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NSC発行「Safety + Health」2003年6月号
ニュース
組合、幹部会、新しい個人用保護具規則の推進をチャオ労働長官に要請
ワシントン − 国際食品商業労働者組合連合によると、もし労働安全衛生庁(OSHA)が、従業員の個人用保護具の費用負担を事業者に義務付ける連邦規則を推し進めない限り、アメリカの労働者を危険にさらし続けるであろう。同組合は、議会ヒスパニック系幹部会やその他複数の組合とともに、4月10日、60日間以内にこの問題への措置を講ずるよう、エレイン・チャオ労働長官に請願した。
個人用保護具規則は、クリントン政権時に提案されたが、ブッシュ政権下で失速。OSHAの最新の規制計画表には、次の行動を規定しないまま、「長期対策」として掲載されている。
国際食品商業労組連合は、OSHAが規則を公布しないためにもっとも打撃を受けたのは、精肉業、鳥肉工場の従業員であり、とくに移民やヒスパニック系労働者であると主張する。
「こうした産業の労働者の大半は、事実上唯一の保護対策として、個人用保護具を頼みとしている。労働者は、このような基本的な保護を自己負担すべきではない」と、国際食品商業労組連合のジャッキー・ノウェル労働安全衛生部長はいう。
請願書はまた、こうした危険の多い産業の労働者の大半は、安全保護具の費用負担を拒絶する事業者の前ではかなり弱い立場にあり、それというのも事業者は、こうした労働者が苦情を言うことはあまりないことを知っているからであると指摘し、労働者は、負担もままならないため、使い古した保護具を取り替えないこともしばしばであると指摘する。
個人用保護具規則は、OSHAの義務付ける個人用保護具については、安全靴、医師の処方によるアイウェア(めがね、コンタクトレンズ等)、伐採搬出用ブーツを除く全てについて、事業者負担を義務付けるものである。
本誌印刷開始時点で、労働省のスポークスパーソンは、請願書を検討中であり、回答も用意すると述べた。
事実チェック |
1億3千万日。2001年度の労働不能を伴う負傷による損失日数である。同年度の負傷による損失日数は含まれているが、追加治療に費やされた時間は含まれていない。 |
1億3千万日とは、つまりどういうことだろうか? |
365,164年間。 |
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4,452人分の80歳の寿命。または、マサチューセッツ州ハドリー市の人口にほぼ匹敵する。 |
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160万回の80日間世界旅行。 |
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26億個の3分間ゆで卵をゆでることができる。 |
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1,016ドル。一日あたりの賃金・生産性コスト、または1,321億ドル。 |
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資料出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2002年
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会計検査院、連邦政府職員間の情報伝達の改善を勧告
ワシントン − 会計検査院(GAO)の新しい報告書によると、連邦政府は、職場の危険有害物質をめぐる職員間の情報伝達に関し、よりよいガイドラインを開発すべきである。
報告書は、郵政公社、労働安全衛生庁(OSHA)、総務庁や全米対策チーム(16の政府機関から成る)に対し、「なかんずく、出てきた検査結果を迅速に職員に伝達することを義務付けるよう、現行のガイドラインや規則を」改正するよう勧告している。
報告書は、コネチカット州ウォリングフォード市にある郵政公社の施設での炭疽菌汚染への公社の対応を調査した際の産物である。この施設では、2001年12月の検査で炭疽菌汚染の陽性反応が出たが、この検査結果はすぐに公表されなかった。検査結果を公表しないとの決定は、「公社のガイドラインに整合するものであった、というのも公社によれば、検査結果を検証できなかったからである」と報告書は述べる。郵政公社のガイダンスには、検査結果は、疾病対策予防センターもしくは州公衆衛生試験所の確認が取れない限り、公表してはならないとある。しかし、公社は、従業員の要請があれば、検査結果を公開せねばならないとする労働安全衛生法に違反した。公社職員組合は、2002年1月および2月に、検査結果を要求した。郵政公社が検査結果の全容を公表したのは、2002年9月、OSHAの調査の後であった。
