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安全の世界にもブランド

−なじみのロゴで労働者も進んで個人用保護具(PPE)着用−

資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2003年7月号p.30
(仮訳 国際安全衛生センター)



特集はやわかり

ブランド戦略は、全国的に知られた名前を安全製品につけることですが、これがPPEの最近のトレンドとなっています。
キーポイント
  • ブランドは、保護性能という観点からは同じであるPPEに、メーカーが付加価値を付ける助けになります。
  • ブランド名のライセンスを与えることは、主に保護眼鏡、安全靴、ヘルメットで行われています。
  • 労働者はブランド製品に意識が向くようになっていて、PPEを購入する際にも、よく知られたものを探し求めます。
  • 安全市場で自社製品をブランド名にしようということを始めている企業もいくつかあります。
詳細情報
  • 国際安全機器協会(International Safety Equipment Association)、http://www.isea.org


 最近、PPEを買いに行ったことがありますか?もしなければ、きっと驚くことでしょう。安全カタログをめくったり、移動靴店(shoe mobile)にたちよったり、製品担当者と話をしたりすると、Harley-Davidson や Timberlandといった名前のついたたくさんのPPEがあるのに気づくでしょう。スポーツチームのロゴがヘルメットに飾られている。オートバイや銃と同じ名前が、保護眼鏡についている。そして、一般の靴で最も人気のあるいくつかのブランドが安全靴でも入手可能なのです。

 なぜ、ブランド名が急増しているのでしょうか?ヴァージニア州アーリントンにある国際安全機器協会(International Safety Equipment Association)の会長であるDan Shipp氏は、「有名ブランドの企業が、保護具のマーケティングでちょっとでも優位にたとうと努力してライセンスを与えるのです。」と言います。

 ブランドは、PPEを買う人にとっては(労働者自身であろうと、安全部長であろうと、或いは会社の誰かほかの人であろうと)、他の会社のものでなくある会社の製品を買おうというインセンティブとなります。Shipp氏の説明では、「保護という観点ではPPEはその性能を保証する規格により規制されています。ヘルメットは米国規格協会(ANSI)規格を満足します。眼鏡もそうです。」

魅力的なヘルメット

 多くのメーカーがこの傾向に目を付けています。なぜなら、労働者は自分が認めている名前のついたPPEにお墨付きを与えることをメーカーが気づいたからです。

 Shipp氏は、「ブランドをつけることで、保護具は労働者にとって魅力的なもの、皆に見て貰うことを楽しむために身につけるものになります」と言っています。

 ブランド付けは、保護眼鏡、ヘルメット、及び靴で顕著です。これらは保護具の中では最も個人的なもので、また最も目に付くものです。少なくとも靴の場合は、労働者が自分で安全靴を買うことが多く、従って身につけるものの中でも意見が多いのです。

 「市場は、ブランドを意識するようになってきています。エンドユーザーは、全国的に知られているブランドの製品を探しているのです。」と、Florsheim社、 Converse社、 Everlast社の安全靴のライセンスをもつセントルイスの輸入会社Warson グループの社長Jim Maritz氏は言います。

 靴の場合は、それは即ち、労働者が既に街で履いているブランドということです。例えばConverse, Doc Martens, Timberland, Skechers, Florsheimといった名前です。ある中西部の靴販売業者が本誌に語ったところでは、「エンドユーザー、それも若い労働者の見地からすると安全靴は、明らかにブランド品にシフトしています。」とのことです。この傾向は、この会社では約6年前から強くなっていて、現在、移動靴店がまわるときには、一般的なものよりブランド品の靴を多くトラックに載せるということです。Maritz氏は、この傾向はもっと強くなると期待しているとのことです。

 「ブランド品の安全製品を身につけている労働者は、PPEを身につけることをより受け入れやすく、実際に身につけやすい」とメーカーは言います。そして内部関係者によると安全用具を身につける労働者は、安全部長の仕事をやりやすくしてくれるということです。なぜなら、安全部長が労働者に保護具をつけるよう説得する時間を節約できるからです。

 自分のブランドのライセンスを与えれば、そのメーカーのブランド名の認知度があがり、またそれが安全分野に伝わることができるようになります。

目立つ場所へファッションを

 Shipp氏によれば、保護眼鏡がそれまでの「ごつい」(Buddy Holly look)ものからファッション性を志向したものに変わっていったのは大体10年前からだということです。技術開発によって、サングラスで人気のあった包み込むような形(wrap-around)のスタイルを保護眼鏡に使うことができるようになりました。

 Shipp氏は「保護眼鏡はファッション品になります。皆がかけたいと思うようなもの、カッコよく見えるものです。」と言っています。

 そうなると、安全製品によく知られた名前で抱き合わせブランド(tie-in)をつけるというアイデアはすぐ出てきました。Shipp氏によれば、初期の頃はNFLなどのプロスポーツリーグとの抱き合わせブランドをつける努力がされていました。

