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NSC発行「Safety + Health」2003年6月号

産業特集

 製造業 

金工業資材業者、環境・衛生対策に取り組む


ニュージャージー州リトル・フォールズ − ニュージャージー州リトル・フォールズ市を拠点とする市場調査会社、クライン&カンパニー社が先日発表した調査によると、北米の金工業用液体を取り扱う資材業者は、法規改正を先取りして、安全衛生、環境問題に注力している。
 労働安全衛生庁(OSHA)、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、全米自動車労組(UAW)その他の団体からの圧力を受けて、企業各社は、NIOSHが勧告する金工業用液体エアゾールの暴露許容限界を満たすよう、大規模な対策を講じている。
 金工業用液体業者の一番の関心の的は、ミストのレベルを減少させた製品である。金工業企業は、輸送機器、組み立て金属製品、機械産業に属するものも含めて、鉱油を使わず、濃度を希釈してミストのレベルを下げた高付加価値の合成品に益々注目している。
 金工業用液体による衛生・環境への影響を改善するもうひとつの方法は、植物性油や合成エステルを原料にした製法にありそうである。今回の調査によれば、こうして作られる製品からの空中浮遊ミストは、石油系ミストが引き起こすような健康問題を生じず、また植物性油は、実際のところ、鉱油より潤滑性に優れている。



 鉱業 

黒肺病続出で、炭じん規則空振り − NIOSH発表


ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の新しい調査によると、炭鉱労働者の保護を目的として、30年前から炭じん暴露限界規則があるにもかかわらず、黒肺病(black lung disease)は、依然として発症している。
 調査は、露天鉱夫間の黒肺病は、地下鉱夫間の黒肺病に比べてさほど少ないわけではないことを示している。また、罹病率は、小規模の鉱山労働者の方が高いと報告している。
 調査チームによると、30年来の炭じん暴露限界がなぜ鉱山労働者を保護していないのか、理由を明らかにするためには、さらに調査する必要がある。
 黒肺病は、高水準の炭じんへの暴露が原因である。これにより、毎年約千人が死亡している。

事実チェック
労災補償給付金額の首位は、自動車事故
 フロリダ州ボカラトンの全米賠償保険協議会によると、1999〜2000年(資料のある最新年間)の支払い請求1件当たりの労働者災害補償給付金額は、自動車衝突事故が最高額であった。支払い請求額の平均は、12,055ドルである。
労災補償給付高額事例トップ5
交通事故 21,887ドル
蓄積外傷 15,301ドル
墜落・転落、転倒 13,829ドル
激突され 12,359ドル
はさまれ、巻き込まれ 12,058ドル

出所:全米安全評議会、「Injury Facts」2002年



 サービス業 

調査報告。医療労働者はラテックス過敏症ではない


デンバー − ミルウォーキー市のウィスコンシン医科大学小児科・内科助教授のアスリアニ・チウ医学博士による調査では、医療労働者のラテックスに対するアレルギー反応は低水準である。
 3ヶ所の大規模復員軍人医療センターで実施した調査によると、実際にラテックス・アレルギーであったのは、労働者のわずか0.6%に過ぎなかった。事務ないし介護に携わる労働者の90%以上は、ラテックスへの過敏反応を示さなかった。
 しかし、調査を実施した病院では、もっぱら無粉または減粉ラテックスの手袋を使用していたとチウ助教授は指摘する。以前の調査では、粉加工手袋と高率のラテックス過敏症との間に関連性がみられた。
 調査には、1999年11月から2001年4月までの間、約2,000名が参加した。協力を得た医療機関は、ウィスコンシン州マディソン市の復員軍人医療センター、シカゴ市のレイクサイド復員軍人医療センター、ミルウォーキー復員軍人医療センターである。
 調査は、国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、アトランタ市の疾病対策予防センター(CDC)、メリーランド州べセズダの国立衛生研究所(NIH)、復員軍人省からの資金協力を受けたものである。

