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NSC発行「Safety + Health」2003年9月号
産業特集
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調査報告:殺虫剤の取扱いに低度の危険性
アトランタ − 疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention
: CDC)の新しい報告書によれば、特定の蚊用殺虫剤の散布は、労働者に急性の一時的な健康被害を及ぼす低度の危険がある。
週間罹病率・死亡率報告(Morbidity and Mortality Weekly Report)に発表された報告書は、1999〜2002年の間、アリゾナ、カリフォルニア、フロリダ、ルイジアナ、ミシガン、ニューヨーク、オレゴン、テキサス、ワシントンの9州で、蚊対策に使われた殺虫剤に暴露した患者を調査した。
殺虫剤関連の疾病は132件確認され、このうち36件は業務関連であった。報告書によると、業務関連の36件中31件は男性であり、非業務関連の96件中66件は女性であった。
疾病対策予防センターによると、業務上暴露した人のうち、14人は殺虫剤散布者であったが、22人は、殺虫剤散布には関わらない労働に従事していた。中程度の罹病は、非散布者(27%)より、散布者(43%)の方に頻発した。
罹病した殺虫剤散布者14人中7人は、殺虫剤スミスリン(sumithrin)による疾病と報告された。非散布者22人中11人は、殺虫剤マラチオン(malathion)、5人はレスメスリン(resmethrin)にそれぞれ暴露した。
疾病対策予防センターは、殺虫剤暴露を減らするため、殺虫剤の取扱者、散布者を対象に、適切な殺虫剤の取扱い・散布方法や、個人用保護具の使用について訓練するよう、勧告している。
報告書は、http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5227al.htmで閲覧可。
予測される危険
全米安全評議会(NSC)の最新統計によると、運輸関連の事故で死亡する確率は、77人に1人の割合である。新しく算出された確率は、NSCのサイト、www.nsc.orgで閲覧でき
る。
分 類 |
死亡者数 |
1年以内の確率 |
生涯にわたる確率 |
交通機関 |
46,749 |
5,889 |
77 |
歩行者 |
5,870 |
46,901 |
610 |
自転車利用の歩行者 |
740 |
372,035 |
4,838 |
単車運転者 |
2,765 |
99,568 |
1,295 |
3輪自動車 |
23 |
11,969,826 |
155,654 |
乗用車 |
14,813 |
18,585 |
242 |
ピックアップトラック、バン |
3,268 |
84,243 |
1,095 |
大型車 |
369 |
746,087 |
9,702 |
バス乗客 |
20 |
13,765,300 |
179,003 |
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出 所:米国衛生統計センター(National Center for Health Statistics)および米国国勢調査局(U.S.
Census Bureau)のデータに基づき、NSCが推計した。死亡者数は、世界保健機関(World
Health Organization)の「国際疾病分類(ICD))第10版を基に分類。
クレーン・デリック規則作成委員に23名就任
ワシントン − ジョン・ヘンショーOSHA長官は、7月2日、委員23名から成るクレーン・デリック協議型規則作成諮問委員会(Cranes
and Derricks Negotiated Rulemaking Advisory Committee)の設置を発表した。
諮問委員会には、クレーン、デリックに関する建設安全基準案の開発を委託する。
ヘンショー長官は、委員会は、多種多様な専門性で「バランスが良くとれている」と評した。委員会は、建設業における現行のクレーン・デリック基準を改定するOSHAの規則作成作業の一部を担い、委員らは、主要課題を特定し、その重要性を評価し、勧告案へ向けて合意を探る。
委員会の委員は、以下のとおり。
(以下 委員名は省略)
電気業者協会、送電線規則案に懸念を表明
メリーランド州べセズダ(Bethesda, MD) − 全米電気工事業者協会(National
Electrical Contractors Association)は、送電線建設工事を規制するOSHA規則案の特定箇所に対し、強い懸念を表明した。
協会は、新ガイドラインは、電気工の死傷事故の削減に役立つだろうが、建設や保守作業を業者に委託する電力会社が、労働者の安全確保責任を共有せねばならないと述べた。
協会は、元方事業者が「活線」で作業すべきか、してはならないかを決定すべきであると考えると述べた。また、作業開始前に、電気回路や機器への送電を断つことが、感電や火傷をなくす上で、唯一最も有効な手段であるとも、協会は述べた。