その結果、現行の連邦ガイドラインは、「信頼と信用の維持ならびに衛生問題に関し、十分な説明を受けた上での職員の意思決定に不可欠な情報の確保」に必要な「完全かつ時宜を得た情報を職員に」伝達し損ねたと報告書は結論する。
現行の連邦政府情報伝達ガイドライン(federal comminucation guidelines)には、2002年に総務庁や全米対策チームが開発したものがあるが、報告書によれば、これらは「あまりにも一般的」で、職員への情報伝達を改善するには程遠いとしている。
化学施設の安全保障で、二党に不協和音
ワシントン − 米国の化学工場の安全保障の最善策をめぐり、上院で論戦が過熱している。専門家は、化学工場は、大規模なテロ攻撃の対象となりやすいと警告し、環境保護局(EPA)は、百万人を超える被害者が予想される化学工場は、米国内に125施設ほどあると報告している。
ジョン・コーザイン上院議員(民主党、ニュージャージー州)は、非常に多くの化学工場を抱える州の出身で、この1月、化学安全保障法案を再提出した。これは、化学工場に対し、脆弱性(攻撃され易さ)評価や、安全保障および技術面での対応計画の提出を義務付け、国土安全保障省に対しては、こうした化学施設の安全保障を最低限確保するための強力な強制力を付与しようとするものである。コーザイン議員の法案は、2002年、満場一致で上院環境公共事業委員会を通過した。
ブッシュ政権はしかし、より自主的なアプローチを好む。環境公共事業委員会の委員長を務めるジェームズ・インホフ上院議員(共和党、オクラホマ州)は、工場経営者に工場の脆弱性を評価させ、問題解決のための計画を立てさせる法規を、国土安全保障省に公布させたい。インホフ議員がこの4月末に回覧した共和党の化学施設安全保障法案では、企業は、脆弱性評価を政府へ提出する義務はない。同法では、最高25万ドルの民事罰を設定する。
化学施設を代表するバージニア州アーリントン市の全米化学協議会は、自主的アプローチに向けて陳情運動を展開した。昨秋、環境保護局(EPA)は、国土安全保障戦略計画を公表、現政権がこの問題についてどちらを指向しているのか、その一端を見せた。戦略計画によると、当局は、1990年の大気浄化法で付与された権限に基づき、化学施設をめぐる新規則を指向するのではないもよう。共和党は、化学施設を国土安全保障省の所管に置くことを望み、民主党は、EPAに強力な役割を与えたい。
コーザイン議員は、4月25日、ブッシュ政権は、米国の安全より化学産業の利益を重視していると非難した。共和党の計画は「安全保障の幻影を見せるかもしれないが、所詮は臭いものにふたで、化学工場はテロの格好の標的とされるであろう」とコーザイン議員。
ジョージ・スウォーツ氏(1938〜2003年)を悼む
全米安全評議会(NSC)理事会の元理事で、その職業人生を一貫して著作、講演にいそしみ、安全リーダーとして尊敬されてきたジョージ・スウォーツ氏(64歳)が、5月7日死去した。
スウォーツ氏は、ペンシルバニア州アリクィッパ市の出身で、シカゴ市のマイダス・インターナショナル社の安全部長を23年間務めた。氏は、1992〜2002年の間、NSCの理事を務め、NSCの年次会議では安全問題で活発に発言した。
米国安全技術者協会の特別会員でもあったスウォーツ氏は、安全殊勲賞を受賞、2002年10月には、安全衛生殿堂入りした。
遺族は、妻フィリスさんと娘のローラ・クライハさん、息子のエリック・スウォーツさん、それに二人の孫と4人の姉妹。生花の代わりに、弔電は、白血病リンパ腫協会(P.O.Box 9031, Pittsfield, MA, 01202-9031)まで。
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全米安全評議会(NSC)創立90周年:シカゴの我が家 |

NSCの最初の事務所、シカゴ市中心部のコンチネンタル・アンド・コマーシャル・バンク・ビルディング |

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全米安全評議会(NSC)は、創立時には市の中心部、現在は郊外へと移ったものの、いつだってシカゴ地域を拠点としている。