 「すなわち、お気に入りフットボールチームのヘルメットのように見えるヘルメットを手に入れることができましたし、お気に入りのチームの色や、ツルにそのチームのロゴを入れた保護眼鏡も手に入れることができました。」(Shipp氏)

 今日ではプロフットボールチームだけではなく、野球やバスケットボール、そしてNASCAR(全米自動車競争協会)のドライバーのものさえ入手可能になりました。この傾向は、Harley-Davidson や Smith & Wessonなどの見覚えのある商標名も含まれるほど発展しました。

 ある内部関係者は、この分野で最も成功したライセンス物語として保護眼鏡のSmith & Wessonを挙げています。テネシー州メンフィスのOlympic Optical社の一部門であるSmith & Wesson Safety Product社が産業安全の市場に参入したのは1996年で、会社は既にSmith & Wessonの銃の名称を使っていた射撃スポーツ路線の補完になるだろうと考えたのです。

 しかし、会社が驚いたことには、その製品は非常に評判がよかったので、現在は会社の本業となっているとのことです(Olympic社の社長、Winston Wolfe氏)。

 Wolfe氏は、Smith & Wessonの名前と製品の取り合わせの面白さがその商品ラインの成功の一因となったと言っています。

 「Smith & Wesson保護眼鏡を最初に発表したとき、私達は何度も人々に製品を見せたものですが、いつもその人たちの顔に大きい微笑みが現れるということに気がつきました。ここに楽しみの要素があるのです。なぜか分かりませんがお客さんはいつも微笑むのです。皆さんがこれを身につけたいと思う理由の一つです。」

 もう一つの理由は法令の遵守です。「労働者に決まりを守らせることというのは私たちがいつも顧客から聞くテーマです。労働者が掛けたい、それが好きだというという眼鏡を買うこと、そうすると決まりを守るのです。顧客はブランドがこの努力を助けると言います。」とWolfe氏は言っています。

 しかしWolfe氏はまた、よく知られた名前を製品に付けるのは確かに重要なことですが、名前のためだけで売れているわけではなく、企業はやはりまずよい製品を選ぶと言っています。

 「3つの要素があります。ファッション、快適性、ブランドです。我々は全く新しい哲学で差別化しようとしています。名前はその哲学の一つです。」というのがWolfe氏の結論です。

ブランド名がどうあろうと

 「あまり注意をひいていないが、企業が自社のブランドを普及させようという努力もあります。例えばAear社、North Safety Product社、MSA社などです。」とShipp氏は語っています。

 メーカーは自分たちの企業名か製品をブランドにするよう努めています。なぜならよく知られた名前のライセンスを与えるのと同様に、製品の差別化になるからです。「ブランドは製品が単なる一般商品になってしまうのを防ぎます。労働者や安全部長は普通のヘルメットや保護眼鏡でなく、特定のブランドを探すのです。なぜならその企業のこと、その企業が象徴するもの、これまでのサービス実績などをよく知っていているからです。」(Shipp氏)

 テキサス州アービングに本拠を置くKimberly-Clark社は、3年前に独立した安全事業部を創設しましたが、それは自社の名前を産業安全の世界でもっとよく知って貰おうという努力を集中するためでした。

 「Kimberly-Clark社を知っている人は多いのですが、その人たちも我が社の製品全部をKimberly-Clarkのものとして認識してくれているわけではありません。」と同社安全事業部のマーケティング・研究課長のBeth Hohl氏は語っています。

 「みなさんKimWipes, Kleenex, Huggiesなどを使っておられるのですが、私たちがそこに行って『それはKimberly-Clark社の製品なのです。そしてほかにもこんなものをつくっています。』というと『へぇーそうなのか』(Ah-ha moment)ということになります。」

 ブランドを築くことは、企業が自分の製品についてユーザーを教育する一つの方法であるとHohl氏は語っています。

 Kimberly-Clark社は同社のアパレル製品であるKleenGuardをPPEブランドとしてもっと目立つ位置につけようと努力してきました。

 「製品が時代遅れになるのはすぐですが、もしブランドがあってしかも確立していれば、機能的な価値もそれ以外の価値もブランドと結びついて、より長い製品寿命を持たせて将来見通しを立てることができます。私たちが八百屋に行ってフロリダ産のオレンジジュースを買うのはそのためです。そしていつも同じものを買うのです。正直、それが人間の性質です。」(Hohl氏)

 Hohl氏によれば、Kimberly-Clark社は、実際にKleenGuardを使っている人、即ちインダストリアル・ハイジニスト、安全専門家、及び製造現場の作業者と一緒になってブランドを確立しようと努力しています。ブランドは消費者にもっと他にも選択肢があることを理解させ、その特定ブランドに付属するフィーリングや理解のもととなるのです。