協会の代表は、この他にも具体的なコメントを発表した。一部を紹介する。
- 規則案が、難燃性の作業衣や個人用保護具を強調するあまり、送電を遮断して作業するなどといった、危害の削減により有効な手段に水を差す。
- OSHAは、規則案が義務付ける数量の個人用保護具を支給する場合の困難と経費を、過小に評価している。保護具の使いすぎは、それ自体が危険を招く。というのも、動作が制約され、触感が鈍り、熱ストレスが生じ、電気工が、高圧の「活線」周辺で適切に作業するのを困難にする。
- OSHAは、新規則や安全作業手順について労働者を教育するのに要する訓練量を、かなり過小に評価している(この負担は、電気請負業者と従業員とで分担される)。絶え間ない人員交替や、作業現場の変更で、規則案が要求する熟練性の維持は難しくなる。
OSHA、フォークリフトシートベルト指令の改定を中止
ワシントン − OSHAは、シートベルトを着用していないフォークリフト運転士に対する監督官の召喚権限を制限する遵守指令を遂行しないと決定した。
この決定は、産業用動力トラック運転士訓練(Powered Industrial Truck Operator Training)(CPL2-1.28A)指令の2002年9月の改定案に対する反応に基づいて、下された。反応の大半は、規則を改変すべきではないとの考えであった。
改定案は、フォークリフトの転覆や異常接近の履歴がない場合、あるいはフォークリフト転覆の可能性が低い場合、監督官による事業場の召喚を減らすというものであった。
改定に反対していた産業用トラック協会(Industrial Truck Association、ワシントン市)は、この度のOSHAの決定を歓迎した。
サルファー・マスタード取扱い時の暴露限界を提案
アトランタ − 疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention
: CDC)は、化学戦用物質、サルファー・マスタード(sulfur mustard)(マスタードガス、イペリット)の取り扱い、運搬、廃棄時に、労働者や一般市民を保護するため、気中暴露限界を提案した。
7月22日付けの官報(Federal Register)に発表された提案によると、新しい暴露限界は、化合物H、HDやHTへの暴露による急性・長期の健康被害を防止する。これらの化合物は、ひとまとめにしてサルファー・マスタードと呼ばれている。
センターの提案は、現行の8時間加重平均の代わりに、1988年の労働者集団の暴露上限値(補集を5分間行った場合)を0.003mg/m3とするよう、要求している。
センターはまた、72時間加重平均及び、一般人集団の暴露限界0.0001mg/m3を、12時間加重平均0.0002mg/m3とするよう、提案している。
センターは、マスタードガスへの暴露の可能性がある場合には、新しい一般人集団限界で監視するよう、提案している。
最後に、生命への即時危険値として、30分間の上限値(補集を30分間行った場合)0.7mg/m3を設定するよう、要求している。
疾病対策予防センターは、10月1日まで、一般からのコメントを受け付ける。コメントは、Paul Joe, Centers for Disease Control and Prevention, 4770 Buford Highway, Mail Stop F-16, Atlanta, GA 30341宛、送付されたい。詳細は、www.cdc.govを閲覧されたい。
ケイクリーク炭鉱事故は、杜撰な地図作成が原因
ペンシルバニア州ハリスバーグ(Harrisburg, PA) − ペンシルバニア州環境保護省(Department
of Environment Protection)のキャスリーン・A・マクギンティ長官(Kathleen
A. McGinty, Secretary)は、あわや大災害となるところであった2002年7月のケイクリーク鉱山(Quecreek
Mine)事故と救助の成功に関する最終調査報告書を発表、ペンシルバニア州鉱山安全法の数十年ぶりの大幅かつ包括的な改正と称する内容を勧告した。
52頁からなる報告書は、採掘場を不正確に記した地図が原因で、災害が起きたと結論した。州政府に対し、欠陥地図の確認方法の改善と、鉱山許可手続きの改正が必要であると強調した。
「昨年、決死の救助隊が鉱山労働者9名を無事救助したが、このときから、環境保護省は、ケイリーク炭鉱で何が起きたかを調べるだけでなく、ペンシルバニア州内で最高の安全基準を保証するため、徹底的な調査を開始した」とマクギンティ長官。「環境保護省は、何が、なぜ起きたのか、信用に足る結論を導くため、事故の一部始終を検証した。また、知り得たすべてを駆使して、ペンシルバニア州の鉱山労働者の安全の改善に向けた一連の勧告に取りまとめた」。
環境保護省は、2002年7月の事故で、世界中の注目をサマセット郡(Somerset County)に集めて以来、鉱山の安全性を高めるための数多くのイニシアチブを実施してきたという。これらの対策は、何千もの炭鉱地図のデジタル化、インデックス化する、鉱山事業者に対し、空洞のありかや、空洞から作業場までの距離を示す確かな証拠の提出を義務付けるなどである。
