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職場の解決策
長時間の残業は筋骨格系障害を引き起こす可能性がある

Too Much Overtime May Lead To Musculoskeletal Disorders

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety + Health」2003年4月号 P.57
(仮訳 国際安全衛生センター)


質問:残業は筋骨格系障害を引き起こすことがあると聞きました。従業員に残業を奨める場合、事業者はどんなことに注意すべきでしょうか。

今月の回答者は、Clayton Group Services社(サンフランシスコ)の労働安全衛生担当管理者Chris Arteberry氏です。

回答:残業を推奨または強制する事業者は、残業が従業員の健康に悪影響を及ぼす可能性がある点に注意する必要があります。ここ十年間に発表されたいくつもの調査が(Bongers 1993、NIOSHおよび疾病対策予防センター(CDC) 1997、米国学術研究会議(NRC), 2001)、幅広い証拠を提示して、仕事上の精神的ストレスと筋骨格系障害の診断・報告との間に関連があると指摘しています。
 これらの調査は、仕事に関連するストレス、および腰と上肢の筋骨格系障害を対象とした100以上の研究結果を要約したものです。仕事に関連するストレスの要因として挙がっているのは、労働負荷の増大、時間に追われること、そして仕事の要求度が高いことですが、すぐにわかるとおり、これらの要因はいずれも残業とかなり関係があると言えます。
 事業者は、それぞれ社内の傷病記録を利用して、残業と筋骨格系障害との関係、および残業の導入または存続のコストとプラス面を見極める必要があります。
 残業を減らすことができない場合、事業者は、従業員に残業を受け入れてもらえるかどうかに影響する問題にいくつか取り組み、こうした問題を考慮しながら残業計画を練るべきです。イーストマン・コダック(Eastman Kodak)社の「働く人のためのエルゴノミクス計画第2巻(Ergonomic Design for People at Work, Vol.2)」では、以下に示すように、この種の問題の多くが取り上げられています。
  • 残業が続く期間
  • 残業の頻度または回数
  • 労働者の経済的ニーズ
  • 目的の仕事を達成するためのほかの(残業以外の)選択肢の検討
  • 季節(人によっては夏の残業を嫌うことがある)
  • 報酬の支払い(出来高払いか時間給か)
  • 残業によって遂行すべき業務に何らかの緊急性が認められるか
  • 当該業務の知覚的または精神的負荷
  • 当該業務の肉体的負荷
 イーストマン・コダック社の文書では、残業による生産性への影響についても強調しています。労働者の生産量を増やす目的で残業を導入する場合、とりわけ製造業においては、残業と生産性との関係に注意しなければなりません。
  • 人々が8時間を超えて仕事の能率を(肉体的、知覚的、および/または精神的な面で)維持することが困難な場合には、労働時間を10〜12時間に延長することは避ける必要がある。
  • 交替制の場合には、労働時間を2〜4時間延ばしても、生産性が25〜50パーセント改善することはまずない。生産性は通常、期待された値から5〜10パーセント低下する。
  • 残業の連続は奨められない。残業期間が3か月を超えると、労働時間に対して生産性はさらに落ち込む可能性がある。
  • 製造業やサービス業など、希望者が残業を引き受けることが多い分野では、一般に何人かでローテーションを組んで残業をこなすことが望ましい。
  • 長期間の残業または残業の連続が避けられない場合には、別の交替制が可能かどうか検討すべきである。
 残業による悪影響をできるだけ抑えた計画を作成するとなると、事業者は従業員の残業の動機についても考慮する必要があります。1997年にコーネル大学の職場調査研究所(Institute of Workplace Studies)は、週平均6.63時間残業している労働組合加入の時間給労働者4,278人を対象に調査を行いました。
 監督者からの圧力と労働損失および傷害の増加との間には関連があると考えられるにもかかわらず、調査の全回答者のうち3分の2が、監督者からの圧力はまったくなかったと答えています。また、監督者からの圧力がなかったと答えた従業員のうち46パーセントはもっと残業を増やしたいと考えており、36パーセントは現在の残業時間に満足していました。
 ほとんどの従業員は、残業をする理由として、家計の苦しさと失業の不安を挙げています。このデータが示唆しているのは、残業を強いるプレッシャーのかなりの部分は従業員自身に由来しているということです。