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2002年全米労働災害統計の分析 By the Numbers
Bringing occupational safety statistics to life
資料出所:National Safety Council (NSC)発行
「Safety+Health」2003年10月号p.28-31
(仮訳 国際安全衛生センター)
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米国の業務上外の傷害について、統計的に概観する
労働災害は2002年には減少し、死亡者数も8.1パーセント減少して5,000人以下となった。これは良いニュースであるかに聞こえるが、職場での死亡が4,900件、傷害が370万件しかなくて"良い"と見なされるような世界では、まだまだするべきことはたくさんある。
全米安全評議会(National Safety Council: NSC)が年一回発行する災害統計データ「Injury
Facts」2003年版では、家庭、職場、路上、および娯楽中の災害を合わせた全体像を示している。そして、こうした発生場所のすべてに相互関係があること、さらに就業中、非就業中の災害を結ぶ共通項を見つけだすことが重要だと指摘している。
以下、NSCの調査統計部(Research & Statistics Services Department)の出した新しいデータを詳細に見ていく。データは個々の内容については述べていないが、災害がなぜ、どのように起こったか、また、その人的・金銭的損失について、幅広い見解を示している。
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非意図的災害によって傷害を負うと:
99,500人が死亡する
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260万人が入院する
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3,940万人が救急治療室に運ばれる
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950万人が外来診療を受ける
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950万人が外来診療を受ける
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8,990万人が内科医の診療を受ける
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2,040万人が身体障害者となる
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社会的経費は
5,863億ドル
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出所:National Safety Council and National Center for Health and Statistics,
2003 |
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人々はどこで負傷するか?
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人々はどこで死亡するか? |
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出所:National Safety Council, 2003 |
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職場の動向
出所:National Safety Council, 2003
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傷害による損害
区分 |
身体障害を
ともなう傷害
(100万人) |
費用
(10億ドル) |
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非意図的災害全体 |
2.4 |
586.3 |
交通事故 |
2.3 |
242.7 |
就業中 |
3.7 |
146.6 |
家庭内 |
8.0 |
126.7 |
公共の場にて |
6.5 |
83.3 |
出所:National Safety Council, 2003
死亡者数の増加
区分 |
2002年の
死亡者数 |
2001年か
らの増減 |
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非意図的
災害全体 |
99,500 |
+2% |
交通事故 |
44,000 |
+1% |
就業中 |
4,900 |
-3% |
家庭内 |
33,300 |
+5% |
公共の場にて |
19,600 |
-2% |
出所:National Safety Council, 2003 |
新しい統計結果から、わずかな変化が明らかに
反復動作 |
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2001年の統計によると、反復性外傷(repeated trauma)に関する傷害が、産業別の全職業性疾病発生率の65%を占めている。サウスカロライナ州ダンカンにあるErgonomics
Applications社のシェリー・ギブソン(Sheree Gibson)社長は、この高い率は反復性外傷のリスク要因への普遍的な暴露によると言っている。
「ほとんどの仕事には、ある程度の反復性がある。その多くは、特に製造業や鉱業においては、反復動作、無理な姿勢、力仕事をともない、また時には振動にも暴露される―――これらは、通常我々が筋肉骨格系障害と結び付ける要素である」と彼女は言っている。
ギブソン氏が言うには、反復性外傷はいつも問題となるが、多くの会社は仕事の一部分として容認しているか、あるいはその解決には法外なコストがかかると考えている。「多くの場合、会社は気がつかないのではない。会社によっては、反復性外傷による傷害は仕事をすれば仕方がないこととして受けとめている」さらに「彼らは、そのことをよく考えていない。だが一方では、多くの会社や産業界全体が、反復性外傷への暴露と疾病率を減少させる方向に大きく踏み出している」
この15〜20年間の急激な医療コストの高騰で、人々はもっとエルゴノミクス的な問題について考えるようになり、教育により解決方法を認識するようになったが、その一方で、問題は依然として存続している。「秘書にコピーを任せ、45ポンドもの重さのコピー紙入りの箱を持ち歩かせて、なぜ彼女が腰を痛めたのかわからないと言う」と、ギブソン氏。「我々は産業界でもその類の行為をしている。機械を床に据え付けるが、それに材料を供給したり取り除いたりする人のことや、その材料の重量については少しも考えていない。我々は長い間基本的なことを無視してきた」とギブソン氏は言っている。
ギブソン氏によると、人々は以前に比べてよりたくさんの仕事をしているので、リスク要因は増加している。そしてエルゴノミクス傷害を減らすには、教育が鍵となる。「その方法についてはいろいろと考えられる。OSHAのウェブサイトには多くの情報がある。また、産業界、保険業界からも多くの情報が得られ、OSHAの相談業務なども利用できる。これらの情報は基本的にほとんど無料で利用できる。」とギブソン氏は言っている。
これらの利用できる情報や自覚の高揚にもかかわらず、傷害や疾病において反復性外傷が大きな割合を占める傾向が続いていることをギブソン氏は認める。「この傾向は変わるのだろうか。私は変わらないと思う。OSHAがエルゴノミクス基準を作るか、または傷害があまりにも高くつき、産業界がその実態に目を向けざるを得なくなり、その解決方法を探り始めるまで続くのではないかと思う」
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非意図的死亡災害
産業別
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労働者数
(1000人) |
死亡者数
(2002年) |
増減
(前年比) |
