オリンピア(Olympia) - ワシントン州の有権者は、この11月、議会や多数の訴訟でも成しえなかったことをやってのけた。米国唯一のエルゴノミクス規則を無効化したのである。
州民発案841(Initiative 841)は、同州のエルゴノミクス規則を無効にし、併せて、連邦基準による義務付けがない限り、今後の職場のエルゴノミクス規制を封じるものである。州民発案を発起したのは、エルゴノミクス規則を職への脅威だと主張した同州の建築産業協会(Building and Industry Association)である。
州民発案の成立は、エルゴノミクス規則制定を後押ししたゲイリー・ロック州知事(Gary
Locke, Governor)政権にとっては、大打撃である。
ロック知事は、2003年11月5日の記者会見で、「(規則の撤回に)落胆したが、今後とも労働安全を強調していくつもりである」と報道陣に述べた。「われわれは今後とも、教育、アウトリーチ活動や実演プロジェクトを駆使して、経費のかからない、いたって単純な優良事例を事業者に紹介していくつもりである」。
これに激しい反対運動を展開した労組にとっても打撃であった。
ワシントン州のエルゴノミクス規則は、2004年7月に発効する予定であった。これは、連邦OSHAやノースカロライナ(North Carolina)州が公布したエルゴ基準が2000年に消滅して以来、米国唯一のエルゴ関連規則であった。
建築産業協会のエリン・シャノン広報部長(Erin Shannon, public relations director)は、エルゴ規則撤回運動は、同協会が先鋒を務めたとはいえ、ワシントン州内の全産業が支持したものであることを明言した。
「産業界は、この点では結束した」とシャノン氏。このような意見の一致は、州内では稀で、通常は、大企業と小企業の利害は合致しない、とも付け加えた。しかし、エルゴ規則の「制約的な性質」は、州内のあらゆるレベルで競争力を脅かすと、同氏。
州民発案841は、州民投票で53%の支持を得たが、有権者がこの意味を完全に理解していたかどうかは疑わしい。11月6日付けのシアトルポスト・インテリジェンサー(Seattle Post-Intelligencer)紙に掲載された調査は、シアトル(Seattle)市のあるキング郡(King County)の有権者400人を対象に実施されたものだが、これによると、有権者の大半は、州民発案とその目的について、知らされていないか、誤った情報を得ていたことが判明した。調査対象の39%は、州民発案841の効果をわかっておらず、8%は、規則を無効化するのではなく、成立させるものだと考えていた。
「みかけの票差からすると、もしこの8%が、州規模で間違いを犯したとすれば、誤解を解くだけでも、州民投票の命運は違ったことだろう」と記事は記す。
|