OSHA、ハンド・クリーナーより手洗いを奨励

ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、最近の解釈書簡で、血液や感染の恐れのあるものに触れた場合は、事業者は、ハンドクレンザー(手用洗浄剤)を使用させるのではなく、労働者に石鹸と流水で手洗いをさせなければならないと述べている。
 書簡は、ワシントン市のアメリカ医療協会からの1月3日付の質問に答えたものである。同協会は、アルコールを主成分とするペーパータオルは「医療現場での手の除染に有効な手段」と考えられるかと質問した。
 リチャード・フェアファックス監督プログラム局長が作成したOSHAの回答には、「手は、適切な石鹸と流水で洗わねばならない」とある。
 書簡はまた、感染源または血液に暴露する現場で洗面所が利用できない労働者は、ハンドクレンザーまたはペーパータオルを用いてもよい、と付け加える。しかし、暴露した労働者は、「出来るだけ早く」石鹸と流水で洗わなければならない。
 書簡によれば、血液や感染の恐れのあるものに業務上暴露していない場合は、殺菌ハンドクレンザーの使用は適切である。

旅客機客室乗務員、SARS対策を要求

ワシントン − 旅客機客室乗務員協会、米国労働総同盟産業別労働組合会議(AFL-CIO)は、連邦航空局(FAA)航空医宛てに、重症急性呼吸器症候群(SARS)に罹病しないよう、旅客機客室乗務員を保護するために、当局から緊急指令を発令するよう要請する書簡を送った。
書簡は、「『微量の接触』でも、病気を蔓延させるとの証拠がある」と述べている。また、「病気は、急速に拡がっており、標準的な規則作成経路を活用している時間がない」とも主張している。
 同協会の書簡はまた、連邦航空局に以下を要請している。
  • 「危険地域から/へ発着する、または危険地域内のフライト」の乗務員に対し、アトランタ市の疾病対策予防センター(CDC)またはジュネーブ市の世界保健機関(WHO)が承認した非ラテクッス系手袋とマスクを支給するよう、航空会社に義務付ける。
  • マスクや手袋を着用しない乗務員を懲罰しない。
  • 航空会社に「徹底した、定期的な手洗いや、ひとの顔に触れないことの重要性を乗務員に伝達する」よう義務付ける。
  • 「WHO、CDCや国の衛生当局が勧告するとおり、乗客の適格審査基準を開発、実行、実施するよう」航空会社に義務付ける。
  • 「飛行中、乗客に症状が出た場合について、乗務員に適切なガイダンスを提供するよう」航空会社に義務付ける。

 運輸 

OSHA造船産業向けエルゴ・ガイドライン、開発予定

ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、これから開発する自主的エルゴノミクス・ガイドラインの対象産業リストに、造船産業を追加する。
 当局は、4月1日、向こう数ヶ月間で、造船産業の代表と共にガイドライン案を開発すると発表した。
 OSHAは、職場でのエルゴノミクス傷害の減少に向けた4叉計画を発表してからほぼ1年後の3月13日、初の自主的ガイドラインを介護産業向けに発表した。4叉計画は、監督、アウトリーチ、先駆的調査、ヒスパニック系その他の移民労働者の保護への尽力を主眼としている。
 労働統計局のデータによると、2001年度の造船産業の傷病率は17.2%、民間部門全体では5.7%である。2001年度の造船産業の休業災害の3分1は、筋骨格系障害であった。
 ジョン・ヘンショーOSHA長官は、米国造船協会、米国造船業者協議会を含む経営者代表や、国際ボイラー製造労働者組合、鋼鉄造船労働者組合、鍛冶工、鍛冶工・助手、国際電気労働者組合といった労働団体が、ガイドラインへの取り組みに関心を示したと語った。

貨物用タンク新規則

ワシントン − 運輸省調査特別プログラム庁は、貨物用タンクの建造・維持規則の多数箇所の改訂を採択した。
 4月18日付のフェデラル・レジスター(官報)に発表された最終規則はまた、全米運輸安全委員会の勧告3件や、規則作成に対する請願書数件にも触れている。運輸省によると、今回の改訂で、有害物質の輸送用タンクの安全性は強化され、タンクの設計や建造がより柔軟になり、タンク車両の所有者、運転手や製造業者の操縦負担が軽減される。
 最終規則は、10月1日に発効する。討議内容も含む改訂版全文は、http://hazmat.dot.gov/rules/68fr-19257.htmで閲覧可。

