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NSC発行「Safety + Health」2003年9月号

ニュース

OSHA、自主的保護プログラム(VPP)参加資格の変更を検討

 ワシントン − 労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration: OSHA)は、注目を集めている当局の自主的保護プログラム(Voluntary Protection Program: VPP)を、より多くの企業が参加しやすいものにしようと考えている。自主的保護プログラムは、ジョン・ヘンショーOSHA長官(John Henshaw, OSHA Administrator)の優先課題で、参加企業の増大を狙う。
 7月25日付けの官報(Federal Register)に発表された修正案は、VPPスター・プログラム(Star Program)の参加要件として用いる基準傷害及び疾病率(benchmark injury and illness rate)を変更する。スターは、企業が獲得しうる最高水準である。修正案はまた、メリット・プログラム(Merit Program)への建設企業の参加資格にも適用される。メリット・プログラムには、全米のおよそ1千社の企業が参加している。
 スターVPP参加資格を定めるにあたり、OSHAは、企業の傷害及び疾病率と全産業傷害及び疾病率とを比較する。こうした基準傷害及び疾病率は、毎年、労働統計局が刊行する。スターVPPに参加するには、傷害及び疾病率は、基準傷害及び疾病率より低くなくてはならない。現在用いられている基準傷害及び疾病率は、労働統計局発表の最直近年の全産業平均非死亡傷害及び疾病率のニつである。OSHA修正案は、発表された直近3年間のうちの最低1年について、二つの全産業平均率より低ければよいとする。
 修正案ではまた、スター資格要件を満たさない建設現場については、当該企業の全社規模の傷害及び疾病率が、3年間、基準傷害及び疾病率より低ければ、メリット・プログラムへの参加を検討するとOSHAは述べた。
 OSHAは、労働統計局の一部の産業別傷害及び疾病率の実質的な年変動で、VPP応募者や参加企業の数社に影響が出るのを懸念してきたと言う。当局によると、産業によっては、年率が20〜30%変動するのも異常ではないという。こうした変動で、目標値は予測不能で推移することとなり、ある年では、一産業の傷病状況を的確に表していないこともありうるとOSHAは述べた。
 今回のVPP修正案は、傷害及び疾病率変動の影響を減らすことを意図したものであるとOSHAは述べた。

VPPプログラム

メリット − 優良な安全衛生プログラムを有する事業場を承認。ただし、スター資格を得るには、追加措置を講じなければならない。
スター − 安全衛生で最高水準の実績を示した事業場を承認。
スター・デモンストレーション − スター資格のプログラムを有するが、現行のスター要件とは異なる実験的アプローチの実演および/または試験を義務付けられている。

出 所:自主的保護プログラム参加者協会(Voluntary Protection Programs Participants' Association、2003年)


事実チェック
死亡する確率はどのくらい?

 全米安全評議会(National Safety Council: NSC)が発表した最新データによると、非運輸関連の傷害で死亡する確率は、運輸関連の傷害で死亡する確率よりわずかに低く、およそ70人に1人の割合である。新しく算出された死亡確率は、NSCのウェブサイト、www.nsc.orgで閲覧できる。

関心分野のひとつ、転倒・落下の場合。
  転倒・落下の型   死亡者数   1年内に
  死亡する確率  
  生涯にわたる  
死亡確率
  転倒・落下全体 13,322 20,666 269
  同一平面
  (すべり、つまずき、よろめき)
565 487,267 6,336
  同一平面のその他 1,885 146,051 1,899
  ベッド、椅子その他の家具 650 423,548 5,508
  階段、はしご 1,307 210,640 2,739
  はしご、または足場 412 668,218 8,689
  建物、建造物 506 544,083 7,075
  ある高さから別の高さへ 687 400,737 5,211
  その他分類不能の転倒・落下   7,310 37,662 490

出 所:全米安全評議会(NSC)は、米国衛生統計センター(National Center for Health Statistics)および米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)の2000年度のデータを基に推計。死亡者数は、世界保健機関(World Health Organization: WHO)の「国際疾病分類(International Classification of Diseases: ICD)」改訂第10版をもとに分類した。
注)英語では、落下以外に同一平面での転倒も含め、Fallで表現している。


