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NSC発行「Safety + Health」2003年6月号

ニュース

化学施設の安全保障で、二党に不協和音

ワシントン − 米国の化学工場の安全保障の最善策をめぐり、上院で論戦が過熱している。専門家は、化学工場は、大規模なテロ攻撃の対象となりやすいと警告し、環境保護局(EPA)は、百万人を超える被害者が予想される化学工場は、米国内に125施設ほどあると報告している。
 ジョン・コーザイン上院議員(民主党、ニュージャージー州)は、非常に多くの化学工場を抱える州の出身で、この1月、化学安全保障法案を再提出した。これは、化学工場に対し、脆弱性(攻撃され易さ)評価や、安全保障および技術面での対応計画の提出を義務付け、国土安全保障省に対しては、こうした化学施設の安全保障を最低限確保するための強力な強制力を付与しようとするものである。コーザイン議員の法案は、2002年、満場一致で上院環境公共事業委員会を通過した。
 ブッシュ政権はしかし、より自主的なアプローチを好む。環境公共事業委員会の委員長を務めるジェームズ・インホフ上院議員(共和党、オクラホマ州)は、工場経営者に工場の脆弱性を評価させ、問題解決のための計画を立てさせる法規を、国土安全保障省に公布させたい。インホフ議員がこの4月末に回覧した共和党の化学施設安全保障法案では、企業は、脆弱性評価を政府へ提出する義務はない。同法では、最高25万ドルの民事罰を設定する。
 化学施設を代表するバージニア州アーリントン市の全米化学協議会は、自主的アプローチに向けて陳情運動を展開した。昨秋、環境保護局(EPA)は、国土安全保障戦略計画を公表、現政権がこの問題についてどちらを指向しているのか、その一端を見せた。戦略計画によると、当局は、1990年の大気浄化法で付与された権限に基づき、化学施設をめぐる新規則を指向するのではないもよう。共和党は、化学施設を国土安全保障省の所管に置くことを望み、民主党は、EPAに強力な役割を与えたい。
 コーザイン議員は、4月25日、ブッシュ政権は、米国の安全より化学産業の利益を重視していると非難した。共和党の計画は「安全保障の幻影を見せるかもしれないが、所詮は臭いものにふたで、化学工場はテロの格好の標的とされるであろう」とコーザイン議員。