1913年10月13日、正式な創立から1ヵ月にもならない頃、NSCは、シカゴ市中心部のコンチネンタル・アンド・コマーシャル・ナショナル・バンク・ビルディングに事務所を開設した。この選択は、初代会長ロバート・キャンベルに拠るところが大きいかもしれない。キャンベル会長の勤務していたイリノイ・スチール(株)本社が、同じビルに入居していたからである。
そうだとしても、シカゴ市とNSCの結びつきは、適切だった。当時、シカゴ・デイリー・トリビューン紙は、「全米安全評議会の本部は、シカゴ市に設置するのが適切である。いまや全米規模となった『安全第一』運動の初期の最重要な活動のいくつかは、この地で展開されたからである]と、読者に書いている。
NSCは、1919年までの間、コンチネンタル・アンド・コマーシャル・ナショナル・バンク・ビルディングで、草分け的な活動を行った。ここを初めとして、NSCは、シカゴ市中心部の数ヶ所を転々とした。なかには、シカゴ市のスカイラインから外れた事務所もあった。
NSCの市内での最後の拠点は、ミシガン通り北444番地である。このビルは、そのファサード(前面部)が、シカゴ市の心理学者を主人公とする1970年代のテレビのコメディ番組に出てきたため、「ボブ・ニューハート・ビルディング」としても知られている。
1992年には、NSCは、市の中心部から郊外へと飛び出し、市の西方、アイタスカに居を構えた。現在の本部は、NSCが初めて所有するビルである。 |
安全のリーダーであるNSCの創立90周年を記念して、本誌は、1年間を通じ、NSCの遺産のなかでも重要なものを紹介する。
毎月号の90周年記念の囲み記事で紹介する、NSCの安全第一の取り組みにまつわる話題に期待されたい。 |
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海軍施設工事司令部、死亡災害ゼロ |
ワシントン − 海軍施設工事司令部(NAVFAC)は、請負人から一人の死者を出すこともなく2002年度の幕を下ろし、安全の里程標を祝った。達成期間は、世界各地の建設契約の4,200万延労働時間、32億ドル分に相当する。
NAVFAC司令官のマイケル・R・ジョンソン少将は、ゼロ災達成は、文官、武官、請負人のチームワークの所産であると述べた。NAVFACは、世界各地の米海軍沿岸施設の企画、設計、建設を管理、13,500人の労働者を雇い、海軍、海兵隊連合戦闘部隊を支援する。ジョンソン少将によると、司令部の業務の88%は、民間部門に発注されている。
「請負人の死亡災害ゼロの達成は、まったく驚異的である。祝賀するにふさわしい偉業である」と、コニー・デウィット海軍省安全担当次官補は述べた。
「われわれは、世界でも最高のパートナーを仕事仲間に得ようと最善を尽くしている。というのも、いつの日か、パートナーが、納税者に向け、われわれの顔を映すからである。パートナーが、われわれを代表するのである」とジョンソン少将。
「現場の〔元方請負人〕、〔下請け請負人〕、供給業者が安全に焦点を合わせなかったら、われわれがどうしたところで、かれらのやり方に影響力を行使することはできないだろう」とも付け加えた。
ジョンソン少将は、建設現場での死亡災害ゼロが達成しにくいものであることを、4月中旬までの2003会計年度ですでに死亡災害が1件発生したことを引いて、説明した。「われわれは、こうした数字をできるだけ低く抑えなければならない」とジョンソン少将。
全米安全評議会(NSC)運輸安全グループのチャック・ハーリー副会長は、4月18日、ワシントン海軍工廠で、NAVFACに対し、NSCの優秀賞を授与した。
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OSHA、基準公聴会を7月に設定
ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、基準改善プロジェクト(the Standards
Improvement Project)第2段階に関する同庁の規則案を協議するため、7月8日および9日、ワシントンで非公式の公聴会を開催する。OSHAは、昨10月、規則案の改正についてコメントを提出した関係者らの要請に応じて、公聴会を設定した。
OSHAによると、基準改善プロジェクトは、一般産業、海事産業、建設業関連の23の衛生基準のなかの、矛盾または重複した、あるいは時代遅れの40条項を対象としている。OSHAはまず、1998年に、安全衛生基準の本質的な改正をいくつか済ませた。