環境保護省は、州の時代遅れの鉱山政策や地下鉱山の安全関連手続きに関し、今回の調査で明らかになった欠陥に対応するため、規制や法の改正に引き続き取り組むと述べた。最終報告書には、12ケ月間の調査で出た結論に基づき、26の勧告が盛られている。
詳細は、www.dep.state.pa.us/dep/deputate/minres/dms/website/accidents/quecreek/を閲覧されたい。
米炭鉱死亡災害、6月に急増
バージニア州アーリントン(Arlington, VA) − 米国内の炭鉱での死亡者数が空前の水準にまで減少した昨年度とは変わり、2003年には、死亡者数が増加し始めた。
2002年度に米国の炭鉱で発生した死亡者数は27人、ちなみに、2001年度は42人であった。今年度は、7月2日までにすでに20人で、このうち7人は、6月9日〜7月2日の間に死亡している。
2003年度の鉱業全体の死亡者数は、金属、非金属鉱山も含めて、7月2日までで32人。一方、2002年度は67人であった。
鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration: MSHA)は、7月1日、現在の安全動向について、鉱業界に警報を発令した。炭鉱をめぐる目下の懸念事項は、鉱山機器の保守・修理、爆発物の使用、運搬、保管などであると、当局は述べた。
当局によると、炭鉱の定期臨検時には、監督官は、鉱山労働者や監督者と災害・負傷動向について討議する時間を割いている。
メタン検査最終規則、発表
バージニア州アーリントン − 鉱山安全衛生庁(MSHA)は、法遵守の代替手法を認める、メタン検査最終規則を発表した。同庁が初めてメタン規則を発表したのは1996年、有資格者に、伸長自在のプローブまたは他の容認する手法により、支保工の下でメタン検査を実施するよう、義務付けている。
2002年9月25日、労働組合、産業団体の合同請願に応えて、同庁は、メタン検査の代替手法を認める新規則を発表した。
新規則は、連続採掘機を使用する切り羽や鉱柱作業での天盤ボルト打設中のみに限り、適用される。鉱山労働者を保護するため、支保工や換気、天盤ボルト打設機の連続メタンモニタ−に関する多数の要件を満たす場合に限り、最後の支保工の上をプローブでなでるメタン検査を許可する。
規則は、8月6日発効。www.msha.gov/regs/fedreg/final/2003finl/03-16866.htmで閲覧できる。
MSHA、炭じん採集規則に関する上訴に勝訟
バージニア州アーリントン − 米コロンビア特別区控訴裁判所(U.S. Court of
Appeals for the District of Columbia)は、先日、鉱山安全衛生庁(MSHA)は、炭鉱労動者の黒肺病(black
lung disease)予防を目的とした基準を遵守しているかどうか判定するのに、単一交替勤務時間(シフト)に採取した複数のサンプルを平均してよいと判決した。
控訴裁は、政府は、複数のシフトで採取したサンプルを平均せねばならないとした連邦鉱山安全衛生再審委員会(Federal Mine Safety and Health Review Commission)の裁決を覆した。
鉱山安全衛生庁は、1975年以来、一シフト中に採取した複数のサンプルを基に、吸入性炭じん基準の遵守を判定してきた。オハイオ州バウアストン市(Bowerston, OH)のエクセル・マイニング社(Excel Mining)は、1999年に吸入性粉じん違反として鉱山安全衛生庁より召喚された3件を争うなか、この慣行に異議を申し立ててきた。
同庁は、連続粉じんモニターの調査結果を待つ一方で、遵法の判定をフルシフトの単一サンプルで行う、また、炭鉱事業者の粉じん管理計画の検証に新規要件を設けるなどといった、規制案作成作業を中断した。エクセル社訴訟の判決は、これらの提案に影響を及ぼさない。
連邦炭鉱衛生基準では、各炭鉱事業者は、吸入性粉じんの平均濃度を各シフト、2.0mg/m3以下に維持しなければならない。詳細は、www.msha.govを閲覧されたい。
鳥肉産業ガイドラインに対するコメント募集期間を延長
ワシントン − 労働安全衛生庁(OSHA)は、6月、食品雑貨小売業向けエルゴノミクス・ガイドラインに対するコメント募集期間を延長したが、これに続き、鳥肉加工業向けガイドラインについても、募集期間を延長した。
OSHAは、鳥肉加工業における筋骨格系障害予防ガイドライン案について、コメント募集期間を45日間延長した。当局は、10月2日、ワシントン市で、関係者会合を開く。
OSHAは、7月3日付けの官報で初公開したガイドライン案に関し、コメント募集期間の延長を求める国民の要望を数件受けた。そこで、「筋骨格系障害予防のためのエルゴノミクス:鳥肉加工業向けガイドライン案(Ergonomics for the Prevention of Musculoskeletal Disorders: Draft Guidelines for Poultry Processing)」と題する書類へのコメント提出期限は、9月18日となった。