ディーゼル技術フォーラム、EPAのオフ・ロード提案に対応

ワシントン − 環境保護庁(EPA)が新しく提案したオフロード車両(未舗装道路や荒れ地を走る、公道以外を走るための車両)の排ガス基準に呼応して、ディーゼル技術フォーラムは、先日、オフロード用ディーゼル車白書を発行した。
 EPAによると、新提案は、「エンジン制御と硫黄燃料の削減を、最大の排出削減を得るためのシステムとして扱うことで、オフロード用ディーゼルエンジンの排出削減をめざす総合的な国家プログラムである」。
 提案されている基準は、産業用、農業用、建設用車両のほとんどの種類に使用されているディ−ゼルエンジンに適用される。排出制御装置は硫黄で損耗することもあるため、EPAは、オフロード・ディーゼル燃料中の硫黄含有許容率を99%以上削減することも提案している。
 ディーゼル技術フォーラムのアレン・シェーファー常務理事は、EPAの提案は、「技術面、商業面で重大な課題を提示する可能性がある」と声明文で述べている。
 シェーファー氏はまた、「大気を保全し、かつ国家経済の原動力を務めてきたディーゼルエンジンの性能と耐久性を引き続き確保する最終規則の開発に向け、EPAと協力すること」を、同フォーラムは期待していると付け加えた。
 白書の要約を閲覧するには、www.dieselforum.org/whitepaper/nonroadsumm.htm.にアクセスされたい。

運輸
労働時間規則(Hours-of Service Rules)、トラック運転手の疲労に対処
 連邦自動車運輸安全局(Federal Motor Carrier Safety Administration : FMCSA)は、幹線道路の安全性の改善と、トラック運転手の疲労に起因するトラック衝突事故や死傷災害の減少をめざして、労働時間規則の1939年以来初の実質的な改正を発表した。
 新規則の主要項目には、以下が含まれる。
  • 運転時間を10時間から11時間に延長する。
  • 当番時間を15時間から14時間に短縮する。
  • 非番時間を8時間から10時間に延長する。
  • 34時間再開条項を除き、現行の週7日60時間、週8日70時間規則は変更しない
 新しい労働時間規則は、「科学的根拠に基づくのみならず、人命救済や操業面でも実際的な道理にかない、今以上に施行が複雑になることもなく、よりよく安全性を保証する」と、自動車運輸安全局のアネット・M・サンドバーグ長官代行は述べた。
数年間、当局は、この規則改正を検討してきたが、最終規則はどうあるべきかをめぐる利害関係者間の対立が、進捗を遅らせた。例えば当局は、規則作成案を通知してから、5万3千件以上もの書面で寄せられたコメントを検討した。この多数の反応で、最終規則の発表は遅れた。(「自動車輸送をめぐる目下の関心事」35ページ参照。)
だから、最終規則に喜ぶものがいれば、怒るものもいるのは、特段驚くことではない。

産業界は、なんとか耐えられる
 米国トラック協会(American Trucking Association)および商業用乗物安全同盟(Commercial Vehicle Safety Alliance)によると、新規則は、理解しやすく、遵守しやすく、実施しやすいものにすべき、という主とした両団体のコメントや見解が織り込まれている。
 その結果、バージニア州アレキサンドリア市の米国トラック協会は、新しい労働時間規則は常識と確かな科学との賢明な組み合わせであるとして、これを支持すると述べた。
 「この規則だと、協会の会員は対処できる」と米国トラック協会のビル・グレーブズ会長は言う。
 ワシントン市の商業用乗物安全同盟も、新規則の施行は、政府当局やトラック運送業者への大きな負担にはならないと、同規則に満足している。