EPA、産業廃棄物に関する優良事例ガイドを発表
ワシントン − 環境保護局(EPA)の新しい産業廃棄物管理ガイド(A new industrial
waste management guide)は、「施設管理者が、環境責任のある意思決定を下すのを手伝うための」勧告を提供するものであると当局はいう。
EPAによると、新ガイドは、全米各地で推計76億トンの産業廃棄物を産出、管理する6万以上の産業施設を網羅、あらゆる非有害産業廃棄物について最優良事例を特定した。
この自主的なガイドは、「効果的な情報交換と公害予防を奨励し、例えば産業廃棄物管理設備の敷地割り、設計、運営、監視、是正措置、閉鎖といった廃棄物管理に関する諸問題について有益な情報を提供する」。
ガイドは、オンラインwww.epa.gov/epaoswer/non-hw/industd/index.htmで閲覧できる。
NIOSHの呼吸用保護具データ表は事業者用のガイドを補佐する
ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)のデータ表は、テロ対策向けに呼吸用保護具を購入する際の参考資料と宣伝されているが、職場のニーズに対応する呼吸用保護具を選ぶのにも活用できる。
データ表は、呼吸用保護具とはなにか、どう機能するのか、市場に出回るさまざまな型の呼吸用保護具の長所、短所を日常的なことばで説明する。データ表は、オンラインwww.cdc.gov/niosh/npptl/npptlrespfact.htmで閲覧可。
労災費用が増加労災費用が増加 − リバティ・ミューチュアル調査チュアル調査 |
シカゴ − 労働不能を伴う業務上の傷病費用は、1998〜2000年間の上昇を上回る速さで暴騰し、一方、労働者災害補償支払い請求の直接費用は、比較的少数の負傷事例に集中している。これは、リバティ・ミューチュアル社の最新の労働安全指数から導き出された結論である。
労働安全指数によると、労働不能を伴う業務上の負傷による労災支払い請求の直接費用は、1998〜2000年の間に8.3%、インフレ分を修正しても2.5%増加した。これで、労災支払い請求の直接費用は、425億ドルと推計。同期間中の労働不能を伴う業務上の負傷の頻度は、1%強低下した。
同時に、負傷の三大原因(過労、同一平面での転倒、及び動作の反動)は、2000年度の支払い請求の直接費用の51%に相当する。これは、1998年の46%から増加した。労働安全指数によれば、三大負傷原因はどれも全て、物価上昇率より「実質的に大きな」割合で増えている。
また、労働安全指数によると、労災補償支払い請求のうちのわずか数パーセントが、直接費用の大半を占める。2000年度には、労働不能を伴う労働災害は、労災補償支払い請求の18%に過ぎないが、直接費用の93%を占めている。
リバティ・ミューチュアル社によると、この所見は、業務上の負傷が財政面に与える影響の総体を強調するものである。労働安全指数によると、直接費用の425億ドルは、業務関連負傷の総費用のごく一部に過ぎない。以前の調査に基づいた推計によると、直接費用1ドルあたり、3〜5ドルの間接費用が生じる。間接費用は、残業時間や生産性の損失を含む。
この公式を用いて、リバティ・ミューチュアル社のブライアン・メラス商業保険担当上級副社長は、2000年度の労働不能を伴う業務関連負傷の直接費用は、1,270〜2,120億ドルの間接費用を生み出したと見積もる。これにより、この種の負傷が財政面にもたらす影響力は、全部で1,700〜2,550億ドルとなる。
メラス副社長は、労働不能を伴う負傷の直接費用は、規制の変化、医療機関の受診増、先端医療の標準化により、増えたのだろうと推測する。
リバティ・ミューチュアル社は、大手労災補償保険会社である。安全調査研究所が、リバティ・ミューチュアル社や労働統計局、全米社会保険アカデミーのデータに基づいて労働安全指数を作成したのは、これで3年目である。
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業務上の負傷の主要原因と直接費用(2000年度)
労働不能を伴う業務上の負傷原因上位10位は、直接費用総額425億ドルの89%を占める。 |
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出 所:リバティ・ミューチュアル社、2003年 |
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