当局によれば、公開関係者会議は、関係者各位にOSHA職員や鳥肉会社役員と、ガイドラインについて議論する機会を与える。
鳥肉加工業ガイドラインは、職場における筋骨格系障害を予防する産業別ガイドラインシリーズ第3弾である。介護施設向けガイドラインは、3月に採択された。食品雑貨小売業向けガイドラインは、草案段階にあり、OSHAは、コメント提出期限を8月22日まで延長、9月18日、ワシントン市で、公開関係者会合を予定している。
OSHAによると、造船業向けガイドラインは、今年中に、コメント募集の段階を迎える。
紫外線は、結核予防に効果的
ワシントン − 国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が資金を提供し、コロラド衛生大学(Health
University of Colorado、ボウルダー市、Boulder)が実施した6年間の調査で、紫外線は、結核暴露を減らす効果的な手段となることが判明した。
調査は、次のように結論する。
- 紫外線殺菌照射灯の照射水準を上げると、結核菌様バクテリアの不活化効果が増加した。
- 75%以上の高い相対湿度は、紫外線殺菌照射による結核菌様バクテリアの不活化効果を減殺した。
- 換気と紫外線殺菌照射は、大抵の場合、併用した方が、単一の場合より速く、浮遊性の結核菌様バクテリアを除去または不活性化した。室内の低〜中度の換気は、紫外線殺菌照射の効果に悪影響を及ぼさなかった。
当局は、調査結果を評価し、これで、保健医療従事者の結核予防に向けた紫外線殺菌照射システムの能力に関する最新勧告をまとめる。これに続き、疾病対策予防センターの結核伝染管理ガイドラインが更新されるが、ここでも調査結果が反映されるよう、その内容を評価している。
調査結果はまた、紫外線殺菌照射システムの利用に関するNIOSHの包括的技術報告書を作成するのに、用いられている。
調査結果の詳細については、www.cdc.gov/niosh/uvsysfortb.htmlを開かれたい。
AIHA、研究所の換気に新基準設定
バージニア州フェアファックス(Fairfax, VA) − 米国産業衛生協会(American
Industrial Hygiene Association: AIHA)は、このたび、111ページからなる換気システム安全衛生基準(Health
and Safety Standards for Ventilation Systems)を完成させた。
新ガイドラインは、新たに、性能検査、空気浄化、予防的保守管理、作業慣行に関する章を設けた。新しく、定義、用語や設備に関する5つの付表も設けられた。ガイドラインには、参考基準や文献、研究所用排気塔デザインの選択に関する手引き、ANSI
(American National Standards Institute、米国規格協会)Z9.5の監査用紙、研究所換気管理計画の目次例も含まれている。
「実地に基づいた柔軟な包括的基準へ向けて合意を形成し、開発するまで、多くの人びとが、数年間、懸命に作業した」と、トーマス・G.グランブルズAIHA会長(Thomas G. Grumbles, President)は述べた。
基準が最後に更新されたのは、1992年。詳細は、次のウェブページで閲覧可。www.aiha.org/GovernmentAffairs-PR/html/pr-SPR-03-710-01.htm。
客室乗務員、機室内の毒素からの保護を要求
ワシントン − 客室乗務員協会 (Association of Flight Attendants) の代表は、6月、民間航空機内の空気の質は、客室乗務員にとって有毒で危険であると、議会で発言した。
客室乗務員協会のパトリシア・フレンド国際会長(Patrica Friend, International President)は、航空機室内の有毒な空気が健康に及ぼす影響について、下院運輸・基幹施設委員会(House Transportation and Infrastructure committee)で証言した。
SARS(重症急性呼吸器症候群)騒動で、機室内の空気の質への関心が高まっているが、ウィルスのみが、機内の空気の質を脅かす原因ではないと、フレンド氏は述べた。再循環空気の多用、加熱されたエンジンオイルや作動液からのヒューム、機室内での有害な殺虫剤の使用が、乗客、乗務員双方に深刻な衰弱性の疾病をもたらす可能性があると、同氏。
客室乗務員協会は、乗務員がOSHAの保護下に入れば、機室内の空気の質に起因する健康問題の大半は、より容易に対処しうると考えている、とフレンド氏。現在、機室内の安全衛生は、連邦航空局(Federal Aviation Administration)の専管事項である。
客室乗務員協会は、現在の制度で傷病率(休業災害データにより、計算)は8%となっており、全米平均の4倍以上高いと語った。
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