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NSC発行「Safety + Health」2003年10月号

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報告書:コロンビア事故は、NASAの「安全文化」の欠如が原因

(写真キャプション)1月16日の打ち上げ前のSTS-107号の乗組員。左からミッションスペシャリストのデイビッド・ブラウン(David Brown)、機長のリック・ハズバンド(Rick Husband)、ミッションスペシャリストのローレル・クラーク(Laurel Clark)、カルパナ・チョウラ(Kalpana Chawla)、マイケル・アンダーソン(Michael Anderson)、操縦士のウィリアム・マックール(William McCool)、ペイロードスペシャリストのイラン・レイモン(Ilan Ramon)の各氏。(写真)1月16日の打ち上げ前のSTS-107号の乗組員。左からミッションスペシャリストのデイビッド・ブラウン(David Brown)、機長のリック・ハズバンド(Rick Husband)、ミッションスペシャリストのローレル・クラーク(Laurel Clark)、カルパナ・チョウラ(Kalpana Chawla)、マイケル・アンダーソン(Michael Anderson)、操縦士のウィリアム・マックール(William McCool)、ペイロードスペシャリストのイラン・レイモン(Ilan Ramon)の各氏。

 ワシントン − 宇宙飛行士7名が死亡した2月1日のスペースシャトル、コロンビア(Columbia)号の事故について、原因を探った248ページの報告書が刊行された。報告書によれば、墜落事故の原因は、断熱材の破片がシャトルの翼の耐熱タイルを損傷、大気圏への再突入の際に、機体を分解させた。
 しかし、退役海軍将官ハル・ゲーマン(Hal Gehman)氏が議長を務める委員会は、アメリカ航空宇宙局(National Aeronautics and Space Administration: NASA)に組織としての安全文化が欠如しており、たとえば断熱材が翼にあたるなどといった危機への対応をほとんど不可能にしていると批判した。
 8月26日に発行された報告書は、コロンビア号の打ち上げから再突入に至るまでに、技術陣がシャトルの損傷をよりよく分析し、対応する機会が数回あったことを指摘した。また、新たにシャトルを打ち上げる前に、NASAは、内部に事業安全体制を打ちたて、長期的にNASA職員に安全責任を持たさねばならないと報告する。
 NASAの元技術者、ランディ・アヴェラ(Randy Avera)氏は、8月26日、CNN(Cable News Network)にこう語った。「NASA内部には、……独自の全員関与型の安全プログラムが、基本的にはなかったことが、調査で判明した。委員会が見いだしたのは、どんな安全プロセスを用い、これをどう文書にまとめて、安全プログラムを実施するか、その方法を自分たちでひねり出すよう、低レベルでの管理職に委ねられていたということである」。
 アヴェラ氏は、今後のシャトル打ち上げを始めから終わりまで安全に保つには、説明責任が鍵を握ると述べた。
 「委員会は、トップのリーダーシップという点では、明快である。NASAの気風や文化は、全くリーダーシップ次第だということである」とアヴェラ氏は、CNNに語った。「そして、従業員は、進んで安全問題を指摘するだけでなく、当該情報をもたらし、このような技術問題を解決するプログラムの英雄として、支持されるようになるとよい」と同氏。
 委員会の前で証言したなかには、全米安全評議会(NSC)の代表も数人おり、このうちのひとり、アラン・C・マクミラン最高経営責任者(Alan C. McMillan, CEO)は、NASAに対し、「組織の未来像に安全衛生を位置づける」よう要請した。そのための措置として、マクミランは、以下を挙げた。
  • 安全衛生を核心的価値に据える。
  • 倫理規約を採択する。
  • ゼロ災を目標とする。
  • 価値観を共有する文化を創造する。
  • 責任と信頼の気風を醸成する。
  • NASA出入りの商人、請負会社は、プロジェクトや製品の設計、性能に基準や規格を設けなければならない。
  • 現場の業者に、組織の作業規則を採用するよう義務付ける。
  • 構成員すべてと、安全衛生について率直に意見を交換しあう。