。これらの訓練センターは、イリノイ州にある当局の首位訓練施設であるOSHA訓練研究所を補完する。訓練センターは、主として、民間労働者、OSHA以外の連邦政府機関の職員の訓練を請け負う。
 訓練センターは、全米規模での競争により選抜された。評価基準には、労働安全衛生分野での経験、非学術的訓練の経験、教室や実験設備の保有具合および地域全域への訓練提供能力などが含まれていた。OSHAは、学費を徴収しているセンターには、資金協力をしない。
 1992年に作成された教育センタープログラムは、当局によるOSHAアウトリーチ訓練プログラムの運営を補佐する。本プログラムで、1週間のOSHA訓練者コースを修了した者は、建設業または一般産業の安全衛生基準の分野で、10時間または30時間コースを指導する資格を与えられる。2002会計年度には、25万4千人が訓練者訓練プログラムを受講した。
 以下は、OSHA管轄地域別の訓練研修教育センターの一覧である。

地域1
  • キーン州立大学(ニューハンプシャー州キーン市)
地域2
  • ロチェスター工科大学(ニューヨーク州ロチェスター市)
  • ニュージャージー医科歯科大学(ニューブランズウィック市)、ニューヨーク州立大学毒物学研究センター(バッファロー市)、メトロポリタナ大学(プエルト・リコ、サンファン市)およびニューヨーク市大工地区協議会労働技術大学から成る共同事業体
地域3
  • 国立資源センター(ワシントン市)
  • 大学市科学センター訓練課(フィラデルフィア市)およびペンシルバニア州立インディアナ大学(ペンシルバニア州インディアナ市)との共同事業体
地域4
  • ジョージア技術調査研究所(アトランタ市)
  • サウスフロリダ大学(タンパ市)
  • イースタンケンタッキー大学(リッチモンド市)
地域5
  • シンシナティ継続医学教育大学、イースタンミシガン大学組織リスク低減センター(イプシランティ市)、全米自動車労組安全衛生部(デトロイト市)、ミネソタ大学中西部労働安全衛生センター(ミネアポリス市)から成る、五大湖OSHA訓練共同事業体
  • ノーザンイリノイ大学(デカルブ市)、建設安全協議会(イリノイ州ヒルサイド市)、全米安全評議会(イリノイ州アイタスカ市)から成る、全米安全教育センター
  • オハイオ・バリー建設教育基金(オハイオ州スプリングボロ市)、シンクレア・コミュニティ大学(オハイオ州デイトン市)から成る共同事業体
地域6
  • テキサス・エンジニアリング・イクステンション・サービス(メスキート市)
  • オクラホマ州立大学(スティルウォ−ター市)
地域7
  • メトロポリタン・コミュニティ大学商業・技術センター(ミズーリ州カンザス市)
  • セントルイス大学、カークウッド・コミュニティ大学(アイオワ州シダーラピッズ市)、大オマハ安全衛生評議会(ネブラスカ州オマハ市)から成る共同事業体
地域8
  • レッド・ロックス・コミュニティ大学(コロラド州レイクウッド市)
  • ロッキー・マウンテン・センター(ソルト・レイク・シティ)。ユタ大学(ソルト・レイク・シティ)およびソルト・レイク・シティ・コミュニティ大学システムの共同事業体
地域9
  • カリフォルニア大学(サンディエゴ市)
  • ウェストサイド・エナジー・サービシズ訓練教育センター(カリフォニア州ベイカーズフィールド市)
地域10
  • ワシントン大学(シアトル市)

OSHA、聴力損失記録に関する新基準を説明

 OSHAは、2002年7月1日に公布した最終規則のセクション1904.10にもとづく職業性聴力損失の記録に関し、3点を説明した文書を発表した。3点とは、以下のとおり。
 造船業 − 最終規則の前文で、造船業の事業者は、OSHAの騒音基準の適用を受けないと、誤記されている。実際には、29 CFR(連邦政府規則コード)パート 1915の基準が適用される造船業の事業者は、遵守を義務付けられている。
 聴力損失の増加 − 新規則の導入で、記録される聴力損失の症例が増加することになる。OSHAは、事業者の傷病記録を評価する際、こうした変更を考慮に入れる。
 標準閾値移動 − 新しいパート1904では、記録目的と聴力維持目的の基準線を区別して設ける必要はない。新規則では、従業員に、29 CFR 1910.95に規定した標準閾値の移動がみられ、その移動が業務関連であり、かつ、従業員の全周波数の聴力損失の総和が、聴力計のゼロ値から25デシベルを超える場合に、記録すべき聴力損失例として成り立つ。
 説明全文は、www.osha.gov/recordkeeping/clarifications-recording.htmlで閲覧できる。


OSHA、鉛暴露対策eツールを発足

 OSHAは、先日、高熱炉で回収した鉛化合物を鉛元素と鉛合金に還元する鉛精錬所での、従業員の鉛暴露を低減する方法を扱ったeツールをウェブサイト上で発足させた。
 過度の鉛暴露は、鉛産業における職業病の原因の首位であり、なかでも鉛の二次精錬所で働く労働者は、鉛関連産業全体のなかで最も高い水準の鉛にさらされている。
 双方向性のeツールは、原料加工、精錬、精製および鋳造、環境管理、保守について、具体的に説明している。
 OSHAのeツールは、労働安全衛生問題を扱った、独立型でイラスト入りのウェブサイト上の訓練ツールである。同ツールは、OSHA規制下の数多くの産業を対象としたものである。
 eツールは、OSHAのウェブサイト、www.osha.gov/SLTC/leadsmelter_etool/index.htmlで利用できる。