全米安全評議会(NSC)創立90周年:第1回安全会議 − タイタニック
(挿絵キャプション) 1913年の第1回安全会議のプログラムの表紙には、当時の安全専門家らの記憶に新しい、タイタニック号の沈没が描かれていた。
  1912年、ミルウォーキー州のプフィスター・ホテル(Pfister Hotel)で初の安全会議が開催された折、参加者プログラムの表紙には、疾走する豪華客船が描かれていた。観光船は、労働安全とは無関係かもしれないが、これは、当時の大事件を反映している。なにしろ、タイタニック号の沈没は、人々の記憶にまだ新しかったのである。
 船の下には、タイタニック号の所有主を捉えただろう特性が列挙されている。優雅、速力、壮大、大規模。そばの女性は、この壮大な計画に欠けているものをはっきりと、参加者に思い出させている。その手には、ひとこと「安全」とはっきり記された紙が握られている。
 この絵はまた、企業は、生産や品質に対するのと同様に、安全に配慮せねばならないという、当時の安全リーダーたちの見解を示している。第1回安全会議に集った200人の参加者は、この問題に精力的に取り組んだ。
 1週間の会議では、情報満載の7セッションが設けられ、それぞれ8〜10人が演説した。この大半は、鉄鋼、炭鉱、製材、鉄道といったリスクの高い産業によくある危害を扱った。
 演説の内容は、今日、NSCの年次会議&展示会で毎回討議されている題目の大半を網羅していた。個人用保護、機械の防護、応急手当、工場立入り検査、非英語労働者とのコミュニケーション、経営者の関与、安全の奨励である。
 しかし、出席者らは、当時の差し迫った問題を単に解決する以上の高い志を持っていた。彼らは、未来の世代のために事故をなくそうとしたのである。こうした志を受け継ぐ器として、後の全米安全評議会(NSC)となる団体の設立を決議した。
 今年の第91回年次会議&展示会では、今日の安全リーダー数千人が一同に会し、1912年の記念すべき週に始まった任務を継続する。

 安全のリーダーであるNSCの創立90周年を記念して、本誌は、1年間を通じ、NSCの遺産のなかでも重要なものを紹介する。
 毎月号の90周年記念の囲み記事で紹介する、NSCの安全第一の取り組みにまつわる話題に期待されたい。


ヒスパニック系労働者サミットに青信号

 ワシントン − 委員12人で構成される全米労働安全衛生諮問会議(National Advisory Committee on Occupational Safety and Health)は、7月9〜10日、ワシントンでの会合で、ヒスパニック系労働者のいや増す安全問題に焦点を当てたサミットの開催に向け、労働安全衛生庁(OSHA)、国立労働安全衛生研究所(National Institute for Occupational Safety and Health: NIOSH)より承認を得た。
 サミット開催案は、諮問会議の2日間の会期中に3つの作業グループが提出した一連の勧告のなかのひとつである。ヒスパニック系・移民労働者作業グループは、サミットの目的はおおよそ、ヒスパニック系労働者の安全をめぐる成功例を披露するものとすべきであると述べた。同グループはまた、OSHAがヒスパニック系労働者の傷病削減に重きを置いていることを、理解してもらわねばならないと述べた。サミットは、ワシントンで開かれる。
 OSHAのジョン・ヘンショー長官、NIOSHのジョン・ハワード所長(Dr. John Howard, Director)とも、サミットを支持した。全米労働安全衛生諮問委員会は、OSHA、NIOSHを通じて、労働長官、保健社会福祉長官に報告する。企画や予算を配慮すると、サミット開催は早くて2004会計年度になると、ヘンショー長官は述べた。
 その他、OSHA評価目標プログラム作業グループは、OSHAおよびNIOSHの監視・目標データベースの情報開示の仕方を改善するよう要請した。情報普及作業グループは、OSHA、NIOSHに対し、情報普及プロセスにおける情報の重複を最小限に抑えるため、両当局間でより緊密に連携するよう、勧告した。また、OSHAに対し、パートナーシップ、同盟関係を奨励し、職種別団体や組合を対象としたアウトリーチ活動を拡大するよう、勧告した。
 ヘンショー長官、ハワード所長は、諮問会議の次回会合で、こうした勧告のすべてに対し、公けに回答すると約束した。


連邦政府職員向けの新イニシアチブ

 ワシントン − 連邦労働安全衛生諮問協議会(Federal Advisory Council on Occupational Safety and Health)は、7月17日、ワシントンで会合、連邦政府管理職の上層部に安全衛生原則を要求し、安全衛生を政府の最重要価値と捉え、上級管理職にその進捗責任を問おうとしている。
 多数の連邦政府機関の代表者で構成されるこの諮問協議会は、連邦管理職イニシアチブ(Federal Executive Initiative)を通じ、管理職の勤務評定に安全衛生責任を取り入れるよう、勧告する。協議会はまた、管理職員向けの訓練プログラムやカリキュラムを開発中。協議会の長を務めるジョン・ヘンショーOSHA長官は、同イニシアチブに対するブッシュ政権の「首脳レベル」の支持を求めていくと約束した。
 協議会はまた、新しい安全衛生職場復帰(Safety and Health and Return to Employment: SHARE)プログラムへの移行を勧告した。SHAREは、連邦政府職員が業務上傷害を受けた際には、最善の配慮を受け、できる限り早く職場に復帰できるように採択された、OSHAの連邦政府職員2000年度イニシアチブ(Federal Worker 2000 Initiative)の更新版である。
 協議会は、メディアを通じた大がかりな推進活動も含め、2004会計年度にSHAREへの移行をめざす。移行を円滑にするため、協議会は、サンフランシスコ、ワシントン、シカゴの三市で、連邦政府職員や労組代表から意見を募る一連のフォーカスグループ(一般の反応を予測するための、司会者主導の少人数討議)を計画している。シカゴ市でのフォーカスグループは、今月のNSC年次会議&展示会と共に開催される。
 協議会のもうひとつの関心事として、協議会の若年労働者安全衛生作業グループは、連邦政府機関の若年労働者関連プログラムの成功例について、情報を共有し、協力するよう、各機関に要請している。政府機関の代表者を集め、若年の連邦政府職員をめぐる最善の慣行や傷病データについて、協議する会合も予定されている。ヘンショー長官は、連邦政府は、若年労働者の「模範的雇用主」でなければならないと述べた。「われわれは、若者が仕事に就いた時に、正しいスタートを切ることができるようにしなければならない」。