全産業 |
137,731 |
4,900 |
-3% |
農業 |
3,417 |
730 |
+2% |
鉱業、採石業 |
515 |
150 |
-11% |
建設業 |
9,162 |
1,150 |
-3% |
製造業 |
18,073 |
510 |
-7% |
輸業、公共事業 |
8,060 |
810 |
-4% |
商業 |
27,966 |
420 |
-3% |
サービス業 |
49,668 |
630 |
-1% |
政府機関 |
20,870 |
500 |
-1% |
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緩やかであるが確実に減少する死亡災害 |
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2002年には、農業を除いた全産業において労働死亡者数は減少した。1994年以降、アメリカ合衆国では労働者数の顕著な増加にもかかわらず、全体の死亡率は毎年減少している。しかし、一貫してその減少率は小さい。例えば建設業、製造業、運輸業における死亡者数の減少は5%以下である。米国国立労働安全衛生研究所(NIOSH)の安全研究部調査研究課長ドーン・カスピーヨ(Dawn
Caspillo)は、このわずかな減少傾向は続くと言っている。彼女は、この労働死亡災害の減少傾向は、事業者、労働団体、政府機関が、あるときは協力し、あるときは独自で行った活動、職場の安全を改善しようとする種々の努力の結果だと言っている。「多くの事業者は、それが労働者のためであるか、利益のためであるかは別として、種々の理由によって労働安全衛生に着目している」とカスピーヨ氏は言っている。
カスピーヨ氏によると、設備により大きい関心がはらわれている。新技術の開発につれて、より多くの安全面の機能が付加されるようになってきた。さらに、危険(ハザード)に関して、労働者や事業者に対する教育により多くの時間とエネルギーが費やされるようになった。
それらの努力が効果を発揮する一方、現在の労働力の動向は、死亡率の減少傾向に逆行しかねない動きをしているとカスピーヨ氏は指摘している。「高年齢のヒスパニック系労働者や移民労働者の比率が、今後数年で増えるとみられる。彼らは高リスクのグループとなる」
多くの専門家は、ヒスパニック系や移民労働者のリスクが高い理由を推定している。「その中には、彼らがより危険な産業で働く傾向にあることと関係づけているものもあれば、言語の問題とする説もある。また、読み書き能力の問題、そして言語や読み書きに関する現場での教育の差異を指摘するものもある。また、社会的な問題、同様に文化的な要因を指摘する説もある」とカスピーヨ氏は言っている。
全般的な労働者人口統計を分析すると、アメリカ人の行う仕事のタイプは、より危険な仕事から危険の少ない仕事に変化している。「たとえば鉱業や製造業から伝統的に危険率が低いといわれるサービス産業へ移行している」とカスピーヨ氏は言っている。
また、減り続ける死傷災害は産業形態の変化の結果なのか、労働者人口統計上の変化の結果なのかを決定しようと専門家は試みてきた、とカスピーヨ氏は言っている。しかし、職場が安全になったのが事業者の認識によるものにしろ、規則及び基準あるいは教育努力によるものにしろ、統計上、その変化は緩やかである。「急激な変化を期待するには、それ以上のことに目を向けなければならないだろう」とカスピーヨ氏は言っている。
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鉱業の労働災害 |
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2002年の統計では、鉱業労働者の死亡災害は2001年に比較して11%減少した。この変化は全産業の中でもっとも顕著である。NIOSHのピッツバーグ研究所(Pittsburgh
Research Laboratory)の調査統計支援課長のリン・エリンソン(Lynn Ellinson)によると、災害の減少は鉱山労働者の減少と一致する。「鉱山では、生産量は減少していないが、労働者数は減っている。技術の進歩により、以前より少ない労働者でたくさんの鉱石を採掘できるようになった」とエリンソン氏。
また、鉱山関係2法もまた、鉱山の死亡災害の減少に影響を与えたと氏は言う。鉱山安全衛生庁(Mine Safety and Health Administration: MSHA)によると、1992年の規則で鉱山火災予防のための熱センサーの使用を義務付けた。そして1996年に施行された第2の基準では、爆発災害減少のためのメタン監視装置の使用が義務付けられた。この基準についての詳細は、 www.msha.gov/regdata/msha/75.342.htm(1)および www.msha.gov/regdata/msha/75.1103-4.htm(2)を参照のこと。*)
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労働者の非意図的負傷による死亡件数と死亡率(1992〜2000年)

職業性疾病と発生率
職業性疾病(単位1000) |
民間部門 |
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全疾病 |
333.8 |
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反復性外傷関連障害 |
216.4 |
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皮膚疾病、皮膚障害 |
38.9 |
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物理的要因による障害 |
14.6 |
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毒劇物による呼吸障害 |
14.5 |
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中毒 |
2.8 |
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じん肺 |
1.3 |
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その他の職業性疾病 |
45.1 |
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常勤労働者1万人当たりの発生率 |
常勤労働者1万人当たりの発生率 |
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全疾病 |
36.7 |
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反復性外傷関連障害 |
23.8 |
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皮膚疾病、皮膚障害 |
4.3 |
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物理的要因による障害 |
1.6 |
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毒劇物による呼吸障害 |
1.6 |
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中毒 |
0.3 |
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じん肺 |
0.1 |
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その他の職業性疾病 |
5.0 |
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出所:Bureau of Labor Statistics, Department of Labor
- 切り捨てのため、各項目の合計が全体の数値にならない場合がある。
- 「民間部門」は、政府機関以外の全ての産業を含むが、従業員数11人未満の農業は除く。
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