批判、噴出
 しかし、ここ数ヶ月間、規則改正を運輸省に迫ってきた安全団体は、今回の改正は、運転手の疲労問題に十分取り組むものではないと言う。運転時間を規制する今回の規則改正では、運転手の疲労問題を取り扱うには不充分であると、ワシントン市の幹線道路・自動車安全擁護団体(Highway and Auto Safety)のジュディ・ストーン会長は述べた。「運輸産業を除いて、今回の改正に満足している人など知らない」とストーン会長。
 米国最大のトラック運転手組合であるワシントン市のチームスターズ(Teamsters : 全米トラック運転手組合)は、新規則は、運転手の疲労を和らげるところか、増大させると主張し、憤りを隠さない。「新規則は、組合員に害だ。助けにはならない」と、同組合。組合は、運輸省に反対すると概略したコメントを提出した。
 ミズーリ州グレインバリー市にある個人営業運転手協会(Owner-Operator Independent Drivers Association)は、新規則は、運転手の疲労には「極小の影響しか及ぼさない」と主張する。「トラック運転手が、非現実的な配達期日に会わせるよう、常にせかされることがなくなるまで、また週33 〜44時間も補償なしの労働を強いられなくなるまで、疲労問題が著しく軽減されることはない」と同協会。
 連邦当局は、2004年1月4日に発効する新規則で、年間75名の人命が救われ、疲労に起因する衝突事故1、326件を防止すると見積もる。2002年には、推定4,902件のトラック関連の衝突死亡事故が発生した。
 自動運搬車安全庁は、労働時間の記録保持や法の遵守を徹底するための車内搭載型電子記録装置その他の技術に関する研究を拡大するとも述べた。このような記録装置の義務付け(異論の多い話題である)については、今回の規則作成の過程で検討されたが、結局、当局は反対の立場をとることにした。安全擁護団体は、記録装置は即刻実施できると確信している。
 規則全文を閲覧するには、www.dms.dot.govを開き、書類番号FMCSA-97-2350を検索するとよい。


公益事業

全米安全評議会、奨学金を提供


イリノイ州アイタスカ − 全米安全評議会(NSC)は先日、安全、産業衛生を専攻する大学生を対象とした、新しい奨学金1千ドルプログラムを発表した。NSCの公益事業部が提供するビル・D・ヤング奨学金は、2001年に死去した電気通信安全理事で、長年、NSCのボランティアを務めた故人を称えるものである。
奨学金は、安全または産業衛生の学位を求め、卒業後は安全衛生分野へと進路を取る大学生に提供される。奨学金は、安全衛生関連の実務経験、活動、顕彰、経済的必要性や特殊な境遇など、候補者から提出される情報に基づき、与えられる。資料、申込用紙は、NSCのウェブサイト、www.nsc.orgで入手可。締め切りは、6月16日である。

大気浄化法関連で、最大規模の和解


ワシントン − 司法省と環境保護局(EPA)は、大気浄化法の施行に関連して、公益企業との間で成立した空前の規模の和解をこの度発表した。バージニア電力(株)は、今日から2013年までに12億ドルをかけて、バージニア州とウェストバージニア州にある8基の石炭熱発電所からの二酸化硫黄と窒素酸化物の排出を毎年237,000トン削減することに同意した。
当局によると、バージニア電力(株)は、発電所を大きく改造した際、義務付けられている汚染制御装置を設置しなかったとして、大気浄化法違反で告訴されていたが、和解でこれを解決した。
バージニア電力は、大規模な排出削減に加えて、530万ドルの罰金を支払う旨、また、今回の訴訟と和解に参加した5州各州で、過去の排出による影響を埋め合わせるプロジェクトに対し、最低1,390万ドルを拠出する旨合意した。
和解内容はまた、バージニア電力に対し、系列の発電所数基に新しい汚染制御装置を設置し、既存の制御装置を高性能のものに取り替えるよう、義務付けている。
和解は、バージニア州の発電所6基、ウェストバージニア州2基の、計8基のバージニア電力の発電所の発電施設20基を対象にしている。

同盟、ゼロ排出に近い発電を支持

オハイオ州コロンバス − 全米最大手の電力会社、石炭企業9社は、ブッシュ大統領のフューチャージェン(未来型発電)イニシアチブを支持するため、同盟を結成すると発表した。イニシアチブは、ゼロ排出に近い型の発電所や二酸化炭素の管理を一体化した水素製造工場の創設をめざすものである。
産業界の努力は、ゼロ排出に近い石炭熱発電所について展望を述べたブッシュ大統領の2月の声明に呼応したものである。「未来型発電」と名づけられたこの設計の発電所は、家庭用、産業用の電力を生産し、燃料電池式交通システムの動力源となる水素も製造する。この実現に向け、ブッシュ大統領は、10年間に及ぶ官民協定を確約した。
同盟の作業委員会には、アメリカン・エレクトリック・パワー、CONSOLエナジー(株)、リオ・ティント・グループ傘下のケネコット・エナジー、ノース・アメリカン・コール(株)、スコッティッシュ・パワーの子会社、パシフィコープ、ピーボディ・エナジー、RAGアメリカン・コール・ホールディング(株)、サザーン(株)、TXUといった企業が含まれている。