故意の違反の立証責任は、裁判所に委ねるべき

 バージニア州フェアファックス(Fairfax, VA) − 「議会は、労働安全衛生法(OSH Act)における故意の違反の定義を裁判所に委ねるべきである。」アメリカ産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association: AIHA)は、労働安全衛生公正法(Occupational Safety and Health Fairness Act)の修正案に関し、チャーリー・ノーウッド(Charlie Norwood)下院議員(共和党、ジョージア州)宛ての書簡で、こう述べた。
 7月23日付けの書簡で、協会は、OSHAの召喚をめぐる問題すべてを安衛公正法が包含しうることはないと指摘。たとえば、故意の違反と指定するにあたり、妥当な安全衛生方針を書面で表明する、傷病率が産業平均より低い、などといった事業者の前向きな努力を、修正案は考慮しないと言う。
 また、同法は、「故意に法律を違反したために、従業員の死亡災害を引き起こした事業者その他」に責任を持たせようとするが、これらをだれとするのか、定義していない。協会は、企業役員、安全専門家あるいは従業員ですら、責任を問われうるだろうと考えている。
 「『立証責任』や、だれを違反で告発するのか、答えは、法制度に委ねるべきである」と、協会のトーマス・G・グランブルズ会長(Thomas G. Grumbles, president)は言った。「立証責任では、違反は故意か、過失か、その両方かも証明せねばならない」。
 協会が書簡で述べたその他のコメントを一部、抜書きする。
  • 議会は、同法でだれが益するのか、明らかにすべきである。議会は、小企業の保護を意図すると協会は考えるが、これは、明言されねばならない。また、同法は、なにをもって小企業とするのか、はっきりと定義せねばならない。これは、「重大」である。
  • 協会は、労働安全衛生再審委員会(Occupational Safety and Health Review Commission)が、訴訟を迅速に再審理できるよう、その委員を3名から5名に増員する点は支持する。しかし、追加の2名については、労働安全衛生分野での実際的な専門知識を有した有資格者であるべきだと勧告する。「多くの人々は、再審委員会の委員は、法曹界の代表でなければならないと考えていることは、協会も承知している。しかし、安全衛生の前線に立つ者が、しばしば見過ごされがちな専門知識を添えるだろうと、協会は考えるのである」とグランブル会長。
 協会の書簡全文は、www.aiha.orgで閲覧できる。
 7月24日、下院労働力保護小委員会(House Subcommittee on Workforce Protections)は、召喚への異議申し立て期間を延長する、労働安全衛生再審委員会の委員を3名から5名に増員するといった、労働安全衛生公正法修正案を可決した。修正案は、今月、下院教育労働力人口委員会(House Committee on Education and the Workforce)が検討する。


コーザイン、化学工場安全保障に8千万ドルを要求

 ワシントン − ジョン・S・コーザイン(Jon S. Corzine)上院議員(民主党、ニュージャージー州)は、「アメリカ国民が直面する安全保障上最も重大な脅威のひとつ」への対処をさらに推し進めようと、7月23日、2004会計年度に米国内の化学工場の安全性を評価するための国土安全保障省(Department of Homeland Security)予算、8千万ドルを要求する修正案を提出した。
 コーザイン議員は、修正案を国土安全保障省の歳出予算案に含めたいと考えている。コーザイン議員事務所によれば、要求額8千万ドルは、化学工場の脆弱性評価を実施する費用として、議会予算局が見積もった値である。
 「8千万ドルの予算を配分してもまだ、適切な安全保障基準や責任体制を打ち立てるのに、認可済みの法律を通過させるという仕事が残っている」と、コーザイン議員。
 コーザイン議員は、化学工場を多数抱える州の出身で、このような法案を1月に再提出した。